シャーロット家の秘蔵子は『つまらない』やつ   作:傍目

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番外編2:遺伝子交信する死神達

 

 

 

『これだけは信じてくれ…!!

 

 おれは仲間に隠し事をしてたつもりはない!!』

 

 

これは本当に嘘じゃない。

おれにとっても()()()()にとっても、『ヴィンスモーク家三男』は死んだ存在。

だから…何も言う必要なんてなかったんだ。

 

それが、こんな形でおれの目の前に現れるなんて……!

 

 

『おれの問題なんだ。』

 

 

ルフィ……おれは忌々しい過去と決着(ケリ)をつけてくる。

全てを清算して、『麦わら海賊団・コック』として戻ってくる。

 

それまで、ちゃんとナミさん達の言う事聞いておけよ。

 

 

 

 

 

『必ず戻る。

 あいつらによろしく伝えてくれ。』

 

 

 

 

腹ァ……壊すんじゃねェぞ、アホ船長………

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

(フーネー)♪  (フーネー)

 

 

《クイーン・ママ・シャンテ号、ただいま帰還。》

 

 

そこかしこから甘い匂いが漂う島、ホールケーキアイランド。

とうとう敵の本拠地へと足を踏み入れてしまった。

 

だが俺は結婚なんか断じてしない。

写真で見たお嬢さんはそれはそれは愛らしい方で、この子を人生の伴侶にできるなど恐悦至極だろう。

 

それでも、おれの居場所はここじゃない。

 

 

 

 

『サンジ~~~!!腹減ったぞ~~~!メ~シ~~~!!!』

 

 

 

 

どれほど料理の腕を買われても、おれが求められたいのはあの船にいる仲間達だけだ。

とっとと()()()()と話をつけて帰りてェ。

 

ここ数日、敵船でVIP待遇を受けるばかりでまともに腕をふるってねェんだ。

きっとルフィの奴はおれの作る飯が食いたいと駄々をこねてる事だろう。

 

一人で喚くだけなら結構だが、ナミさんやロビンちゃんに迷惑かけてねーだろうな、あいつ……。

 

 

 

 

「お~い、タマゴー!」

「お帰り~!おみやげないの~?」

 

 

島の船着き場に降り立つと、そこには揃いの帽子とスーツを身に着けた顔のそっくりな野郎共が五人もいた。

なんだコイツら?5つ子かなんかか??

 

 

「ご、御兄弟方!?なぜここへ!!?」

 

 

やっぱ兄弟なのか。

 

頭からつま先までお揃いな野郎共が仲良くお出迎えとか、余計にテンションが下がる。

せめて美しいマドモアゼル達で出迎えろ、クソが。

 

 

「……トライフルがママの命令で万国(トットランド)の見張りをしてるんだ。」

「なッ!!?この万国(トットランド)を!?ホールケーキアイランドでなく!!?」

「お前らから報告受けた日からずっとだぜ?どーかしてるよな。」

「~~~!!またなんて無茶を働いてオルボワールか!あの方は!!」

 

 

ここまでの道中、腹が立つほど余裕かましてた長足タマゴ野郎が頭を抱えて狼狽えている。

 

これにはちっとばかし驚いた。

聞こえてくる話を拾い上げてみる限り、長期とはいえただ見張りをしているだけの『誰か』の事をえらく心配しているようだった。

 

仲間を殺して平然としている血も涙もないクソッタレに、その程度でここまで心砕くような大切な奴とかいるのか?

 

 

「……オイ、タマゴ野郎。一体誰の話を……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――《ギロッ!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、凄まじい殺気の籠った視線に射抜かれ、体が凍り付く。

 

今の今まで和気藹々(わきあいあい)とタマゴと話をしていた五人が、おれの存在を認識した途端に射殺さんばかりに睨み付けてきた。

 

 

 

……が、それは本当に見間違いかと思えるほど、刹那の出来事だった。

 

 

 

「おー!マジで"黒足"じゃん!!手配書のやつ!!」

「どーも、遠路はるばるようこそ婿殿。いや、新たな弟と言うべきかな?ハハッ!」

「年上だけどなー、ギャハハ!!」

 

 

先ほどの鋭い視線が嘘だったかのように、そっくりな顔の五人は一様に柔和な笑みを浮かべて歓迎の言葉を投げかけてきた。

 

どうやらおれより年下らしいが、明らかにおれより場数を踏んでいる。

 

 

一睨みでわかる、おれと奴らの()()の経験と力量差……

 

 

 

 

 

こいつらは………"人殺し"のプロフェッショナルだ!!

