今期のアニメで一番ハマってるのが『SSSS.GRIDMAN』なんですよね。
もしまだ見ていない人がいるなら是非見てほしい。好きな人にはめっちゃ好きな作品だと思うんだ。
実習二日目。宿泊場所である旧遊撃士ギルドで朝を迎えたB班は朝食や諸々の準備を済ませて、早速実習を開始しようと一階に集まっていた。事前に届けられていた封筒を開けて中身を確認すると、いつも通り今日の分の依頼が書かれた紙が入っていた。
書かれてあったのは昨日よりも少ない二つの依頼、その内必須の依頼は一つだけだった。
「ふむ、この量であれば時間にも余裕がありそうだな」
「テロリストの動きを探るためにも、昨日行ったところをもう一度調べて見てもいいかもしれないですね」
「そうだな。少し気になる場所もあるし、なるべく午前中のうちに片付けよう」
昨日の昼、A班とB班は合流して昼食を取っていた。そこで彼らはそれまで得た互いの情報を交換し合ったのだが、どちらの班も一日目には有力な情報を得てはいなかったため引き続き二日目も帝都を探ろうという事になっていた。
昨日はイクスが帝都西側を案内する形で行動したため時間の余裕はあまり無かったが、依頼の数も少ないため昨日よりは時間の余裕はありそうだった。
方針を決めたイクス達は行動を開始するべくギルド支部から出て行く。イクスが玄関から出ようとした時、最後に残っていたユーシスが声をかける。
「イクス」
「ん?どうした?」
「本当に昨日は良かったのか?詳しい事情は知らんが、俺の実家のような仲ではないのだろう?」
ここでユーシスが言っているのは、イクスが昨日ヴェスタ通りにある実家に帰らなくても良かったのか、という事だ。
正確にはイクスの実家という訳ではなくマシロの親戚の家という事になるのだが、それでも帝都に来てからの7年を過ごした場所であるというのには変わりない。その意味では彼のもう一つの実家と言ってもいいだろう。
ユーシスだけでなくエマ達もイクスが家に顔を出していなかったのを気にしてはいたが、イクス本人が構わないと言ったため昨日は彼も皆と共にギルド支部に泊まっていた。
ユーシスやアリサのように実家と上手くいってないという話はイクスからも聞いたことは無かったのに加え、そういった雰囲気も彼からは感じられない。それはもちろんユーシスの予想通りであり、イクスが昨日顔を出さなかった理由は別にあった。
「だから大丈夫だって。それに、今日改めてみんなに家を連れて行くってマシロとも事前に決めてたしさ」
「そうか。お前がそう言うのであれば俺がとやかく言うことでも無いが」
帝都での実習が決まった時からイクスはこの日にⅦ組のメンバーを今の実家に招待しようと決めていた。
『7月25日』という日は彼にとって色々な意味を持つ日であり、彼自身も自分の仲間達に知ってもらいたい事があった。
イクスは敢えてその事を今は口にはせず、代わりに前々からユーシスに対して思っていた事を言ってみる。
「というか、ユーシスって割とそういう気遣いするよな。ツンデレってやつか?」
「……阿呆が、変な事を言ってないでさっさと行くぞ」
「ちょ、置いてかないでくれよ!」
茶化されるような形で褒められた事が恥ずかしかったのか、ユーシスは溜息混じりにイクスを軽く罵倒してから外に出ようと歩いて行く。イクスは若干拗ねてしまったユーシスの後を追いかけて行った。
旧ギルド支部を後にしたB班は依頼の一つがヴェスタ通りのとある店からのものであったことから、イクスの案内のもと大通り沿いにある件の店まで来ていた。
「ここがそのお店なんですか?」
「《ハーシェル雑貨店》……どこかで聞いたことがあるような気がするが……」
「実は今日みんなにも紹介するつもりだったんだけどな。手間が省けて助かったよ」
そう言ってイクスは慣れた様子てま店の入り口を開ける。他のメンバーもその店名に引っかかりはしたものの、一先ず彼の後に続いて行った。
店の中はいたって普通の雑貨屋といった感じだった。
小物や生活用品、食材や本など幅広いジャンルの商品が揃えられ、店内の雰囲気も気軽に入りやすいアットホームな空気が流れている。
