東方扇仙詩   作:サイドカー

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遅くなりマジで申し訳ございませぬ
炎炎ノ消防隊と虚構推理を見てエ□ゲの体験版を片っ端からダウンロードしてたこと以外に言い訳はしません

※この小説はR-15くらいの健全なストーリーです
 繰り返しますがハーレム系ではございません



第四十六話 「玉座に座るのは誰だ」

『王様ゲームぅ?』

 

「うん、そう。お客さんならどんな遊びか知ってるでしょ?」

「そりゃーな」

 草木も眠る丑三つアワー。赤蛮奇が働く酒場も客足が疎らになった。見知った顔のみがこうして残り、未だに帰らずダラダラと居座っている。

 二時間前かそこらまで飲めや騒げやと宴の催しがあったのも、もはや過ぎ去りし過去のこと。兵どもが夢の跡。今は只ほどよい静けさと余韻に浸る。

 そんな中、あざとい女将が脈絡なく王様ゲームなどと口にした。今夜はオフで完全にプライベートにもかかわらず、なぜかいつもの小豆色の和服姿でやってきた。この間までは洋服も着ていたらしいが、最近はもっぱらこの格好をするようになったのだとか。

 オレからすれば逆にそっちのが想像つかない。カジュアルなファッションの女将とか。ま、似合ってんだろうけど。

 

 ミスティアの問いかけにテキトーに相槌を打っておく。徳利の底に残った燗は元々の温度が失われて正直ビミョーな後味しかなかった。口当たりもハンパ臭くて旨いとは言い難い。さっさと飲んでおけば良かった。みみっちい後悔の念にかられる。

「つーか、どっからそんなモンが出てきた?」

「チルノたち――あぁ、あたしの友達ね。なんでも知り合いから新しい遊びを教えてもらったらしいんだけど、その人っていうのが外来人みたいなの。もしかしてお客さんだったりする?」

「人違いだ」

 どこのどいつかは知らんが、なしてよりによってそのチョイスなのか理解に苦しむ。コンパじゃあるめぇしよ。他に思いつかなかったのか、その外来人は。合コンやっとる大学生かよ。

 傍らで興味を持ったのか、それまでゴマ団子を頬張っていた華扇がしっかり飲み込んでから口を開く。

「綿間部もやったことがあるのですか?」

「おぉ、不本意ながらな」

「不本意って……まさか、いかがわしい遊びなんですか?」

「違ぇわ。大体そんなんだったらガキんちょにやらせねーだろ。不本意つったのは単純に巻き込まれたからってぇだけだ」

「それならよろしい」

 すっと目を細めた仙人サマにぞんざいな口調で答える。変なところで警戒心が強い。

 ひとまず納得したらしく、得意げなツラでお許しを出してくださりおった。何故そんな偉そうなドヤ顔で言えるのか。

 

 さて、とてもじゃないがオレには不釣り合いな遊戯に付き合わされたのは、当然ながら夜の繁華街でのことである。そこそこ付き合いのある仲間が元凶だった。

 あのヤロウ、なーにがイイトコロに連れていってやる、だ。それっぽいこと抜かしといて人をキャバクラに引きずり込みやがって。

 懐かしい思い出、ただし黒歴史の一つ。思い出すだけで頭が痛くなってくる。何が悲しくて公衆の面前で野郎が半裸ストリップせにゃいかんのだ。

 どういうワケかキャバ嬢たちの方が黄色い歓声を上げてまじまじと見入っていやがったし。挙句には腹筋に触っていいかとか聞かれる始末。断ったらケチ呼ばわりされたが。

 

「いいねぇ。あたいらもやってみようよ」

「あたしも賛成」

「まぁ、手持ち無沙汰でしたし……いいでしょう」

「オイオイ、マジか」

 オレたちの会話に聞き耳を立てていた小野塚小町が面白そうだと身を乗り出してきた。気付けば他のメンツも乗り気になっている。

 というかフツーにいんのな、お前な。

 

「店員さーん」

「はいはい。今行くから待ってて」

 

 サボり魔の死神が店の奥にある厨房に呼び声を飛ばす。どのみちオレらしか残ってねぇんだから、わざわざ大きく手を振る必要もないだろうに。ま、クセみてぇなもんか。

 能天気な客のお呼びに答えつつ、赤マントのろくろ首が奥から姿をみせる。ホールスタッフらしくお盆を手にして。その上には湯飲みが一個だけ乗せられてあった。しかもよくよく見れば、箸入れさながらに割り箸が数本飛び出ている。

 中身が茶どころか飲み物ですらない湯飲みをコトンとテーブルの真ん中に置かれる。

「お待ちどおさま。これで良い?」

「準備良過ぎんだろ。オレたちの会話聞こえてたのかよ」

「他に客もいないし声がよく通るのよ」

 用件を済ませて再び店の奥に引っ込むかと思いきや、ポーカーフェイスの看板娘は戻ることなくそのまま空いている席に座った。休憩時間か?

