英雄伝説 花の軌跡   作:阿賀美 アクト

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今回は結構長くなっちゃいました。
それと、オリジナルの人形兵器が登場します。





第26話 轟く雷翼

 炎を纏った拳が正面に立ち塞がっていた人形兵器の一体を撃ち抜いた。そして放たれた一撃の余波は後ろにいた数体の人形兵器にも届く。熱波は放った者の情熱をカタチにしたように熱く、感情のないはずの人形兵器もあまりの熱量に怯んでいるようにも見えた。

 

「退きなさいっ!《グランドイラプション》!」

 

 一瞬動きを止めた人形兵器たちに容赦なく追い討ちがかけられる。

 上空に飛び上がったことで重力のエネルギーも加えられた炎の拳は、大地を激しく揺らす。次の瞬間、拳が叩きつけられた場所を中心に大地から噴火の如き炎が放出された。残っていた人形兵器たちは、一体残らず大地から噴き上がる炎に巻き込まれて爆散していく。

 

「す、すごい……!」

 

「……凄まじいな」

 

「あ、ありえない……」

 

 昨日もイストミア大森林の奥でその実力を見ているはずのB班のメンバーも、改めてその人物が自分たちよりも遥かに実力が上であることを実感していた。

 

「……なるほど、さすがはA級遊撃士だな」

 

「ああ、俺たちも負けてられないな」

 

 集団から離れていた一体を倒した俺とラウラも、自分たちがまだまだ未熟であることを痛感する。俺たちが一体を倒す間に炎の鉄拳の持ち主は5、6体を一気に倒していたのだ。

 

 アグリア旧道を進む俺たちの前に立ち塞がっていた人形兵器の7割を一人で撃破した人物は、全く疲れの色を見せずに俺たちに向き直る。

 

「さてと、みんな怪我はないわね。それじゃ、一気に進みましょうか!」

 

 オレンジ色のアフロを揺らしながら、ナオミちゃんは快活な様子を見せる。その様子を見た俺たちはこの人がこれ以上ない助っ人だということを再認識していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ、どうしたらいいんだ!」

 

 パルムから東へ伸びるアグリア旧道から北にあるアグリア峡谷、その少しひらけた場所に一人の男がいた。彼の名はニール、昨日の一件からイクスたちB班が疑いをかけている人物だ。

 

 事実、イクスたちの読み通り彼は今回起きている一連の騒動に関わっていた。アグリア旧道に展開している人形兵器は彼が配置したものだ。

 

 しかし、この展開は彼が予想していたものとは違っていた。いや、この場合は彼が“聞いていた展開”というべきだろうか。

 

 彼が聞いていた話では、まず初めにこの計画の参加者がセントアークから北にあるサザーラント本線で列車事故を起こし、鉄道憲兵隊を引きつける。そしてその少し後に自分が大量の人形兵器を使ってパルムで実験を行うというものだった。

 

 ここまではシナリオ通りに進んでいる筈なのだが、予期せぬ事態が起きていた。

 

 一つは、使うはずの人形兵器の約半分が何者かに破壊されていたことだ。アグリア峡谷に待機させてあったもの以外はパルム間道の奥に待機させていたかのだが、今朝それを確認しに行くとそれらは一つ残らず破壊されてしまっていたのだ。

 

 さらには、昨日パルム間道で会った士官学校の学生たちが遊撃士を引き連れてこの場に向かってきているらしい。そのせいで、残りの人形兵器をアグリア旧道に配置しなければならなくなったが、どうやら学生たちは配置していた人形兵器を倒しながら着々とこちらに向かっている。このままではここに来るのも時間の問題だ。

 

(考えろ、考えるんだ……!)

 

 どうにかしてこの計画を成功させる術はないか、彼は必死に考え続ける。しかし、焦れば焦るほど頭の中が真っ白になり良い考えも浮かんでこない。

 

 なぜ彼はここまで焦っているのか。いや、そもそもなぜただの技師見習いである彼が人形兵器の実験という計画に関わっているのか。

 

「だめだ、このままじゃ“あの人”に見放される……。それだけは嫌だ……」

 

 答えは一つ、彼が“ある人物”にこの計画をやって欲しいと頼まれたからであった。そしてその人物は、彼が恋慕の情を向けている相手なのである。

 

 だが、それにしても彼の行動は異常である。いくら熱烈に愛を捧げている相手からの頼みだからといって、自身が今住んでいる町を人形兵器で襲うという非道な実験に加担するだろうか。

 

