この「モンスター」に慣れるまで、私は翻弄されまくりました。

闘っている夢を見て、「オトモアイルー」が一匹だった事から、恐らく「MHP2nd」が舞台だったものと思われます。

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これは、私が見た夢を基に書いたものです。


漆黒の風を求めて

 

 

 

 雪深い山の麓に張り付くようにある、ひなびた村、【ポッケ村】。

 ひょんな事でその村付きの【ハンター】になったアリュシュオンは、【オトモバァ】から雇った【オトモアイルー】、【サスケ】を従えて、【樹海】に赴いていた。

 『樹海で漆黒の風が吹く』との噂が相次ぎ、【ハンターズギルド】にも要請が来たからである。

 

「漆黒の風、って……。風に色なんかあんのか?」 

「ボクもそんな風見た事ないですにゃ」

 【ベースキャンプ】に着いた一人と一匹は、お互いに顔を見合わせて首をかしげた。

 しかもその【風】に触れた者は、なぜか切られたように皮膚が裂けたという。

 まあともかくもエリア全部をくまなく回ってみようと、まず地図で《6》と書いてある所へ行ってみる。

 もし【モンスター】であるのなら、比較的狭い(というよりは細長い)エリアである、《1》には行かないだろうと思ったからだ。

 そこを抜けて《5》、続いて《4》まで来た時、エリアの一部に黒い塊があるのに気が付いた。

 

 あれ? 前はこんなのあったっけ?

 

 そう思いつつ近付こうとすると、その塊がほどけ、跳ねた。

 そして流れるような黒い残像を残して消えた。

「な、なんだ今のは!?」 

 面食らったアリュシュオンだが、とにかくその後を追おうと再び《5》まで行ってみる。

 上からいきなり落ちて来たように現れた、先程の黒い塊と思われるものは、よく見ると猫科の動物のような顔がある事が分かった。

 

 つまり【モンスター】である。

 

 両目から両耳のあたりまで一筋付いている、赤い模様以外は全部黒。

 身体は細く、長い尻尾まで流れるような流線形。

 顔だけでなく姿も【大型の猫】といった風情だが、ただ一つ違うのは、前足にやや小ぶりな翼が付いている事だった。

「【飛竜種】、なのか?」

 思わずつぶやいた声を聞き付けたかのように、顔をこちらに向けるや否や飛び退った【モンスター】。

 

 そして、威嚇の声を上げた。

 

 思わず【太刀】を構えると、そいつは視界から完全に消えた。

「ど、どこ行った!?」

 慌てて首を巡らすと、そいつはいきなり後ろから襲って来た。

「うわわっ!?」

 体を捻って辛うじてまともに攻撃を食らう事は避けられたが、翼が掠ったと思った途端、腕に痛みが走る。

「いって!?」

 見ると、まるで切られたように裂けていた。 

 慌てて対峙すると、翼の外側が光っている。

 が、詳しく見る暇も無く再び視界から消えた。と思ったら、今度は横から襲って来た。

 

 は、早ぇ!! 

 

 また切り傷を付けられたと思ったら、攻撃を加える間も無く視界から消え、目で追う時間さえ与えられずに再び襲われた。

 

 これが【風】の正体か……?

 

 彼は完全に翻弄されていた。

 攻撃がまったく当たらないのだ。当てようとしてもすでに遅く、何も無い空間で空振ってしまう。

 相手は黒い残像を残し、縦横無尽に襲って来る。

 

 そう。まさに【漆黒の風】。

 

 彼はなす(すべ)も無く体中を切り刻まれながら、いつしか気が遠くなってしまった。

 

 

 どさりっ!

 

 アリュシュオンは、乱暴に放り出された事で気が付いた。

 訳も分からず上半身だけ起してみると、丁度賑やかにニャアニャア鳴き交わしながら【猫車】が去って行く所だった。

 とうやら気を失った彼を見付けた【アイルー】たちが、【猫車】で助けて【ベースキャンプ】まで運んでくれたようである。

「旦那さん、大丈夫ですかにゃ!?」

 その傍でオロオロしながら【サスケ】が見上げている。

 

 良かった。こいつも無事だったか……。

 

 ホッと安堵の息を吐いたら、体中の痛みが襲って来た。

「い、いてて……」

 幸いにも全部深手ではなく、かすり傷程度だと分かった。

「あいつ、わざとやりやがったな……」

 【回復薬グレート】を飲みながら、忌々しげに呟くアリュシュオン。

 そうとしか考えられないのだ。

 なぜなら奴がもし本気なら、あれほど大きな体躯をしている【モンスター】が、致命傷を与えずにそのままにして置くはずがないからである。

 

 【警告】、あるいは【宣戦布告】。

 

「――面白いじゃねぇか!」 

 彼は武者震いを止める事が出来なかった。

 

 