「私も参加していい? 大将が今日はもう上がっていいって言うから」

 休憩時間じゃなくてシフト上がりだったらしい。給仕服じゃないからわかりづらいことこの上ない。せめてエプロンくらいしろと言いたい。紛らわしいから。

「珍しいわね。バンキさんがこういうのやりたがるなんて」

「どうせこのまま帰っても暇だから」

「うふふ、それもそうね。一緒に遊びましょ」

 ピンク色の髪な女将が愛嬌のあるスマイルで仕事上がりのバイトを受け入れる。この際一人増えようが二人増えようが大差あるまい。

 しかしながら、周りは全て空席な状況と真逆にいって、このテーブルだけやたら人口密度が濃い。オレと華扇と小野塚小町とミスティアと赤蛮奇。カテゴリーで見れば、外来人と仙人と死神と夜雀とろくろ首という錚々たる個性的キャラの集まりときた。あと男女比もおかしい。

 その後、店主のオヤジも出てきて保存が効かないからと余り物を提供してくれた。オレたちを除いて客もいないってぇのもあれば、時間も時間だからというのもあるだろう。この手のちょっとしたサービスは何気に嬉しかったりする。

 おこぼしが貰えて最もご満悦だったのは言うまでもなく仙人サマであった。まだ食う気かコイツ。サボりの死神も早速とばかりに酒に手を伸ばす。こっちもまだ飲む気かよ。

「王様ゲームすんじゃなかったのか。オメーが言い出しっぺだろうが」

「まぁ待ちな。その前に腹ごしらえさ。腹が減っては戦ができぬってね。そういうわけだからちょいタンマ」

 

「それなら私も混ぜてほしいかな」

 

「うぉっ!?」

 不意打ちだった。

 真後ろからか細い腕が首筋に回されて、茶目っ気を含んだ大人びた女の声が降り注いだ。反射的に振り返れば、赤いセミロングの頭髪に球体を被せた美人の顔が間近にあった。目が合うとパチッとウインクを決められる。

 

「ちゃお、将也くん」

「……あんたか」

「そ、私」

 

 地獄の女神サマことヘカーティア・ラピスラズリ。「Welcome Hell」とプリントされた黒い柄Tシャツが注目を集める。奇抜な個性派ファッションに反して当の本人はマトモな人格という。近所のおねーさんタイプなキャラである。

 クラウンピースを引き連れていないのは意外だった。てっきり保護者に付きまとっていんのかと思ったが見当たらない。というかオレはあの金髪妖精じゃねーんだから似たようなスキンシップすんなや。

「と、とりあえず綿間部から離れてくれませんか?」

「あら、これはごめんなさい」

 口の端っこをひくひくと痙攣させながら引きつった愛想笑いで華扇が告げる。それを受けてヘカーティアが素直に謝り、オレの首に絡めていた腕を解いた。ついでにその辺の椅子に座る。って、ミニスカで足組むなよ。

 飲んだくれていた小野塚小町が彼女を見て、わざとらしく目を丸くしながら大袈裟に仰け反った。

「おやおや、地獄の女神様がおいでなすった」

「女神だってたまには羽を伸ばしたいのよ。休むことの重要さなら、あなたが一番よくわかるでしょう? あるいは私よりもかしら」

「違いないねぇ」

 いかにも死神らしいあくどい笑みでくつくつと肩を震わす。なるほど、地獄繋がりで知り合いだった模様。それにしても死神と女神が来店する酒場とは、ありがてぇのか不吉なのかよくわからんな。とりあえずインパクトはありそう。

 テーブルに頬杖をついて女神の瞳がオレを映す。

 

「さっきまでクラッピーも一緒にいたのよ。すぐ帰るつもりだったんだけど、何となく将也くんの顔が思い浮かんじゃって来ちゃった。ね、どうしてだと思う?」

「さぁな。偶々だろうよ」

「んもう、結構鈍いのね。ねぇ華扇さん?」

「ふへぇ!? な、な、なんで私に……ッ!?」

 

