東方扇仙詩   作:サイドカー

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ふぁいてぃんこ見てから投稿する優雅なモーニング(昼前)

トースト片手にごゆるりと楽しんでいただけると嬉しいです
ふわとろオムライスでも良いのよ?


第十二話 「登場キャラは全員二十歳以上の設定って逆に苦しくない?」

「知り合い?」

 華扇と一緒にいた少女の片割れが彼女に尋ねた。石段に腰かけたまま、じっと桃色の仙人を見やる。こくり、と仙人が頷いて肯定した。

「ええ。彼は外来人なのです。綿間部、彼女が博麗の巫女です。博麗の巫女については前に説明しましたよね?」

 

「博麗霊夢よ。そこの仙人が言った通り、この神社で巫女をやってるわ」

 

「巫女……ねぇ」

 不躾ではあるが、顎を指でこすりながらまじまじと件の少女に視線を送る。

 確かに紅白の衣装を身に纏っているあたり、それらしくもある。手首に行くほど垂れ下がっていく幅広い袖口や、袴に近しいスカートの作りからも、一応と呼べるぐらいには巫女の残滓が伺える。

 しかしながら、ノースリーブで脇が露出していたり、セミロングの黒髪に大きく目立つ赤いリボンを結んでいたり。些かアレンジが効き過ぎなのはいかがなものか。幻想郷の巫女服はこういうデザインがデフォルトなのか?

 さらに、博麗の巫女の自己紹介に合わせて、もう一人の少女も名乗り出てきた。黒いトンガリ帽子の下から長い金髪を伸ばし、白いエプロンを巻いたモノクロの衣服を着こなした身なり。まさしく、

 

「私は霧雨魔理沙だ。魔法の森に住む普通の魔法使いだぜ」

 

「だろうな」

 誰がどう見たってそうだわな。しかも、だぜ口調のボーイッシュな魔女っ娘ときた。小さい子から大きなオトモダチまで誰もが大興奮する変身モノの魔法少女ではなく、童話の絵本に出てくる魔女スタイル。溌剌とした雰囲気もあってか、元気に外を走り回ってそうな印象を受ける。

 博麗霊夢も霧雨魔理沙も明らかに未成年であるにも関わらず、さも当然のように酒を飲んでいやがった。もっとも、異世界で日本の法律を当てはめるだけ無駄であろう。

 ま、オレも成人する前から呑んでいたし、人のこと言えねーか。

 

 互いに名前を告げ終えると、華扇の赤みがかった瞳が再びこちらを向いた。

 ちなみに、オレが何でも屋であることを告げた時、紅白娘は「妖怪退治は私の仕事よ!」と言い張り、白黒に至っては「商売敵だぜ!」などと言い始めやがった。どうやらそこの金髪っ娘は魔法の森で似た商売をしているらしい。適当に聞き流しといたが。

「ところで、どうして此処に?」

「仕事だ。九尾のお狐様にコイツの配達を頼まれてんだよ」

 小脇に抱えていた木箱を見せつける。すると、博麗霊夢の表情がパァッと輝きを増した。かと思えば、飛び付くようにブツを引っ手繰られてしまう。とても神仏に仕える乙女とは思えぬ所業。別にいいけどよ。どのみち届け先はお前だったし。

 ウキウキといった具合で紅白衣装の娘が声を弾ませる。

「これこれ! この日をずっと待っていたわ。紫から話を聞いちゃったせいで、どうしても一度くらいは飲んでみたかったのよ~」

「あ? 飲んでみたかった?」

 どこか不自然なセリフに反応してしまう。てっきり祭事に使う神器なのだとばかり思っていたが。

 オレの疑惑などお構いなしに、少女は鼻歌交じりに紐の結びを解いていく。さながら玉手箱の如く蓋を開き、ついに中身が明かされる。

 均整のとれた曲線を描きつつも、ズッシリとした重量感を放つ佇まい。焦げ茶色の全貌に映える筆記体で綴られたラベルからは、厳かさと親しみ易さを感じる。

 霧雨魔理沙がゴクリと喉を鳴らした。月下の元に晒された一本。其は――

 