 次に奴を見付けたのは、《2》のエリア。

 丁度自分は高台にいたので、茂みに隠れて少し観察してみる。

 そうでもしなければまともに姿すら見られないからである。

 それで初めて、先程光っていた翼の外側が、まるで(やいば)のように薄くなっている事が分かった。

 どうやらこれで切り傷を付けているようである。

 

 そういや奴が動いた後の草や木の葉が、切れたようになってたっけ。

 ならばこいつが生息する場所は、注意深く見れば草葉が切れてる事で分かるという訳だ。

 

 そう思いを巡らせつつ、更に観察を続ける。

 と、縄張りを侵されたと思ったのか、そこにいた【ランポス】が奴に飛び掛った。

 奴は地面に付けたままの前足を、ぐるりと内側に半円を描くように大きく回した。

 刃状の翼に触れた【ランポス】が、なんと真っ二つになる。

 

 すげぇ切れ味だな……!

 

 今のは飛び掛って来た勢いも利用したのだろうが、あんなのをまともに食らったら、【ハンター】の腕や脚ぐらいは切り落とされるかもしれない。

 

 再び武者震いしたせいで茂みが揺れたのか、気付かれた。

 

 が、相手が威嚇している間に【ペイントボール】を当て、隣のエリアに逃げる。

 【ガンナー】なら高台でそのまま攻撃出来るだろうが、【剣士】は高台から下りない限り、攻撃不可能だからである。

 それに《2》は狭いので、ただでさえ翻弄されている彼には危険すぎるのだ。

 

 すり潰した【ペイントの実】の発する強力な匂いを頼りに追いかけると、再び《4》に降りた事が分かる。

 【アプトノス】が多い場所なので、どうも狩場に使っているようである。

 

 《4》まで行くと、丁度こちらに背中を向けていたため、こっちも宣戦布告とばかりに尻尾に切り付けた。

 

 その場で一瞬にして百八十度回転し、牙を向いて唸る相手。

 

「よぉ、また来たぜ」

 挨拶代わりに顔に切り付けようとすると、案の定視界から消えた。

 が、先程よりは見えてきて、視界の端に移動した黒い風の塊を、横に凪ぐ。

 悲鳴を上げて怯んだ隙に対峙し、踏み込みつつ突く。

 切っ先が食い込んだ手応えを感じた瞬間、【太刀】を跳ね上げるようにして真上に切り上げる。

 彼の攻撃は、序々にではあるが【漆黒の風】を捉えられるようになっていた。

 

 しかし【爆弾オトモ】として鍛えられた【サスケ】が、火の点いた【小樽爆弾】を投げた事で情況が一変する。

 爆弾が当たったと思った次の瞬間飛び退った相手が咆哮したその時、目が赤く尾を引いて光るようになったのだ。

 

 それからは更に相手の速度と攻撃力が増し、再び攻撃出来なくなってしまった。

 その速さは、さながら【漆黒の疾風】のよう。

 そして【サスケ】の前に現れたと思うや否や、シュルルッとガラガラヘビの威嚇のような音を出しつつ、尻尾を、棘を逆立たせながら上に立て――!!

「危ないサス――!」

 ハッとしたアリュシュオンが彼を押し退けて相手と向かい合ったその刹那、逆立った尻尾の棘が放射状に飛んで来た。

 ビシビシッ! と音を立てていくつかが地面に刺さる。

 その一つがアリュシュオンの胸を襲った。

「がはっ!!」

 仰向け状態のまま、勢い余って思い切り地面に叩き付けられる彼。

 それでも右手を付いて半身を起すと、相手は唸りながら牽制するように尻尾を地面に二度ほど打ち付け、黒と赤く引く光の残像を残して飛び去った。

 

 助かった……、のか?

 

 見回してみたが、黒い風の気配は無い。

 

 止めは刺さない、という事か?

 

 ともかくゆっくり立ち上がってみる。

「ごめんなさいにゃ、ボクのせいで、ごめんなさいにゃ……」

 【サスケ】が半泣きになりながら、オロオロ周りで走り回っている。

「だいじょ――!?」 

 声をかけようとして急に目の前が暗くなったアリュシュオンは、ぐらりと体を傾けた。

「旦那さん!!!」

 

 ……まいったな……。

 

 急激に血圧が下がっているのだ。棘はまだ刺さったままだが、ここで抜くわけにはいかない。

 

 とにかく【ベースキャンプ】まで帰らないと……。

 

 ふら付きながら二、三歩進んだが、膝から下が抜けてしまう。

「旦那さん! 旦那さん!!」

 サスケはもう半狂乱になっている。

「落ち着け。大丈夫だから……」

 声をかけたが、この様子では落ち着きそうにない。

 せめて動けるまで回復しようと、【回復薬グレート】をがぶ飲みした。

 