 いきなり矛先を向けられた桃色の仙人サマが素っ頓狂な声を出してツマミを取りこぼした。急に話を振られたからって驚き過ぎだろ。

 ふと視線を感じてそちらを見やれば、小野塚小町がニマニマと意地悪いニヤケ顔を浮かべていた。人を肴に酒を飲んでいやがる。見世物ちゃうぞ。

「……んだよ」

「うんにゃ、べっつにぃ~?」

 女はオレと目が合うとピュゥピュゥと軽快に口笛を吹く。含みのある態度にイラっとくる。これ見よがしにやってんのが尚更に腹立たしい。

「お客さんもまだまだね」

「同感」

「…………」

 女将と店員のコンビまでもが呆れ顔で口々に言葉の矢を放つ。やれやれと言わんばかりの塩対応で逆にこっちは言葉を失う。

 なんだこの状況。いつの間にかオレだけアウェーになってんぞ。女特有のネットワークが利いてんのか。

 華扇とも目が合う。そわそわと落ち着かない態度で視線を逸らされた。何でや。

 

 

「イエーィッ! そんじゃ王様ゲームいってみよぉう!」

『ワーパチパチパチ!』

 テンション上がった死神が高らかに宣言すれば、仙人サマを除く女性陣が合いの手を送る。これぞまさしく深夜のテンション。とっくに日付を跨いでなおこの盛り上がり。

「ったく、どうしてこうなった……?」

「仕方ありません。皆、楽しいことが好きなのですから。それに、娯楽を嗜めるのも心にゆとりがあればこそ」

「ま、別に嫌だっつってるワケじゃねぇけどよ。飲み会に多少の遊びがある分には文句も言わん。お前ともコイントスしたしな」

「あ……覚えてたんですか?」

「フッ、そう簡単に忘れるかよ」

「綿間部……」

「はいそこイチャつくなー。あたいの話を聞けー」

「だっ!? 誰がイチャついてなどいますか!?」

 小野塚小町の棒読みに華扇がわかりやすく過剰反応して噛みつく。相変わらず煽り耐性のないやっちゃな。一方でオレには赤蛮奇のジト目が無言で突き刺さって地味に痛い。さっきからこんなんばっかりじゃねーか。

 これで接客担当の看板娘扱いだというのだから驚きだ。営業スマイルとかゼッタイやらんだろ。

「バンキさんはそのままだから人気があるの」

「頼むからさらっと心読むな。女の洞察力怖ぇよ」

 

 兎にも角にも王様ゲームである。概要をザックリ説明すると、

・参加メンバーはオレと華扇をはじめ、小野塚小町、ミスティア・ローレライ、赤蛮奇、ヘカーティア・ラピスラズリの合計六人。

・ルールは定番通り、例の掛け声に合わせて全員一斉にくじ(割り箸)を引き、先端が赤く塗られているものを引いたヤツが王様となり命令権を得る。

・命令を下された者はそれを実行しなければならない。拒否権はない。あと同じ命令も使えない。ただし、明らかに非常識なものやどう足搔いても不可能な内容は却下(クソマジメな仙人サマがそこは譲らなかった)

・あとは柔軟かつ臨機応変にやれ。以上。

 

 いざ、開幕。

 

『王様だーれだっ!』

 

「わぁ、あたしみたいね」

 和服女将が一つだけ先端の赤い箸を見つめて目を瞬かせた。

「さぁさぁ王様、ご命令をば」

 すっかり司会役にハマった死神女が女王陛下に命令を乞う。鳥少女もまんざらでもなさそうに羽をパタパタと動かす。女将なら変なコト言わんだろうし、身構える必要もあるまい。気楽に待てる。

 やがてアレコレ考えていたミスティアが「決めた」と両手を重ねた。

「それじゃあ、二番の人はあたしの肩を揉むこと」

「ってオレかよ」

「おめでとう。家来第一号ね」

「何だそのめでたくねぇ祝辞は……」

 ポーカーフェイスで赤髪のろくろ首に無機質な拍手で祝われる。どう見てもおちょくられている。なので、こっちもしかめっ面で返してやった。そんなオレたちの減らず口に華扇とヘカーティアがくすくすと微笑を零す。なにわろてんねん。

 渋々と席を立ち上がりミスティアの後ろに移動する。此度の王が今か今かとマッサージを待っておった。

 

「お客さん、お願いね」

「へーへー、仰せのままに」

 

 臣下にあるまじき雑っぽい態度で応じながら、着物越しに女将の肩に両手を載せて親指にグッと力を入れる。

「んっ」

 夜雀の唇の間から微かに上擦った声を含んだ吐息が漏れる。

「悪ぃ、痛かったか?」

「大丈夫……続けて」

 言われるがままに肩もみを続ける。しなやかな体付きは細く、これで日々の屋台を一人で切り盛りするのはキツかろう。今後は彼女の依頼をなるべく優先してやってもいいかもしれん。などと柄にもないお節介を思う。