 純米吟醸酒 『八海山』

 

「って、酒かよ!」

「? 宴会なんだからお酒に決まってるじゃない」

 何を当たり前のこと言ってんだコイツ、とでも言いたげな顔で博麗の少女はオレを見た。何だこの敗北感。

 そら取り扱い注意だわ。ワレモノですから。つまりオレは此処まで後生大事に酒瓶を運んできたってぇのかよ。幻想郷じゃ向こうの酒は珍品だった模様。元の世界だったらフツーに買えるわ。

 ラン姉ちゃんよぉ……初めてのおつかいにしちゃ駄賃奮発し過ぎだろうが。くそ、知りたくなかった真実を見ちまった気分だぜ。

 巫女と魔女は早速とばかりに栓を抜いて飲み始めている。早ぇよ。まぁいい、結果どうあれ依頼達成したことに変わりなし。だとすれば、此処に留まる理由もなかった。

 無言で踵を返すと、目敏く気付いた華扇が声をかけてきた。

「もう帰るんですか?」

「何よ。どうせなら宴会に参加していけば良いじゃない。今更一人増えるくらいどうってことないわよ」

「そーそー、お酒は皆で楽しく飲もうぜ!」

 仙人少女に続いて紅白と白黒も誘いの言葉を投げてくる。彼女達もオレが加わったところで気にもしないのだろう。つくづく幻想郷の輩は大らかなヤツが多い。

 しかし残念だが、この場は辞退させてもらう。なぜならば、

「勘弁してくれ。どう見ても女子会じゃねーか」

 つまり、そういうワケだ。

 周りを見渡してみる。ここに居る三人だけならいざ知らず、ざっと何十名は届くであろう女性陣が境内に集っていた。こちとら女子会に迷いなく飛び入り参加できるほど、チャラい生き方してねぇんだよ。

 あっさり断られたその理由を聞いて、博麗の巫女が「ああ」と手を打った。

「大丈夫よ。ちょっと遅れているみたいだけど、もうすぐ男の人も来るはずだから。それなら問題ないでしょ?」

「いや、どんなハーレム野郎だよ……色々と度胸あり過ぎんだろ、そいつ」

「うーん……むしろ一途な感じだぜ? なにせ、私達の親友が想いを寄せる相手だからな! もちろん悪い奴じゃないぜ。まー、女の子に弱いってところは認めるけど……」

「そいつも外来人だし、話が合うかもしれないわよ。会ってみれば?」

 新たな情報をエサに再び誘いを受ける。お前ら良い奴らだな。

 オレ以外にも幻想郷に飛ばされた人物がいるというのは、全く気にならないといえば嘘になる。が、それとこれとは話は別というものだ。つーか、わざわざ女子会に混ざっておきながら見ず知らずの男を待つとか、どう考えても気色悪いだろうが。

 結論、やはり俺の意思は変わらず首を横に振った。

「別にいい、お前らはお前らで楽しくやってた方が良いだろ。じゃ――」

 あとはヨロシクと、今度こそ立ち去ろうと一歩踏み出す。

 ところが、どういうわけかそこから先に進むことができなかった。その原因はすぐに分かった。誰かに引き留められてしまっているらしい。それも物理的な意味で。包帯に包まれた細い手が、オレの左手を離すまいと繋ぎ止めていた。

 白のシニョンを飾る少女が、あたかも瞳を覗き込むようにオレを見上げる。ポツリ、と。寂しそうな声が零れた。

 

「本当に、帰っちゃうんですか……?」

「……オレが居たってしゃーねぇだろ」

 

