茹だるような暑さの中、佐倉とゲームをしていると電話が掛かってきた。片手間に通話ボタンを押して、スピーカーにするとゲームを続行したまま耳を傾ける。
『もしもーし、青葉ー、起きてるー?』
「起きてるよ。この暑さの中、眠れる人は異常だね」
電話の相手はさやかだ。二度寝しようとしたら暑過ぎて眠れない事実に気づき、仕方なく朝からゲームを始めたところ、一緒のベッドで寝ていた佐倉を起こしてしまい今に至る、と言外に説明したところで渇いた笑いが通話口の向こうから響いた。
『あはは、ホント暑くて嫌になっちゃうよねー。ところで今何してるの?』
「何って……まぁ、ゲームだね」
『毎日ゲームばっかしてるでしょ。引き篭もってると身体に毒だよ』
「たまには外出もしてるよ」
『どうせ杏子にパシられてるんでしょ』
買い物に出ているだけというのを見破られていた。佐倉の尻に敷かれているというのは周知の事実のようだ。
「パシってねぇよ。……まぁ、そりゃたまには一人で出てもらうこともあるけど」
僕の足の間に座ってコントローラーを握っている佐倉が、言い訳を述べた。毎度のことながら二人きりになるとこんな調子で甘えてくる。おかげで二人揃って汗だくだ。
『普段は一緒なんだ〜?』
「煩い。どうだっていいだろそんなこと。揶揄うなら切るぞっ」
『ちょっ、待って待って、ごめんごめん!』
現在進行形で一緒–––仲良くしているとは言えず、スマホの通話終了ボタンに手を伸ばしかけた佐倉の手を通話口向こうのさやかが宥めて押し留めた。
『実は相談があってさ』
さやかが相談とは珍しい。悩みなさそうとよく言われるが、今は上条君の件があって恋に悩める少女であったのは事実、彼女のことを不憫だと思う同級生も少なくはない。
そんなさやかに少しくらい優しくしてあげてもいいだろう、と思ってはいるのだが特に何もする機会がなかった。
それが今日までのことである。
「僕が出来ることなら協力するけど」
『相談ってのはさ。恭介のことなんだけど……』
また妙な名前がさやかの口から出た。
『仁美と今度デートするらしくてさ』
「それがどうしたの?」
『前にもデートしたことがあるらしいんだけど、その時にあまり雰囲気が良くなかったみたいでさ。それでどうしたらいいかって相談を受けることになって……』
声が段々と沈んでいく。辛いのはわかる。聞いてはこっちもなんか泣けてきたから。あと、上条君は今度会ったら一発殴る。無自覚とはいえこれではさやかが可哀想だ。
そう決意した次の瞬間にはさやかの口から泥沼の一言が。
『その時、任せなさいって言っちゃったんだよね』
「え、経験もないのに?」
『それも言われたよ。……それで、つい強がって彼氏がいるって言ったらさ。何処で知ったのか「じゃあ、ダブルデートしよう!」って言ってきて』
「なにその連鎖地獄?」
上条君にしては妙な言葉を知っているものだ。
身から出た錆とは言うが、自らの首を絞めるさやかに同情すら浮かぶ。
冷静な判断が出来なかったのはしょうがない。
ただ、やっぱり上条君は地獄に堕ちればいいと思う。
「上条君がさやかに相談したのはわかるよ。幼馴染だし、異性だし。だけど、なんでそこで中沢君とか僕に相談しないのか」
初手でさやかに行った理由はわかるが、今回は悪手過ぎた。
『それも聞いたんだけどさ。……その、二人はそういう経験なさそうだからって』
–––上条君は地獄に堕ちればいいと思う。
「–––その件についてはまぁいい。事実だからね」
さやかの方が不憫過ぎて僕らは何も言うことがない。
「それで、相談っていうのはもしかして……」
『……うん。あたしの彼氏役をお願いしたいんだけど』
