ゴルフの放送でキュウレンジャーの放送が無かった時に、マイナーSNSに日記として投稿したものを加筆しました。

 ってか、加筆じゃなくなる程に日記の原型が(笑)

 思いっ切り!

 ネタなお話なのは、いつもの事ですが(笑)



 キュウレンジャーのメンバーを思い出しながら、読んでいただけると、より楽しめるかと思います。


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宇宙戦隊キュウレンジャー ゴルフ

「待っててよ、みんな。」

 クマボイジャーのコックピットで呟くコタロー。

 その傍らに置かれた箱に、手を置く。

 

 

 少し、前の事。

 

 リベリオン本部で、キュウレンジャーとなるべく厳しい訓練を受けているコタロー。

 

 本部長からの突然の呼び出し。

 

「コタロー。君に任務を与える。」

 目の前のテーブルに置かれた大きな箱を目線が落ちる。

「これをキュウレンジャーの元へ届けてくれ。」

「これは?」

「完成したばかりの新しい武器だ。」

 その言葉は、コタローの目を輝かせるには十分だった。

「オッキュー!」

 

 

 思い出し、操縦桿を握る手に力が入る。

 それに呼応するかのように、クマボイジャーはノズルの光る尾を長く引きながら加速する。

 

 

 

「目的の星の周回軌道に乗りました。」

 ラプターの報告が船内に響く。

 

「キューレット・ザ・チャンス!」

 ショウ・ロンポーが出撃するメンバーを決めた。

 ガル、ハミィ、スパーダ、ナーガ。そして、ラッキーはいつもの事。

 

 

 街に落ち立つキュウレンジャー。

 

「静かじゃけん。ジャークマターの姿も見えんしのう。」

 身構えていたガルは拍子抜けのようだ。

「油断するな…。」

 何かを感じているのかナーガの緊張が声に乗る。

 

 

「ふぁー!」

 突如、街に谺(こだま)する声。

 

「気を付けろ!」

 ラッキーが注意を促す。

 

 身構えるキュウレンジャー達。

 

「危ない!ハミィ!」

 それに気が付いたのはラッキーのラッキーたる由縁か?

 

 ハミィに向かい、

 

 飛び!

 

 庇い!

 

 転がる!

 

 ラッキー。

 

 

 ハミィのいた場所に飛来する小さな白い球体。

「敵の攻撃? どこから?」

 周囲に気を配り攻撃の出所を探る。

 

 

 手に長い棒状の物を持って出て来る人々。

 

「油断するなガルよ。武器を持っているガル。」

 服装から、この星の住人と判断したようだ。

 

 一歩、前に出る男。

「大丈夫だったか?」

 本当に心配している声だった。

 

「ああ、当たらなかったぜ。」

 立ち上がりながら、自らのラッキーに感謝。

 

「まさか、人が居るとは思わなかったんだ。」

 どうやら、キュウレンジャー達の事を言っているらしい。

「一応、声出しはしたんだが…。」

「さっきの『ふぁー』はお前達か?」

 ナーガが興味を持ったように聞いた。

「ああ、そうだ。決まりだからな。」

 

「決まりって?」

 ハミィも立ち上がりながら聞く。

 

「この星を支配するダイカーンが決めたルールさ…。」

 人々は項垂(うなだ)れた。

 

「ルールだって?」

 引っかかるラッキー。

 

「外出する時は、これで目的地までボールを打ちながら行かないと活けないんだ。」

 見せたのは、皆が持っている棒状の物。

「クラブと言って、このボールを打つ専用の道具さ。」

 先程、飛来したのはボールだと判った。

 

「なんて面倒なんだ。」

 スパーダは呆れる。

「本当ガルよ。」

 ガルも同意。

 

 

「やっぱり、来ていたか!」

 声と共に現れたのは、

「ジャークマター!」

 ラッキーを先頭に身構えるキュウレンジャー。

 

「私は、この星を任されているダイカーン【剛龍風(ごうりゅうふう)】。」

「貴様か、皆に変なルールを押し付けているのは!」

 向けた人差し指に怒りがこもるラッキー。

「行くぞ! 皆!」

「オー!」

 其々がキュータマを取り出す。

 

「待て、キュウレンジャー。」

 剛龍風が制する。

「何、命乞い?」

 ハミィが警戒しながら聞く。

 