 彼はパルムに来てから数ヶ月といったところだが、それでも彼はパルムという町に愛情を感じていた。彼が普段通りなら、町を襲うような実験には手を貸さない筈だった。

 

 しかし、今の彼は普通ではなかった。

 

 パルムに対する愛情がちっぽけなものに感じるほど、その人物に対する愛情は彼の心を支配していた。今の彼にとって、愛する人から見捨てられるのが最も絶望的なことなのである。

 

 最早、彼の頭の中はその人物のことで一杯だった。それ以外のことを考えようとしても、気づけばその人物のことを考えてしまう。

 

 まるで“それ以外のことを考えられないよう”に、恋慕の炎が他の感情を彼から奪っていた。

 

 そんな彼は誰かに操られるかのように、あることを思い付く。

 

「そうだ、“アレ”があったじゃないか……」

 

 ニールは突き動かされるように峡谷の奥に置いてある“あるもの”の前に行く。それは他の人形兵器とは形の違う新型の人形兵器のようだった。

 

「コレならアイツらも殺せル。ソウダ、ソウスレバ“アノ人”もヨロコンデクレル……」

 

 そう呟く彼の目は虚ろだった。その言葉も感情を失っているように片言になっている。

 

 彼の頭は思考を働かせることを放棄していた。最早、彼を動かすのは恋慕の情のみとなっている。

 

 思考を放棄し、恋慕の炎だけで動くニールは哀れなマリオネットのようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナオミちゃん、本当にこの奥に!?」

 

「ええ、おそらく今回の事件の犯人がいるのは間違いないわ!」

 

 俺たちは展開されていた人形兵器を蹴散らしながら、アグリア旧道から北に分かれる道を進んで《アグリア峡谷》を目指していた。ナオミちゃんによれば、この峡谷の奥に今回の事件の犯人の一人が潜んでいる可能性が高いそうだ。

 

「つまり、その人を取り抑えれば……!」

 

「うむ、少なくともこちらで何らかの事件が起こるのは回避できるだろう」

 

 サザーラント本線での事故やその周辺にいる人形兵器も気になるが、ミハイル少佐のもとにクレア大尉と他の隊員も加わればきっと解決できるはずだ。俺たちはそれを信じて自分たちにできることに専念するべきだろう。

 

「ん?あれって……」

 

「開けた場所に出るようだ」

 

 ゴツゴツとした岩に囲まれた細道を進んでいくと、俺たちの前方に高い岩に囲まれた広場のような場所が見えた。大量の人形兵器をこんな細道に置けるとは思えないし、おそらく人形兵器もあの場所に隠されていたのだろう。

 

「みんな、気を付けなさい。もし犯人が一緒にいるとしたら、おそらく自分の周りにも人形兵器をある程度置いておくはずよ」

 

「……確かに。みんないつでも戦闘に入れるようにしておいてくれ」

 

 俺たちはもう一度自分の装備などの確認をしてから、その場所に突入した。

 

「――そこまでだ!大人しくしろ!」

 

 突入した場所は半径10アージュほどはある空間だった。周りは高い岩で囲まれて、少し大きめの岩も所々に転がっている。

 

「やっぱり人形兵器がいたわね……」

 

「それにあれは……」

 

「ニールさん……!」

 

 そして、そこにはやはりニールさんと20体ほどの人形兵器も展開されていた。人形兵器を見たナオミちゃんは鬱陶しげに呟く。

 

「《ファランクス》に《ビープシーカー》、《ゼフィランサス》もいるようね。厄介なものを……」

 

 展開されていた人形兵器の中には俺たちが見たことのない空中に浮遊する種類のものもいた。そのどちらもナオミちゃんには心当たりがあるらしく、警戒を強める。

 

 敵の戦力を確認していると、ガイウスがあることに気づいた。

 

「……待ってくれ。ニールさんの様子がおかしい」

 

「え……?」

 

「確かに、言われてみれば……」

 

 ガイウスの言う通り、ニールさんの様子は変だった。俺たちは彼を取り抑えに来ているというのに、彼は慌てた様子を見せない。それによく見れば彼の目はどこか虚ろで壊れたように何かを呟いている。

 俺たちがニールさんを不審に思っていると、彼は突然目を見開いて発狂し出した。

 

「シネシネシネシネ、シネーーーー!!」

 

「何だ!?」

 

「あれは……!?」

 

 ニールさんが叫ぶと、彼の前に突如見たことのない人形兵器が姿を現した。大きさは周囲にいる《ファランクスJ9》と同じといったところだが、なぜか銃火器の類が搭載されていない。

 

「ナオミちゃん、あれは一体?」

 

