英雄伝説 花の軌跡   作:阿賀美 アクト

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そういえば、前回で通算UA10000を達成しました。
これもここまでこの作品を見てくださっている方々のおかげです。
新たにこの作品を見てくれる人を増やしていくためにも、自分も精進していきますので、これからもよろしくお願いします!





第25話 翻弄される駒たち

 

5月30日 特別実習2日目。

 

午前中にセントアークでの依頼を終わらせた俺たちは、列車に乗ってパルムへと向かっていた。列車での移動はさすがに馬での移動よりも速く、半分ほどの時間でパルムに着くことができそうだ。

 

「このサンドイッチ美味しいわね」

 

「うむ、どの種類も具材がたっぷりと詰まっていて食べごたえもある」

 

「エリオット、口にソースが付いているぞ」

 

「え、ほんとだ!?」

 

列車に乗ったのがちょうどお昼時だったため、俺たちはセントアークにあったベーカリーでサンドイッチを買って車内で昼食を摂っている。列車の窓から景色を楽しみながらの昼食はなかなか乙なものだ。

 

サンドイッチの種類はたまご・ハム・トマトの全3種類で、俺は今トマトサンドを口にしている。大きめに切ったトマトとシャキシャキのレタスが挟まれたサンドイッチで、マヨネーズをベースにした特製のソースが新鮮な野菜の味を引き立てている。シンプルながらも、その味はかなりの完成度だ。

 

一同がサンドイッチを楽しむ中、口についていたソースを拭いたエリオットがみんなに話題を振る。

 

「やっぱり、ニールさんがイストミア大森林にも人形兵器を放ったのかな?」

 

「いや、それは難しいんじゃないか?」

 

「ええ。パルムからイストミア大森林に運ぶとしても、どの道セントアークの近くを通らなきゃいけないもの」

 

「仮に別のルートを行ったとしても、あれはさすがに目立つであろう」

 

「そうなるとやっぱり、ニールさんの他にも協力者がいるってことになるな」

 

俺たちがパルムに向かっている理由は、昨日のドワイトさんの依頼で調査したニールさんが気になったためであった。あの後宿に戻ってもう一度話し合った結果、やはりニールさんはあの人形兵器と何か関わりがあると踏んだのだ。

 

それに昨日のニールさんの発言を思い返しても少し不自然な点がある。

 

ニールさんは襲っていた人形兵器のことを“ポンコツ”と呼んでいた。俺たちが戦った人形兵器は直前まで俺たちに気づかなかったが、それ以外には故障しているような雰囲気は感じなかった。それに、俺たちが向かう前にもその罵声は聞こえていたため、ニールさんが人形兵器を初めて見た時のリアクションとして“ポンコツ”という表現は少し不自然である。

 

そして、ニールさんが仮に人形兵器と関わっていた場合、俺たちがイストミア大森林で戦った奴らとも何か知っている可能性が高い。もしかすると、他にも協力者がいる場合も考えられる。

 

それも含めてニールさんのことをもう一度調べてみようという話にまとまったため、俺たちはこうしてパルムに向かっているのだ。

 

「とりあえず、パルムに着いたら《ドワイト商会》に行ってみましょう。ニールさんがいたらそこで少しカマをかけるのもアリね」

 

「えへへ、なんだか本当に遊撃士になったみたいだね」

 

「ふふ、そうかもな」

 

みんな2回目とあって特別実習での自主的な動きも大分慣れてきたようだ。リィンたちの方はどうなっているか少し心配だが、今は信じてこちらも最善を尽くすべきだろう。

 

残り一切れになったサンドイッチを頬張りながら、俺はパルムへの到着を待ちわびていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「技師のニールさん、ですか。私たちの方でも少し調べる必要がありそうですね」

 

俺たちはパルムでクレア大尉率いる鉄道憲兵隊と再会していた。クレア大尉もここ最近の人形兵器の目撃情報を分析して、パルム周辺の調査に来たそうだ。

 

「多分、ニールさんは人形兵器と何らかの関係があると思うんです」

 

「うむ、今朝からも足どりが分かっていないようだからな」

 

「昨日のタイミングといい、少し露骨すぎるくらいよね」

 

俺たちはパルムに着いた後、早速《ドワイト商会》を訪れてニールさんに話を聞こうとしていた。しかし、そこにニールさんの姿は無かった。ドワイトさんの話では、ニールさんは今朝から姿を見せていないらしい。

 

昨日の事件の後は、ちゃんとニールさんは店に戻っていたそうなのだが、ドワイトさんは今日は朝から一度もニールさんを見ていないとのことだ。

 

それを聞いてさらに不審に思った俺たちはパルムの住人にニールさんの目撃情報を聞いてみたが、誰も昨日の夜以降ニールさんを見た人がいなかったのである。アリサの言う通りこのタイミングでの失踪はどう考えても怪しい。

