祝!閃Ⅳ発売!(2日遅れ)
とうとう閃Ⅳが発売されましたね!自分も徹夜しながら絶賛プレイ中です!(眠い)
そんな閃Ⅳの攻略をしていたこともあって更新が遅れました。すいません。
――アリサ!!
自分の叫び声が頭の中でこだまする。自分でも驚くほど大きな声が出たようでその叫び声が2、3回は反響したような気がした。
アリサを吹き飛ばした巨人は壁に座り込んでいるアリサのもとへ向かっていく。あと三秒もすればその腕に握られたブレードがアリサを襲うだろう。
一秒。
巨人がアリサに迫る。ぶつかった衝撃で気を失いかけているのかアリサはその場所から動くことができない様子だ。
――動け!
巨人の攻撃を阻止しようと自分の身体に指示を出す。
――『いいや、もう間に合わない』
悪魔が囁く。良く知っているはずの自分の声に似た“それ”は、アリサを助けに向かおうとする自分を嘲笑うかのように話しかけてきた。その声を聞いた自分は動くのを止めてその場に一瞬停止した。
二秒。
振り下ろされた巨人の剣の動きが馬鹿に遅く見える。それと同時に止まっていた自分の横を二つの人影が通り過ぎていったが、そのスピードでは巨人の攻撃を阻止するには至らない。
似たような光景を自分は知っている。吹雪の中、魔獣に襲われる幼い自分とエリゼ。二人に魔獣の巨腕が振り下ろされようとした瞬間、自分の意識が飛んで気がついたら手に鉈を持った自分がその魔獣を殺していた。
それを思い出すと同時に頭の中で様々な光景がフラッシュバックしていく。入学式の日に偶然出会って、その後旧校舎でアクシデントがあった。その後なんとか仲直りして実習を乗り越えた。ノルドの実習の夜には星空の下で彼女を励ますつもりが自分も彼女に励まされていた。
その彼女に刻一刻と剣が迫っている。あと一秒もしないうちに彼女は“死ぬ”。自分の中でも掛け替えのない仲間になっている彼女の笑顔がもう見られなくなる。
――『誰のせいだ?』
決まっている、自分のせいだ。自分がエリゼを心配させるような手紙を送らなければ、自分がエリゼを怒らせるようなことを言わなければ。自分がその罰を受けるのはいい、だけどその罰をアリサが受ける必要なんてどこにも無い筈だ。
――『なら、どうスル?』
どうする?当然だ、アイツを倒せばいい。アリサを殺そうとしている奴を自分が“殺せば”良い。
――コロス 『コロス』
自分の声が悪魔と重なる。視界は緋く染まって、身体についていたリミッターが次々と外されていくような感覚。
三秒。
目の前に迫っていた巨大な剣を弾き返す。自分の意識も次第に闇に呑まれていく。
「オオオオオオッ!」
溢れ出す闇が自分の意識を喰らう。溢れ出すものを吐き出すかのように虚空に向かって咆哮した。
そして意識か消える中、最後に自分の名前を呼ぶ声が聞こえたような気がした。
「何だよ、これ……」
目の前に広がる光景を見たイクスは思わず呟く。先程までアリサの救援に向かおうとしていた彼の足は止まっていた。それは同じ行動を取ろうとしていたクロウも同様である。
イクスたちの前にいたのは“嵐”だった。
イクスたちの数倍の大きさはあろうかという全高7アージュ程の《魔煌兵》。それは以前イクス達《Ⅶ組》B班がブリオニア島で戦った時のものと同個体ではあるが、以前とは違い《魔煌兵オルトヘイム》は完全な状態で起動していた。
だが、その状態の魔煌兵にその“嵐”はたった一人で立ち向かっていた。いや、むしろ魔煌兵を圧倒してさえもいる。
魔煌兵の攻撃を物ともせず縦横無尽に駆けながら、次々と強烈な剣撃を浴びせていく。その髪は元の色とは正反対の銀色に近い白に染まり目も血のような緋色、動き回るその体からはとても“ヒト”のものとは思えない赤黒い気が流れている。
文字通り全てを壊そうとする暴風の正体は、他でもない同じ剣士でありイクスの親しい友人であるはずのリィン・シュバルツァーだった。
あの時―――旧校舎地下に現れた魔煌兵に吹き飛ばされてしまったアリサをイクスとクロウか助けようとした瞬間、彼らの横を通り抜けて魔煌兵の攻撃を阻止したリィンはイクスがこれまで見たことのない姿になっていた。
変化していたのは姿だけでなくその強さも尋常でないものに変化していた。イクスも苦戦した魔煌兵を単騎で圧倒できる程のパワーとスピード、その強さはとても同じ人間のものとは思えず彼はむしろ獣のそれに近いものではないのかと感じていた。