 

 

 

 

 

こんなに若くても『四皇』の手の者だと痛感するほどの殺気だった。

そして、そんな殺気をすぐに消し去り懐へ入り込んでくる立ち回りの素早さ。

 

ヤベェ……こいつらはヤバすぎる!!

 

 

 

「…もっとちゃんと挨拶をしたいが、悪いな黒足。ママを差し置いて息子が出しゃばるなんてあっちゃならないからな。

タマゴ、婿殿をママの待つ城へ案内して差し上げろ。」

「……はっ!心得ておりまスフレ。」

 

 

5つ子の一番タッパのある男にタマゴが恭しく頭を下げる

そして5人は揃って、巨大な城が見える方向へ踵を返し去っていった。

 

 

「じゃーなー、我らが弟君(おとーとぎみ)!また後で!」

「ゆっくりお互いを知っていこう。

 

……時間はたっぷりあるからな……。」

 

 

去り際ににんまりと笑みを浮かべて放たれた言葉は、むしろおれに残された時間は短いと暗に言っているような気がした。

 

 

「……城はこっちだボン。着いたらすぐに、ママへ謁見するのでアムール。」

 

 

タマゴはそびえ立つ城のてっぺんに不安げな視線を向けてからおれを案内した。

 

なんとかタマゴについて歩くが、未だ背筋が凍りついたような悪寒に見舞われている。

五人もの死神に鎌を突きつけられたも同然の恐怖感だった。

 

アレは……人間なんかじゃない………!

 

これから人でなしのあのクソヤロウ共とも顔を合わせなければならないというのに……!

寒さで鈍くなる思考に、あの血縁とも思いたくないクソ共の姿を乗せたせいで余計に体が冷える!クソッタレ!

 

 

 

 

だがおれはこの時、パンクハザードよりも極寒に感じる、恐怖からくる寒気にその違和感を感知できていなかった。

 

 

これから血縁を結ぶというのに、なぜ余命宣告同然の威嚇をされたかという違和感に………

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

「黒足……なァ。どう?正直言って。」

「まあまあ強そうな感じはしたかな。けど、鉄で出来てるようには見えなかったな。」

「だとしたらつまんねーな。一発くらい鉛玉ぶち込んでみたかったのに。」

「馬鹿言ってんなよ、ママに殺されるぞ。」

「その役はプリンのだぜ?可愛い妹に嫌われるぞ、ギャハハ!」

「がっかりすることはないさ。アレ以外にも遊び相手はいる。」

「あーあ…早くお茶会始まんないかな!そしたらトライフルも楽になるのに!」

「けど、茶会まであのままだったらトライフル、参加できないだろうな。」

「そうなったらウェディングケーキと一緒にジェルマの頭でも持って行って二次会やろうぜ!

 たくさん飾り付けしてさ!」

「それいいな!空いた穴の所にキャンドルでもさしてやろう!」

「いくつさす気だよ?火だるまになっちまうぞ?」

「みーんな蜂の巣にしちまうからな、ハハハ!」

 

 

クスクス……ゲラゲラゲラ………!

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

「……なーんか、あいつら楽しんでる気がする……。」

「?誰が??」

 

 

髪型などに若干の違いがあるものの瓜二つな顔立ちをした少女達の内の一人が、トライフルにランチ休憩を取らせながらポツリと呟いた。

その言葉にトライフルはサンドイッチを頬張りながら疑問符を浮かべる。

 

 

「あの馬鹿兄弟達よ。絶対バカな事言って盛り上がってるわ。」

「……もしかして兄ちゃん達のこと?」

 

 

基本、シャーロットの兄弟姉妹は兄姉は尊敬し、弟妹は可愛がる者達である為、軽々しくバカ呼ばわり出来るということは同じ父親を持つ兄弟の事を指している可能性が高い。

トライフルの予想は当たったようで、お揃いのリボンとボーダーのニーソックスを身につけた10つ子の内の5人姉妹はコクコクと首を縦に振った。

 

