花言葉は《拒絶》だから“人を拒む島”とかそんな感じかな?
「それでは、張り切っていきましょう!えいえいおーっ!」
「お、おー……」
「いや、わざわざこのノリに付き合わなくていいと思うぞ、エリオット」
実習2日目、ほとんど移動時間に費やした昨日とは違い今日は朝からこのブリオニア島を探索することになっている。ただ、依頼の報告をしなければならないため夕方には一度オルディスに戻る必要がある。今日の実習課題はそれまでに終えないといけないだろう。
といっても、今回の実習はこれまでのものと少し違う。
今回の実習ではオルディスの職人に頼まれた素材の回収と魔獣退治のほかに、現在俺たちと一緒に行動しながらマイペースに写真を撮り続けている女性フリーライター、モナ・エイテンドの取材の手伝いをしなければならないのである。
「あのー、そろそろ移動したいんですけど、モナさん」
「待ってください、あともう少し!あ、そこのメガネくん、ちょっとそこに立ってください!」
「え、ぼ、僕ですか?」
「ほら、早く!」
宿泊小屋近くにあった精霊信仰の祭壇と思われる遺跡の写真を撮っているモナさんにご指名されたマキアスはメガネくんという呼び方に若干ショックを受けながらモナさんのところに向かっていく。一応、昨日の内に全員自己紹介している筈なのだがこの様子だと俺たちの名前も覚えてないかもしれない。
「なんていうか、すごいマイペースだよね……」
「モナ殿か、私は見たことはないが帝国時報に記事を書くこともあるらしいな」
エリオットとラウラは祭壇近くに立つマキアスを撮るモナさんを観察していた。エリオットの言った通りまだ島を探索し始めたばかりなのだが、もうすでに祭壇で10分ほど足を止めている。取材は明日もするし今後はキリのいいところで切り上げた方が良いかもしれない。
「…………」
横にいるフィーはあくびをしながらマキアスたちを退屈そうに見ていた。その様子を見ながら、俺は昨日の夜のことを思い出す。
『フィーのこと、そなたに預けようと思う』
真剣勝負に負けた俺にラウラはフィーのことを自分に任せると言ってきたのだ。つまり、俺にフィーを見極めてほしいと。結局あのあとラウラは小屋に戻ってしまったから、半ば強制的にそれが決定してしまったし、今朝それについて話そうとしてもまるで取り合ってくれなかった。
今朝のラウラはやはりフィーとはあまり積極的に会話しようとはしていなかったが、彼女は昨日に比べればどこかスッキリしていた。勝負のことを知らないマキアスやエリオットは彼女の様子を不思議そうに見ていた。
(でもどうすれば……)
正直、俺はフィーとどうやって向き合えばいいのか迷っていた。表面的な話ならなんとか聞けそうな気もするが、俺はフィーがそう簡単になぜ猟兵団にいたのかを話してくれるとは思えなかった。
そもそも口数が少ない方だが、フィーは俺やラウラだけじゃなくⅦ組のメンバーにまだどこか壁を感じるのである。まるで、人にあまり慣れていない野生の子猫のように。
そんなことを考えているとずっと見ていた俺の視線にフィーが気づいた。
「……何?」
「え、いや、なんでもない」
「そう」
少し冷たく感じる視線に気圧された俺は思わず自分から会話のチャンスを潰す。フィーもその言葉を聞いて、またすぐにマキアスたちの方に視線を戻した。
(いやいや、ここで引き下がるな……!)