「オオオオオオッ!!」
リィンが吼える。あの痣があった胸のあたりを手で抑えながら獣の叫び声に近い咆哮をあげている。しかしその声は同時に苦しそうにもがいているようにも聞こえる。
「――い!おい!しっかりしろ、イクス!」
「――あ、クロウ先輩……」
イクスがリィンではるはずの者を見ていると、彼は自分に呼びかけるクロウの声に気づいた。
「呆けてんじゃねえ!さっさと“アレ”をどうにかするぞ!」
「! ――はい!了解です!」
クロウの言葉でイクスは瞬時に己がなすべきことを思い出した。今自分がやらなくてはならないのは倒れているアリサと物陰に隠れているエリゼ「戦闘き巻き込まれないように退避させること。そして彼の目の前で“暴走”しているリィンを元に戻すことだった。
正常な状態に戻ったイクスはその場にいる者たちに指示を出す。
「クロウ先輩はあのデカブツを止めておいて下さい!その間に俺がリィンを何とかします!」
「おうよ!」
クロウの実力をトワから少し聞いていたイクスは、彼の実力を信じて一旦魔煌兵の相手を任せる。その間に彼は暴走するリィンを元に戻すという作戦を採った。
「それとマシロとパトリックはアリサとエリゼちゃんの避難を――」
「――いいえ、それならパトリックさんだけで十分よ」
「へ―――」
イクスがアリサとエリゼの救出をマシロとパトリックに頼もうとしたが、その指示は彼の隣にいたマシロの言葉に遮られる。
「クロウさんだけでアレを止めておくのは大変でしょう?私も手助けするわ」
そう言うマシロの手には彼女の得物である《細剣》が握られていた。文武両道を体現するような人物である彼女は剣の腕も士官学院の生徒達が涙目になるほどの実力の持ち主であり、細剣を構える姿も様になっている。
そのマシロの実力をイクスも当然良く知ってはいたものの、彼には一つ懸念があった。
「な、何言ってんだ!いくらお前でもARCUSが無いんじゃ――」
そう、彼とクロウは得物の他に最新鋭の戦術オーブメントである《ARCUS》を所持していた。ARCUSには様々な導力魔法が使えるという利点の他にセットされているマスタークオーツによって所持者の身体能力などを向上させる効果がある。
イクス達《Ⅶ組》が普段、強力な魔獣を難なく倒しているのもマスタークオーツの恩恵があってこその話であり、そのARCUSを持っていないはずのマシロでは魔獣よりも強力な魔煌兵との戦闘などほぼ不可能なのである。
が、そんなイクスの心配はマシロの一言で解決されてしまった。
「――大丈夫よ、私も持ってるから」
「………は?」
止めようとするイクスにニッコリと笑いながらマシロはそれを見せる。彼女が持っていたのは正真正銘イクスやクロウの持っているものと同じ《ARCUS》だった。
「いや、何でお前が持ってるんだよ!?」
「ちょっとしたツテでね。これを持っているんだし、文句は無いでしょう?」
ARCUSはその性質上、未だ量産体制が整っていない戦術オーブメントだ。所持しているのはその試験運用を任されている《Ⅶ組》とその先輩に当たるクロウ達、そしてナオミなどの遊撃士といった限られた者にしか行き渡っていないはずのものだった。
しかし何故か、そのどれでもない聖アストライア女学院に通っているマシロがARCUSを持っていた。イクスは彼女の言う“ツテ”が気になりはしたものの、今は緊急時であるためそんなことを聞いている時間は無い。
「だあもう!分かったよ!じゃあ、マシロはクロウ先輩とデカブツの相手を、二人の救出は任せたぞ、パトリック!」
「ふふん♪了解!」
「ったく、とんでもねぇお嬢さんみてぇだな」
「え、ちょ、待ちたまえ!?」
イクスは半ばヤケクソになりながらそれぞれに指示を出す。イクスの指示を聞いたマシロとクロウは魔煌兵のもとに向かっていき、イクスもリィンの方へと走り出す。勝手にアリサとエリゼの救出を一任されたパトリックは少しの間動揺したが、もうどうにでもなれと自分に任された役目を果たすべく動き出した。
「滅ビヨ……!」
イクスは今もなお赤黒いオーラを出しながら放出しながら魔煌兵を相手取るリィンの方に向かっていた。
(ああクソ、イライラする……!)
