英雄伝説 花の軌跡   作:阿賀美 アクト

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最近暑いですねー。皆さんも熱中症にはくれぐれもご注意を!
自分は道民なので本州の方に比べればそれほどでは無いんですが、それでも30℃を超えると暑いです。


第9話 謎の機械、そして《特別実習》

 

「せいっ!」

 

 木剣が横薙ぎに振るわれ、俺は体を仰け反らせてそれを回避する。しかし、振られた木剣のスピードが速かったせいか回避がギリギリになり、鼻先を少し木剣が掠めていった。

 

 このままの姿勢だと間違いなく追撃が来るため、俺は仰け反らせた体をそのまま反転させる要領で宙返りして後退し距離をとる。

 

 3アージュほど離れたところに着地し、先程俺に攻撃を放った相手の方を見る。相手の持っている木剣は俺のものに比べて大振りな剣であるため、先程のような横薙ぎをすればその遠心力で体が回転してしまいすぐに追撃には移れないだろう。

 だが、さすがと言うべきか相手はその遠心力を利用し、回転の勢いを活かしてこちらへ追撃をしに向かって来た。

 

 攻撃の手を休めない相手の構えは、剣を肩に担ぐような上段斬りの構えだ。まともに受ければ腕の振りと剣の重みでこちらが押し切られる可能性が高いため、俺は相手の攻撃を待たずに姿勢を低くして地面を蹴る。

 

 相手は俺が向かってくるのが予想外だったのか少し驚いた表情を見せるが、上段からの攻撃と下段からの攻撃では自分の方に分があると判断し、そのまま攻撃を続行した。

 

 二人の間にあった距離はあっという間に縮まり、両者の剣がぶつかろうとする。

 

 通常通りに俺が相手の攻撃を受ければ、間違いなく不利だろう。だが、俺の行動は相手の上段斬りを誘うためのものだった。

 

「なっ!?」

 

 剣がぶつかる瞬間に、俺は両手の剣を相手の剣に添えるようにしてその上段斬りを受け流し軌道をずらしたのだ。

 

 下段からの斬り上げかと思っていた相手は予想外の事態に反応できずに、そのまま地面に向かって剣を振り下ろす。真剣とは違う木剣がぶつかった時の特有の感触が伝わり、攻撃を受け流された相手は体勢を崩していた。

 

 相手の攻撃を上手く流した俺はそのまま反撃に出る。相手もこのままやられるわけにいくまいと振り下ろした木剣で防御の姿勢を取ろうとした。

 

「勝負アリ、だな」

 

 しかし、相手が防御の構えをとる前に俺の剣が相手の首元でピタリと止まっていた。

 

「…うん、どうやら私の負けのようだ」

 

 そして、俺と試合をしていた相手であるラウラは少し悔しげな表情をしながら自らの敗北を認めた。

 

 

 

 

 

 

 4月21日水曜日早朝、俺とラウラは木剣での試合をしていた。

 

 俺とリィンとラウラはそれぞれ異なる剣の使い手ではあるものの、やはり毎日の稽古は欠かさないという点は同じのようで、全員がこうして早朝または夕方の時間に剣を振っている。

 今日はたまたま朝の稽古に行こうとしたときに同じく稽古をしようとしていたラウラと玄関で一緒になり、ラウラの提案で二人で稽古をすることになった。

 

 最初はお互いの剣の振りなどをチェックし合いながら稽古をしていたのだが、せっかくなら試合形式でやってみようということになり、先程のような勝負になっていたのだ。

 

「…ふぅ、しかし驚いたぞ。まさかあの体勢で剣を受け流されるとは」

 

「ま、結構な博打だったけどな。上手くいってよかった」

 

 ラウラと俺はタオルで汗を拭きながら先程の勝負を振り返っていた。

 

 実際俺がさっきやった受けは普通はやらないだろう。姿勢の高い状態での場合ならともかく、姿勢を低くした状態で相手の剣を受け流すというのは得策ではない。

 普通あの体勢なら剣が完全に振り下ろされる前に、斬りあげて剣を弾き体勢を立て直すのがいいだろう。

 

 だが、二人とも持っていたのが真剣ではなく木剣だったことと、あの受け流し方をラウラには見せたことがなかったため、少々強引に勝ちを取りにいったのだ。

 

「今回は私の負けだが、そなたの手の内をひとつ知れたからな。次は勝たせてもらおう」

 

「俺だって次も負ける気はないぜ。こっちだってラウラの戦い方を学んだからな」

 

「む……」

 

 ラウラも中々の負けず嫌いなようで、もう次の勝負への意気込みを語っていた。しかし、俺も簡単に勝ちを譲るつもりはない。俺はもっと強くならなければならないのだ。

 

 滴る汗を拭いていたラウラはふと思い出したように俺にある質問をする。

 

「…そういえばそなた、我流という割には随分と型がしっかりしているようだが、誰かに師事していたのか?」

 

