レンタル☆まどか   作:黒樹

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sweet bitter sweet

 

 

 

遊園地を出る頃には辺りはすっかり真っ暗だった。

黒いカーテンの夜空には、街の明かりにも負けない星々の輝きが瞬いている。

僕とさやかは神浜市から電車を乗り継ぎ、無事に見滝原市へと帰ってきていた。月と星と街灯の暗がりを二人で寄り添い歩くその手には、お互いの手を握りしめたままで、今もまだ恋人気分を味わっている。

 

–––誰に見られようともかまわない。僕はまだ、少女の掌の感触を確かめていたかった。

 

「すっかり遅くなっちゃったね」

「……うん」

「もし怒られたら言って。遅くまで連れ回した謝罪に行くから」

「あはは、大丈夫だよ。男の子と一緒って言ってあるし。むしろお母さんは応援してたし、なんならお泊まりしてこいって言ってたし」

「高校生ならともかく、中学生でお泊まりはまずいでしょ」

 

駅から二十分ほど歩いたところで、さやかが立ち止まった。

 

「ここがあたしの家」

「あ、着いたの?それじゃあまた」

「うん。今日は楽しかった。……ありがと」

 

麦わら帽子を深く被ったさやかの口元が緩んでいる。名残惜しそうに感想を告げて、彼女は手をゆっくりと上げた。

 

「……それじゃあ、バイバイ。気をつけてね」

「男子中学生だよ。何も起こんないよ。さやかみたいに可愛いわけじゃないんだし」

「もう、またそんなこと言って……ホントに好きになっちゃうよ」

 

揶揄うようにケラケラと笑い、最後の一言が夜に溶けていく。

僕の耳には「好きになっちゃう」って聞こえた気がするが、きっと気のせいだろう。

 

「ほら、早く家に入りなよ」

「うん」

 

そう言って自宅の方を向いたさやかは、家を見たまま歩き出そうとしない。

最後まで見送ろうとした僕がその場で彼女が動き出すのを待っていると、不意に彼女は振り返って駆け寄ってきた。

 

「おっと」

 

抱きついてきたさやかを受け止めて抱きしめる。腕の中でさやかはしっかりと胸に顔を埋めた。

 

「–––やだ。今日は帰りたくない」

 

女の子特有の甘い香りがする。

女性らしい柔らかな感触と、人肌の温もり。

小さくも発展途上のおっぱいの感触がして、首筋にぞわぞわとした感覚が奔る。

 

「……そんなこと言うと、僕も我慢できなくなっちゃうんだけど」

 

思春期の欲求が持ってけドロボーと、さやかのお持ち帰りを催促する。

 

今日一日で感じたさやかの女の子としての可愛らしさが、今も鰻登りで上昇する。

 

「だってぇ」

 

弱音を吐くさやかが上目遣いに見つめてくる。涙目も相まって心揺さぶられるようだった。

 

「……本当に上条君には勿体無いくらいいい幼馴染だよね」

 

ぎゅっと抱きしめて髪を撫でる。彼女の肩越しに家を見たところで、僕はその異変に気づいた。

 

「「「「……」」」」

 

門柱の裏から、黄色のドリル、赤色のポニーテール、ピンク髪に赤リボン、真っ黒な銃口が覗いているのだ。

 

「……あぁ」

 

全てを察した僕は、生贄を差し出すようにさやかを引き剥がした。

 

「早く帰らないと親御さん心配してるよ」

「ねぇ、今気づいたでしょ。あたしをひとりにしないで!」

「……大丈夫。コワクナイ」

「青葉の家に泊まらせて!なんだったら一緒にお風呂にも入るし、添い寝もするから!」

 

死んでも道連れにしようとするさやかは、僕に抱きついて離れない。おっぱいくらい当ててやる。だから一緒に地獄に堕ちようと勧誘してきていた。

 

「火に油を注ぐのやめて、死んじゃうから!」

「あたし知ってるんだからね!杏子とほぼ毎日一緒にお風呂入ったり、添い寝したりしてるの!」

 

さやかが杏子の秘密を暴露した瞬間、門柱の向こうの気配がざわめき始めた。赤いポニーテールが動揺して揺れている。

 

「ちょっと待てたまに!たまにだってば訂正しろ!」

 

門柱から飛び出てくる人影。赤いポニーテールの少女–––佐倉は顔を真っ赤にしながら、事実を否定するかのように訴えかける。

 

「あ、兄貴も否定しろよ」

 

僕を“兄”と呼ぶのが恥ずかしいのか、一緒にお風呂入ってることをバラされたのが恥ずかしいのか、それとも両方か。林檎のように赤い顔は夜の暗がりでもはっきりとしていた。

 

「“たまに”か“ほぼ毎日”かは人によるんじゃないかな」

 

僕の主観では、ほぼ毎日だ。甘えたがりな妹で実に可愛らしくて僕としては嬉しい限りである。

 

「それは聞き捨てならないわね」

 