「いや、命乞いするならお前らの方だと思うが。」

 声が如何にも愉しそ。

「何いってんの?」

 スパーダの言葉も最もである。

 

「おい。」

 剛龍風の掛け声で引き出される人質達。

 

「人質だと、卑怯だぞ!ジャークマター!」

「卑怯だと? こいつ等は、人質では無い。」

「じゃあなんなのよ。」

 ハミィの疑問。

「景品だ。」

「景品?」

 ナーガも言葉の意味を計りかねている。

「そうだ、プレーして勝った方が景品を貰う。簡単な事だ。」

「プレーだと?」

 ラッキーの疑問。

「これだ。」

 剛龍風が取り出したのは、住人達が持っている棒状の物。

「ゴルフ対決で私に勝てば良いだけの事だ。」

 

 気を抜かず、目線を外さず、

「ゴルフってやった事あるか?」

 ラッキーは皆に聞く。

「ないガル。」

「ないよ、料理なら何とかなるのに…。」

「ないな。」

「ないわよ。」

 答えを聞き、

「俺もないぜ。」

 

「あんた、ゴルフ得意なんでしょ! こっち不利じゃん。」

 ハミィの意見も最もである。

「当然だ。解っている。ハンデを付けよう。」

(警戒するのは、ラッキーのラッキーだけだ。ハンデに見せかけたラッキー潰し、気付くまいて。)

「ゴルフは紳士のスポーツだからな。」

 

「どうする?」

 皆に聞くラッキーだが

「と、言ってもやらない選択肢は無いかな。」

 最初から腹は決まっていた。

 

「解った、受けて立とう。」

 ラッキーの返事に皆が無言で頷く。

 

「では、ハンデは100…。」

 考え、

「200やろう。」

 

「案外、紳士なのかもよ。」

 ハミィの言葉。

「いや、所詮ジャークマターだ。何をしてくるか判らない。油断するな。」

 ラッキーの警告。

 

 

「早速、プレー開始といこうか。付いて来い。」

 全員が歩き出す。

 

 

「お前達は、一つのボールを5人で順番に打て。」

 ボールを差し出す剛龍風。

「解った。」

 受け取るラッキー。

 

(これで、ラッキーが起きるのは5回に1回だ。)

 ほくそ笑む剛龍風。

 

 

「お前達からだ。」

「俺から行く。」

 ティーグランドに立つのはラッキー。

 

「ふん!」

 ラッキーの第一打。

 

 やはり素人。ボールはあらぬ方向へ。

 

 その時、偶然飛んでいた鳥に当たるボール。そして、偶然の強風。

 ラッキーのラッキー。

 フェアウェイのド真ん中に落ちるボール。

「よっしゃー、ラッキー!」

 

(やはり、あのラッキーは油断できんな。全力で潰しにかかるか。)

 

『パチパチ』

「ナイスショット。」

 拍手と共にエールを送る剛龍風。

 

「今度は私の番だ。」

(ターゲット、ロックオン!)

 剛龍風が狙うのは…。

 

「あっ!」

「えっ!」

「まさか!」

「ガル!?」

「そんな…。」

 驚きの5人。

 

「おやおや、偶然とは恐ろしい。」

 剛龍風は笑う。

 

 そう、剛龍風が狙ったのはキュウレンジャーのボール。

 

 剛龍風のボールに弾き飛ばされ、側の森の中へと吸い込まれる。

 

「わざとやったガルな!」

 熱くなるガル。

 

「いやいや、いくら私でもボールを狙うなんて無理だよ。」

 戯(おど)け、

「それとも、証拠でもあるかな?」

 

「くっ!」

 今にも飛びかかりそうなガル。

「止めろ、ガル。」

「ラッキー。」

 制し、

「俺達は、正々堂々とお前に勝つ!」

 突き出しす拳は、ちからづよく握られていた。

「解ったガル!」

 皆の心が一つになった。

 

 

 素人。

 それは、希望を打ち砕く称号。

 

 瞬く間に消費されるハンデ、近付くピンチ。

 

 

「このままでは…。」

 諦めにも似たラッキーの言葉。

「ギブアップかね。」

 剛龍風は勝ちを確信した。

 

 

 空を劈(つんざ)く轟音。

「皆、お待たせ。」

 

 見上げた空にはクマボイジャーが舞う。

 

「とう!」

 あの箱を抱え、地上へと降り立つコタロー。

 