「えーっと……」

 

 ラウラの質問に俺は口ごもってしまう。彼女も剣を交えればさすがにわかったようだ。

 

 少し考えた後、俺は誤魔化すように答えた。

 

「…帝都にいた頃に《ヴァンダール流》の道場に通ってたからな。そのときに《ヴァンダール流》の型も少し覚えたし」

 

「ふむ…?」

 

 俺の少し苦しい返答にラウラも首をかしげるが、それ以上掘り下げることはしなかった。

 若干微妙な空気になったので、その原因である俺は話題を変える。

 

「そういえば今日だよな《実技テスト》って」

 

「うん、だが普段やっている戦闘訓練と一体何が違うのだろうか?」

 

 今日はサラ教官が事前に伝えていた《実技テスト》の日だった。

 トールズ士官学院では週に何度か戦闘訓練の授業がある。その内容は日によって様々で、アーツの練習や仮想状況下での動き方など、テストをするような題材はいくらでも考えられる。

 

「普通に考えれば、今みたいな模擬戦とかだよな…」

 

「だが、ただの模擬戦ならサラ教官も事前には伝えぬのではないか?」

 

「そうなんだよな…」

 

 この三週間でわかったことだが、サラ教官が何か企んでいるときはその内容を直前まで俺たちにわからないようその中身をはぐらかしたり、意味深な言い方をすることが多い。なにかともったいぶるのがあの人の趣味なのだ。

 

 今回も《実技テスト》があることだけを事前に伝えているため、その可能性が高い。

 

「まあ、今考えても仕方あるまい。どんなものであれ全力を尽くすまでだ」

 

「そうだな」

 

 そろそろ寮に戻らないと遅刻する恐れがあるため俺とラウラは稽古を終了して寮に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――それじゃあ予告通り《実技テスト》を始めましょう」

 

 グラウンドに集まった俺たちにサラ教官は《実技テスト》の開始を宣言する。

 

 サラ教官によればこのテストは単純な戦闘力を測るものではなく、『状況に応じた適切な行動』を取れるかどうかが評価の基準になるらしい。つまり、ただ単純に相手を倒したとしてもいい評価は貰えないということだ。

 

 簡単な説明をした後、サラ教官はさっそく《実技テスト》を開始するべく数名の生徒を呼ぶ。

 

「リィン、エリオット、ガイウス、イクス。まずは前に出なさい」

 

「は、はい」

 

「い、いきなりかぁ」

 

「承知」

 

「っし、やるか!」

 

 呼ばれたのは偶然にも自由行動日に旧校舎を探索したメンバーだった。俺たちが前に出るのを確認したサラ教官は、何故か指を鳴らした。

 

「これは…!?」

 

「なんだコイツ!?」

 

「ま、魔獣!?」

 

「いや……命の息吹を感じない!」

 

 サラ教官が指を鳴らすと同時に、何もなかったはずの空間にいきなり正体不明の機械らしきものが現れた。サラ教官が言うには、これは作り物の“動くカカシ”のようなものらしい。

 簡単な説明をした後、サラ教官は俺たちに一言付け加える。

 

「そこそこ強めに設定してるけど決して勝てない相手じゃないわ。たとえば――ARCUSの戦術リンクを活用すればね」

 

「…なるほど」

 

 どうやらこのメンバーを最初に呼んだのは偶然ではないようだ。サラ教官は俺たちが旧校舎の探索で戦術リンクを使ったことは知っている。要は俺たちに戦術リンクの手本をやってもらおうということだろう。

 

 動くカカシの方も準備万端のようで、俺たちを挑発するように動いている。

 その様子を確認してサラ教官は実技テストを開始の合図をする。

 

「――それでは始め!」

 

 

 

 

 

 

 サラ教官の合図と同時に俺たちは戦術リンクを起動させて、陣形を組んだ。今回も俺とリィン、ガイウスとエリオットの組み合わせで戦術リンクを繋いでいる。

 

「―――!」

 

 謎の機械は声にならない叫び声をあげながら俺の方に突進してきた。エリオットが解析をする間に、ある程度コイツの強さを確かめる。

 

「ぐっ…!」

 

 突進してきた機械を双剣で受け止めるが、思いのほかパワーがあるようで俺はそのまま後ろに押されてしまった。

 

「リィン!」

 

「任せろ!」

 

 俺は機械の背後から駆け寄ってきていたリィンに向けて、機械を弾き返した。弾き返されたことでバランスを崩した機械にリィンの攻撃がヒットする。

 

「はぁ!」

 

 ガキン!と金属同士がぶつかった音が響く。しかし、カカシの方も結構硬いようで攻撃された箇所にあまりダメージは見られなかった。

 そして後ろからエリオットの声が聞こえた。解析によればこの機械は《戦術殻》という名前で、アーツも使えるらしい。

 