その店内に入ってきたイクス達を最初に出迎えたのは明るい女性の声だった。
「いらっしゃいませー……って、あら?」
「どうかしたのかい、マーサ?――って君は……」
「どうもお久しぶりです。マーサさん、フレッドさん」
店の奥のカウンターにいた店主と思しき男性も、女性と同様に来客の一人を見て目を丸くする。二人が驚く要因となっていたイクスは軽く会釈しながら挨拶した。
「イクス君じゃない!いつの間に戻ってきてたのよ〜!」
「つい昨日ですよ。昨日は時間があまり無かったので顔を出せませんでしたけど」
「4ヶ月ぶりくらいだね。後ろの君たちは同級生かい?」
「あ、はい。初めまして」
イクスと親しげに話す二人は、ここハーシェル雑貨店を営む夫婦であった。店の名前にも使われている“ハーシェル”という名前はこの夫婦の姓であり、ユーシス達がその姓に聞き覚えがあったのもそれがⅦ組やイクスにとって関わりのある人物の姓と同じだったからだ。
「じゃあ、みんなにも改めて紹介するよ。この店を営んでるマーサさんとフレッドさん。二人は夫婦で、トワさんの叔母と叔父に当たる人たちなんだ」
「成る程、道理で店の名前に聞き覚えがある訳だ」
「ということは、もしかしてトワ会長のご実家が……」
「ええ、そうよ。あの子も訳あって両親がいないからウチで暮らしてるの」
「そうだったんだ」
イクスが学院に来る前からの知り合いであるトワは彼と同じ帝都ヴェスタ通りに在住していた。彼女は幼い頃にとある事故で両親を亡くしてから、この親戚のもとで暮らすようになりそこからトールズに進学している。
トワがイクスやマシロと仲が良かったのは同じ地区に住んでいたご近所さん同士だったというのもあったが、お互いに両親を亡くして親戚の家に住んでいるという共通点があったためでもある。
イクス以外のメンバーとハーシェル夫妻は軽く自己紹介をしてから、B班はここに来た目的である依頼の話題に移った。
「それで、俺たちへの依頼内容っていうのは?」
「うん、実はちょっと困った事になっていてね。三日前に届くはずだった荷物がまだ届いていないんだ」
「三日前……?配達業者のミスという事でしょうか?」
「それがそうでもないみたいでね。どうも荷物自体が帝都に届いていないらしいのさ」
「ほう……?」
ハーシェル雑貨店ではたまに外国からの輸入品も仕入れているそうで、その三日前に届くはずだった荷物もリベールから取り寄せたものだったらしい。明日の夏至祭に合わせて取り寄せたのだが、肝心の商品自体がいつまで経っても届かないのだ。
ハーシェル夫妻も配達業者に問い合わせてみたものの、配達業者にもその荷物が届いていないそうでそちらの方でも混乱が起きているらしい。
一連の話を聞いたB班はその依頼を引き受けることにし、状況を整理しながら向かうべき場所について話し合った。
「リベールからの輸入品ってなると、他の輸入品と一緒に運ばれてるよね」
「だろうな。そしてその中に食品系のものがあるなら、貨物列車じゃなくて空輸で運ばれてる可能性が高い」
「空港を確かめた方が良さそうだな」
配達業者にも荷物が届いていないのであればその前、つまり輸入品を外国から運んで来る経路で問題が起きたということ。飛行船で一番最初に帝都に運ばれて来るであろうヘイムダル空港に手がかりがある可能性が高い。
目的地が決まり、早速トラムでヘイムダル空港に向かおうたするB班が店から出る前に、マーサが彼らの負担にならないように一応の忠告してその後ろ姿を見送った。
「ああ、そうそう。もし間に合わないようならそれでも構わないから」
「わかりました。でも、俺たちの方でも何とか届けられるよう頑張ってみます」
「ええ。それじゃあ、お願いね」
ヘイムダル空港―――帝国内だけでなく、外国からの飛行船も行き来するというまさに帝国の玄関口と言ってもいいその場所には、今日もまたいくつもの飛行船が出入りしていた。