 

「まったく!タマゴ達が戻ってきたってトライフルが言った途端、私達に荷物押し付けて行っちゃうんだから!」

「男の子って本当にバカ!」

「おれも男だよ~、姉ちゃん。

 まあ、男って奴は一人がバカやると悪乗りしたくなる生き物なんだよ。

 兄ちゃん達、同い年だから余計に結束力高まっちまうんだろうよ、きっと。

 あ、唐揚げサンドだ。」

 

 

フォローしつつも鶏唐揚げを挟んだホットサンドに心奪われそっちに気がいく。

そんな弟の様子に姉妹達はクスクス笑い、自分達も束の間のランチを謳歌する。

 

 

「んぐんぐ…うま!……つか、姉ちゃん達なんで急にそんなことわかったの?そんな能力あった?」

 

 

フルーツサンドや紅茶を口にしていた姉妹達はピタリと止まって互いの顔を見る。

 

 

「能力じゃなくて……う~ん、何ていうのかしらね。」

「私達、そのバカと血の半分は同じだしね。」

「近くとか遠くとかじゃないのよ。私達にしか感じない何かがあるのよ。」

「それが何か聞かれると、具体的に答えるのが難しいのよね……。」

「でも……トライフルも何となくわかるんじゃない?」

 

 

『あなたの大好きな双子の妹の事だったら。』

 

 

最後はぴったり口と視線をを揃えてトライフルに投げかけられた。

 

問われたトライフルはよくよく考えずとも、思い当たる節があった。

 

 

「……うん。ある。たくさんあった。」

「でしょう!」

 

 

姉妹達はにっこり笑って、その想いを弟と分かち合う。

 

 

姉妹達に言われてトライフルは思い出した。

家出した片割れを今でも大切に想っているシフォンは、彼女と一心同体を公言していた。

 

顔も知らないであろう親から受け継いだ血の繋がりだが、その血が確かに『姉妹』を……『家族』を繋いでいる。

 

 

 

(……つーか姉ちゃん達もバカバカ言ってるけど、本当は兄ちゃん達の事大好きなんだな…)

 

 

 

「……あ!もうそろそろ時間だわ……。」

「ん、もうか。やべーやべー、あぐ!むぐぐっ!!」

 

 

制限時間が迫っている事に気付いたトライフルは慌てて食べ物を口に押し込む。

最後にズズーッと紅茶で押し流し、腹を満たすと棍を片手に立ち上がる。

 

 

「けふっ。姉ちゃん達ありがとうな。んじゃ、おれ一仕事してくる!」

 

 

礼を言いながらピクニックシートを出て、軽々と壁の上へと一飛びして行った。

 

慌ただしく去っていった弟にため息つきながら、姉妹達は後片付けを始める。

 

 

「もう!トライフルも男の子ね!あんなに慌てて行っちゃうことないのに。」

「まあ、あの子の場合はママの命令だから仕方ないけどね。」

「諸悪の根源はママに喧嘩売った大馬鹿よ!アイツは男って事抜きにしてバカよ!」

「……ねえねえ。ウチの男共は何考えてたと思う?」

「……そりゃ、アレでしょ。わかってるじゃない。私達10つ子よ。」

 

 

 

『今、私達が麦わら達に対して思ってる事と同じ♪』

 

 

 

「キャハハ!やっぱり~!」

「もし来たらどんな風に殺してやろうかしら?」

「切り刻むのは当然よね。私達の得物はそれが専売特許だもん。」

「足から切る方がいいわ!少しずつ削ぎ落して、長く苦痛を与えてやるの!」

「中身を少しずつ抉り出してやるのもいいわ。自分の臓物の色や形を最期に拝ませてあげるの♪」

「いいわね!」

「それ最高!!」

「トライフルは私達の最初の弟…、初めてってどこか他より可愛く見えちゃうのよね。」

「そんな可愛い弟をこんなに長い間、苦しめてくれたもの。」

「たくさん、た~くさん!!苦しめて殺してやらなきゃ!!」

 

 

クスクス……きゃははは!

 

 

 

 

 

通じる邪悪は精神感応(テレパシー)よりも深く響きあう

 

きっとそれは、同じ遺伝子同士しか受信できないモノ

 

 

 

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