英雄伝説 花の軌跡   作:阿賀美 アクト

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第36話 See through the truth

 

 

 

 

「んむ……」

 

 重い瞼をゆっくりと持ち上げる。瞼が上がっていくと同時に俺の視界は暗闇から少し明るめの茶色に変わり、自分が目を覚ましたということをようやく自覚した。

 

「くぁ……」

 

 まだ布団にくるまっていたいという欲望になんとか打ち勝ち、掛け布団をよけて体をむくりと起き上げた。しかし、俺の脳はまだ覚醒していないのか瞼は半分から上に上がらず、間抜けにも大きく口を開けて欠伸をする。

 

 大きな欠伸をしたことで寝起きの体に空気が送り込まれた俺はここでようやく視覚以外の五感が機能し始めた。窓際のベッドで寝ていたため俺のすぐ側にはカーテンに閉ざされた窓がある。カーテンの隙間からは光が漏れ、外からは名前も知らない鳥たちが一日の始まりを告げていた。

 

 意識が6割方回復したことで俺は目を覚ました瞬間に飛び込んできた茶色の正体も理解する。つい先程まで俺の寝ていたベッドほトリスタにある第三学生寮の自室のベッドではなく、実習地であるブリオニア島の宿泊小屋にあるものだ。俺が見た茶色はこの宿泊小屋の天井の色というわけだ。

 

 その証拠に窓の反対側では規則正しく5つの寝息が聞こえている。俺はベッドから起き上がりカーテンを開けた。

 

「みんな、朝だぞ!」

 

「ん〜……」

 

「まぶしい……」

 

 カーテンを開けた途端、薄暗かった部屋の中に大量の朝日が流れ込んだ。その眩しさと俺の声に反応して5つのベッドにある布団はもぞもぞと動きそこから眠そうな声が聞こえ始めた。

 

「ほら、起きろって。今日は朝から行動する予定なんだから」

 

「うぅ〜ん……」

 

「メガネはどこだ……?」

 

「眠いですぅ〜……」

 

 ここで声をかけるのを止めれば確実に睡魔に負ける者がいるため、俺は一人一人のベッドに赴いて声をかけていく。やや強引に意識を覚醒させられた者たちはのそのそとベッドから起きていった。

 

「フィー、朝だぞ」

 

「ん……あと1時間だけ……」

 

「ダメだっつの」

 

 そしておそらく一番の難敵であるフィーに声をかけながらその体を揺する。やはり俺の見立て通り寝起きの悪いフィーはあと1時間だけという常識よりもはるかに多い睡眠時間を要求してから再び布団をかぶって二度寝に入ろうとした。当然俺はそれを許さず無理矢理布団を剥ぎ取った。

 

「……イクス、ふとん返して」

 

「返したらまた寝るだろ。ほら、起きた起きた」

 

「いじわる」

 

 布団を奪われたフィーは諦めてベッドから出る。寝る子は育つとは言うが彼女の場合は日頃から十分過ぎるほどの睡眠時間を取っているため実習の時くらいは早起きしても構わないだろう。

 

 再び窓の方に振り返ると差し込んだ朝日が俺の視界を一瞬支配する。その眩しさに目が慣れてから窓を開けて空気を入れ替えた。この宿泊小屋は比較的海に近い、そのため窓「開けた瞬間に爽やかな潮風が吹き込み俺の髪を揺らした。

 

「良い朝だな」

 

「ああ」

 

 窓から流れてくる風を感じたラウラが俺の隣で窓から見える水平線を眺めていた。先程まで眠そうだったラウラもすっかり目が覚めたらしくいつもの凛とした表情になっている。

 

 実習3日目の天気は雲ひとつない快晴であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨夜の俺とフィーの勝負を通して俺とフィーだけでなくラウラとフィーの関係も改善していた。いや、ラウラとフィーに関して言えば微妙な感じになる前よりもその距離は縮まったように思える。今朝の朝食もラウラの提案ねラウラとフィーの二人で用意してくれたほどだ。

 

「ナイス、ラウラ」

 

「うむ、フィーも見事であった」

 

 そして現在も魔獣との戦闘を終了させてからお互いに誉めあってハイタッチをしている。戦闘自体も全員が戦術リンクを問題なく使えるようになったことでスムーズに敵を殲滅できていた。

 

「やれやれ、昨日までギクシャクしていたのが嘘のようだな」

 

「そうだね。ラウラとフィーもそうだけど、イクスも本調子に戻ったみたいだし」

 

