英雄伝説 花の軌跡   作:阿賀美 アクト

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いよいよ、今回の実習のボス戦です!閃Ⅰの時には出てこないはずのアイツがイクスたちB班の前に立ちはだかります!





第37話 陽に眠る巨兵

 周囲の気配に注意を払いながら奥に進んでいく。壁にある灯はそこまで多くないはずなのに、まるで日の光が届いているかのように不思議と明るかった。だが、ここは窓や入り口以外の扉はないため実際には日の光など届くはずはない。どちらかといえばこの遺跡自体が光を出している感じだ。

 

「……いったい何なんだ、ここは?」

 

「今のところ魔獣の気配は感じないが……」

 

 あまりにも異様な雰囲気に黙って進んでいたマキアスが口を開きラウラもそれに続いた。この遺跡に入ってから一度も魔獣には遭遇はしていないしそれ以外の気配も感じない。かといって遺跡内に何か目立つものがあるわけでもないため、それが逆に俺たちの不安を煽っていた。

 

「う〜ん、この感じだと暗黒時代かそれ以前に造られたものかもしれないですね〜」

 

「そうなんですか?」

 

「ええ、古代に造られたとされる遺跡は帝国にもいくつかあります。この遺跡の造形もそれらに少し似ているんですよ」

 

 さすが色々な場所を取材しているだけあってモナさんはこの遺跡の造られた年代がある程度分かるらしい。正直、この人を遺跡内に連れてくるかどうか迷ったが彼女にとってもこの遺跡は取材するにはうってつけの場所なのだろう。

 

 その解説を聞いていた俺はこの遺跡を何処かで見たことがあるような気がしていた。この壁の材質といい所々にある模様に見覚えがあるのだ。

 

 一体どこで見たのかと自分の記憶を探っていると、ふとフィーが呟く。

 

「なんかここ旧校舎に似てるかも」

 

「あ、それだ」

 

「言われてみれば……」

 

 フィーの言葉を聞いてこの既視感の正体がわかった。この遺跡の雰囲気はあの“旧校舎地下”の雰囲気に似ているのだ。建物の材質や意匠などもそうだが何より遺跡内に流れる不思議な空気感がどことなく似ている。

 

 ヴァンダイク学院長の話ではあの旧校舎もかなり古くからあった建物であるから何らかの関係があってもおかしくない。

 

「旧校舎……そんなものがあるんですね!是非そのお話も詳しく聞かせて――」

 

「――いや、その話は後になりそうです」

 

 モナさんが俺たちの話に出てきた旧校舎に反応したが、俺はその言葉の先を遮った。どうやら今はその説明をしている暇はなさそうだ。

 

「この扉は……」

 

「いかにもって感じだな……」

 

 歩いていた俺たちの目の前には仰々しいほど大きな扉が俺たちの前に立ちはだかっていた。周囲には他の通路らしきものも確認できない。ここがあの旧校舎に何か関係があるのならこの先には何かしらの魔物などがいる可能性もある。

 

 そして、俺は先ほどから嫌な胸騒ぎが止まらなかった。理由は自分でもよくわからないが、この先に進んではいけないともう一人の自分が心の中で叫んでいる。手にはじっとりと汗が滲み喉もカラカラに渇いていた。

 

「総員、戦闘準備。いつでも戦えるようにしておいてくれ」

 

「承知した」

 

「ま、万が一の時は後ろで応援してますね〜……」

 

 騒ぐ心を振り切って全員に声をかける。自分以外の誰かが後ろにいることを確認して少しだけ安心した。

 

 全員の準備を確認してから先頭に立つ自分が扉に触れる。材質は石のはずなのに不思議と暖かく柔らかいような気がした。思い切って扉を開けようとすると、扉は俺が力を入れようとする前に一人でに両脇にスライドしていった。

 

 重い音を響かせながらスライドしていく扉の向こうに広がっていたのは比較的天井の高い空間であった。そしてその奥にいる先客が俺たちを待っていた。

 

 

「――なんや、どうせ来るんならもうちょっと遅れた方が面白かったんやけどなぁ」

 

 

「あんたは……!」

 

 