ギリっと奥歯を噛みしめる。リィンのもとに走るイクスの心中は穏やかではなかった。
彼の怒りはリィンに対してでもマシロやクロウに対するものでも無かった。彼が怒っていたのは他ならぬ自分自身だった。
イクスはクロウに声をかけられるまで暴走するリィンをただ見ているだけだった。リィンに呼びかけるわけでもクロウ達に指示を出すのでもなく、ただ暴風の如く暴れ回るリィンを見ていたのだ。
夕方にリィンがある事件がきっかけで剣の道を志すことになったという話を本人から聞いていた彼は、その事件というのが今リィンの中で暴走している力と関係があるのだということなのだろうと感じていた。そしてそのずっと抑え込んでいた力がアリサのピンチと共に目覚めてしまったことも。
そんなリィンを真っ先に止めにかからなければならないのは、同じⅦ組で過ごす仲間である自分自身のはずなのだ。それをクロウに言われるまで気づかなかった自分自身の未熟さがどうしようもなく腹立たしかったのである。
そんな自身への怒りをぶつけるかのようにイクスは魔煌兵に向かおうとするリィンに剣を向けた。
「はあああっ!」
「グッ……!?」
イクスは自らの大技である《双翼雷光破》をリィンにぶつける。突然己に迫ってきたイクスに気づいたリィンは、その視線を魔煌兵からイクスに移した。
青白く輝くイクスの双剣と黒焔のように禍々しい気を放つリィンの太刀が交錯する。暴走すらリィンの力は凄まじく、攻撃を仕掛けたイクスの方が逆に押し負けそうになった。しかし、イクスはその力を受け流す形で大技の真髄である七連撃に移行する。
青き雷と黒き焔が数回ぶつかり合い、その度に衝撃波が起こる。そして技の最後である七撃目がリィンに放たれた。
「いい加減、目ぇ覚ましやがれ!」
「ガアッ……!?」
一切の手加減も無しで放たれた一撃は、暴走するリィンに強い衝撃を与えてその意識を一瞬だけ奪う。
「グ……ガア……あ……!」
わずかではあったもののリィンの意識が一瞬戻った。そこからリィンは自らの胸の痣のあたりを苦しそうに抑えながら呻き始める。するとリィンの禍々しいオーラがおもむろに弱くなっていき、白く染まっていた髪や赤い目も元の色に戻り始めた。
「ぐ、あ……俺は……」
「はあ……はあ……やっと戻ったか」
完全に自我を取り戻したらしいリィンを見てイクスは一安心する。多少荒療治だったかもしれないが、攻撃を受けたリィンにも目立った外傷は無いため結果オーライといった所だろう。
「イクス……?……そうか、俺は――」
「反省会は後だ!今はあのデカブツを片付けるぞ!」
「……っ!ああ、そうだな!」
リィンには自分がどうなっていたかの記憶があるらしく、暴走していた自分を止めてくれたイクスに謝ろうとする。しかし、イクスがそれを遮り、リィンも自分が今やるべきことを思い直してイクスとともに魔煌兵の方に走り出した。
『Aaaaa……』
「マシロ、クロウ先輩!」
「おう、戻ったか!」
「リィンさんも無事みたいですね」
「ああ、迷惑をかけた!」
イクスとリィンは魔煌兵の相手をしていたマシロとクロウと合流する。イクスと元にに戻ったリィンを見た二人の顔にも安堵の笑みが浮かんだ。そして先程までのリィンの攻撃とマシロ達の攻撃によって、魔煌兵はかなりダメージを受けたようでその場に膝をついている。
「よっしゃ!お前らも協力してコイツにとどめを――」
「――いや、まだです!」
振り返ったクロウがリィンとイクスにとどめを刺すのを手伝うように言おうとした瞬間、リィンが膝をついている魔煌兵の異変にいち早く気づく。倒れる直前かと思われた魔煌兵オルトヘイムはその体から黒い瘴気を放ち始め、再び力を取り戻して咆哮をあげながら立ち上がった。
『Wooooooo!!』
「な……!?」
「コイツ、腕が……!」
立ち上がった魔煌兵オルトヘイムには更なる変化が生じていた。今まではイクス達と同じく二本の腕を持っていたが、その腕は四本に増え全ての腕に巨大な剣が握られている。力を失う寸前だったはずの双眸には紫色の光が強く灯っており、自らの足下にいる四人を睨みつけていた。