相手は自分よりも年下の少女なのだ、ここは年上である自分が積極的に動くべきだろう。自分にそう言い聞かせて俺がフィーに改めて話しかけようとする。
「や〜、すいませんお待たせしました〜」
「ここの取材は一通り終わったし、そろそろ移動しよう」
「ん、了解」
運悪くマキアスとモナさんが戻ってきてしまい、一行は次の場所に移動する。タイミングを逃した俺は仕方なくその後に続いて行った。
祭壇を移動した後、俺たちはブリオニア島を回りながら他の頼まれていた依頼もこなすことにしていた。そして今は島の中央部にあった大きな滝の横道を出た天然のプライベートビーチにいる。
砂浜はサラサラの白い砂でそこから見える太陽に照らされた海も青く透き通ってまさに隠れた絶景ポイントといったところだ。もちろん俺たちと同行しているモナさんは夢中になって写真を撮っている。
「よし、これだけあれば十分じゃないか?」
「ああ、あんまり持ちすぎても戦闘の邪魔になるしこれで大丈夫だろ」
あらかじめ持ってきていた袋に依頼されていた素材を入れる。一人が持ち歩くと重くなるため、各自で袋を持ち歩くことになっていた。
「それにしてもこの貝殻綺麗だよね〜」
「ふむ、“オーロラ貝”だったか」
「何個かお土産に持っていこうかな」
俺たちが砂浜で集めていたのは“オーロラ貝”と呼ばれるブリオニア島でしか取れない貴重な貝殻だった。その貝殻は太陽の光に当てるとその名の通りオーロラの光のように虹色に反射するため、アクセサリーなどにも用いられるらしい。この貝殻を集めてくるように依頼していた職人もこれを使って装飾品を作るそうだ。
また、他に依頼されていた素材は真っ白でスベスベした触り心地が特徴的な“シルク枝”と少し黄色がかった鉛色の鉱石である“ラズア鉱石”の二つも無事集め終わっているため後はそれぞれの素材をオルディスにいる職人に渡せば依頼完了だ。
「おやおや、みなさんも終わったみたいですね〜」
「モナさん、そっちも終わったんですか?」
「ええ、バッチリです!」
ビーチの写真を撮っていたモナさんの方も一通り撮り終わったようで、俺たちは次の場所に移動することにした。
次の場所はモナさんもこの島でも見どころの一つであるらしく、俺たちもその場所を楽しみにしながら目的地に進んだ。そして俺たちは今まで見たことのないものに遭遇する。
「大きい……!」
「これは……!」
「………(パクパク)」
「……80アージュくらいありそう」
「像自体もかなり精巧な作りだな……」
ブリオニア島の裏側にきた俺たちの目の前に現れたのは全長80アージュほどはあろうかという巨大な人型の像だった。その像は下半身と腕が岩に埋まっているかのような造りになっていて、大きさの割にかなり細かい造りになっている。
「ふっふっふっ、驚いたみたいですね。これは暗黒時代以前からこのブリオニア島にあるとされる超古代の遺物なんですよ〜!いや〜、わたしも実物を見るのは初めてですがこれは中々の迫力ですね〜」
「そんなに前からあるんだ」
「その時代にこんな像を作るは可能なのか……?」
マキアスの言った通り巨像は暗黒時代以前に作られたとは思えないほどのものだった。これほど精巧な作りの巨像は今な技術でも作るのは難しいだろう。そんなことを考えた俺は思わず呟いた。
「もしかしたら、これも女神様が作ったのかもな」
「あはは、確かにそれなら納得できるかも」
「ふふ、あながち間違いではないかもな」
俺の呟きにエリオットとラウラも冗談半分で頷く。かつて女神によってもたらされたとされるアーティファクトのようにこの像も女神が作ったと考えれば無理はない。
そんな感想を言っているとここに案内したモナさんは本来の目的である島の取材を再開する。
「ではでは早速取材をしたいので、メガネくんはわたしと一緒にあの高台に登りますよ!」
「まあ、そうなりますよね」
「なんでまた僕なんだ……」
「ドンマイ、マキアス」