 俺たちを待っていたのは鮮やかな青の着物に身を包み妖艶な笑みを浮かべる女性だった。そして俺はこの人物と一度遭遇したことがある。先月のセントアークでの実習中に出会った女性だ。

 

「イクス、知り合いなの?」

 

「まあな。先月の実習の時にちょっと知り合った程度だけど」

 

「なるほど、そなたやアリサが会ったという東方風の出で立ちの女性であったか」

 

「着物とは珍しい!一枚撮っておきましょうか!」

 

「ふふ、覚えててくれて光栄やわぁ」

 

 こんな状況でも相変わらずモナさんは写真を撮っていたが、それよりも俺たちは女性とその傍にある“ナニカ”の方に気を取られていた。

 

「あんたが導力ボートを盗んだ犯人だな。そしてこんな場所で何をしていた。隣にある“それ”についても話してもらおうか」

 

「隣にあるものは一体何なんだ?人型のように見えるが……」

 

「まさか、あの《人形兵器》とか……?」

 

 俺たちが探していた導力ボートは洞窟の奥にあった海蝕洞に止めてあった。この島には俺たち以外に人は上陸していないはずであるため、こんな場所に隠れていた彼女が犯人というのはほぼ確実である。

 

 だが、それよりも気になっていたのは彼女の隣にある大きな人型の物体だった。今は座り込んでいるようだが、起き上がればかなりの大きさであると推測される。エリオットは結社の操る人形兵器の一種なのかと予想しているようだが、俺はどうにも“それ”が人形兵器とは違う何か別のようなものの気がした。

 

 俺たちはそれぞれ武器を構えながらその女性をいつでも拘束できるように威圧しているのだが、女性は赤い傘以外その手に一切の武器を持たないというのにその表情は余裕そのものだった。

 

「ボートは盗んだわけやないで、ちゃんと用が済んだら返すつもりやったさかい。まあ、ちょっと借りただけや」

 

「借りただと……?」

 

「無言で持ち去っている以上、完全に窃盗だと思うけど」

 

「そうだよね……」

 

「なんや、厳しいなぁ」

 

 女性はクスクスと笑いながら余裕を崩さない。フィーの言ったようにアレを借りたというのは無理があるが、それよりも聞きたいことがある。

 

「ボートのことは置いとくとして、その“用”っていうのは一体何だ?隣にあるものと関係あるのか?」

 

「そやで。ま、コレが何なのかは実際に見た方がええやろ」

 

「何……?」

 

 俺の問いにあっさりと答えた女性は小さく笑ってから手を振りかざした。そしてその手から何処からともなく現れた一匹の青い蝶が放たれる。

 

 一体何をと思ったその時、女性の手から放たれた蝶はひらひらと飛んでいき隣にあった“ナニカ”に止まった。

 

「っ!?」

 

「な、何だ!?」

 

「この気配は……!」

 

 ドクン、と力強い鼓動が俺たちの耳に届く。先ほどまで生気を感じなかった“それ”には明らかに異様な威圧感を放ち始めている。大きな人型のそれは永い眠りから目覚めたかのようにゆっくりとその両脚で巨体を持ち上げていく。

 

「お、大きい……!?」

 

「7、いや8アージュはあるんじゃないか!?」

 

 立ち上がった巨人の大きさに俺たちは驚く。巨人の片手にはラウラの大剣よりも大きいサーベルが握られており、その巨大な武器も相まって尋常じゃないプレッシャーを放っていた。

 

 

『Wooooo!』

 

 

「ひいいいい〜〜!?」

 

「くっ……!」

 

 立ち上がった巨人は完全に覚醒し大きな叫び声を上げる。その音は遺跡を震わせ、自らの圧倒的な力を誇示する。後ろにいたモナさんはその恐怖に負けて扉の方まで後退していった。

 

「ま、本調子とはいかないやろうけど十分に強いはずやで。うちを愉しませるためにも、せいぜい気張りや」

 

 巨人の隣にいたはずの女性はいつの間にかさらに奥のところに避難していた。このまま彼女を放っておきたくはないが、今は目の前に立つ巨人の方が最優先だ。

 