「おう、絶好調だ」

 

 二人の微笑ましい姿を見て俺もホッとする。俺もエリオットとマキアスには色々と気を遣わせていたためこの二人にも大分心配をかけさせていた。今までの戦闘では二人に負担をかけてしまっていた分どんどん挽回しなければ。

 

「さぁ、魔獣も倒したことですし、この調子でどんどん進みましょう!」

 

「全く、この人は……」

 

「あはは、今回も後ろにいただけなのにね」

 

「正直、調子良すぎ」

 

 戦闘中、後ろの岩陰に隠れていたモナさんは戦闘が終わった途端に岩陰から出てきて、そのまま俺たちの前をずんずんと進んでいく。今日もまた島の取材をするとのことで相変わらず彼女は戦闘を俺たちに任せて自分の取材に没頭していた。

 

 この人のフリーダムさに今更ツッコむのも面倒なので俺を含めたB班は先行するモナさんの後を追っていく。

 

(確か今ので20体目だからこれで依頼の方は終わりだな)

 

 先行していくメンバーの後ろを歩きながら俺は一人依頼が終了したことを確認していた。

 

 今日の実習での依頼は一件だけでその内容は島に増えすぎている魔獣の討伐だった。先ほどの戦闘で倒したのがちょうど目標の20体目であるため、モナさんの取材の手伝いを除けば本日の実習課題は全て終了したということになる。

 

 が、実はまだもう一つこ島でやるべき事が残っている。

 

 それは昨日オルディスの街でラウラたちが依頼された導力ボートの捜索だ。この島にあるかどうかは分からないが人為的にロープが切られて沖に流されていない事が分かっている以上オルディスから近いこの島にある確率が高い。

 

(けど、ボートらしきものは船着場にもビーチにもなかった……)

 

 島を昨日のように見て回っているが、舟の着きそうなところに導力ボートらしきものはなく未だに何の手がかりも掴めていない。やはりこの島には導力ボートは流れ着いていないのだろうか。

 

「……い、おい、イクス」

 

「え、あ、どうしたラウラ?」

 

「どうした、ではない。そなたが集団から離れていたから呼びかけていたのだ」

 

「ああ、悪い。ちょっと考え事してた」

 

 どうやら俺は思考の海に沈んでしまっていたらしく、気づけば集団から遅れていた。それに気づいたラウラが声をかけてくれていたようだ。

 

「いったい何を考え込んでいたのだ?」

 

「いや、導力ボートは本当にこの島にあるのかなぁ、と」

 

「ふむ、確かに舟が着けそうな所はあらかた探したからな。そなたの言う通りその可能性もあり得るか」

 

 俺とラウラは先行しているマキアスたちに追いつくために少し早歩きで先ほどまで考えていたボートのことについて話していた。俺の意見を聞いたラウラもボートがこの島にはないという可能性があるということを考え始める。

 

「そうなると導力ボートはどこに消えたのだろうな」

 

「そんなんだよなぁ……オルディスの近くにはブリオニア島以外の島は無いし、オルディスの方に流れ着いているならもうとっくに見つかっていてもおかしくないし……」

 

「うん、失くなってから今日で一週間は経つそうだから見つかっていてもおかしくない頃合いだろうな」

 

 ラウラたちから聞いた話だとボートの持ち主は失くなった次の日に領邦軍へ捜索届を出しているようだから流石に一週間も探せば見つかっていてもおかしくない頃合いなのだ。オルディスの方で一向に見つからないということは、やはり他のどこかにあると考えた方が自然なのである。

 

 この可能性だけは考えたくはないが、最悪の場合は沖から更に流されて捜索ができない場所までボートが流されてしまった場合である。そうなってしまっては俺たちでは探しようもないためその時は諦めるしかない。

 

 一応その方向性も考えておくべきかなぁと考えながら歩いていると、俺とラウラはいつの間にか先行していたマキアスたちに追いついていた。

 

「あ、イクスとラウラ」

 

「追いついたんだね」

 

「全く、集団行動なんだから遅れずに歩きたまえ」

 

「悪い悪い」

 

 軽く謝ってから周囲を見回す。今はあの巨像がある島の反対側まで歩いてきたようだ。

 

「それで、歩きながら何を話していたんだ?」

 

「ああ。さっきもラウラと話していたんだけど、もしかしたらこの島には依頼されていたボートは無い可能性も考えないといけないかなぁ、と」

 