そう言ってマキアスとモナさんは近くにある高台へ登っていく。やはりこのフリーライターは自分のペースを崩す気はないらしかった。
「む、あの滝は……」
「どうやらこれで島を一周したみたいだな」
あの巨像の他に道中で昔あった集落跡などを調べた俺たちは、分かれ道の目印になっていた大きな滝の前に戻ってきていた。俺たちが通ったルートと別のルートは同じく島の裏側まで繋がっていたようだ。
「そういえば、例の手配魔獣って川沿いにいることが多いんだよね?」
「確かそうだったはずだ」
「じゃあ、案外ここの近くにいるかも」
今日の実習課題のもう一つの依頼が魔獣退治だった。依頼に書かれてあった内容によれば、その魔獣はこのブリオニア島に生息する貴重な魚などを好んで食べる上にその捕食量もとんでもなく多いらしい。このままでは貴重な種が食い尽くされてしまう恐れがあるため、俺たちに退治を依頼したそうだ。
俺たちの前にある滝の下には川が流れている。フィーが言ったように手配魔獣もこの川に潜んでいる確率は高いだろう。
「わ、わたしは上で見守っているので魔獣退治はみなさんにお任せしますね〜……」
「いや、最初から期待はしてないですから」
「そもそも島の取材をするのに僕たちを護衛にするくらいだからな」
案の定、モナさんは魔獣との戦闘は遠くで観戦するようだった。というかこの人、俺たちが来なかったらどうやって取材するつもりだったのだろうか。
そんなモナさんは放って俺たちは早速川岸に降りる。川の水深はかなり深いようで底までは見通せなかった。
「しかしどうするのだ、イクス。水の中にいるのでは戦いようがないぞ」
「それもそうだよね……」
ラウラの指摘通り川に魔獣が潜んでいては水中で息ができない俺たちでは戦えない。だが、俺にはある考えがあった。
「そのために“これ”を用意してきたんだよ」
そう言って俺は背負っていた細長いケースを取り出す。
「そういえば今朝から持ち歩いているが、一体そのケースの中身はなんなんだ?」
「小屋から出てくる前に用意してたみたいだけど……」
「もしや、そなた……」
「……ふーん、なるほどね」
ケースを見たマキアスやエリオットは中身が分かっていないようだったが、ラウラとフィーは俺の狙いに気づいたようだ。わざわざ出し惜しみをする必要もないため、俺は早速その“秘策”をケースから取り出した。
「え、それって……」
「“釣竿”か……?」
俺が取り出したのは“釣竿”だった。実は昨日、宿泊小屋で偶然見つけたためこれを今朝用意していたのだ。
「川にいるってことはその魔獣は魚型とかだろ。だったらこいつで釣り上げて陸に上げれば俺たちでも楽に倒せると思ったんだ」
「それはそうかもしれないけど……」
「正直、不安だな」
まあ、俺も釣りをするのは初めてだが前にリィンにコツは聞いているからなんとかなるだろう。みんなは不安そうな表情だが、俺はそれに構わず釣り餌を針に付けて糸を垂らした。
「まあ、イクスは放っておいて僕たちで何か良い案を考えよう」
「うーん、一旦魔獣を川岸におびき寄せるとか?」
「うむ、それが無難だな」
「じゃ、その線でいこう」
(こいつら……!)
俺が糸を垂らしている場所から少し離れたところですでに他のメンバーは次の作戦会議に移っている。もはや俺のことはあてにしていないらしい。というか、ラウラとフィーに関しては普通に会話している気がするんだが……
俺のことをまるで信頼していない面々に多少の怒りを覚えていると、俺の持っている竿が急激にしなり始めた。
「うおっ!?」
「どうした、イクス!」
「まさか本当にかかったの!?」
俺の持っている竿は折れんばかりの勢いで水中に引っ張られていた。俺も負けじと踏ん張り続けるが、その力は予想以上に強く逆に俺の方が川に引っ張られていく。
「まずい……!」
「我らも助太刀するぞ!」
流石に俺だけでは引っ張りあげられないと判断したラウラたちは俺のもとに駆け寄り、そのまま俺の腰を掴んで一緒に引っ張る。それにマキアスたちも続いて五人でそのバケモノを釣り上げようと格闘する。