 何度か膝を付き、その度に【回復薬グレート】をあおりながらも、どうにか【ベースキャンプ】まで辿り着いたアリュシュオンは、テントの前で座り込み、刺さったままになっている棘に手をかけた。

 歯を食いしばって力一杯引き抜くと、ブシューッ! と音を立てて勢い良く血が吹き上がった。

 そのまま気を失いそうになったが無理矢理意識を取り戻し、胴鎧を脱いで予め【回復薬グレート】を染み込ませておいた布を、傷口に押し付ける。

 ある程度出血が抑えられるまでそのまま押さえておいてから、横でわんわん泣いている【サスケ】を叱咤し、彼に手伝わせて布をきつく巻いた。

 安堵の溜め息をついて座り直し、改めて棘を眺めてみる。

 棘だと思った物はよく見ると、細長いが棘状にはなってなく、平らで先端が鋭く尖っている様は、まるでナイフのようだった。

 しばらく陽光に当ててためつ眇めつした後、戦利品とばかりに【アイテムポーチ】に入れる。

 

 ベッドで寝て休憩したアリュシュオンは、ほぼ体力が回復したのが分かったため、再びフィールドに足を踏み入れた。

 実は完全に怯えきっていた【サスケ】に散々止められたのだが、「お前を置いてでも行くからな!」と言うと、しおしおと耳を垂れながらも付いて来た。

 

 

 次に奴がいたのは《5》のエリア。

 重症を負わされたが相手も傷だらけだったはずなので、木の上で休憩しているようである。

「これじゃ届かねぇな……」

 【太刀】の届かない高さだったので、どうしたもんかと考えて、【閃光玉】を投げてみる。

 

 と、案の定視界から光が消えたと思った頃に降りて来た。

 

 幸いにも、まだ奴の傷は完全には癒えてないようである。

 大型の【モンスター】は、深手を負うと一定のエリアで寝て回復しようとするからだ。

「よぉ、そろそろ決着といこうぜ」

 そう声をかけると、忌々しげに牙を向いて唸った。

 太刀を構えると、相手は斜めにためを作るようにして身を沈めた。

 そして細かく回り込むようなステップをしながら飛び掛って来た。

 横転して避け、後ろを向くと、終わり際に背中を向けたまま唸っていたのでその隙に尻尾を切りつける。

 硬い鱗が剥げて傷が付いたが、切り落とすまでには至らなかった。

 向き直ったので頭を狙おうとすると、その場で短く跳ねつつ体を捻り、反動をつけて尻尾を凪いで来た。

 ただでさえ長い尻尾が伸びたように感じたと同時に、鞭のようにしなったものが唸りを上げて襲って来る。

 思いの外広い攻撃だったため、避けようがなく食らってしまう。

「うがっ!!」

 思い切り横に吹っ飛ばされ、何回転か転がされてようやく止まった。

 立ち上がると同時に先程のように尻尾の棘を飛ばして来たので、緊急回避(スライディングジャンプ)で避ける。

 なんとか隙を見付けて【回復薬グレート】を飲んでから、構える相手に一太刀浴びせて横回避。

 

 向き直ると、ようやく勇気を振り絞ったのか、【サスケ】が火の点いた【小樽爆弾】を投げ、案の定怒らせてしまった。

 

 だが【漆黒の疾風】と化した相手にも、どうにか付いていけるようになった。

 それでも攻撃を食らいつつ、【回復薬グレート】を飲みながらも粘っていると、動きが鈍ってきた。

 

 いけるかもしれない!

 

 そう思った矢先、背後から切りつけようとした彼に、棘を逆立てたままの尻尾が叩き付けられた。

 

 ビターーーン!!

 

勢い余って地面に食い込んだ棘を、何度も踏ん張りつつ抜いた相手。

 その下には、肩から脇腹にかけて斜めに無数の穴を空けられた、アリュシュオンが転がっていた。

 

 

 泣きながら帰って来た【サスケ】の報告と、他の【ハンター】や一般人らの報告を受けた【ハンターズギルド】は、この【飛竜種】を新種として認定し、【ナルガクルガ】と名付ける事にした。

 

 (のち)に【迅竜(じんりゅう)】とも呼ばれるようになったこの【モンスター】は、【ポッケ村】から遠く離れた【ユクモ村】にも出現するようになり、その生息範囲の広がりと共に脅威の対象、あるいは【上位ハンター】の好敵手として狩られるようになったという。    




実際に見た夢はオトモを庇って飛ばされた棘にやられたシーンあたりだけですが、それに着色してこんな話に仕上げました。

「今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。」の中に組み込んでも良かったんですが、登場人物が違うので別の短編にしました。

ちなみに登場しているキャラ名「アリュシュオン」も「サスケ」も、実際に私が「MHP2nd」で使っていたキャラ名です。
当時は英語表記しか出来ませんでしたが、小説ではカタカナにいたしました。

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