「戦術リンクON!最大限連携してコイツを撃破するぞ!!」

 

「了解!」

 

『Aaaaaa!』

 

 俺の合図にB班のメンバーだけでなく巨人も反応する。そのプレッシャーに負けないよう自分自身に喝を入れ、戦闘を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『Gaaaaaaa!』

 

「ラウラ!」

 

「承知!」

 

 戦闘が開始されると同時に巨人がその大剣を振り下ろした。そのスピードはかなり速く俺たち全員が避け切るのは難しい。瞬時にそれを判断した俺とラウラはリンクを繋いでその攻撃の迎撃に入る。

 

(重っ……!?)

 

 振り下ろされた大剣は予想以上に重く、俺だけでなくラウラでさえ巨人の圧倒的な力に押されそうになる。目の前に迫る剣を跳ね返すべくタイミングを合わせて渾身の力で剣を振り上げた。

 

「あああっ!」

 

「やあああっ!」

 

 二人掛かりで跳ね返された巨人の大剣は勢いよく巨人の顔あたりまで押し返され、巨人は大きくノックバックした。巨人の表情は変わらないはずだが、紫に光る双眸には驚きの色が見えるような気がする。

 

「《クリアランス》!」

 

「《ブレイクショット》!」

 

 そしてその隙にフィーとマキアスによって巨人の体躯に銃弾が撃ち込まれた。体が大きいせいで撃ち込まれた銃弾は全てヒットし、巨人の体にいくつもの風穴を開ける――はずだった。

 

 

「な……!?」

 

 

「効いてない、だと……!?」

 

 

 風穴はおろか巨人の体には殆どダメージはなかった。威力のあるマキアスのショットガンの一撃でさえもその体に少し傷をつけた程度だ。

 

 

「だったらこれなら――!」

 

 

 間髪入れずにエリオットの追撃が加わる。彼が放ったのは水属性の中級アーツ《ハイドロカノン》エリオットが最も得意とする水属性のアーツで今使える最大の威力だ。

 

 物理攻撃が効きにくいのであればアーツが効く可能性が高い。わずかな駆動時間でこれほどのアーツを放ったエリオットは普通ならかなりのファインプレーのはずなのだが、その目論見すら外れてしまう。

 

 

「嘘……!?」

 

 

「アーツも効かぬというのか……!」

 

 

 確実に直撃したはずのエリオットのアーツは巨人にはあまりダメージを与えられていなかった。巨人は連続攻撃の衝撃で少し動きが止まった程度でそもそも防御の姿勢すら取ろうとはしていなかったのである。

 

 そのあまりの強靭さに驚く俺たちに巨人は容赦なく次の攻撃体勢に入った。

 

 

『Wooooo!』

 

 

「退避!!」

 

 

 今度は大剣を縦に振り下ろすのではなく地にいる俺たちを刈り取るように横薙ぎに振り払った。剣を振りかざした瞬間に俺たちは一斉に散らばってその攻撃をなんとか回避する。しかし、その衝撃は凄まじく振った時の剣風は突風となって俺たちを吹き飛ばし、剣が当たった場所は石の床が抉り取られていた。

 

 吹き飛ばされた俺は空中で体勢を立て直して着地する。巨人はバラバラに散らばった俺たちを一斉に攻撃する術を持っていなかったようで、狙いを俺に定めて突進してきた。

 

 俺は敢えてそれを待たずに巨人に向かって全速力で走り出した。両者の距離はみるみると縮まり、遂にその大剣が振り下ろされる。

 

 

(今だ――!)

