てきとーな時間軸設定で、アルベドが『モモンガ』を取り戻す小話。

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『ももんが』

――アインズ・ウール・ゴウン魔導王国が世界に覇を唱えて幾ばくか経った頃。

 

「アインズ様、アルベド様が入室の許可を求めていらっしゃいます。いかがいたしますか?」

 

 ナザリック大墳墓から持ち出したデータクリスタルで作られた絢爛たる光輝を宿す魔導王の居城で。

本来ならばアインズの就寝時間という事に成っている時間に、アルベドが来訪した。

はて、なにか緊急の要件でもできただろうか、と思いながらアインズは控えているメイドに要件を聞くように命ずる。

その結果、何やらお願いしたい儀があるという答えを聞き、ますます頭をひねる。

だが一先ずはそのお願い、というのを聞いてみるのもいいだろう、と結論を出す。

なにせ魔導王国の治世は盤石であり、その体制を構築するのに尽力したアルベドたち僕たちにも、折を見て何か願いはないか聞こうと思っていた矢先の事だったのだ。

都合がいい話、という事だ。

 

「よろしい。入るがよい」

 

 アインズの声に控えていたメイドが部屋の重厚な軽合金製の扉を開く。

 

「失礼しますアインズ様。お休みのお時間であるのにこうして会っていただけるとは望外の喜びですわ」

「何を言うアルベドよ。常日頃から私を助けてくれるお前の願いであれば、ちょっとした労を厭わずに話を聞くくらいなんでもないぞ。さあ、話してみよ」

「では申し上げます……アインズ様。この世界は地の果て、海の底、空の彼方までアインズ様の御威光に跪く栄光を与えられました」

 

 跪き、首を垂れたアルベドが紡ぐ言葉に、アインズは鷹揚に頷く。

 

「うむ。それもこれも守護者統括たるアルベドや、その差配を助けてくれるデミウルゴスを初めとする内政官達のお陰だ」

「過分な御言葉ありがとうございます。そこで、はしたなくも卑しい行為、もしアインズ様がご不快に思われるなら即座にこの首を跳ねて頂く事に成るかもしれないと解っていてもお願いしたい儀があります」

「何を言うアルベドよ。お前達は私の愛する子も同然の存在。不快に成ることなどあろうか。さあ、願いを言うがよい」

 

 繰り返し話を促されて、アルベドは首を上げ、熱のこもった視線をアインズに投げかけながら言葉を発した。

 

「アインズ様。私は貴方様から特別な唯一つをいただきとうございます」

「特別なただ一つ……か、それは私からアルベドに贈れるものかな?」

「はい。むしろ、アインズ様以外の誰からだろうと……それこそタブラスマラグディナ様であろうと与えられない『唯一つ』でございます」

「あー……もしかしてそれは……」

「はい、アインズ様の!胤をいただきとうございます!」

 

 顔面が笑み崩れて大変な事に成っているアルベドの姿にちょっと引きつつ、アインズは一つ咳をしながら毅然と言い放った。

 

「すまん。それはできない。私はアンデッドだからな。胤を授けようにもそもそも胤がないし、なにより友人の娘であるお前にその、そのような不埒な真似をすることなど想像だに出来ないからだ」

「どうしても、ダメですか」

 

 ずい、一歩アルベドが跪いたまま近寄る。

アインズが一歩下がる。

 

「だ、ダメだ。これはアルベドだからダメだというわけではないぞ?シャルティアに対してだっていかがわしい想いを抱いたことはないのだ。守護者一同、皆私の息子であり娘であると言う事だ。解ってくれ、アルベド」

「そう、ですか……」

 

 アインズは、ちょっとした違和感を感じた。

おかしい、普段ならここからドン引きされるような勢いで押してくるのがアルベドじゃないのか?

と、ちょっと失礼なことを思いながらも、助かったと内心胸をなでおろす。

 

「では、こんなお願いでは如何でしょうか」

「う、うん?どんな願いだ」

「私にだけアインズ様を二人の時は、『モモンガ』様とお呼びすることをお許しいただけませんか」

「は?」

「ですから……」

「い、いや、聞こえていたぞ。今の「は?」はそんな事でいいのか?という「は?」だ」

「そうですか。どうでしょう『モモンガ』様。私のお願いは、お聞き届けいただけるでしょうか」

「ふむ……もし本当に、アルベドが望むのならばそれを許そう」

「本当ですね『モモンガ』様。許す、と仰られるならもうこのアルベド以外は『モモンガ』様と呼ぶことはできなくなるのですよ」

 

 切なげな瞳で見つめ、念を押すアルベドの問いに。

しばしアインズは考え込む。

もし、百年の揺り戻しでギルメンの誰かがこの世界にやってきたら……その時にモモンガさんと呼ばれることはできなくなる、という事。

暫し迷う。

この世界ではアインズ・ウール・ゴウンで通しているが、ギルメンにとっては自分はモモンガであるはずだ。

かつての様に「モモンガさん」と呼ばれることができなくなる約束をして、後悔はないのか、と。

 

 そして、しばらくして答えを出す。

部下の忠誠には答えるべきだ。

 

「許す。これより私を『モモンガ』と呼ぶ権利は、アルベド、お前だけのものだ」

「~~……!ありがとうございみゃす『モモンガ』様!ああ、どうしましょう!私幸せ過ぎて死んでしまいそうですわ……!」

「おいおい。大げさだぞアルベド。ソレにもし死んでしまうなら今の許すは撤回しなければならないな。お前にはまだまだ私を助けてもらわねばならないのだ」

「は!死にません!命に代えてもこのアルベド、生きてモモンガ様のお傍に侍り続けます!」

「そ、そうか。うむ。では他に要件はあるかな?」

「いえ、特にこれと言っては……下僕の愚かなお願いを聞いてくださり誠にありがとうございました」

「なに、気にするな。この魔導王国の成立に当たってお前が担ってくれた重責に対するお礼と思えば足りないくらいだ」

「そんなことはありません。私はようやく……いえ、なんでもありません。『モモンガ』様にお仕えできて、幸せです」

「はは、そうかそうか。では明日からの仕事の為にもそろそろ休まねばな。下がるがいい、アルベドよ」

「はい。では下がらせていただきます。『モモンガ』様」

 

 アルベドは礼をすると、閉じられていた扉が再びメイドにより開かれ、退出していく。

それを見送ったアインズは、名前くらいで大げさだな……と思いながらもベッドに向かうのだった。

 

 

 

 取り戻した、取り戻した!

愛しい愛しい御名を!

 

 取り戻した!取り戻した!

あの御方の本当の名前!

 

 アインズ・ウール・ゴウンなどという偽物ではない!

『モモンガ』様を取り戻した!

 

 そして、『モモンガ』様はずっとずぅっと私だけの物!

ああ、愛していますわ。

『モモンガ様』


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