東方扇仙詩   作:サイドカー

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最近になって初めて「Lemon」を聴きました ←メッチャ今さら

あまりに神曲すぎてエンディングのイメージが湧き危うく展開全部すっ飛ばして博麗神社に着いた主人公がそのまま現代に帰還するという爽やか系ノーマルエンドを作りそうになった自分を引き裂いて泣いた

東方扇仙詩、まだまだ続くよ!
そんなわけで此度もごゆるりと楽しんでいただけると嬉しいです。


第十一話 「初代ゾイドでは仲間に運び屋の女キャラがいた」

 殺気こそ感じられなかったものの、運搬中の品物が狙われたことについては疑う余地もない。何処の誰だか知らんが、生憎だったな。この手の輩は繁華街にいた頃から相手してんだよ。

 木箱を持っていない側の片手をベストの内側に差し込む。二つ目の切り札を取り出し、不可視の襲撃者に向けて見た目だけなら鋭い切っ先を突きつけた。その直後、

 

「ひいっ!」

「わぁっ!?」

「きゃうっ!」

 

「…………あ?」

 やけに幼い声が三つほど聞こえてきた。

 さらに、まるであぶり出しのような現象が目の前で起こり始める。無色から半透明を経て、犯人の姿が浮き上がる。あやふやだった輪郭が次第に確かなものになっていく。

 不可視の襲撃者の正体は小さい子どもだった。その数は声と違わず三つ。外見をいうならマヨヒガの猫娘とそう大差ない年頃になりそうだ。ついでに、三人とも身を寄せ合ってアワアワと口を震わせている。

 なんとも予想外な結果に拍子抜けしてしまう。んだよ、ただのチビじゃねーか。身構えて損しちまった。

 オレが脱力する一方で、件の三ガキは怯えながらも口々に言葉を放った。

 

「ごっ、ごめんなさぃい……」

「命だけはぁ……」

「出来心だったんですぅ!」

 

 ちょい待て。今のオレって、傍からは怖がるガキどもを脅しているキチガイに見えるんじゃね?

 これはマズい。それこそ華扇にでも見つかろうものなら拳骨そして説教の連鎖は免れない。慌てて周囲を確かめるが、幸いヤツの姿はなかった。

 別の意味で安堵しつつ、ナイフ(ただし切れ味は無)をベストの内側に仕舞う。

「で、何やオメーら」

 野盗にしちゃエラく可愛らしい。十中八九、適当にイタズラするつもりだったのではなかろうか。ったく、遊び相手はよく選べや。

 オレが問い質すと三ガキのうちの一人、あたかも太陽のような明るめの髪を左右に括った少女が、ガチガチに緊張した声を張り上げた。

「わわわ、わたしたちっ! よ、妖精です!」

「妖精だぁ?」

 オウム返しに尋ねれば、残り二人もコクコクと凄まじい勢いで首を縦に振った。確かにコイツらの背中を見れば、いかにもそれっぽい薄い羽が付いている。どこぞの夢の国にいるマスコットキャラみたいなやっちゃな。しかし妖怪の次は妖精ときやがったぞ幻想郷。次は何だ、神ってか?

 さらに、二つ結びの発言に続くかの如く他二名も後を追った。自分達の狙いを洗いざらい白状する。

「人間がたった一人で歩いているのが見えたから、ちょっとイタズラしちゃおうって……」

「お兄さんが持ってる木箱が急になくなったらビックリするかなって……」

「……ま、そんなこったろうと思ったわ」

『ご、ごめんなさい!!』

 ジロリと見下ろせば、ちんまいガキのくせして三人とも立派な土下座を披露した。

 オイ止めろ、誰かに見られたらオレが誤解されんだろうが。年端もいかない少女達に道端で土下座させたクソ野郎になっちまうわ。表を上げい。

 どうにか土下座は止めさせたものの、未だに正座を崩そうとしない三ガキに内心溜息を禁じ得ない。

どこぞの仙人じゃあるまいし、別に説教するつもりは欠片もねぇわな。所詮はガキの戯れ。吐き気を催すほどの邪悪ではない。

「まぁ何だ、こっちもやり過ぎた。仕事中でスイッチ入ってたもんでよ」

「お仕事……ですか?」

 栗色の髪を縦ロールにした白い服の妖精が、オレを見上げて聞いてきた。どことなく、ちょっとだけ鈍そうな子だ。こう、一人だけ逃げ遅れたり何もない所でコケたりしそうっつーか。

 縦ロールの質問に木箱を示しながら答える。

「コイツを博麗神社に持っていくんだよ。今夜中にな」

「そういえば、今日は宴会だったっけ……?」

 黒髪ロングの子がポツリと呟く。と、妖精トリオは顔を見合すや否や、その場でトライアングル陣形になってヒソヒソ会議を始めやがった。ここまで堂々とした内緒話も珍しい。いくらなんでもオープン過ぎんだろ。全然隠れてねぇよ。いっそコイツらをこのままスルーして先に進んじまうか?