 

 

 剣が振り下ろされた瞬間に俺は助走を活かして全力で上に跳び上がった。刃は俺の目の前を通り過ぎて行き、何もないところに振り下ろされる。そして振り下ろされた大剣に着地してそれを駆け上がった。

 

 

「《烈風刃》!」

 

 

 駆け上がってから再びジャンプして俺は巨人の胸あたりまで到着し、その勢いから攻撃を仕掛ける。風を纏った俺の双剣は巨人の体に吸い込まれるようにヒットするが、やはりその体は硬く少し傷がついた程度だ。

 

 攻撃を受けた巨人は空中にいる俺に対し剣を握っていない方の腕で俺に殴りかかった。が、それが届く前に巨人の背後から力強い一撃が加えられた。

 

 

「《鉄砕刃》!」

 

 

 俺とほぼ同時に次の行動に移っていたラウラから巨人の背に一撃が加えられ、ダメージはやはりそれほど多くはなかったがその衝撃で巨人は俺への攻撃を中止した。そして俺が落下していると俺の後ろから小さな影が現れる。

 

 

「やっ」

 

「って、フィー!?」

 

 

 俺の後ろから来ていたのはフィーだった。そして彼女は驚くべきことに空中にいた俺を踏み台にしてさらに上空へ飛んでいく。そして踏み台にされた俺は逆に落下速度が上昇した。

 

 その身軽さを活かして高く跳び上がったフィーは俺を踏み台にしたことで巨人の頭のところまで到達していた。しかし、彼女の武器ではたとえ頭部を攻撃してもあまりダメージは与えられないはずだ。一体どうするというのか。

 

「これでよし」

 

 そのまま頭部にしがみついたフィーは攻撃するのではなく、何かを取り出して巨人の頭部に取り付けた。

 

『Aaaa!』

 

 頭にとりつかれたのが鬱陶しかったのか巨人は俺とラウラを無視して頭部にいるフィーを捕まえようと手を伸ばす。だがそう簡単にフィーが捕まるわけもなく巨人が手を伸ばそうとした瞬間にフィーは頭部から飛び降りていた。

 

 

「――イグニッション」

 

 

『Aaaaaa!?』

 

 

 フィーが取り付けていたのは小型の爆弾だった。フィーによって起動された爆弾は巨人の頭部だけでなく運悪く伸ばしていた片手を巻き込んで爆発する。爆煙の中からは再び巨人の頭部と腕が姿を現したが、そのどちらも多少のダメージを負っていた。

 

「あ、あれでもダメなのか……!?」

 

「凄まじく硬いな……」

 

「けど、確実にダメージは負っているはずだ……!」

 

 確かにダメージは蓄積されているはずだ。だが、巨人は少し怯む程度でその様子もまだまだ余裕さが見える。このまま根気強くダメージを与えていけばいつかは、と思った俺たちを嘲笑うかのように巨人は驚きの行動に出る。

 

 

『Wooooo!』

 

 

「傷が……!」

 

 

「治っていく……!?」

 

 

 巨人は覚醒した時のように大きく叫ぶと腰や関節部分にある紫色の球体が怪しく光り始め、巨人の負っていた傷がみるみるうちに回復していったのだ。

 

 

(くそ、これじゃあキリが無い……)

 

 

 俺たちが苦労して与えたダメージがこうもあっさりと回復されてしまっては俺たちがいくら攻撃を繰り返しても無駄だということになる。このまま続けても俺たちの方が体力を消耗するだけだ。

 

 

「解析完了!みんな、そいつの弱点は腰のところにある“核”の部分だよ!」

 

 

 そんな時、離れたところで敵の解析をしていたエリオットから有力な情報が届く。一瞬無敵だと思われた巨人にも弱点はあったようでわずかに勝機が見えた。

 

 エリオットからの情報を聞いた俺たちは再び動き出す。俺は弱点である核を狙ってジャンプしようとしたが、巨人の動きは予想以上のものだった。

 振り下ろされた剣のスピードは先ほどよりも速度が上がっていた。まさか先程の咆哮には傷を回復するだけでなく自身の機能を上昇させる効果もあったというのか。

 

 予想以上のスピードで迫って来た剣を俺はジャンプするのをやめてそれを受け流そうとする。その破壊力は凄まじく、俺はかろうじてその攻撃の直撃は避けたが衝撃で飛ばされてしまう。

 

『Aaaaaa!』

 

「ぐあっ!」

 

「っ!」

 

 俺の攻撃と同時に動いていたラウラにも気づいていた巨人はもう片方の腕をラウラの方へ振り回して彼女を壁まで飛ばす。その際に近くにいたフィーも巻き込まれた。

 

「うわあああっ!?」

 

 一人取り残されたマキアスは巨人にターゲットにされてしまい、必死に走ってその攻撃を避け続ける。

 

「イクス!」

 

「エリオット、俺はいいからラウラたちの回復を!」

 

「うん!」

 

 着地した俺のもとに近くにいたエリオットが近づいてきたが、俺はそれを引き止めて彼を壁に激突したラウラたちの回復に向かわせた。腰のポーチから回復薬を取り出して一気に口に流し込み、すぐさまマキアスの救援に向かう。

 

 

(一か八かやるしかない……!)