空港のターミナルでは次の便を待つ利用客の人達に加えてパイロットなど空港で働く職員の姿が多く見られ、欠航や発着の遅れもないことからも空港内に特に異常は無いように感じられる。
「ふむ、見たところ何か問題が起きているようには見えんが」
「そうみたいですね。私も空港に入るのは初めてですけど」
空港に到着したイクス達は広いターミナル内をぐるっと見渡す。帝都に住んでいたイクスも空港に来るのは初めてだったが、彼から見ても空港に異常は感じられなかった。
だがここで、雄大な自然の中で育ったことでⅦ組の中でもかなりの視力の持ち主であるガイウスがターミナルの奥にとある人物を発見した。
「あれは確か、レクター大尉だったか?」
「あ、ホントだ」
「空港の職員の方と何か話しているみたいですね」
「ちょっと気になるな。行ってみよう」
ガイウスが見つけた人物というのは帝国軍情報局に所属しているレクター特務大尉だった。
実習初日、彼やクレアと同じ《鉄血の子供》の一人であるミリアムと一緒にⅦ組の前に姿を現した彼は、イクス達と共に夏至祭で動くと予測されているテロリスト達の動きを探っているはずである。
その彼が何故か一緒に行動しているはずのミリアムを連れずにヘイムダル空港を訪れている。遠目から見る表情がいつもより真剣な表情であることからも何か起きていることが感じ取れた。
「――わかった、これはこちらの方で調査しておく。あんた達はとりあえずそっちの方を頼むわ」
「はい。よろしくお願いします」
「レクター大尉、何かあったんですか?」
「ん? あぁ、お前らか。いやぁ、実はちっとばかし面倒な仕事が出来ちまってなァ」
「面倒な仕事……?」
レクターと職員との話し合いがちょうど終わったところでイクス達が声をかける。振り返ったレクターはわざとらしく肩を竦めてやや愚痴っぽく語り始めた。
「五日くらい前にヘイムダル空港に着くはずだった飛行船二隻が消えちまってな、今話してたのもそのアクシデントについてのことさ」
「消えただと……?」
「五日前……ってことは、その内の一隻はもしかしてリベールから来る予定のものだったんじゃないんですか?」
「その通り、到着するはずだった飛行船はそれぞれリベールと共和国からのだが……。何だ、知ってたのか?」
「実は依頼でちょっと」
飛行船が消えたという事件が起きたのはレクターの話だと五日ほど前。イクス達が今調査している荷物が三日前にハーシェル雑貨店に届くはずのものだった事を考えれば、この推測が立つのは容易なことだった。
更にレクターの話を聞けば、消えた飛行船は二隻ともその行方が未だに分からず、現在も正規軍を中心に捜索を続けているらしい。
このまま放っておけば国家間のトラブルにもなりかねないため、レクターはテロリストの動向の調査を一旦中止して今は帝国軍情報局として仕事をしているという事だった。彼が今ミリアムを連れていないのはそれが理由である。
「だが困ったな。これでは荷物を届けるのは厳しいぞ」
「そだね。飛行船自体が見つかってないならそこにある積荷も届けようがないし」
荷物を運んでいた飛行船そのものがまだ見つかっていないのなら、必然的にその荷物も未だ行方不明になっているという事。この状況ではさすがに自分達ではもう手に負えないことになったとイクス達は肩を落とす。
しかしながらこの事件、まだ話の続きがあった。
「あー、それなら心配いらねぇと思うぜ」
「? どういう事ですか?」
「いや、ホント妙なコトに飛行船にあった積荷はどっちも見つかってるんだなァ、これが」
「え……!?」
そう、この事件のおかしなところは飛行船だけが行方不明になってしまったということだった。
事件の進展があったのはつい昨日、運ばれる予定だった積荷が飛行船の航行ルートの真下にある地上で見つかっていた。確認をしたところ、盗まれたものは一切無く街道の外れに放置されていたのだという。
しかし、以前として飛行船は行方不明のままであり乗組員達とも連絡がつかない状況が続いている。そして今ちょうどその荷物がひとまず空港に届けられたばかりで、レクターはその対処を職員と話し合っていたところだった。