 状況を確認すると、

「良かった。間に合ったみたいだね。」

 コタローがあの箱をラッキーに渡す。

 

「これは?」

「新しい武器。この状況にピッタリだと思うよ。」

「解った。使わせて貰う。」

 

 箱を開けるラッキーが見たものは、

「これは…。」

 驚く以上にときめき、

「『キュードライバー』さ。」

 コタローが名前で答えた。

「よっしゃ!ラッキー!」

 キュードライバーを手に飛び上がるラッキー。

「反撃開始だ!」

「オッキュー!」

 諦めムードを一蹴された。

 

 

 キュードライバーのお陰で、プレーは互角となった。

 

 

 そして、迎えた最終ホール。

 

 

「これを入れれば私の勝ちだ!」

 グリーン上。パターで狙う剛龍風に対して、キュウレンジャーのボールは遥か後方。

 

『コロン』

 小さいが、大きな勝利の音。

「私の勝ちだ!」

 カップのボールに手を伸ばす剛龍風。

 

「待てよ。俺達がまだ打ってないぜ。」

 ラッキーが制した。

「無駄な足掻(あが)きだ。」

 手を止め、

「良かろう。打って負けを認めろ。」

 

 

「いくぜ!」

 握る手に力と、皆の思いがこもる。

「そりゃ!」

 フルスイング!

 

 ラッキーの打ったボールは高く、高く…。

 そして、高く舞い上がる。

 

 ボールは雲を抜け、天を抜け、宇宙へ到達し、頂点となる。

 

 スピードがゼロになる時、位置エネルギーが最大となる。

 

 次に位置エネルギーは、スピードに再変換され、炎を纏い流星を作る。

 

 落ちた。

 

 大爆発。

 

 グリーンが火山の如く噴き上がる。

 

 舞い上がった土埃は視界を遮る。

 

 

 視界が戻った時、皆が見たものは…。

 

 グリーンにできた巨大なクレーター。

 

「な、ないぃ!」

 剛龍風が驚きの声を上げた。

 

「俺達の勝ちだな。」

 ラッキーの勝利宣言。

 

 そう、クレーターの底にはラッキーの打ったボールだけが残っていた。

「剛龍風!お前のボールは何処にも無いぜ!」

 逆転。それが勝利の決め台詞。

 

 

「こ、こんな馬鹿な負け方があるか!!」

 剛龍風の怒り。

「こうなったら、実力行使だ!」

 振り上げたクラブは、競技の道具ではなく、戦う武器。

 

 

 始まる真の戦い。

 

 

 そして、追い詰められる剛龍風。

 

「ハミィ、これを。」

 コタローが渡したのはキュウレンジャーのマークが付いたゴルフボール。

「これは?」

 

「キュウレンジャー・タイフーン。」

 それは必殺の名前。

「みんなでボールにキューエナジーをチャージするんだ。」

「解った。」

 返事と同時にキューエナジーを込めるハミィ。

 

「ナーガ。パス!」

 ハミィからナーガへ。

 

「スパーダ。」

 ナーガからスパーダへ。

 

「ガル。」

 スパーダからガルへ。

 

「ラッキー、決めるガル!」

 そして、ガルからラッキーへ。

 

「よっしゃ!ラッキー!」

 キュードライバーを振りかぶり、渾身のインパクト!

 

 キューエナジーの込められたキュウレンジャー・タイフーンは光の尾を引きながら剛龍風へ。

 

「ホールインワン!!」

 倒れ大爆発!

 

 キュウレンジャーの勝利!

 

 

「コタロー。助かったよ。」

 ラッキーの感謝の言葉。

「いやぁ。僕は運んで来ただけだし…。」

 照れるコタロー。

 

「ラッキー。」

 ナーガが珍しく割って入る。

「どうした、ナーガ。」

「これを見てくれ。」

 それは、ラッキーの持つキュードライバー。先端部分からスパークが漏れている。

「壊れてる?」

 驚くラッキー。

「あちゃー。」

 コタローは頭を抱えた。

 

「持って帰って直して貰うよ。」

 コタローはキュードライバーを受け取った。

 

「頼むぜ。コタロー。」

と、ラッキー。

 

 

 斯(か)くして、この星はジャークマターの支配から開放された。

 

 

 だが、この事は地球では語られなかった。

 

 そう!

 

 ゴルフの放送だったから!

 



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