 

 

 俺に背を向けている巨人の核をめがけて俺はダッシュしながら自らの双剣に激しい雷を纏わせていく。その蒼雷は翼のように広がり唸り声を上げる。

 

「はあああっ!!」

 

 巨人の腰部分を狙って俺は高く跳ぶ。今出せる最高の攻撃である《双翼雷光破》を叩き込めれば一撃で勝負を決められる。

 

 だが、その距離が残り数アージュとなったところで巨人は背後の俺に気づいた。そしてその大剣を回転斬りの要領で振り回す。

 

「ぐうっ!」

 

 俺の双剣と巨人の大剣がぶつかる。空中では踏ん張りがきかないため俺の渾身の一撃でさえその大剣は容易に吹き飛ばした。

 

「《ブレイクショット》!」

 

 俺の攻撃は失敗に終わったが、マキアスがその隙に巨人に銃弾を撃ち込む。だが、やはり威力が足りないようでその攻撃も核に当たったものの巨人にとどめを刺すには至らなかった。

 

 そして俺は着地した後もすぐに動く。巨人は体勢を崩した俺に容赦なく追撃をしてきていたためその攻撃を転がりながら避けた。

 

 

(考えろ、どうすれば奴に決定的な隙が生まれる……!?)

 

 

 エリオットの回復が終わったラウラとフィーたちも再び前線に戻って攻撃を再開していた。だが、その攻撃も巨人を倒す決定打には程遠く俺たちの体力だけが消耗されていく。

 

 現状、奴の弱点である核を確実に破壊できるのは俺しかいない。ラウラの奥義は地上での踏ん張りが重要であるため空中では発動できない。フィーの大技もどちらかといえば広範囲に攻撃するのに重きを置いている技であるため一撃で決めるのにはやや火力不足だ。

 

 奴の攻撃を受け止めてノックバックさせるには俺とラウラが同時に剣を受ける必要があるため、やはり他の方法でないと奴に決定打は与えられない。

 

「イクス!」

 

「マキアス、どうした?」

 

「いや、何か作戦はあるのかと思ってね!」

 

「残念ながら今のところは何も!せめて奴を最初みたいにノックバックさせられればいいんだが……」

 

「ノックバックか……」

 

 駆け寄って来たマキアスと走りながら作戦を考える。どうやら彼もまだいい作戦は思いついていないらしい。

 

(こうなったら、もう一度ラウラと俺で隙をつくってフィーたちに決めてもらうしか……)

 

 走りながらでは脳に酸素があまり送られず、考えがまとまらない。俺は自らの攻撃でとどめを刺すのを諦めてマキアスたちに指示を出そうとした。

 

 

「――イクス、隙を作れれば決めてくれるんだな!」

 

 

「え、ああ。何か策があるのか?」

 

 

「ああ、任せてくれ!君は確実に決められるよう集中するんだ!」

 

 

 俺の横を走っていたマキアスは何か思いついたようでそのメガネをキラリと光らせてラウラたちの方へ走っていく。俺は彼の邪魔をさせないために攻撃しようとしていた巨人を自分に引きつけた。

 

「エリオット、フィー!少しの間僕がアーツを駆動する時間を稼いでくれ!」

 

「う、うん!」

 

「了解!」

 

 マキアスの指示でエリオットとフィーが動き出す。マキアスはラウラに何か言った後、アーツの駆動に入った。

 

「《ハイドロカノン》!」

 

「いくよ」

 

 エリオットのアーツとフィーの銃撃によるコンビネーションが巨人の注意を引く。すばしっこいフィーはそのスピードを全開にして巨人の攻撃を一身に引き受けて避け続けていた。