 らしくもない考えを誤魔化すように、凝りが目立つところを重点的に狙ってツボを刺激していく。

「んっ、ん……あぁっ」

 しばらくやっていくうちに快感の混じった声音が耳に届く。オレの指裁きはなかなか好評のようであった。折角だ、もう少し強めにしてやろう。

 湧いて出た出来心に促されてオレは親指をさらに深く捻じ込んだ。瞬間、ピンク髪の鳥娘が背中を大きく反らした。

 

「あぁぁッ! つ、つよい……ぁん、お客さんってば上手なのね……?」

「フッ、そーか。オレにも才能があったってワケだ。ほれ、こういうのはどうだ?」

「んふっ……くぁあ!」

 

 絶妙な力加減で波打たせると、夜雀の甲高い鳴き声が店内に響く。和服の首回りが徐々に緩んで薄っすらと汗ばんだうなじが見え隠れする。

 肩もみなんざパシリの典型だというのに、いつしかオレも彼女のマッサージにのめり込んでいた。

 指先の生む圧力が雄々しく、かつ荒々しいものに移り変わる。まるで力尽くで押さえつけているかのようであった。臣下が主を屈服させる下克上。得も言われぬ背徳感が燻る。

 

「ふぁっ、あぁぁ♡ すごいのっ、もっと……イイ♡ 気持ちいい♡」

「だったらもっと奥まで押し込んでやる……よっ!」

「ふぁあああああん♡」

 

 ますます興奮が昂ぶり、女将が呼吸を乱してよがる。いつも屋台でみせる愛嬌はなく、彼女目当ての男性客が見たら堪えられない絵面であろう。今すぐ目の前に回ろうものなら、涎を垂らさんほどに蕩けた顔を晒しているに違いない。

 ついにはラストスパートをかけるように力強さも激しさも急激に上げていく。もはや誰にも止めることなどできない。

「このまま一気にいくからな……!」

「あっあっあっ……だめぇえ♡ だめぇえええ♡ イッ――」

 

「なにやってんですか馬鹿者ォおおおおおおおッ!!」

「グヘェッ!?」

 

 前言撤回。あっさりと止められちまった。

 華扇に後ろ襟を掴まれると同時に、凄まじい勢いで引っ張られて床になぎ倒される。引き剥がす手法があまりに強引過ぎる。思いっきり喉に食い込んだせいでヤバめな声が出た。危うく絞殺されるかと思ったわ。

 咽たり嘔吐しそうになったりしながらも犯人を睨みつける。

 

「オェっ、おまっ何しやがんだ!?」

「それはこっちのセリフです!! こんのケダモノ! どスケベ!」

「オイコラひでぇ言われようだな」

 

 茨華仙ならぬ怒り華扇が罵詈雑言を浴びせてくる。目尻を吊り上げて語気を強める気迫は凄まじく、あたかも猛獣が荒れ狂うかの如し。罵倒が終われば立て続けに説教が始まった。

「はぁ……はぁ……だ、大丈夫よ仙人様」

「どこがよ」

 熱っぽい息切れをしつつミスティアが華扇を止めようとする。が、すかさず赤蛮奇のクールなツッコミが入った。確かに目のやり場に困る格好なのは否定できない。

 小豆色の和服が着崩れて肩回りまではだけておった。真正面からだと鎖骨のラインまでくっきり見えてしまい、白い肌に珠の汗が浮かぶ。和服だからこそできる官能的な色気が醸し出される。

 言っておくが決して狙ったワケじゃねぇから。オレも女将もフツーに肩もみしていただけだ。そのハズだ。そのつもりなのだ。

「将也くんってば、やり過ぎ。私だったら拒みはしないけど」

「いやー、ないわー」

 女神と死神の赤髪地獄タッグが揃って肩をすくめる。あっという間に女性陣が尽く敵に回っちまった。はたしてオレが悪いのか。というか、さり気なく女神サマがトンデモねぇこと口走ってなかったか。

 そしてその間にも怒り心頭で荒ぶる桃色の仙人サマの説教が続く。

 

「そもそも! 女性の肩に軽々しく手を回すなんて軟派みたいな真似をすることに問題があります! 女の子なら誰彼構わず気安く触れるのですか!? だから綿間部は破廉恥なんです!」

「そーいう命令だったんだからしょうがねぇだろ……あと破廉恥じゃねーよ」

 

 飲み会のお遊び程度のハズがとんだ被害に遭ってしまった。つくづく世の中とはかくも理不尽なこって。

 とりあえず、マッサージで腰砕けになっちまったミスティアは小上がりで休んでもらうことになった。

 

 ってオイ、まだやんのかよ。

 

つづく

 




なんかこの主人公お色気ハプニング起こしてばっかりでは?
ボブは訝しんだ
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