普段、彼女達をレンタルするレンタルサービスの逆、つまり僕がレンタルされる側になるらしい。
「その嘘秒でバレない?」
『多分ね。でも、引き下がるのもなんか嫌だし。お願いだよ、なんでも言うこと聞くから!』
「なんでもぉっ–––いたっ!?」
『なんでも』の辺りで佐倉に脚をつねられた。不機嫌そうな目で睨んでくる。別にえっちなことお願いしようとか考えてなんかないから。だからその刺すような視線をやめてほしいのだが。
『どしたの?』
「いや、気にしないでくれると助かる」
邪なことを考えるのはやめよう。
「それでデートはいつ?」
べったりとくっついてくる佐倉を軽くあしらいながら、詳細な情報を求めた。
◇
ダブルデート決行日、朝八時に駅前でさやかと待ち合わせの予定だ。
それよりも早く着くのが良いとバイブル、もとい漫画に書いてあるので三十分前には駅前の銅像前に着いていた。
まだ朝の七時だというのに既に暑い。
集合場所を決めたのはいいが、そこは日陰ではなかった。
「あっちの日陰に行こう。そうしよう」
近くにあった植木のベンチに移動する。そこはビルの影よりも涼しく、家よりも快適であった。
「朝は木陰で涼むかなぁ……」
年寄臭いかもしれないがこれが結構いいのである。そうして時間を潰していると予定時刻の十分ほど前に、僕の元へ青いワンピースの少女が近寄ってきた。
「ごめん!お待たせー!」
驚いたことに、さやかだった。凄くおめかしをしているところを見るに気合を入れてきたって感じで。普段の姿とは違って、お淑やかという言葉が良く似合う。これがギャップ萌えってやつか。
「いや、今来たところ」
「あれ?杏子には七時には家を出たって聞いたんだけど」
テンプレじみたセリフは、杏子によって阻止されてしまった。
「ちょっと前に着いたんだよ(二十分前)」
「そっか。ならいいんだけど」
格好を気にしているのか、スカートの裾がひらひらと揺れる。
「これ変じゃない?」
「そうかな?凄く可愛いと思うけど」
「……」
「どうしたの急に押し黙って?」
「いや、なんていうか可愛いって面と向かって言われると照れるね」
誤魔化すように笑いながら、さやかは赤い顔でそっぽを向いた。
「それじゃあ、時間もないしそろそろ行こうか」
「……うん」
本当は作戦会議のために早めに集まったけれど、無粋な事を言うのも躊躇われるので僕は黙ってフォローに努めることにした。
◇
今回デートで行くのは神浜市にあるという遊園地だ。上条君達とは午前十時に待ち合わせることになっている。早めに出た僕とさやかは神浜市を観光して周り、約束の三十分前には遊園地のゲート前に着いた。
「どうやら二人ともまだ来てないみたいだね」
「まぁ、二人ともしっかりしてるから時間きっかりにはくるんじゃない?」
心配こそしていないが、僕達が早めに来たのは理由がある。上条君がどんな対応で志筑さんをエスコートしているのか気になるのだ。イケメンだと思っていたが、思ったよりもリア充していない上条君がどんな風に彼女をエスコートしているのか。この機会に存分に見せてもらおうと思ったのだ。
「あら、もう着いていましたの?」
「おはよー仁美」
「おはよう志筑さん」
「いつからお待ちに?」
「仁美が来る十分前かな」
「さやかさんも楽しみで眠れなかったんですか?」
「うん。まぁ、そんなとこ」
予定時刻二十分前、最初に姿を現したのは志筑仁美だった。此方も清楚なワンピースでめかし込んでいる。他人のものとあって特に感想は浮かばなかった。しかし、早く来たのが待ち遠しくて、とは上条君には勿体無いほど可愛い彼女だ。
「僕が最後か」