「いえ、アタシもあのタイプは初めて見るわ……」

 

 どうやらナオミちゃんも知らない新型のようだった。もしかしたら、この新型の実験のためにこの計画を起こしたのだろうか。

 

 突然現れた新型に戸惑っていると、新型の人形兵器は自身の背中から4体の小型兵器を飛ばした。その兵器はプロペラのようなものが付いており、それを回転させて新型の周りを飛んでいる。

 

 そして、小型兵器を飛ばした新型は通常の人形兵器の出す音よりも大きい音を発した。

 

「――――!」

 

 新型が音を出した途端に先程まで待機していた人形兵器たちが一斉に動き出す。それを見た俺たちは頭を切り替えて、戦闘準備に入る。

 

「総員、戦術リンクON!新型の動きに注意しながら敵を撃破するぞ!」

 

「了解!」

 

「さあ、速攻で片付けるわよ!」

 

 こちらも負けじと号令をかけ、人形兵器たちに向かっていく。

 

 パルムから出発してから一時間、アグリア峡谷の奥にて人形兵器たちとの戦闘か開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラウラ、後ろ!」

 

「くっ!」

 

 小型の人形兵器《ビープシーカーⅢ》に攻撃を放ったラウラの後ろには、ラウラの攻撃の隙を狙った《ファランクスJ9》が発射準備に入ろうとしていた。ラウラも咄嗟に大剣で防御の姿勢を取ろうとするが、あの距離では被弾してもおかしくない。

 

「やあっ!」

 

 しかし、ファランクスJ9が銃弾を発射する前に数本の矢が放たれ、そのメインカメラを撃ち抜く。その隙にラウラは距離を取り、ファランクスJ9の銃弾を避けることに成功した。

 

「すまぬ、アリサ!」

 

「気にしないで!それより来るわ!」

 

 後ろで矢を放ったアリサの言葉通り、今度は別の個体が攻撃を仕掛けて来る。こちらを確実に仕留めようとする敵の連携は俺たちに息を整える暇すら与えてくれなかった。

 

「はあっ、はあっ。またかよ……!」

 

「イクス、横からもう一体来ているぞ!」

 

 斜め後ろで敵の攻撃を捌いていたガイウスから注意が飛び、俺は攻撃を避けながら走り抜けざまに双剣を撃ち込んだ。しかし、中途半端な体勢で攻撃したため大きなダメージは与えられていないようだ。

 

「しつこい奴は嫌われるのよ!」

 

「《ティアラ》!」

 

 俺たち4人から少し離れたところではナオミちゃんが一人で数体の《ゼフィランサス》を相手にしている。エリオットはそのフォローで手一杯になっており、俺たちは完全に分断されていた。

 

 戦闘を開始してから約15分、俺たちは未だに敵の数をそれほど減らせずにいた。そればかりか、むしろ俺たちの方が劣勢に追い込まれつつある。

 

 なぜ俺たちがここまで苦戦を強いられているのか。それは一重にあの新型の影響だった。

 

 俺たちはイストミア大森林やアグリア旧道でも何度か複数の人形兵器と戦っているが、どの時も人形兵器たちは割と単純なアルゴリズムで動いていて、俺たちのARCUSを使った攻撃のような高度な連携をしてくることは無かった。そのため、いくら数が多くてもARCUSでの連携を使えば倒せないことは無かったのだ。

 

 しかし、現在戦っている人形兵器たちは俺たちの連携を崩すような高度な連携をしながら攻撃を続けている。ただでさえ厄介な人形兵器は高度な連携によってその脅威度を増していた。

 

 そして、この高度な連携を可能にしているのがあの新型だった。あの新型は射出した4体の衛星兵器を使って通常の人形兵器に指示を出す司令塔の役割を果たしているのである。

 

 戦闘を開始してから数分でその新型はこちらの戦力を分析して、ナオミちゃんを分断させる作戦をとったのだ。大型の人形兵器《ゼフィランサス》を全てナオミちゃんの方に配置し、その動きを完全に抑えていた。

 

 そして、厄介なのはその司令能力だけではなかった。新型は司令を出すだけでなく、高位のアーツや支援アーツなども使ってくるのだ。しかも飛んでいる衛星器にはアーツの効果や範囲を高める能力もあるようで、その影響で俺たちも苦しめられている。

 

 また、小型の人形兵器《ビープシーカーⅢ》には味方の人形兵器を修理することができるらしく、一度倒したと思った人形兵器も瞬く間に修理されて敵の戦力が回復してしまう。

 