「確かにまだ見つかってないしね……」

 

「今いる島の裏側は崖になってるし、舟の着ける所はもうないと思う」

 

「崖の下は潮の流れが強いようだから、舟を止めるというのも無理であろうな」

 

 島の裏側は船着場がある正面と違って高い崖になっている。その下の海も海流が強いためボートのような小型船を止めておくのはとてもじゃないが不可能だろう。仮に止められたとしてもそこから島に上陸するのはかなりのリスクがある。

 

「今のところ俺たち以外に誰かがいるような形跡も見つかっていないし、もう一度島を調べたら切り上げてオルディスに報告しに行った方がいいかもな」

 

「ん、そだね」

 

「まあ、仕方ないか……」

 

 今回の実習は行き同様に帰りも長い時間列車に乗って帰らなければならないため、最低でも夕方にはオルディス駅で列車に乗る必要がある。他の依頼の報告などもあるためあまりこの島に長居するわけにもいかなかった。

 

「みなさーん、今日はこの洞窟も調べてみたいのですがー!」

 

「あ、はい。今行きます!」

 

 俺たちが今後の方針を話し合っていると近くで写真を撮っていたはずのモナさんは、いつの間にか俺たちから離れたところで手を振っていた。今日は昨日詳しく取材していなかった洞窟の方も一通り見るらしい。

 

 俺たちは一旦話を終了してモナさんが指差している洞窟の前に向かう。昨日は島の表側にあった洞窟を少し見ただけだったが、裏側の洞窟を見るのは初めてだった。

 

「やっぱりこの洞窟も明るいんだね」

 

「うん、中も昨日入ったところとあんまり変わらないね」

 

「たしか、《ヒカリゴケ》だったか、イクス?」

 

「ああ、でもここにあるヒカリゴケは多分通常のよりも明るいんだと思う」

 

「さすが、植物には詳しいな」

 

「や〜、ここまで明るいと写真が撮りやすいので私としても助かりますね〜」

 

 洞窟の中はライトを付けていないにもかかわらず先が見通せるほど明るかった。どうやらこの洞窟には暗闇でエメラルド色に光るという珍しい特徴を持つコケ植物である《ヒカリゴケ》が生えているらしく、しかもここに生えているのは通常のものよりも明るく光る種のようだ。

 

 青緑色に照らされる少しじめっとした洞窟内を進んでいると一番前を歩いていたフィーは不意に足を止めた。

 

「…………」

 

「あれ、どうしたのフィー?」

 

「何かに気づいたようだが……」

 

「ま、まさか魔獣ですか!?」

 

 足を止めたフィーに一同がその理由を問うがフィーはそれに答えずに何か探っているようだ。モナさんは魔獣に怯えているようだがそのような気配は感じない。いったいフィーは何を感じ取ったのだろうか。

 

「……ん、間違いない。あそこから風が漏れてる」

 

「え?」

 

「本当か?」

 

 フィーが感じ取ったのはどうやら風の流れのようだった。不自然な風の流れを感じ取ったフィーはその場所に走り寄る。俺たちもそのあとを追った。

 

「確かに僅かだがこの奥から風が来ているな」

 

「この岩の隙間からってこと?」

 

「うん。しかもこの岩、誰かに動かされた跡がある」

 

 フィーの言った通り岩の下には何かを引きずった跡が少し残っていた、それもまだ新しい。ということはつまりこの先には道が続いていて、俺たち以外の何者かがそれを隠すためにこの岩を動かしたというわけだ。

 

「よし。マキアス、エリオット、ちょっと手伝ってくれ」

 

「ああ、わかった」

 

「お、重そうだなぁ……」

 

「それじゃ、行くぞ。せーのっ!」

 

 俺はマキアスとエリオットの力も借りてその岩を動かした。俺たちが力一杯その岩を押すとズズズッという音を立てながら岩は元の場所からズレていき、そして予想通りその場所には奥へと続く道が隠されていた。

 

「どうやら読み通りだったようだな」

 

「お〜、良いですねぇ!秘密の通路発見って感じです〜!」

 

 隠されていた道が拓けたことでモナさんはテンションが上がっていた。しかし俺は彼女のように浮かれることはなくみんなに注意を促す。

 

「わざわざ隠されていたってことはこの先には“何か”があるってことだ。もしかしたら危険な人物や魔獣がこの奥にいる可能性もある。みんな、くれぐれも気をつけてくれ」

 

「了解。注意して行こう」

 