「お、重い……!」
「でも、あともうちょっとだ」
「みんな、俺の掛け声に合わせて同時に引っ張ってくれ!」
「承知!」
「了解……!」
このままでは竿や糸の方が持ちそうにないため俺は賭けに出る。そして糸がこちら側に緩んだ瞬間、俺は全員に合図した。
「今だ、せーのっ!!」
賭けはどうやら俺たちの勝ちのようでザパーンという水飛沫を上げて竿が持ち上がった。勢い誤って俺たちは全員後ろに倒れる。
「いたた……」
「僕たちは一体何を釣り上げたん、だ……!?」
マキアスは眼鏡についた水を拭きながら釣り上げた“ソレ”を見る。そこにいたのは俺たちの予想していないものだった。
「これは……」
「巨大な、カエル……」
俺たちが釣り上げたのは魚でも海老や蟹でもなかった。俺たちの少し離れた場所に佇むのは青々としたぬめりけのある肌の巨大なカエル型の魔獣だった。そして、ソレを見た俺はあることを思い出す。
「なあ、カエルって両生類だよな……」
「うむ、ということは……」
「陸でも息ができる……!?」
「ゲロオオオ!」
俺たちがそれに気づいたのを分かったのか、カエル型魔獣は大きな鳴き声を上げてこちらに向かってきた。倒れていた俺たちは慌てて飛び起き、すぐに戦闘体勢に入る。
「チッ、行くぞラウラ!」
「承知した!」
まずは後衛であるエリオットとマキアスの攻撃準備を整えるために俺とラウラがリンクを繋いで先行する。本当ならここでスピードが速いフィーと俺で先行して敵を撹乱するのが一番いいのだが、俺は敢えてそれを避けた。
「ゲロッ!」
突っ込んでくる俺とラウラに反応したカエル魔獣は長い舌を出して攻撃してきた。そのスピードは弾丸のように速く、俺とラウラは二手に分かれて回避する。
「シッ」
その隙にカエル魔獣に近づいていたフィーは双銃剣で斬りかかる。だが、カエル魔獣はそのぬめりけが凄まじくフィーの斬撃を通さなかった。
「みんな、そいつ火属性の攻撃が弱点みたい!」
「く、僕は火属性のアーツをセットしていないぞ!」
後方で敵の解析をしていたエリオットから指示が届く。この魔獣は火属性のアーツが弱点のようで、最悪なことにこの中でアーツが得意なエリオットとマキアスの二人は火属性のクオーツをセットしていなかった。
「仕方ない、私がアーツを詠唱する!イクスはフィーとリンクを!」
「っ!わかった!」
唯一火属性のクオーツをつけているラウラが一旦下がってアーツの詠唱に入る。彼女は俺と同じくアーツが苦手なため、威力もそうだが駆動にも多少の時間がかかる。それまでは俺とフィーで前線を支えなければならない。
「フィー!」
「了解……!」
ラウラの指示を聞いていたフィーは俺とリンクを繋ぐ。だが、そのつながりはラウラやほかのメンバーの時よりも弱弱しく、今にも途切れそうになっていた。
「喰らえ、《ブレイクショット》!」
「ARCUS駆動……!」
その俺たちをフォローすべくマキアスは後方から射撃を、エリオットはラウラとともにアーツの駆動に入っていた。
「ゲロオオッ!?」
マキアスの銃弾を喰らったカエル魔獣はその衝撃で一瞬怯む。その隙を俺とフィーは逃さなかった。
「《クリアランス》!」
刃では傷つけられないと分かったフィーは銃弾によって敵に追撃を加える。その攻撃に魔獣が気をとられているうちに俺は身体を目一杯引きしぼる。
「《嵐霆斬》!」
俺の双剣から放たれた雷撃は激しく唸りながら魔獣にぶつかる。電撃は効くようでカエル魔獣は俺の攻撃で若干痺れたようだ。
しかし、俺の雷撃が襲ったのは魔獣だけではなかった。
「ッ!」
「フィー!?」
俺の放った《嵐霆斬》は近くにいたフィーにも襲いかかってしまっていた。本来ならリンクを繋いでいる相手にも攻撃の範囲やタイミングはある程度分かるはずなのだが、俺とフィーのリンクが弱いせいかフィーは俺の攻撃範囲を見誤ってしまったらしい。