 

 俺も彼女たちの援護に向かいたいが、今はマキアスを信じていつでも攻撃ができるように集中する。そして二度目のエリオットのアーツがぶつけられた時、マキアスの指示がフィーに飛んだ。

 

「よし、フィー!そのまま僕の方に来てくれ!」

 

 マキアスはなぜか巨人を自らの方へおびき寄せるようフィーに指示した。しかもマキアスとラウラの位置は普段とは真逆でマキアスが前に、そしてラウラが後ろに控えている。

 

 

『Woooooo!』

 

 

 マキアスに巨人の大剣が迫る。あと数秒で直撃するというところでマキアスのアーツが発動した。

 

 

「《アダマスシールド》!」

 

 

 マキアスが使ったアーツは攻撃系のアーツではなく地属性の防御アーツ《アダマスシールド》だった。マキアスの前に土色の障壁が展開され大剣と衝突する。

 

 いくら物理防御系のアーツで最高位の《アダマスシールド》でも巨人の大剣を受け止めるのにはかなり厳しいと思われた。が、マキアスのアダマスシールドはしっかりと巨人の一撃を受け止め、加えて放たれた第二撃をも防ぐ。

 

 一体どうしてここまで強度が高いのかと考えようとした時、俺はマキアスのマスタークオーツの特性について思い出した。

 

 彼のマスタークオーツは《アイアン》使用者の防御を強化する特性を持つマスタークオーツだ。マキアスのアダマスシールドはその加護を受けているため巨人の一撃を余裕で耐えられるほどの強度になっているのだ。

 

 だが、その盾も流石に無敵というわけではなくとうとう限界が訪れる。三撃目でその盾には亀裂が走り今にも砕けそうになる。そして破壊される寸前にマキアスはラウラに合図した。

 

「今だ、ラウラ!」

 

「任せるが良い!」

 

 後ろで気を高めていたラウラがマキアスの後ろから一気に飛び出し、盾を破って迫り来る大剣に向かっていく。

 

 

「《奥義・洸刃乱舞》!」

 

 

 地上でしっかりと踏ん張りが効くためラウラの奥義は存分にその力を発揮し、大剣を弾き返して巨人を大きくノックバックさせた。

 

 それを見た瞬間、俺はマキアスの指示を待たずに飛び出す。

 

「いけ、イクス!」

 

 もう一度俺の双剣が蒼く輝き、無防備になっている腰のあたりをめがけて跳んでいった。

 

 跳躍の勢いもつけた初撃目に続いて素早く四度、雷の斬撃を加えていく。

 

 

『Woooo!?』

 

 

 六撃目を放とうとしたところでノックバックしていた巨人が俺を堕とそうと剣を振りかざそうとした。が、ある人物がそれを許さなかった。

 

 

「――甘いよ」

 

 

 フィーは先ほどの攻撃の隙にもう一度爆弾を頭部に取り付けていたようで突如巨人の頭部が爆発した。俺に向けて振り下ろされるはずだった剣も止まり、俺はこの戦いに決着をつける。

 

 

「いっけえぇーーー!!」

 

 

 雷の翼が巨人の核に突き刺さる。確実にそれを破壊すべく俺は剣を深くまで押し込んだ。

 

 

『Aaaaaa――!』

 

 

 苦しそうな叫び声を上げながら巨人の核は紫色に光る。そしてその光が最高潮に達し、核とともに巨人も爆散していく。

 

「あでっ!」

 

 攻撃に全意識を集中していた俺は着地が疎かになり、変な声を上げて地面に落ちる。

 

「全く、締まらないな」

 

「あはは。でもこれで……」

 

「うん、我らの勝利だろう」

 

「V、だね」

 

 先ほどまで苦しい表情だった全員の顔には笑顔が浮かんでいる。一度はどうなることかと思ったが、全員の力を合わせたことで俺たちはかつてない強敵を撃破することに成功したのだった。

 

 

 

 

 

 




というわけで《魔煌兵》とのバトルでした。いよいよ次回で3章も終了します。
なんとか閃Ⅳ発売前に4章に入れそうですね。
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