 高度な連携と回復というコンビネーションによって、俺たちだけでなく歴戦の遊撃士であるナオミちゃんも苦戦を強いられてしまっていた。

 

「《嵐霆斬》!」

 

「《タービュランス》!」

 

 俺とガイウスがそれぞれ広範囲に攻撃できる技で人形兵器たちの動きを一瞬止めた。そして、それを待っていたラウラがその隙を突いて飛び出す。

 

「《奥義・洸刃乱舞》!」

 

「―――!」

 

 このままではジリ貧だと思った俺たちは先ほどから司令を出している新型を片付けようという作戦を取っていた。俺とガイウスが他の人形兵器たちを引きつけて、最大威力を誇るラウラの攻撃で一気に決めようということだ。

 

 動きの止まっていた人形兵器たちの間を通り抜けたラウラは、新型に渾身の一撃を繰り出した。回転の力を利用して三度振られた大剣は凄まじい衝撃を起こす。

 

「やった!」

 

「――いや、あれは!?」

 

 ラウラの攻撃が決まったと思ったアリサは思わず喜びの声を上げたが、ガイウスがそれをすぐに打ち消した。

 

「な――!?」

 

 攻撃を受けたはずの新型には傷一つ付いていなかった。攻撃を放ったラウラも驚きを隠せずに動きが止まる。

 

 ラウラの攻撃を受けたのは新型の前に展開されていた防御アーツ《アダマスシールド》だった。通常であれば一撃目で壊れるはずの障壁は、衛星器によってその効果を上げられてラウラの三連撃でようやく壊せるほどの強度になっていたのである。

 

 そして、ラウラの攻撃の間にアーツを駆動していた新型から風属性の高位アーツ《ラグナヴォルテクス》が放たれる。

 

「がっ!?」

 

「ラウラッ!」

 

 大剣で防御しても至近距離での高位アーツの威力は大きく、ラウラはその衝撃で吹っ飛ばされた。地面に激突するのを防ぐために俺が咄嗟にラウラを受け止める。

 

「ラウラ、イクス!」

 

「アリサ、前だ!来るぞ!」

 

 アリサが俺たちの下に駆け寄ろうとしたが、ガイウスがそれを引き止めた。先ほどまで動きを止めていた人形兵器たちがまた動き出したのだ。ガイウスたちは俺たちの方に近寄らせないために必死でその軍団を引き付けている。

 

「ラウラ、気休めかもしれないけどこれを」

 

「……ああ、すまぬ」

 

 俺は腰のポーチから《ティアラの薬》と《キュリアの薬》を取り出して、ラウラに飲ませる。高位アーツをモロに食らってしまったラウラはかなりのダメージを負っただけでなく、その効果で体が痺れていた。

 

 薬を飲んだことで幾分かマシになったラウラは落ちていた大剣を拾い上げようとする。

 

「ぐっ……」

 

「大丈夫か?」

 

「……うむ、これくらいなら心配いらぬ。それにあの障壁を破るにはもう一度私が奥義を使うしかあるまい」

 

 ラウラは気丈な態度を見せてはいるが、その意志とは逆に体にはダメージが残っており、大剣を握る手も震えている。おそらくこの状態では奥義を使うのも難しい筈だ。

 

 だからといってここでラウラの回復を待つわけにもいかない。前線ではガイウスとアリサが必死に人形兵器たちを引き付けている。俺たちも早く前線に復帰しなければならないのだ。

 

 まだダメージが残っているはずの体に力を入れて、ラウラが前線に戻ろうとする。俺たちから少し離れたところではナオミちゃんとエリオットが必死にゼフィランサスとビープシーカーⅢを足止めしているのが見える。

 

(……ここで決めなきゃ“男”じゃないよな)

 

 必死になって戦うみんなの姿を見た俺は心の中で覚悟を決める。そして、前線に向かおうとするラウラを引き止めた。

 

「――ラウラ、さっきみたいにガイウスと一緒に人形兵器たちの動きを止められるか?」

 

「――どうやら、何か策があるようだな」

 

「ああ、“とっておき”のヤツがな」

 

 俺の言葉を聞いたラウラは静かに笑いながら頷く。

 

「わかった、私とガイウスでそなたの道を切り拓こう!」

 

「ああ、頼んだ!」

 

 作戦を決めた俺とラウラは再び前線に走り出した。戻ってきた俺たちを見て、ガイウスとアリサもホッとした表情を見せる。

 

「イクス、ラウラ!」

 

「無事だったか!」

 

「うむ、心配をかけた!」

 