「お、おい!こっちはもう大丈夫だから、存分に戦いたまえ!」
「パトリック……!」
再び立ち上がって魔煌兵に怯んでいたリィン達に後方から声がかけられる。その声の主はイクスがアリサとエリゼの救出を頼んでいたパトリックのものであり、彼はリィン達からかなり離れた場所にいる。彼の側には気絶しているアリサと彼女に声をかけているエリゼの姿があった。
「――戦術リンクON!みんな、最大限に連携してこの巨人を倒すぞ!」
「おう、任せときな!」
「ようやく調子が戻ってきたな……!」
「ふふ、それじゃあ行きましょうか!」
あれだけ離れた場所であれば、戦闘の余波の心配は必要ない。思いがけない人物に励まされる形になったリィンは自分に喝を入れ直してイクスたちに号令をかける。
いつもの調子に戻ったリィンの号令にイクスも頷き、再び魔煌兵との戦闘が再開された。
「マシロ!」
イクスの鋭い叫びが階層内に響き渡る。イクスの合図とほぼ同時に動き出していたマシロは敵の攻撃を掻い潜り軽やかな身のこなしで魔煌兵の頭部のあたりまでジャンプした。
「やあああ!」
空中に飛び上がったマシロの細剣は眩い閃光を放ち、そのまま魔煌兵の左目に突き刺さった。マシロの得意技である《ラピッドスター》の衝撃と眩しさで魔煌兵は視界を半分奪われたらしく、一瞬その動きを止めた。
「そらよ!」
悶絶する魔煌兵に今度はクロウの攻撃が命中する。彼の両手に握られた二丁の導力拳銃から何発もの弾丸が発射され、銃弾は全て魔煌兵の胴体あたりに吸い込まれるように当たる。そしてその攻撃の嵐はまだ止むことはない。
「《紅葉斬り》!」
「《烈風刃》!」
四本の腕から繰り出される攻撃を避けながら魔煌兵に近づいていたリィンとイクスが同時に攻撃を放った。流れるような連携に魔煌兵は対処が遅れ、二人の攻撃もモロに受けてダメージを負う。
「やっぱり硬いな、コイツ」
「ああ、でも押してるのは俺たちだ」
再び動き始めようとした魔煌兵から一度距離を取りながらリィンとイクスが話す。
戦闘が再開されてから約5分しか経っていなかったが、クロウとマシロの協力もあってリィンたちはかなり順調に戦況を進めていた。魔煌兵は確かにパワーアップしていたものの、リィン達の与えていたダメージが消えてしまった訳ではないらしく、その動きにも少しだけ隙がある。それを見切ることさえできれば決して敵わない敵ではなかった。
(それにしても、クロウ先輩はともかくマシロさんもとんでもないな)
魔煌兵の攻撃を避けるべく一旦イクスと離れたリィンは、後方に飛びながらイクスの近くにいるマシロの方に目を向けていた。
リィン達が強敵である魔煌兵とここまで有利に戦えているのは入学時よりも確実にレベルアップしていることもあったが、それ以上にリィンとイクス以外の二人の助っ人の力が大きかった。
クロウはさすがに自分たち《Ⅶ組》の先輩として色々な修羅場を潜り抜けているだけあり、二丁拳銃と時折アーツも織り交ぜながら遊撃をしている。普段はふざけているような印象が強いがやる時はやる人物のようで、リィンもその強さを再確認していた。
そしてクロウ以上に驚きだったのがイクスの幼馴染であるマシロであった。
彼女が色んな意味で凄い人物だということはイクスから少しだけ聞いてはいたものの、リィンは彼女の戦闘能力の高さに驚きを隠せない。流れるような剣捌きに加えて軽やかな身のこなし、そして近接攻撃だけではなく前衛であるリィンとイクスが前に出ている時はアーツも使いながら二人を補助することもある。
そして彼女の加入によって何よりも大きかったのはイクスとの連携能力の高さだった。戦術リンクを繋ぐのが初めてであるはずの二人は、まるでずっと前からそれを使いこなしてきたかのような完璧な連携を見せていた。
