天草洸輔は勇者である   作:こうが

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 お気に入り登録500人突破!読んでくれる皆様方、本当に感謝申し上げます!ずっと辛いわすゆ編ですが、その分きっと希望が…

 今回、瞬間風速えぐいよとだけ。


第十八章 7月10日(★)

「……ミノ、さん?」

「銀。どうしたの?」

 

 言葉を投げかけていく二人。けど、かつての明るく返事してくれた彼女はもう、そこには……。

 

「銀…?銀!!」

「ミノさん!」

 

 何度も何度も、声が枯れるまで……世界を滅ぼそうとする敵が引き返してこないように、壁を強く睨みつける少女が……もう一度、こちらに振り返ってくれる事を信じて。

 

 

 

 

 

 

 あの景色が、脳裏に甦る。本来の歴史……僕がいた世界では今日こそが『それ』が起きる日だった。

 

「……そうは、させない」

 

 西暦の時と、同じように。僕が、救う。救って……

 

「その、先は」

 

 あるのか。あの子達を救った先に……僕自身の未来は。

 

 救って、その先も、笑っていられるのか。

 

 三人、だけじゃない。僕も、だ。

 

「っ!」

 

 そんなことを考えている暇はない、と自分を殴って立ち上がる。先の方から鐘の音が聞こえる。

 

「やるんだ、四人で」

 

 三人と笑顔で笑い合った、あの遠足の日を思い出しながら……勇者システムを起動した。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 二人と一緒に、大橋の上で敵を待ち構える。楽しい楽しい遠足が終わった次の日。

 

 学校を終えて帰宅していた所で世界が樹海化した。

 

「だんだんさ、この光景も見慣れてきたよなぁ〜」

「油断しないようにね、銀。そういう時が」

「一番危ない、でしょ?須美」

 

 準備体操をしながら、のんきなことを言ってたら須美に怒られてしまった、反省反省。そこに鎧姿の洸輔が合流してくる。

 

「そうだね、昨日アスレチックから落っこちそうになってたのもあるし、鷲尾さんの言うとおり、しっかりね?銀」

「おっす、洸輔。まだ言うか〜それ」

「なんだか、ミノさん。最近二人に注意されるような事をわざと言ってるみたい〜」

 

 「確かに!」とやけに納得する。もしかしたら、若干クセになってるのかもしれない。

 

「もう、私は銀のお母さんじゃないのよ?」

「……」

「天草くん、今の内心そうかな?って思ったでしょ」

「鎧で顔も隠れてるのになんで…」

「そういう雰囲気を読まれちゃったんだね〜」

「割と分かりやすいからなぁ、洸輔」

 

 他愛もない会話、この空気が大好きで…ずっと続けていたいと思うけど、そうも言っていられない。

 

(とは言っても、心配は心配だな)

 

『……じゃあね』

 

 あの別れの言葉が、私の耳に残って離れない。

 

「なぁ、洸輔」

「何?」

「四人で、勝とうな」

 

 

 

「……あぁ、四人で帰ろう」

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「来たよ〜!ん、あれ?ええええ?」

 

 園子が驚いた理由、それは二体のバーテックスが同時に進軍してきたからだ。

 

「同時に二体か。まぁ律儀に一体ずつくる必要もないからなぁ」

「バーテックスは単独行動が基本…そう聞いていたけど、これもあの仮面の男のせいかしら」

 

 冷静に、その場の状況を分析する鷲尾さん。場数を踏んでいる事もあり、落ち着いている。

 

「驚いたけど、四人なら大丈夫だよ〜。私とミノさん、こうくんの三人で前衛を張って、わっしーは遊撃で、援護お願い〜」

 

 理にかなった戦法を、リーダーである園子が伝達。合宿の時以上に、リーダーとしての頼もしさが増している。

 

「分かったわ!そのっち、任せて!」

「リーダーの言う通りに!」

「じゃあ、アタシは気持ち悪い方と戦う!」

「どっちも気持ち悪いと思うけど…」

 

 銀が突撃し、園子がそれにつづく。僕も前衛を張るために、赤雷を纏いながら飛ぶ。

 

 正面から来るバーテックスは、尾に大きな鋏がついている。その後ろには……。

 

「お前は、もう見たくないな」

 

 蠍のバーテックスを睨み付ける。こいつには西暦の世界で痛い目に遭わされた。

 

 そして、今は二体だが…この先、もう一体増える事によって三人は窮地に立たされ、最終的には銀が……。

 

(そうさせない為に、動け)

 

「洸輔!前!」

「あっ…ちぃ!」

 

 銀の呼び声で即座に反応、正面から来ていた針の軸を剣を使い逸らす。瞬間一本の矢が針に命中、爆発した。

 

「油断、大敵よ?天草くん」

「うっ…ありがとう、二人とも」

「私のこと言えない、なっ!」

 

 鋏が雷のように振り下ろされるが、銀が力任せに弾く。

 

「シンプルで分かりやすい!アタシ向きだな!」

「遅れを、取り戻す!」

 

 二つの斧が爆炎を纏う。白く輝く刀身に、赤い稲妻が走る。タイミングよく飛ばされる鷲尾さんからの矢を信頼しながら、攻め重視で敵を押し込んでいく。

 

「邪魔はぁ〜させないっ!」

 

 僕らの連携を遮ろうと、鋭利な針が突き立てられる。それを落ち着いた様子で園子が的確に観察し、捌いている。

 

「よっぽどその針を当てたいんだね〜、じゃあ針だけは絶対命中しないし、させないよ〜」

「ナイス、園子!くっらえぇぇ!」

 

 トリッキーな攻撃に対しても、穂先を合わせて針を防いでくれている園子の横をすり抜け、剣を投擲。

 

「吹っ飛べっ!!」

 

 前回の戦闘でもやってのけた飛び蹴り、からの突き刺さった剣を引き抜き重めの斬撃を喰らわせる。

 

 鷲尾さんが全体を見つつ敵に対し矢を放ち、銀と僕が斧と剣で相手に攻め込み、園子が的確に攻撃を防ぎながら、隙を見て突く。

 

(的確な援護、連携……これなら、僕らなら…)

 

 けど、少し違和感がある。

 

(なんだ、何故『奴ら』は出てこない?)