「話は後だ!ガイウス、ラウラとさっきみたいに敵の動きを止めてくれ!アリサもフォロー頼む!」

 

 飛んでくる攻撃を避けながらガイウスとアリサは俺の指示に驚くが、すぐに頷いて準備に入る。

 

 ラウラとガイウスが前衛で敵を引きつけ、敵の動きを止めるべく隙をうかがう。その間に俺は後ろで“ある技”の準備をするために集中する。

 

 敵の弾幕が一瞬収まった隙を突いて、ラウラとガイウスが同時に技を放った。

 

「《タービュランス》!」

 

「《地裂斬》!」

 

 二人の同時攻撃によって人形兵器たちの間に一瞬だけ道ができる。近寄ってくる敵を牽制していたアリサが叫んだ。

 

「今よ!」

 

 アリサの合図を聞いた瞬間、俺は飛び出した。

 

「あれは……!」

 

「雷の翼……」

 

 俺の双剣は蒼く輝く雷を纏っていた。その雷は双剣から翼のように放出され、放出されている雷の分を合わせればラウラの大剣にも劣らないほどの剣となっている。

 

 雷の翼を広げながら、俺は今出せる最速のスピードで新型の人形兵器に突進していく。突進してくる俺に気づいた新型はラウラの時と同様、高位アーツの駆動を開始した。

 

「はああああ!」

 

 新型の前に展開されている障壁を破壊すべく、俺は雷の翼を振り下ろす。

 

 斬りおろしから斬り上げ、水平斬りと流れるように振るった雷光は三撃目でその障壁にヒビを入れた。続けざまに振られた四撃目によって、ついに硬い障壁は俺の前から姿を消す。

 

 しかし、同時に新型の攻撃の準備も整いつつあった。障壁を破った俺に新型は高位アーツを放とうとする。

 

 その刹那、俺の後ろから一本の炎を纏った矢が新型を襲った。この瞬間を待っていたアリサによる攻撃だった。

 

 アリサの援護射撃によってアーツの駆動が解除され、新型は後ろに後退しようとする。

 

「逃すかあっ!」

 

 俺の攻撃はまだ終わっていなかった。後退しようとする新型に五撃目、そして六撃目の斬り上げを喰らわせる。斬り上げの勢いとともに飛び上がった俺は、とどめの落雷のごとき七連撃目を叩き込む。

 

「《双翼雷光破》!」

 

 空から振るわれた雷光の翼はそのまま新型を真っ二つに斬り裂く。そのまま新型は爆散し、飛んでいた衛星器もその動きを止めて地に堕ちていった。

 

「やった!」

 

「ああ、これで今度こそ――!」

 

 俺が司令塔を破壊したことによって、先ほどまで完璧な連携見せていた人形兵器たちはその動きがぎこちなくなっていた。

 

 そして、この時を待っていたナオミちゃんが今までのストレスを解放するように必殺の一撃を放つ。

 

「さあ、今までの分全部返させてもらうわ!」

 

 連携を止めたゼフィランサスたちの隙を突いて、ナオミちゃんはその両拳に激しく燃える炎を纏わせる。そして次の瞬間、動きが止まった人形兵器たちに炎のラッシュをかけ始める。

 

「オラオラオラオラオラァ!」

 

 止まることのない炎の連撃に人形兵器たちは反撃することができない。ナオミちゃんはラッシュを放った後、上空に飛び上がりとどめを刺そうとする。

 

「これで終わりよ!」

 

 振り上げられた拳には今までにないほど巨大な炎が纏われていた。その巨大な炎は人形兵器たちのいる大地に向けて振り下ろされる。

 

「《バーニング・ラヴ》!」

 

 大地に放たれた炎はなぜかハート型になり、それを喰らった人形兵器たちは爆発する。ナオミちゃんが着地した時には、あれだけいた人形兵器は一つ残らず消し飛んでいた。

 

「……どうやら、やったようだな」

 

「うん、私たちの勝利だ」

 

 人形兵器が一体残らず消し飛んだことで、俺たちは全員自分たちの勝利を確信する。

 

 戦闘開始から約25分後、人形兵器たちとの戦闘は俺たちの勝利で幕を下ろした。

 

 

 




というわけで、2章のボス戦終了です!
今回出てきたオリジナルの人形兵器は《ディリゲント》という名前で、他の人形兵器を指揮する人形兵器です。
詳しい説明は次回のあとがきで書こうと思います。

そしてとうとうイクスのSクラフトが解禁されました!詳細はマテリアルの方を更新しておきますので、そちらの方でどうぞ!
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