しかし、一回でも事実があるということが琴線に触れたみたいで、他の女の子達は許してくれないらしい。

門柱から現れたほむらは汚物を見るような目で僕を見ている。

 

「そうだよね。いくら兄妹って言っても、血が繋がってないしダメだよ?」

 

続いて出てきたまどかは、笑顔でもっともらしいことを言うが何故か纏っている雰囲気がおかしい。

 

「そうよね。私も不純な関係はいけないと思うわ。佐倉さんだけずるいんじゃないかしら」

 

ドリルと中学生に似合わない豊満なおっぱいを揺らしながら、マミが嗜めるフリをして本音を吐露した。

 

「僕はいつでもウェルカムですよ」

 

マミ先輩の生おっぱいを見られるなら、そんな思いで食いつけば他女子四人の視線がキツくなる。

 

「へぇ、やっぱりあのおっぱいがいいんだ」

「お、大きいもんね。マミさんの……その、おっぱい」

「変態は死になさい」

「……あたしの触ったことあるくせに、そんなにマミのがいいのかよ」

 

最後にとんでもない一言が佐倉から発せられて、四人の視線が一斉に集まる。

 

「いや〜、あれは事故というか……違うんですよ」

 

事実無根とは言い難い。触りたい欲求があったのも事実。だから、強く否定もできなかった。

 

 

 

 

 

 

「はぁ。……酷い目にあったな」

 

夜も遅いため、尋問は翌日に持ち越された。

一時的に仮釈放された僕とさやかは、疲弊しながらも無事に帰宅することができた。

今は一日の疲れをお風呂で癒しているところ。

夏は半身浴ばかりで、少しぬるめの湯船に身を浸している時だった。

 

「……」

 

無言で浴室の扉が開き、佐倉が裸で浴室へと入ってきた。

慣れた様子で髪と体を洗い汚れを落とすと、湯船へと侵入して僕の膝に勝手に座った。

 

「……なにか文句あるのかよ?」

「いーや、別に。なにも」

 

人前ではあまり甘えたがらない佐倉だが、二人きりになるとこの通り。仲のいい兄妹の距離感を通り越して、同棲中のカップルよろしく甘えてくる。

 

「あっそ」

 

ツンツンとした態度で、背中を預けてくる。無防備な少女は全幅の信頼を寄せてくれていた。

 

「佐倉さんや、僕が男なの忘れてない?」

「……忘れてねぇよ。兄妹なんだから、一緒に入るのは当たり前だろ」

「OK,そういうことにしておこう」

 

その方が僕にとっても都合がいいので、そういうことにしておく。

 

「それはそれとして、僕がさやかとデート行ったのがそんなに嫌だったの?」

「ちげぇし」

「それで拗ねちゃったのか佐倉は」

「ちげぇっての」

「奪られると思ったんだ」

 

–––ゴンッ。佐倉の頭が顎にヒットした。

 

「……痛い」

 

思わず舌を噛みそうになった。文句を言おうと視線を戻すと、佐倉は寂しそうに膝を抱えていた。

 

「杏子は甘えん坊だなぁ」

「こういう時ばっかり名前で呼ぶのずるい」

「いいだろ。こういう時くらい」

「どういう時だよ」

「さぁ?」

 

猫と僕は気まぐれな生き物なのだ。どうか許してほしい。

 

「……責任取れよ」

「その言い方だとまるで僕が杏子に手を出したみたいじゃん」

「裸を見た責任だよ」

「初回といい風呂場に勝手に乱入してくる杏子に問題があると思うんだけど」

「知らないし。裸を見られた以上、あんた以外に嫁げるわけないじゃん」

「考え方古くないですかね」

「……嫌なのかよ」

 

不安そうに佐倉は声を荒げて、僕の方を振り返った。

 

「嫌じゃないから困ってるんだよ。……心配しなくても、絶対に一人にしないから安心して」

「……さやかとデートした癖に」

 

やっぱりそれが不満だったらしく、佐倉は不満を隠そうともしない。今度は素直に拗ねる。

 

「だから、明日は一日中一緒って約束したじゃん」

「深夜零時からスタートだからな。お風呂も寝るのも一緒だぞ。勝手に部屋出るの許さないからな」

「はいはい」

「……わかってるならいいんだよ」

 

ようやく許してもらえたのか、佐倉は嬉しそうに頰を緩めた。

 

「……あと、あたしを一番愛してるって言え」

 

わがまま可愛いうちの偽妹は、可愛らしい要求を突きつけてきた。

 




「みんな死ぬしかないじゃない」とか言って仲間殺害する人とか、「ひとりぼっちは寂しいもんな」とか言って心中する人とか、「私は何度でも繰り返す」とか言って何度も大切な人のためにやり直す人とか、親友に幼馴染NTRた人がまた恋に敗北したらと思うと個別ルートBADENDしか存在しない気がするんですよね。

一番の光属性っぽいまどかも周りが闇属性多すぎるし……。
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