マシロとの連携によってイクスの戦闘力も普段より引き上げられ、それも相まってパーティ全体の戦闘力を向上させていたのである。
「はああっ!」
「やあっ!」
『Gaaaaa!』
イクスとマシロは完璧に息の合った連携で魔煌兵の攻撃を避けながら近寄り、同時攻撃を仕掛ける。敏捷力の高い二人の動きに魔煌兵は翻弄され、その四つの剣を地面に虚しくぶつけた。
「そら、コイツはオマケだ!」
イクスとマシロが魔煌兵から離れたところを見計らって、クロウが事前に用意していた水属性の上級アーツ《クリスタルフラッド》を発動する。クロウの前方から直線状に地面が凍り始め、広がっていく氷が魔煌兵の足元にも届く。そして氷が一斉に砕けて魔煌兵にダメージを与え、追加効果によって魔煌兵の足下から下半身が凍った。
「よし……!」
下半身が凍ったことによって魔煌兵の動きが完全に停止し、リィンはここが勝機だと確信する。イクスから以前聞いた話によれば魔煌兵は自身の体力を回復させることができるため、決めれる時に一斉に攻撃を仕掛けた方が良い。
そしてそれはリィンとリンクで繋がっていたクロウにもその思考が伝わり、近くにいたイクス達もここが勝機だと分かっていたようだった。
「女神よ、私たちに大いなる豊穣の力を……!」
「これは……!」
「おっ!」
「力が溢れてくる……!」
リィン達が動こうとする前に少し後ろにいたマシロからリィン達に力が与えられる。
《グレイスフィールド》――マシロが空の女神に祈りを捧げることで、母なる大地から味方に力を与える戦技だ。マシロの周りにいたリィン達にもその恩恵が与えられ、彼らの能力が一時的に向上する。
マシロのサポートを受けたリィン達は自らの全力で動きを止めている魔煌兵にとどめを刺すべく、それぞれ大技を使った。
「さーて、いっちょやりますか!」
まず最初に動いたのはクロウだった。彼の両手の拳銃から次々と黒いオーラを纏った銃弾が放たれていく。しかし、その銃弾はなぜか全て魔煌兵の方向ではなくクロウの両サイドに向けて発射された。
だが、それは決して彼の撃ち間違いではない。彼の左右から放たれた弾丸達は弧を描くように魔煌兵の方向に進み始め、そして一瞬動きを止めた。
「《クロスレイヴン》!」
彼が指を鳴らすと同時に全ての銃弾が四方八方から魔煌兵にぶつかる。ぶつかったところから黒い衝撃波が次々と起こり、その衝撃で魔煌兵もかなりのダメージを負う。
「喰らえ!」
そしてクロウの攻撃が終わるのとほぼ同時に今度はイクスの攻撃が放たれる。激しく迸る雷の剣撃が魔煌兵の右足に次々と命中していく。
「《双翼雷光破》!」
そして最期の一撃によって魔煌兵の右足が切断された。イクスは魔煌兵の右足が特にダメージを負っていたことを見抜き、そこを集中的に攻撃してとうとうその足を斬ったのである。
片足を失ったことでバランスが取れなくなった魔煌兵はそのまま前に倒れ始める。そこへリィンが駆け込んでいた。
「焔よ我が剣に集え――」
リィンの太刀がごうごうと燃え盛り、体勢を崩した魔煌兵の腰部分――《核》を目掛けて振り払われた。
「はあああっ――斬ッ!」
リィンの《焔の太刀》が魔煌兵の核を斬り裂く。それにより力を失った魔煌兵は雄叫びをあげながら消滅していく。
『Woooo……!』
爆発。核から放たれた黒いオーラとともに魔煌兵は四散していき、先程までリィン達に猛威を振るっていた魔煌兵は嘘のように跡形も無くなっていた。
「リィン、イクス!」
「大丈夫か!」
「みんな……!」
そして魔煌兵が消滅していったすぐ後、上から降りてきた昇降機から他のⅦ組メンバーが駆けつけた。その中には一緒にエリゼの捜索を手伝っていたトワやアンゼリカやジョルジュの姿もあり、Ⅶ組の担任であるサラも駆けつけて来ていた。
「い、一体何があったの……!?」
「どうやら戦闘をしていたようだが……」
「ん、それにリィン達以外にも二人手伝ってたみたいだし」
「ああ、それは……」