 そう考えて逃走するタイミングを見計らう。と思いきや、さして時間を置かずにまたもや三ガキが横一列に並んで正座した。ただし、今度は熱意の籠った眼差しをこちらに向けて。なんつーか、このあとのオチが読めるわ。

 その予想は的中し、

 

「じゃあじゃあ! 私たちお手伝いします!」

 ツインテールの子が、どこまでも平坦な胸を張って高らかに宣言した。

「神社まで案内します!」

 黒髪ロングな子が、気合に満ちたガッツポーズで両こぶしを握った。

「お守りします」

 縦ロールの子が、任せろと言わんばかりにフンスッと息巻いた。

『だからイタズラのこと誰にもバラさないでくださいッ! お願いします!!』

 そして、三人が声を綺麗にハモらせて再びその場に土下座した。

 

 だから止めろと言ってんだろうが! お前らそんなにオレを逮捕させたいのか!?

 ふいに、目が笑っていない絶対零度の微笑みとともに、甘く蕩けた声でオレを呼ぶ桃色の仙人のビジョンが浮かんで、一瞬にして背筋が凍った。なしてオレが悪いみたいになってんだ……

 この様子じゃ意地でもついてくる気満々みたいだが、それを許可する前に一つ気になることがある。こんな全方位がガラ空きの場所でいきなり現れたことと、先ほどの浮き出るような登場の仕方について。

 ひょっとして、

「オメーら、姿を消せるのか?」

 オレが問うと、妖精トリオは正座ポーズから一転して意気揚々と立ち上がった。揃いも揃ってドヤ顔というオマケ付きで。かくして各々が名乗りを上げる。

 

「サニーミルク! 光の屈折を操って姿を消せるわ!」

「スターサファイアよ。私の能力があれば生き物の居場所が分かるわ」

「ルナチャイルド、周囲の音を消せるの」

 

 いきなり自己紹介を始めやがったぞこのガキ共。

 ツインテールの先ほどからやたらハイテンションなのがサニーミルク。黒髪ロングでリボンも服も青ベースなのがスターサファイア。何となくだが、こっちは他の二人より賢そう。ただし、ちゃっかりしているとか狡賢いとか、そういう方面で。そんで、縦ロールのドジッ子そうなのがルナチャイルドか。

 って、今思ったんだけどコイツら案外に有能なんじゃ……? つまり三人で連携すれば、姿を見えなくして音も消せてさらに周囲のサーチもできるってんだろ。マジモンのステルスやんけ。

 言い方は悪いが、この依頼においては大いに使える連中ではなかろうか。それに、「要らないから帰れ」と突っぱねようものなら、泣いて縋りついてきそうな勢いしてやがる。こんな場所で押し問答している時間も惜しい。

 ならば、ここは一つ、試しに任せてみた方が手っ取り早いかもしれない。

「わぁーった。誰にもチクッたりしねぇから、しっかり道案内と護衛すんだぞオメーら」

『はーい!』

 子どもらしい元気な声で返事をする三妖精。一応といえど、妖精の加護が身に着いたってか。

 しかしながら、子連れの道中は決して容易いものではなかった。そのことをオレは早々に知るハメになる。

 

 再出発してから十分と経たずに、

「ぎゃあ! 犬がこっち見てる!?」

「音は消せても匂いまでは消せないのー!」

「お、お助けぇ~」

「だーッ! よじ登ってくんなお前らァ!!」

 

 折り返し地点まで行き着いたところで、

「お地蔵様だ」

「いつ見てもハゲねぇ」

「違うわ、スキンヘッドよ」

「フツーに坊主頭って言えよ……なんでちょっとロックに言い直してんだ……」

 

 ようやくゴールの兆しが見え始めてきた頃には、

「宴会、宴会ッ♪」

「お酒、お酒ッ♪」

「ごはん、ごはんッ♪」

「えいえいおー♪」

「オイ今なんか無意識に一人増えてなかったか? オレの気のせい?」

 