間一髪のところでフィーは俺の攻撃を避けたみたいだったが、これでは連携して技を使うのは難しい。
こうなったら“自分一人で”やつの動きを止めるしか……
その考えが一瞬頭によぎった瞬間、俺とフィーの間に恐れていたことが起きてしまう。
「え……!」
「あ……」
《リンクブレイク》――以前マキアスとユーシスも起こしたという互いのリンクが断絶する現象。
それまで弱々しくても互いの思考が繋がっていた感覚が一瞬で消えた。初めて経験する現象に俺とフィーの動きが僅かの時間止まってしまう。
「イクス、危ない!」
「な……!?」
マキアスの注意が飛んだ時にはもう遅かった。痺れから回復していた魔獣はその長い舌で俺の足を搦めとる。咄嗟に動けなかった俺は足から持ち上げられ、そのまま水面に叩きつけられた。
「がぼっ!」
勢いよく叩きつけられた俺はその衝撃で一瞬意識が飛ぶ。反射的に口を開けてしまった俺の口には空気の代わりに大量の水が流れ込んできた。
「ぶはっ!」
自分で上がる前に足に絡みついた舌が俺を勢いよく水中から出す。必死に空気を取り込もうとする俺をカエル魔獣は近くの岩壁にぶつけた。
「がっ!?ゲホッゲホッ!」
「イクス!」
無理矢理水中から引き上げられた俺は岩壁にぶつけられた衝撃で、飲み込んでいた水を出して空気を取り込もうとする。息をするのに必死で俺はすぐに動けなかった。
このままではさらに追撃がくる。息を荒げながらそれを考えて無理矢理動こうとしたが、その心配はなかった。
「《ファイアボルト》!」
ラウラが準備していたアーツが魔獣に命中する。やはり火属性が苦手なようで、魔獣は苦しそうな鳴き声をあげながら仰け反った。
「くっ、これでどうだ!」
「ふっ……!」
それに続いてマキアスとフィーも銃弾を撃ち込んでいく。斬撃よりは多少効果はあるため、魔獣にいくつか銃弾が突き刺さっていった。だが、それでも致命傷には至らない。厚い皮膚の下にある肉を斬らなければとどめをさせない。
アーツを打ち終わったラウラも攻撃の体勢に入ろうとしたが、エリオットが用意していたアーツが先だった。
「お願い、《デモンサイズ》!」
エリオットから放たれた大きな鎌は回転してから魔獣にその刃を突き立てる。そこで奇跡が起きる。
「ゲエエエ……!」
エリオットの放った時属性のアーツ《デモンサイズ》は稀に敵を即死させる効果がある。今回は運良く魔獣の心臓にその刃が届いたようで、カエル魔獣は力なく叫んでから消滅した。
「あ、やった……!?」
「運良くエリオットのアーツが効いたみたいだな」
敵をあっさりと倒してしまったことで撃った本人であるエリオットも少し困惑していた。魔獣の消滅を確認した俺はすでに息も整っていたため、立ち上がってみんなのところに行く。
「だ、大丈夫か、イクス?」
「ああ、なんとか」
「よ、よかったよ。僕もまさか倒せるとは思ってなかったから」
「ふむ、それよりも……」
「…………」
俺の無事を確認したラウラは俺とフィーの方を見やる。フィーの表情はいつもの無表情だったが、どこか落ち込んでいるように見えた。
「その、悪かったな、フィー」
「ん、多分こっちにも問題があった」
俺もフィーもリンクブレイクしたのは自分に非があると互いに謝る。俺が不覚を取ったのは間違いなくリンクブレイクが原因だ。そしてそれを引き起こしてしまったのも、あの瞬間俺がフィーをないがしろにするようなことを考えたからだろう。
俺とフィーがまた気まずい空気になるのを避けようとしたのかエリオットは話題を変えた。
「こ、これで手配魔獣の退治は終わったよね」
「あ、ああ。とにかく依頼は一通り終わったんだし、一度オルディスに報告に行かないか?」
「……うむ、そうだな。二人もそれで良いな?」
「……ああ」
「……問題ない」
「よし、それでは行こう」
ラウラを先頭にして俺たちは一度上にいるモナさんと合流するために川を離れる。俺はフィーを先に行かせて最後尾を歩く。
先ほどまで気にならなかった水流の音がやけに煩かった。