「………(ゴクリ)」

 

 俺たちは今一度装備を確認してからその先に進んでいった。

 

 隠されていた道は先ほどの洞窟よりも薄暗く先もかなり長いようだった。しかもこの道は下方向に繋がっているようで道が斜めに傾いている。

 薄暗い道を注意しながら進んでいると俺はあることに気づいた。

 

「あれ……?」

 

「どうしたんだ、イクス?」

 

「……いや、この奥から潮の匂いがしないか?」

 

「確かに、言われてみれば……」

 

 洞窟内には時折風が吹いてきていたがその風は進むごとにただの風ではなく潮の香りが強くなっていた。そのことに気づいた俺は少し進むスピードを早めてぐんぐんと洞窟の奥に進んで行く。潮の香りはどんどん強くなっていき、波の音が聞こえ始める。歩き始めて10分ほどで俺たちはそこにたどり着いた。

 

「これは……!」

 

「海蝕洞になっていたのか……!」

 

 俺たちが通って来た道はのは海へとつながっていた。もともと海蝕洞だったところが更に削られて俺たちが通って来た道と繋がっていたらしい。奥には海も見えるということはここは島の裏側にある崖下ということだろう。

 

「あ、見てあれ!」

 

「導力ボート……!」

 

「なるほど、道理で見つからないわけだ」

 

 そして海蝕洞の奥には一隻の導力ボートが止められていた。俺たちは近寄ってそれを確かめてみると、それは間違いなく捜索を依頼されていたボートだった。

 

「でも、ボートがこんなところにあるってことは……」

 

「……みたいだね」

 

 この海蝕洞の先の海は波が荒い。とてもじゃないが流されて来たボートが自然にこんなところに収まったというのは考えにくい。これが意味するのはただ一つであった。

 

 

「――ああ、間違いない。この島には俺たち以外の“何者”かがいる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何も無い、か……」

 

「さっきみたいに洞窟が隠れている感じも無さそうだしね……」

 

「…………」

 

 海蝕洞でボートを発見した後、俺たちはもう一度島を徹底的に捜索することにしていた。しかし、今のところどんなに探しても人がいたような痕跡は見つかっておらず、いたずらに時間だけが過ぎていた。

 

 俺たちが今いるのは島の中央部にある大きな滝の裏側だった。何か道らしきものがあるかもしれないと踏んだのだが、やはりここにも何も無く行き止まりだった。

 

「くそっ、一体どこにいるんだ……!」

 

「島はもう全て探したはずだが……」

 

 何も手がかりが掴めずに時間だけが過ぎていくことで、俺たちは徐々に焦りを感じ始めていた。島の細かいところまで探しているのに何も見つからない。このままでは夕方になってしまい、俺たちもこの島を去らねばならなくなる。

 

 俺たちが色々と考えている中、同行者であるモナさんはこの状況でもマイペースだった。

 

「おおー、滝の裏というのも良いものですね〜」

 

(本当、マイペースだなこの人は……)

 

 相変わらず取材を続行するモナさんを見ていると、なんだか真面目に考えている自分が馬鹿みたいに感じる。写真を撮り続けるモナさんを見ていると、俺は彼女の側にあったあるものに気がついた。

 

「そういえば、またあの石碑みたいなのが置いてあるな」

 

「……ん?ああ、そういえばそうだな」

 

「これ、なんなんだろうね?」

 

「ふむ、精霊信仰の名残りだとは思うが……」

 

 俺が気づいたのは小さな石碑のようなものだった。ラウラが言うにはおそらく精霊信仰の名残りであるらしい。今までもこの島のいくつかのところでこれがあったが、一体何の為にあるのだろうか。

 

 気分を変える為に近寄って見てみるが、やはり何も分からなかった。俺たちがその石碑らしきものを観察していると滝の写真を撮っていたモナさんも近寄ってくる。

 

「あ、わたしにも見せてもらえますか〜?」

 

「ええ、良いですよ」

 

「どうもありがとうございます。どれどれ〜?」

 

 全員が並ぶのには少し狭かったため、マキアスがモナさんに場所を譲った。そして、写真を撮ろうとするモナさんがその石碑に近づくと驚くべきことが起きる。

 

「ええっ!?」

 

「光った……!?」

 

 モナさんがしゃがみこもうとした瞬間にその石碑の中心にある紋章がひとりでに輝きだしたのである。

 

「え、わ、私は何もしてないですよ〜!?」

 