レクターから事件の概要を聞かされたイクス達も、その予想外すぎる展開に首を傾げるしか無かった。
「ま、お前らは今は実習に集中しとけ。その依頼主んトコの荷物は直接届けた方が早いだろうし、話をつけてきてやるよ」
「あ、はい。ありがとうございます」
「つー訳でオレはしばらくそっちの調査で忙しくなる。悪いがテロリストの方はお前らとクレア達に任せたわ。んじゃな」
イクス達に事件の内容を一通り話し終えた後、レクターは彼らにその事は気にするなと言ってターミナルの奥に消えて行く。残ったイクス達はハーシェル雑貨店に届けるための荷物をターミナルの待合場にあったソファに座って待つことにしたのだった。
午前11時。
雑貨店に例の荷物を届け、残り一つの依頼も片付けたイクス達B班は再び帝都競馬場にある地下道へと来ていた。
その目的は昨日のような魔獣退治ではなく、行ってない場所も含め改めてそこを調査しておこうという事だった。
「昨日に比べると魔獣がほとんどいないな」
「ああ。やっぱりあの人があの後も“掃除”してたんだろう」
一応の警戒をしながらB班は暗い地下道を進んで行く。ただ、徘徊している魔獣がほぼゼロであるため彼らは未だ一度も戦闘を行っていなかった。
イクス達がこの地下道に来たのにはもう一つ理由がある。それが彼らが昨日地下道で出会った自称掃除屋の男の事を調べる事である。
昨日はイクス達のスケジュールがキツキツであったため、手配魔獣を倒した後はすぐに地下道を出ていた。競馬場の人の話によると、イクス達が出てからは誰一人としてその入り口から出入りしていないらしく、その後の男の行方は分かっていなった。
つまり男はイクス達とは別の所から地下道に出入りしていた可能性が高く、それを突き止める為にも彼らは昨日行っていない奥の方まで足を伸ばしている。
そうして魔獣と一度も遭遇することなく奥に進んでいると、ここでイクス達は少し広めの空間で足を止めることになった。
「……行き止まり、でしょうか?」
「途中の道も全部調べた筈だし、これ以上道は無さそうだしな」
「……いや、そうでもない。風の流れを感じる」
「本当か?」
一見行き止まりに見えたその空間でガイウスは僅かに流れている風を感じ取っていた。彼は少しの間目を閉じて感覚を研ぎ澄まし、おもむろに正面の壁の方へと歩き始める。
彼の読み通り、正面の壁には仕掛けがあった。周りよりも少しだけ凹んでいた部分を押すと、先程までイクス達の前に立ち塞がっていた壁は重い音を響かせながら横へスライドして行った。
「おぉー……」
「さすがガイウス」
「ふふ。さぁ、先に進むとしよう」
他のメンバーから称賛の目を向けられたガイウスは少しだけ得意げに笑って、新たに拓けた道に全員で進んでいった。
やはりというべきか、隠し通路の先にも魔獣は全く徘徊していなかった。
この先の道が仮にどこかへ通じているのであれば男はここを利用して地下道に出入りしていたのだと考えられる。おそらくその時にここにいた魔獣も全て蹴散らしていったのだろう。
(競馬場からこの方向……。もう結構歩いているし、もしかしたら……)
B班が隠し通路を進む中、イクスは歩きながらこの先に通じている場所を予想していた。
帝都競馬場は帝都でも割と端の方に位置している。地下道には外壁のように街の中と外とを隔てる目印がないため、今現在彼らが歩いている場所も地上では既に街の外に出ている可能性が高い。
帝都ヘイムダルには街の外にもカレル離宮のような人が訪れる場所があり、イクスが今考えている場所もそのうちの一つだった。
「あ、光が差し込んでる」
「あそこが出口みたいですね」
隠し通路をしばらく進んだ後、イクス達は道の奥に出口らしきものを発見する。
外へと通じているらしいその扉からは、閉じられた部分の隙間から日光が差し込み、ひゅうひゅうと小さく風が漏れている音も聞こえている。出口を発見したイクス達は少し歩くスピードを速めて、とうとうその扉に手をかけた。
「……やっぱりか」
扉を開けた先に広がっていた景色はどうやら街の外であるらしかった。