 

俺たちも特別実習の期間中でしかニールさんの捜査はできない。もし仮に俺たちがニールさんを見つけられなかったとしても、クレア大尉にも情報を伝えておけば鉄道憲兵隊でその後も捜査をしてくれる。そのために、俺たちはこの実習期間で遭遇した人形兵器のこととニールさんについて話していた。

 

俺たちがクレア大尉と話していると、ふとガイウスがある事に気付いた。

 

「そういえば、あのミハイル少佐という人の姿が見えないな」

 

「言われてみれば……」

 

ガイウスの言ったように、昨日会ったミハイル少佐の姿はどこにも無かった。それによく見れば鉄道憲兵隊の隊員も昨日より若干少ない。

 

「ミハイル少佐は別働隊を率いて、北サザーラント街道の方を中心に調査をしていますよ。あちらにあるドレックノール要塞の付近でも、不審な人物や人形兵器らしきものなどの目撃情報が相次いでいますから」

 

「そうなんですか……」

 

俺たちが昨日、人形兵器と戦ったイストミア大森林は比較的北サザーラント方面とも近い。イストミア大森林にいた人形兵器も北サザーラント方面から運ばれたと考えれば、パルムから運ぶ必要も無いだろう。やはり俺たちの予想通り、ニールさんの他にも人形兵器と関係している人間がいそうだ。

 

クレア大尉と情報交換をしていると、一人の隊員が慌てた様子でこちらに走ってきた。

 

「大尉、お話中失礼します!」

 

「どうしましたか?」

 

「それが、先ほどミハイル少佐の方から通信がありまして、セントアークから北のサザーラント本線で事故が発生したようです!」

 

「………!」

 

隊員によって持ちこまれた情報はまさかのものだった。近くにいた俺たちもその報せを聞いて驚く。クレア大尉は一瞬驚いた顔を見せたものの、すぐにいつもの冷静な表情に戻る。

 

「――事故の原因と被害状況は?」

 

「原因は何者かが走行中の列車に攻撃したようで、その衝撃で列車が線路から外れたとのことです。乗客にも負傷者が出ているとの報告もあります」

 

「一般人にも被害が出るなんて……」

 

「一体誰がそんなことを……」

 

どうやら事故は予想以上に被害が大きいようだった。何者かの仕業かはわからないが、乗客の乗っている列車を攻撃するというのは許し難いことだ。

事故の状況を報告した隊員はさらに報告を続ける。

 

「また、現場付近には正体不明の兵器が多数展開されていたようで、現在駆けつけたミハイル少佐の隊がその対応に当たっている模様。事故の負傷者などの対応も遅れているため、至急こちらに駆けつけるようにとの連絡が入りました」

 

「正体不明の兵器って……」

 

「人形兵器か……!」

 

ミハイル少佐率いる別働隊がどれほどの人数かはわからないが、おそらく人形兵器の掃討に手一杯になって負傷者の手当てなども遅れているのだろう。負傷者の状況によっては一刻を争う事態になっているかもしれない。

最悪の状況が脳裏に浮かんだ俺はすぐにクレア大尉に提案した。

 

「――クレア大尉、俺たちも現場に連れていってください!」

 

「人形兵器とも戦闘経験はありますし、負傷者の手当ても手伝えると思います!」

 

「我らにも微力ながら手伝いをさせてほしい」

 

俺だけでなくB班みんなの心は一つだった。士官学院の授業でも応急処置の仕方なども習っているため、戦闘以外でも役に立てることはあるはずだ。

 

しかし、俺たちの提案を聞いたクレア大尉は何か考えた様子で答えようとする。

 

「待ってください、おそらくこれは――」

 

「――“陽動”、でしょうね」

 

クレア大尉の言葉を遮ってその先を言ったのは、聞き覚えのある女性口調の男の声だった。

 

「ナオミちゃん!?」

 

「昨日ぶりね、イクスちゃんたち♪」

 

派手な色のアフロを揺らしながら俺たちの下にナオミちゃんは近づいてきた。口調自体はいつも通りだが、その表情は真剣なものだった。

 

「初めまして、サラさんから色々と話は聞いています。それ以外にもお噂はかねがね」

 

「こちらこそ初めまして。あなたが噂の《氷の乙女》ね」

 

クレア大尉とナオミちゃんは真剣な表情を崩さずに軽く挨拶を済ませた。どうやら二人とも面識自体は無いが、お互いのことは知っているらしい。

突如現れたナオミちゃんを加えて、話は先ほどの内容に戻る。

 

「ナオミちゃん、さっき言ってた“陽動”って」

 

「ええ、この事故はおそらく鉄道憲兵隊を北方面に集中させるためのものでしょうね。そうでしょ、大尉さん?」

 