 突然のことに驚いた表情を見せるモナさんの方を見ると俺は彼女の異変に気づいた。

 

「あ!モナさん、そのペンダント!」

 

「え?」

 

「石碑と反応してる……?」

 

 石碑が急に輝きだしたのはモナさんの首から下げられているペンダントが原因のようだった。しかもそのペンダントは俺とモナさんが昨日の夜に訪れた骨董品店で彼女が買っていたペンダントであった。

 

 そのペンダントは石碑の放つ光と共鳴するかのように同じ色の光を出している。それに気づいた俺はあることを思いついた。

 

「もしかしたら、この石碑は何かを封印しておく為のものなのか……?」

 

「いや、流石にそれはベタすぎるんじゃないか……?」

 

「でも、あながち間違いじゃないかも」

 

「なぜそのペンダントと反応しているのかはわからないが、この石碑が光だしたのに意味が無いということはあるまい」

 

 ラウラの言った通りなぜペンダントと石碑が反応したのかはわからないが、意味なく反応したというのは考えにくいだろう。今は何か一つでも手がかりが欲しいところだ。正直、俺も半信半疑だがその可能性に賭けてみる。

 

「よし、もう一度島を回ってこの石碑と同じものを探そう。島にある全てのものが光れば何かが起こるかもしれない」

 

「うむ、そうと決まれば“善は急げ”だな」

 

「あ、ちょっと待ってくださいよみなさ〜ん!」

 

 残された時間もそこまで余裕があるわけではないため、俺たちは急いで島にある石碑を探した。

 

 そして読み通りモナさんのペンダントと他の石碑も同じく反応するようで次々とそれを光らせていき、洞窟にあった最後の一つにペンダントを近づけた。

 

「これでどうだ……!」

 

「な、何も起こらないぞ……?」

 

「まだ見つけてないものがあるとか?」

 

「いや、それはあるまい」

 

「ん、島は全部見たからもう無いと思う」

 

 最後の石碑を光らせてから数秒の間何も起こる気配が無くやはり違ったのかと若干諦めていると、突如大きな地響きが鳴り同時に島が揺れ始める。

 

「な、何だ……!?」

 

「地震……!?」

 

「ひええぇ〜!?」

 

「いや、これは……!」

 

「遠くで何か聞こえる……?」

 

「この方向は、あの祭壇の方角か……?」

 

 マキアスとエリオットやモナさんは地震に驚いていたが、俺やラウラやフィーはこれが自然現象では無いことに気づいていた。これは地震ではなく、何か大きなものが地下から地上に出てくるときの振動だ。

 

 揺れが収まると同時に光っていた石碑は光が消える。やはり今のでこの島に何かが起きたようだ。

 

「みんな、音のした方向に急ぐぞ!」

 

「了解!」

 

「え、ちょ、ちょっと!?」

 

「お、置いていかないでくださ〜い!」

 

 音が聞こえた祭壇の方へ急ぐ。今のところ島自体には何も変化は無いようだが、祭壇の方に何かがあるのは間違いない。息を切らせながらその場所にたどり着くと、そこには驚くべきものがあった。

 

「これは、遺跡……!?」

 

「えええっ、なにこれ!?こんなのさっき島を見てた時には無かったよね!?」

 

「あ、ああ。こんなものを見落とすわけはないからな……」

 

「だが、これは一体……?」

 

「ただの遺跡じゃなさそうだね」

 

「……はっ。写真、写真!!」

 

 俺たちの目の前にあったのは見覚えのない遺跡のようなものだった。もちろん祭壇にはこんなものは無かったし、俺たちが見逃したというのもありえない。これは“今”ここに現れたということだ。

 

 だが、これで一つの希望が見つかった。

 

「おそらくだが、この遺跡の中にボートを盗んだ犯人もいるはずだ」

 

「うん、間違いあるまい」

 

「ここに隠れていたなら私 わたしたちにも見つからないはずだしね」

 

 この遺跡の中に潜んでいたのだとすれば俺たちが気づくことはないだろう。何が目的かはわからないが犯人がここに潜伏している可能性は高い。

 

「みんな、準備ができたらこの遺跡に入ろう。何が起きるかわからないから最大限に注意してくれ」

 

 俺たちは突如現れたこの遺跡を調べることを決意する。

 

 俺はARCUSの確認などをしながら目の前に立つ遺跡を見る。遺跡の神秘的な雰囲気の中に何か不気味な気配を感じた。

 

 

 

 

 

 

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