リィンは駆けつけて来てくれたメンバーに今しがた起こっていたことを話す。そしてその横ではイクスとマシロとクロウがトワ達と話をしていた。
「大丈夫、三人とも!?」
「はい、何とか」
「ええ、目立った怪我はありません。それとお久しぶりです、トワさん」
「うん、久しぶりだねマシロちゃん!はぁ〜、でも良かったみんな無事で……」
走り寄って来たトワにイクスとマシロは自分達の無事を伝える。そしてマシロは以前から知り合いであったトワとの久々の再会を喜んでいた。
「やあ、まさか君もいるなんてね」
「ま、偶然な。丁度いい運動になったんじゃねーの?」
「そうは言うけど、クロウもかなり疲れているみたいだよ。一体何があったんだい?」
「どうやらとんでもないことが起きたのは間違いなさそうね」
そしてクロウはアンゼリカやサラ教官と一緒に先程戦っていた魔煌兵について話し始めていた。
そんな中、一通りの説明をメンバーに終えたリィンは自らが守ろうとしていたアリサの無事を確認しに行く。
「アリサ!大丈夫か!」
「……ぅ、ん……リィン……?」
「おお!ようやく意識が戻ったか……!」
「良かったです……」
気を失っていたアリサは駆け寄って来たリィンの声でその意識が徐々に戻り始める。リィンの後に続いていたⅦ組の面々もアリサの無事を確認して安堵の表情を浮かべていた。
「すまない、アリサ……俺がもっとしっかりしていれば……」
「ううん、気にしないで。私が勝手に一人でエリゼちゃんを追いかけた結果だから。それにあなたはまず、ちゃんとエリゼちゃんに謝って反省しなさい」
「あ……」
目を覚ましたアリサにリィンは心底申し訳なさそうな表情で謝る。だが、アリサにまず謝るべき相手を言われ、それに気づいたリィンは自分のことを省みながら彼の妹にも頭を下げた。
「……そうだな。すまなかった、エリゼ。俺が不甲斐ないばっかりに」
「兄様……いいえ、私も急に飛び出してしまって皆さんに心配をかけました。本当にすみませんアリサさん、それにⅦ組の皆さん」
「いいのよ、あれもこれもリィンが原因だし。本人にはしっかりと反省してもらうから」
「うぐっ……改めて本当に申し訳ない……」
調子が戻ってきたアリサはリィンに改めて今回の事件の原因が彼にあることをからかい半分で追求する。アリサに指摘されたことでリィンは再び反省し、己の未熟さを痛感した。
「あはは……」
「一件落着、かな」
「ああ、いい風が流れ始めている」
「全く、人騒がせなやつだ」
「ふふ、まあ無事で何よりであろう」
「そうだな」
いつものアリサとリィンのやり取りを見て安心した一同は微笑みながらその光景を見ていた。二人の会話を聞いているエリゼも自然と笑みが浮かんでいる。
「…………」
そんな中、エマは一人部屋の天井あたりを見ていた。その視線は鋭く、彼女の瞳の中には静かな怒りのようなものを感じる。
「フン」
そんな彼女の視線には黒猫がいた。エマに睨まれた黒猫はそっぽを向いてから旧校舎の奥に逃げていくのだった。
魔煌兵戦も無事終了しました。また長くなりましたね。
さて、ここで一つ皆さんに謝らなければならないことがあります。
実は10月〜来年の3月くらいにかけて個人的にかなり忙しくなる時期なので、これからの更新の方がかなり時間がまちまちになると思います。
物語もこれからが本番というところで自分の中でも非常に歯がゆい思いなんですが、家に帰ってくる時間も遅くなるのでなかなか小説を書く時間が取れないんです。
なんとか休日と合間の時間を利用して小説の方を進めていきますが、今までのようなペースで更新するのは不可能となります。ですので、更新の方は気長にお待ちいただければと。
一回の更新に時間をかける分、一話が長くなりそうですがより良いものを仕上げるので是非これからも花の軌跡をよろしくお願いします!
それと感想やメッセージであれば合間の時間に返信できると思うので、自分が失踪してないか確認する意味でも是非気軽にご利用ください。閃Ⅳの話や全く関係ない話でも何でもOKです!