満を辞してこの男は約束の五分前にやって来た。時間にきっちりしているところを褒めるべきか、此処は敢えてルーズになってもいいんじゃないかと諭すべきか、対応に困るところだ。長所は短所にもなる。
「しかし、このメンバーを見ていると一年前を思い出すな。二人ほど欠員が出ているが」
「まどかと中沢君の話?今回は趣旨が違うからね」
「二人も呼んでトリプルデートにするべきだったか?」
これ以上、人員を増やしたところで恋愛初心者な僕はどうしたらいいのだろうか。その辺は上条君も恋愛初心者のはずだ。付き合ったのだって志筑仁美が初めてらしいし(さやか情報)。
「やめとけやめとけ。正直、既にハードルはマックスまで上がってるから」
ただでさえ、デートという難易度が高い事をしているのにハードルを上げるとなると、多分誰も対応し切れなくなる。
「そうだな。じゃあ、早速行こうか」
デートもろくにしたことがない僕とさやかに、付き合い始めて一ヶ月も経っていないカップル、不安材料しかない。
早速、ゲートに向かい出した上条君と、そわそわと落ち着きがなかった志筑さん。しかし、志筑さんは軽い挨拶だけで何も言わずにゲートに向かう上条君を見て、悲しそうに肩を落とした。
どうやら服装を褒めて欲しかったらしく、その点について触れなかった上条君に何か言いたいことがあるのかもしれない。落ち込んだ様子で上条君を追い駆けていった。
「ねぇ、さやか。上条君が君の服装を褒めたことは?」
「ないね。一度も」
なんだか志筑さんが可哀想になって二人して同情めいた視線を彼女に送り、僕達もゲートを潜るべく二人を追って駆け出した。
チケット売り場でカップル割引の入場券を購入し、四人でゲートを潜る。まず初めにどうするか迷う前に受付で買ったパンフレットを手に内容を確認してみた。既に一度、ネットで調べてみたが定番の遊園地みたいなものしか置いていないが、とんでもないジェットコースターや夜はライトアップされる観覧車、パレードなどが人気なのだそうだ。そのどれもが一級品で他の都市にはないほど最新鋭らしく、〇〇初!という文字が目立つ。
まずはカップルの意見を聞いてみることにした。
「二人とも、何処行く?」
「そうですわね。コーヒーカップやメリーゴーランドなんてよろしいのでは?」
「全部回ればいいんじゃないか?」
「上条君、それは無理だよ。全部回るなんて何時間かかると思ってるのさ」
志筑さんは乙女チックで、上条君は割と脳筋で思考停止した回答を出してくれた。特に上条君はプランというものがなっていない。遊園地初心者みたいな発想である。
「効率的とまではいかないけど、行きたい場所を予め決めておこう」
既に僕はピックアップが済んでいる。観覧車、ジェットコースター、お化け屋敷、鏡の迷宮、あとは絶叫系アトラクション多数が外せない。
「あと昼食も時間帯によっては混むだろうし、予約しておいたから」
もちろん、三人の意見を基にだ。
三人とも一番人気のレストランをご所望だった。
「まずは絶叫系から回ってみようか」
開園してから間もない時間帯は待ち時間が短い。特にこの遊園地で有名なところは押さえておこうと、僕達はダブルデートを開始した。
マギレコの殲滅戦は無事にクリアしました。
薔薇園の魔女、チャレンジまで凄く苦労してパーティー組んだのにやけくそで鶴乃単体で組んだら一体でフルボッコにして。
ゴムの魔女は水着マミとマミの無限拘束ループ。
お菓子の魔女はまさらとまどかと究極まどかで寝フェリつけてスキル無効化してフルボッコ。
委員長の魔女?はウワサのさなで永遠に攻撃力下げ続けて一方的に。
ハコの魔女はバレなぎと眼鏡ほむら、みふゆ使ってギリギリ……。
微課金でも、メモリア揃ってキャラもないとやばかった。