これから少しずつ戻して行きたいと思います。(少しずつですが。)
あの後俺達は依頼の紙が貼られているクエストボードの前まで来ていた。
ナリィは家の手伝いなどがあるとのことで帰宅した、命まで救っていただいたのにこれだけしかできなくて…などと言っていたが、これだけでもすごく助かったしナリィには本当に感謝している。
それで現在冒険者へとめでたくなったわけだが、最初の依頼をどうしようか悩んでいる。
『師匠、やはり最初は採集の依頼を
『採集ね、冒険者になりたての者は大抵が採集から始める場合が多いが、君には魔法という技術がある。最初に実践というものを経験してから採集の依頼を受けるのもいいんじゃないかと僕は思っている。』
なるほどね、あの屋敷では師匠に魔法の知識を叩き込まれただけで言われた通り実戦の経験はあまりない。
食費などは師匠が働いていた時の蓄えのおかげで何とかなり、俺が近隣の村へ買い出しなどに行っていた訳だが、その途中でたまにだが魔物にも襲われることもあった。
その頃には、無詠唱魔法の使い方なども多少は出来ており魔物の撃退には何ら支障も出なかった。だから少しは戦闘経験があるわけだ。
『師匠がそういうのであれば、これからの事も考えて先に慣れるのを踏まえ依頼を受諾してみるのもいいかも知れません。』
『そうか、ならこれを受付の所へ持っていくといいよ。』
猫の姿である師匠は、短い脚を上げ一つの紙の方を指し、俺はそれを手に取った。その依頼書に書かれていた内容は【トラップエイプ ×10体討伐】と書かれたものだった。
『トラップエイプ俗称罠猿、名前の通り猿だよ。この魔物の生息する場所ではよく罠が発見されるんだ。その罠が発見された場所にはいつもその猿の周りには罠があることからこの名前が付いたらしい。』
『なるほど、それで罠猿か。』
罠かどんなものが仕掛けられているのだろうか、魔物だしそんなに大掛かりな仕掛けは出来ないだろう。
『今魔物だから多少は大丈夫だと思ったね。』
ッ!?まぁ思いはしたけど…心まで読むのか師匠は。
『図星みたいだね、過去に見たことがある文献では罠猿の罠にかかって命を落とした新米冒険者はたくさんいるらしい。数々の依頼を熟して来た冒険者も例外ではない。』
やはり冒険者ともなるとそれ相応の覚悟がいるってことだな。
『例えばどんな罠が仕掛けられているんですか?』
『そうだな、私が見た本では。落とし穴を手始めに、足元に草で作った糸状のものを仕掛けそれにかかると上の方から岩が落ちてくるとのことだ。これは崖の近くに多い。』
『大方落とし穴に落とした冒険者を襲い、持っていた食料を奪うっていう所でしょうか。』
「そうだよ、新米にしては感がいいじゃないか。」
いきなり聞いたことが無い声が真横から聞こえ、声がした方向を見たらうんうんと感心しながら頷く男性がいた。
「あぁ、失礼。私はこのハルミナの町ギルドマスターのクユルだ。初期ジョブがアークウィザードというから見に来たんだけど、これは将来が楽しみだね。」
そうギルドマスターと名乗ったクユルという男性はフフッと笑いながら語りかけてきた。
『ギルドマスターさんでしたか、初めましてクロといいます。』
「これはこれは魔法による会話か、また興味深いね。」
『驚かないんですか?』
「アークウィザードと診断される冒険者に一々驚いていたらきりがないと思うんだ。」
なるほど、そんなに規格外なのかなこのアークウィザードというジョブは。
『このジョブはそんなに凄いんですか?』
「凄いも何も数年に一人か二人現れる多量の魔力を有した人だよ。このギルドにも二名いるけどそいつらも凄まじくてね。相手してると疲れるんだ、あいつらが問題を起こす度に仕事が…。」
クユルさんはグッと唇を噛みしめ少しばかり瞳に涙を浮かばせている。
『お、お疲れ様です。』
ギルドマスターというからには仕事量が途轍もなく多いのだろう。
「で、その手に持っている依頼書が君の初仕事となるわけだね。」
『はい、失敗しないように今持っている技術を使って達成したいと思います。』
「その意気だよ、じゃ私は職務に戻ることにするよ。初依頼頑張ってね。」
『応援ありがとうございます。ギルドマスターもお仕事頑張ってください。』
じゃあねと声をかけてきた後クユルさんは奥の方へと入って行った。
俺達は取った依頼を受付へ持って行き、正式に受注した。
『じゃ師匠早速行きますか。』
『そうだね、その前にそのフード被り直したほうがいいね。』
あっいけないと咄嗟に俺はフードを被り直した。昔と多少とはいえ顔が変わったとしても俺を見たことがある人がいればもしかしたら分かるかも知れない。こんどから厳重に気をつけよう。
そして俺達はギルドの外へと向かった。
ギルド内にはクロ達が出て行くのと同刻。それを横から見ていた人たちがいた。
「あの銀髪の子、口を動かしてなかったわねシユス。」
「そうですね、---様。でも声は聞こえていた、奇妙ですね。」
その場にはそれを遠目から見る金髪の女性と水色の髪の青年がいた。
「一瞬昔仲が良かった知り合いに見えたのですけど、噂では亡くなったとの話ですしきっと似ているだけですわよね。」
「きっとそうです。ギルドマスターの元へ行くのは明日で今日はギルド内を見に来ただけですので、用事が済んだのでしたら宿へと戻りましょう。」
「そうね。あの手に持っていた杖の紋章もきっと...。」
2人はそう会話をしながらギルドを後にした。
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