 もうじきイレギュラーな存在が来るみたいだが、かといってオレまで女子会に居座るのはどうかと思う。やるならせめてもうちょい男女比を調整してほしい。

 言っておくが、ヘタレとかそういう類じゃねーぞ。オレなりに空気を読んだんだよ。分かってくれや。

 しかし、華扇は一向に手を握ったままで緩めない。それどころか、やけに一生懸命になって交渉もとい説得まで試みてきやがった。何でやねん。

「綿間部、聞いてください。何事も情報集めは大事でしょう。幻想郷に住む顔ぶれは覚えておいて損はありません。丁度、この場に来ているのは名の知れた者ばかりです。そうなると、今後のお仕事にも関わってくるんじゃないですか?」

「そりゃごもっともなこって。けどなぁ……」

 華扇の熱心な誘い文句を受けてもなお渋る。どうしたもんかと後頭部を掻いた。これならオールバックな髪型は崩れない。

 ほんの数秒でしかない、僅かな間が経つ。やがて、今にも消え入りそうな小声が耳に触れた。

 

「…………やっぱり、帰るの?」

「ぐ………っ」

 

 握られた力はそれほど強くない、むしろ弱いぐらいだった。とても竹の酒器を握り潰した輩とは思えない。今なら振り解くことも容易いだろう。けど、それだけは絶対にしてはいけない気がした。

 まったく、いつの間にかオレも甘くなっちまったもんだなぁ……

 舌打ち――は行儀が悪いので、いつもながらの溜息一つで白旗を上げる。

 

「ま、キャラ濃い連中にオレの存在を知らしめるっつー野望もあったし、仕込みしとくのも悪くねぇか。つっても、今日は隅っこでコッソリ様子見するだけだかんな。何度も言うが、オレは女子会のド真ん中に飛び込むほどチャラくねぇぞ」

「綿間部……! はい、それならあっちに行きましょう♪」

「オイどこまで行く気だ? つーか、いつまで手ぇ握ってんだ!?」

 

 ちょいと前までとは打って変わって、幸せな笑顔を取り戻した仙人サマがいやがった。彼女は意気揚々と立ち上がり、そのまま何処へとオレを引っ張っていく。まったくもってゲンキンなやっちゃな。あと、なんで未だに離さねぇんだ。別に逃げたりせんわ。

 現在進行形で繋がった手を通じて、少女の温もりと喜びがオレに届けられる。って、そこの二人とは呑まねぇのかよ!

 

 

 茨木華扇と黒岩――本名は綿間部将也というらしい青年が仲良くお手々を繋いで歩いていく。その後ろ姿を、博麗霊夢と霧雨魔理沙がさも珍しいモノを前にしたかのような顔で見送っていた。事実、かの仙人が特定の人物に、それも外来人の男性にこれほどまでに拘るところなんて、初めての出来事なのではないだろうか。

 とんでもない光景を目撃してしまったと言いたげに、魔理沙が深く息を吐いた。

「いやー……まさかだぜ。あいつが霊夢以外にもご執心になる人間がいたなんて驚いた」

「どうりで最近華扇の説教が減ったわけだわ。あの男のおかげね。どうせなら、このまましばらく引き付けといてもらおうかしら」

「説教だけに避雷針って言いたいのか? 上手いじゃん、座布団一枚やるぜ。でもまぁ、外来人にも色々いて面白いな」

「そうね」

 しみじみと二人して好き勝手に言いながら、霊夢も魔理沙もあの男に運ばれてきた八海山を飲み進める。気付けばもう三分の一ほど中身が減っていた。美味いのだから仕方ない。

 飲んで飲まれてほどなくして、紅白巫女が鳥居の先に親友と連れ人の姿を見つける。順調に酔った満面の笑みで、大きく手を振って来訪者達を呼び招いた。

「あ。噂をすればってやつね。おーい二人ともー、こっちよー!」

 さて、今日も奥手な親友の背中を押してあげようか。また壁ドンでも起こらないかしら。

 

 

つづく




次回、二人きりの宴会

カミングスーン(仮)
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