先程までいた薄暗い地下道とは対照的に青空にある太陽からは夏の日差しが燦々と降り注ぎ、遮蔽物のないことから涼しげな風がイクス達の頰を撫でて行く。
遠目に帝都ヘイムダルも望むことができるその場所には、木々や花の他にいくつかの人工物が一定の間隔で並べられていた。
「街の外にこんな場所が……」
「イクス、ここはもしや……?」
「――《ヒンメル霊園》、街道近くにある墓地だ。まさか来られるとは思わなかったよ」
再び吹いた風が海のように深いイクスの紺色の髪を揺らす。
エマ達から見えた彼の横顔はどこか故郷を懐かしむような優しい表情をしていた。
「みんな、ちょっとだけ寄ってもいいか? 多分、しばらくここにはこれそうに無いから」
「大丈夫ですよ。時間に余裕はありますし」
「是非とも案内してくれ」
少しここで時間を取っていいかというイクスの提案にエマ達も快く頷く。
イクスの言葉の裏から、彼女達も彼がここに寄りたい理由に薄々予想がついていた。
帝都から少し離れたその場所はまるで時が止まっているかのように静かな場所だった。その静寂を壊さないようB班もイクスを先頭に無言で歩いて行く。
綺麗に並べられた墓を通り過ぎ、イクスはとある墓の前でその足を止める。そこは帝都を遠くに眺めることができる見晴らしのいい端にあった墓だった。
「――ただいま戻りました。父上、母上、姉上」
墓の前に来たイクスは片膝をつき、いつもとは違う丁寧な口調で誰もいない場所に話しかける。彼が話しかけている墓には彼と同じ《ライガスト》の姓を持った名前が三つ刻まれていた。
「イクス、やはりこの墓はお前の……」
「ああ、8年前に死んだ俺の家族の墓だ。そしてその隣にあるのがマシロの両親の墓だな」
「…………」
イクスは後ろの方に振り返ることなく片膝をついたまま返答する。
彼の前にある墓は8年前に彼の故郷が襲撃された際に亡くなった彼の家族の墓。その隣には同じく生き残ったマシロの両親の墓もあった。
「ロウフェルに墓を作っちゃうと墓参りが難しくなるからさ、俺とマシロの家族の墓だけはこうしてヒンメル霊園に作ったんだ。……まぁ、俺の家族の方の墓には姉上の亡骸は無いんだけどな」
「……そっか、お姉さんの死体は見つからなかったんだっけ」
「魂が無事に女神の元へ還っていることを祈ろう」
後ろに控えていた他のメンバーもせめて魂が安らぐようにと黙祷する。外界と隔絶されたその場所に捧げられた五人の祈りは木々の葉を優しく撫でるそよ風に乗って空へと運ばれていった。
「――みんな、ありがとな。ここに来れて良かったよ」
「フッ、改って礼を言われる程の事でもあるまい」
「ええ、私たちも良かったです」
「こうしてここに来ることが出来たのも風と女神の導きだろう」
「ん、そだね」
イクスの家族だけでなくマシロの両親の墓参りも済ませ、イクス達はそろそろ帝都に戻ることにした。他のメンバーにも礼を言うイクスはどこかスッキリした面持ちである。
「さて、それじゃ帝都に戻ろう。帰りは地下道じゃなくて街道を通った方が早いかも――って、通信?」
ヒンメル霊園を後にしようとした時、イクスのポケットに入っていたARCUSから電子音が鳴り始めた。ARCUSを取り出して見てみると、通信先の相手はサラ教官からであった。
「はい、こちらイクス。――えっと、依頼は全部終わりました。――え、女学院にですか? はぁ……了解です」
通信越しにサラ教官と話したイクスは何度か応答した後、通信を切ってARCUSをしまった。
「今の通信、サラ教官からか?」
「何かあったの?」
「いや、なんか今から聖アストライア女学院にA班B班両方とも集合してほしいらしい」
「両方の班が集合か……」
「えっと、何かするんでしょうか?」
「それが詳しい事は何にも。ま、とりあえずサンクト地区に行くか」
突然のサラ教官からの指示にイクスも戸惑いはしたもののひとまず聖アストライア女学院に行かなければその意図もわからない。
イクス達は気を取り直して指定された場所であるサンクト地区へと向かうのだった。