「―――!」

 

「させるか!」

 

 先程攻撃されたリィンを標的に変えた戦術殻は彼の方へ突進を始める。しかし、横から走り込んでいたガイウスの攻撃によってそれは阻まれた。

 突進を阻まれたガイウスに戦術殻は青白い煙を出した爆弾を投げつけた。

 

「くっ!」

 

 その攻撃をガイウスが防御した瞬間、後ろからエリオットのアーツが飛来した。

 

「《アクアブリード》!」

 

 ガイウスに追い打ちを仕掛けようとしていた戦術殻はそれを中止して、俺たちから距離をとった。

 

「―――」

 

 距離をとった後、戦術殻はアーツの駆動を開始する。

 

「やらせるか!」

 

 駆動中に隙ができた戦術殻に俺は《烈風刃》を撃ち込んだ。その攻撃でアーツの駆動は中止され、同時に戦術殻は大きくバランスを崩す。

 

「そこだ!」

 

 俺の攻撃と同時に動き出していたリィンがバランスを崩した戦術殻に追撃をした。

 

「――…」

 

 リィンの攻撃によって戦術殻は機能を停止した。どうやら俺たちの勝利みたいだ。

 

「……よし」

 

「な、なんとか勝てたぁ…」

 

 機能を停止した戦術殻を見てガイウスとエリオットは一息つく。

 

「やったな、リィン」

 

「ああ、最後も上手く連携が決まって良かった」

 

 俺とリィンも武器を収めてハイタッチをする。これは中々の評価だろう。

 そんな俺たちにサラ教官は賞賛の言葉を送る。

 

「うんうん、悪くないわね。戦術リンクも使いこなせているし、旧校舎地下での実戦が活きているみたいね」

 

 サラ教官からも好感触をもらい、俺たちは元の位置に戻った。サラ教官は再び戦術殻を起動させて、次の組を呼ぶ。

 

「――それじゃあ次!ラウラ、エマ、ユーシス、前に出なさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後もラウラたちとアリサ、フィー、マキアスの組の戦闘が終了し、《実技テスト》は終了となった。二つの組も健闘していたが、俺たちに比べればまだ戦術リンクを使いこなせず、それなりに苦戦していた。

 

 実技テストが一通り終わった後あの戦術殻について質問が出た。サラ教官によれば、とある筋から押し付けられたもので、詳しい事情は話してくれなかったが本人はテストの役に立ったので結果オーライとのことだ。

 

 そして、戦術殻についても話し終わったサラ教官は、俺たちに以前話した《Ⅶ組》ならではの特別なカリキュラム――《特別実習》について説明し始めた。

 

 その内容とは、俺たちはA班とB班に分かれて指定された場所に向かい、期間中にその場所で用意された課題をこなしてもらうとのことだ。

 口ぶりから察するに、サラ教官は俺たちに付いてくるわけではないらしい。

 

 その後、ユーシスから結局自分たちがいつどこに向かえばいいのか?という指摘があり、サラ教官は俺たちに詳細が書かれたプリントを一枚ずつ配った。

 

 しかし、そこに書いてあったのは驚きの内容だった。

 

 

[4月特別実習]

 A班:リィン、アリサ、ラウラ、エリオット、イクス (実習地:交易地ケルディック)

 B班:エマ、マキアス、ユーシス、フィー、ガイウス (実習地:紡績町パルム)

 

 

 プリントに書かれていたのはそれぞれの班のメンバーと行き先だった。

 俺のいるA班はトリスタの東にある交易が盛んな街であるケルディック。他のメンバーが行くパルムは紡績が盛んで、そこには《ヴァンダール流》の道場もあり俺も一度訪れたことがある。

 

 だが、重要なのは行き先ではなくそのメンバー構成だ。

 

「え――」

 

「えええっ……!?」

 

 プリントに書かれた内容を見てリィンとアリサが驚く。現在絶賛ケンカ中の二人は俺と同じA班だった。

 それ以外の生徒も各々感想を漏らす中、予想通りユーシスとマキアスが不満を漏らした。

 

「ば、場所はともかくB班の顔ぶれは……!?」

 

「……あり得んな」

 

 悪意しか感じられない班分けに一部が不平をこぼす中、サラ教官は有無を言わさずに《特別実習》の説明を終了しようとする。

 

「――日時は今週末、実習期間は2日くらいになるわ。A班、B班共に鉄道を使って実習地に行くことになるわね。各自、それまでに準備を整えて英気を養っておきなさい!」

 

 どうやらこの実習なかなか骨が折れそうだった。

 




そんなわけで次回からはいよいよ特別実習です!
なるべく早めに更新したいと思います。

そして全く関係ないんですが、今日のFGOフェスでFate/SN HFの劇場版第2章の公開日が2019年1月12日に決まりました。
HFはFateシリーズの中でも一番好きなので今から公開が楽しみです!
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