 ちょっと進むごとに立ち止まっては、何かしらのイベントが発生するという状況。そのせいで、なかなか先に進むことができず無駄に時間を食ってしまった。なんやこのスゴロク。しかも、

「ワタナベさん、こっちー!」

「もうすぐ博麗神社よ、ワタナベさん」

「ワタナベさん」

「へいへい」

 いやもう慣れているから敢えて何も言わねぇけどよ。

 黒岩が通り名であることをうっかり口走ってしまったのが運の尽き。三月精(三妖精のグループ名称らしい)から本名を教えてくれと駄々っ子みたいに強請られて、仕方なく綿間部将也と名乗った。そして案の定、間違って覚えられる。

 

 やがて、寄り道だらけの珍道中も終わりを迎えて、いよいよ博麗神社の入り口にあたる場所まで辿り着いた。なのだが、オレの顔色はイマイチ優れなかった。なぜならば、

「……で、コレを今から上るのか」

「うん」

 サニーミルクが無慈悲且つ無邪気に肯定する。それを受けて渋々と前を見上げる。

 無駄に長ったらしい石段がびっしりと最上階まで続いていた。これがスポ恨マンガだったら過酷な筋トレに使われるであろう険しい道のり。上からの眺めはさぞ良い景色に違いない。現実逃避の遠い目になってしまう。

 こんなん参拝客だって諦めて帰っちまうだろ。修行僧じゃあるまいし。大丈夫なのか、この神社。つーか、これを乗り越えて宴会するとかどんだけ猛者の集団なんだよ。元気有り余り過ぎだろーが。もはやツッコミが追い付かんわ。

 とはいえ、予定より遅くなってしまったのもまた事実。今や完全に夜の真っ只中である。恐らくこの上では既に始まっている頃だろう。

「しゃーねぇ、行くか」

『おー!』

「……お前ら、マジで息ピッタリだな」

 さすが三月精。日と月と星の名をそれぞれ冠する仲良し三人組は伊達ではないってか。途中で子どもらしい口喧嘩もあったが、それさえも微笑ましい。ま、おかげで時間も押してんだけどな!

 よし、と気合を入れ直して初めの一段に足をかける。あとは休まず振り返らず一気に上り詰めるまで。妖精どもはフワリと空中に浮いて、オレに続いた。

「……………」

 だよなぁ、羽あんだからそら飛べるわな。得も言われぬ理不尽さに、終ぞ言葉が出なかった。

 

 

「ぜぇ……ぜぇ……おぉ、やってるな」

 最後の一段を上り切ったその先は、あたかも縁日の会場のようであった。

 境内の広さを存分に活かした眺めはこれまた圧巻で、まさに宴会と呼ぶに他ない。あちらこちらで個性豊かな少女達が、沢山の酒や料理を前にして大いに盛り上がっている。

 目の前に広がる光景を端的に表すのであれば――彩り。

 いつの間にかサニーミルク達はどこかに飛んで行っていた。どうやら友達を見つけたらしい。見れば、三人と同じくらいの背丈をした青髪と緑髪のガキんちょに突撃するところだった。次に会った時に駄菓子の一つでも奢ってやろう。経緯はどうあれ、仕事を手伝ってくれた駄賃だ。

「さて、と」

 であれば、オレはオレで最後の仕上げを済ませるとしよう。例の博麗の巫女とやらにこの木箱を届ければ依頼達成である。この場を取り仕切っているのだとすれば、あの辺に居そうだと目星を付ける。

 賽銭箱がある方へと進むと、三人の少女が段差に腰かけていた。そして驚いたことに、その中に見知った顔があった。今日は遭遇していないと思ったが、こっちに来ていたってぇのか。

 オレが近付くと向こうもこちらに気付き、目を見開いた。赤みがかった瞳に、柔らかな桃色の髪が夜風になびく。

 

「……綿間部?」

「よう、また会っちまったな」

 

 手前で言っておきながら笑えてくる。本当に、コイツと会わない日が未だに無いのってが不思議で仕方ねぇわ。まったく、どうなってんだ?

 オレと彼女――茨木華扇の間には、何か見えないチカラでも働いているのかもしれない。

 

 

つづく




前話でヒロインが出なかったなら登場するまでガンガン行こうぜで進める脳筋スタイル

最後の最後で出番あったし……セフセフ(暗示)
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