「はい、本命はおそらくこのパルム、もしくは他の場所かと」

 

「ええっ!?」

 

「……なるほど、そういうことか」

 

確かにそう考えれば、走行中の列車に攻撃を仕掛けて大量の人形兵器を展開させたことにも納得がいく。この犯行が複数人によるものだとすれば、鉄道憲兵隊が北方面に集中したことで手薄になった南側で何か別のことをするのが容易になるからだ。

 

今朝からいなくなっているニールさんもこの犯行に関わっている可能性が高い。目的はわからないが、このまま放っておけば良くない事が起こるのは間違いないだろう。

 

この犯行の狙いを俺たちに教えたナオミちゃんはクレア大尉にある提案をする。

 

「大尉さん、こっちはアタシとこの子たちに任せてくれないかしら?」

 

「え――」

 

「それは……」

 

突然のナオミちゃんの提案にクレア大尉だけでなく、俺たちも戸惑う。いくらナオミちゃんがついているとしても、敵の戦力が未知数な以上俺たちだけでいくのは少々危険ではないだろうか。

 

だが、ナオミちゃんも思いつきで発言したわけではなく、戸惑う俺たちを励ますように続けた。

 

「大丈夫よ。アタシも昨日のうちにやれるだけやっておいたから、アタシとこの子たちの人数でも十分イケると思うわ」

 

「ナオミちゃん、まさか昨日の仕事って……」

 

「もしかして、一人で人形兵器を倒してたんですか!?」

 

「まあ、他の仕事のついでにね♪」

 

俺たちの知らないところでナオミちゃんはあの人形兵器を一人で倒していたらしい。こうなることを予想していたのだろうか。

 

ナオミちゃんの行動に俺たちが驚いていると、クレア大尉は少し考えてから俺たちに話しかける。

 

「――わかりました。では皆さんにこちらの方をお任せしてもよろしいでしょうか?」

 

「――はい!」

 

「任せて下さい!」

 

改めてクレア大尉からの依頼を受けて、俺たちは頷く。クレア大尉も俺たちのことを信頼してくれているようだ。

 

俺たちの返事を聞いたクレア大尉は早速鉄道憲兵隊の専用車両に乗り込んで、セントアーク方面に向かって行った。それを見送ってから、俺たちは改めて行動を開始する。

 

「よし、それじゃあ俺たちもすぐに行動を開始しよう!」

 

「ええ!」

 

「でも、具体的にはどこに行けばいいんだろう?」

 

「それなら大丈夫、すでに目処はついてるわ。向かうのは《アグリア旧道》。おそらくそこに犯人がいるはずよ」

 

「ふふ、頼りになるな」

 

「それでは早速向かうとするか」

 

ナオミちゃんの情報を頼りに俺たちは早速《アグリア旧道》へ向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

はやる気持ちを抑えてなるべく速く車を走らせながら、クレアは今回の事件について考えていた。

 

列車の攻撃や展開された人形兵器については、おそらく鉄道憲兵隊を陽動するという目的で間違いは無い筈だ。敵の目的はわからないが、このまま行けばパルム方面で何か事を起こす可能性が高い。

 

しかし、そこまで考えている彼女には頭の中である事が引っかかっていた。

 

そう、陽動があまりにも露骨すぎるのだ。

 

本当にこちらを北方面に引きつけておくための陽動なら、南側でもその動きに合わせて行動を起こしている筈だ。しかし、彼女の見立てでは南側にはそれほどの戦力は配置されていない。あの遊撃士の実力は色々と耳にしているが、本当に事を起こすつもりなら戦力を削ぐにはあの遊撃士一人だけでは数が足りないだろう。

 

遊撃士の方もおそらくそれは分かっているのだろう。でなければ、いくら自分であらかた戦力を削っていたとしても《Ⅶ組》と自分だけで行くという提案は中々しないからだ。

 

(一体敵は何を考えているというのか……)

 

子どもが考えたような穴のある行動に、クレアは自分たちがどこか遊ばれているような気がした。まるで、自分たちがこの事件を解決できるかどうか遊び感覚で試されているような。

 

それを考えたクレアの手はハンドルを握る力が強くなっていた。

 

(とにかく、今はあの子たちを信じるしかありませんね)

 

少し熱くなってしまった頭をすぐにリセットして、氷の乙女は平常運転に戻る。

 

セントアークまではあと少しというところだった。

 

 

 




閃Ⅳの発売日まであと一カ月ですね。
もうお察ししてるとは思いますが、花の軌跡は発売日までの完結は絶対ムリです。自分もそれは諦めてます。
ですが、自分の中では閃Ⅲまでの流れはあらかたできています。ちゃんと完結させるつもりはあるので、ご安心ください。
とりあえずの目標として、花の軌跡のヒロインが決定するところまではいけると思うので、自分もペースを上げていくつもりです!
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