 

 次が一番盛り上がる……なんて言っていた奴が、一切手を出してこない。手を出してこない事に越した事はないが……何か、嫌な感じがする。

 

(だめだ、今は目の前の戦いに集中し)

 

 瞬間、それは天から降り注いでくる。

 

「!?、上から来る!」

 

 鷲尾さんの叫びに、園子が即座に反応し槍を傘がわりにする。

 

「皆、こっち!」

「んだよ、これ…」

「味方を巻き込んでの範囲攻撃……随分と、小洒落た攻撃をしてくるね」

 

(けど、こんなもの…撃ち落としてやる)

 

「こうくん?」

「園子は、このまま二人を守っていて。僕はあの矢を発生させてる化け物を倒す」

「む、無茶よ!これだけの攻撃…受けたら無事じゃ済まないわ!」

「大丈夫、この鎧なら…きっと」

「ま、待てよ!洸輔!」

 

 三人からの制止を振り切って、動き出す。大丈夫、みんなよりも頑丈なはずだ。鎧の強さを信じ、動き出そうとする……が。

 

 足が動かない。

 

「はっ…これ」

『行くな』

 

 浮かび上がってくる言葉に従うように、僕の体は動きを止めた。それに抗おうと……動こうとする。

 

「っっ!?いっ…!」

「お、おい!大丈夫かよ!?」

 

 激痛で意識が飛びそうになる。これは、神樹からの強制力だ。

 

(ふざ…けるな…こんなタイミングで…)

 

 そして、目にする。二体のバーテックスが矢の雨を浴びながらも、こちらへと強引に攻撃を仕掛けてきている姿が。

 

 逃げ場のない矢の雨、さらに繰り出される同時攻撃…おそらく、三人はこれによって追い詰められたのだ。

 

 この場で対応できるのは…

 

(僕だけっ!!!)

 

 蠍が尾をこちらに向かって、横薙ぎに振りかぶる。

 

「させな」

 

 

 

 

 

 

『動くな』

 

 

 

 

 

 

「っ!!!ぁぁぁぁぁ!!」

「「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」」

「っぐあぁ!」

 

 叫びが樹海に響く。バーテックスの攻撃をまともに受けた僕達の体は宙を舞った。

 

 橋の上に、ぐちゃっ…と生々しい音を立てて崩れ落ちていく。

 

「あ…あぁ…痛い…」

 

 鷲尾さんの呻き声が聞こえる。体から流れる血の量が、その一撃の重さを証明していた。

 

「げほっ…ごほ…み、皆…」

 

 園子の苦しそうな声が聞こえる。

 

(なに、やってんだ…)

 

 ようやく、体の感覚が戻ってくる。半壊してしまった兜から、自身の体に目を向ける。鎧は砕け、手には力が入らない。相手の攻撃に対応しようと動いた結果、神樹の強制力によって動きを止められた。

 

 その結果、この有様だ。鎧の強度も、過信していた。

 

「…あぁぁ、銀…は」

 

 よろよろと銀が立ち上がる姿が見えた。自分も立ちあがろうと、したが……倍の痛みが体を襲う。

 

「須美!園子!洸輔!」

「ぎ、ん…」

「お、おい!無理に動くな、傷が!」

 

 視線の先、そこには二体に続いて現れた三体目の化け物がこちらに向かって仕掛けている姿。

 

「よけっ…て」

 

 真っ直ぐにこちらの命を絶つために、放たれた矢を血反吐を吐きながら剣で受け止める。

 

「うっらぁぁぁ!!!」

 

 受け止めた矢を、銀が弾き飛ばす。煙が立ち込める中を銀が鷲尾さんを抱え、僕は園子を抱える。

 

 途絶えかける意識を何とか繋ぎ、必死で動き、安全な場所へと避難する。

 

「動けるのは、アタシ一人…か。こりゃ、取るべき行動は一つだよな」

 

 銀が、僕、鷲尾さん、園子、三人の手を優しく握った。

 

「ぎ…ん?」

「ミノ、さん…?」

「勇者が逃げたらさ、大好きなこの世界が終わっちゃうだろ。だから、ここは頑張るしかないっしょ」

 

 ダメだ、動け…動いてくれ…もっと早く治れよ!

 

「アタシに任せてさ、三人はここで休んどいて」

 

 振り返る銀の表情はどこまでも優しくて、温かくて……いつもと変わらない、帰り道に告げるような気軽さで。

 

「またね」

 

 別れの言葉を告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「さーて、と」

 

 一瞬だけ、強く握った手のぬくもり。

 

「アタシが、守るんだ」

 

 それを噛み締めて、己の武器である斧を拾う。

 

「ぎ、ん…まって」

 

 振り返ると、そこには洸輔がいた。さっきよりかは傷が塞がっていて、顔にも生気が戻っている。けど、万全とは言えない。

 

「たくっ、休んでろって言ったろ?」

「ダメだ…一人で…行っちゃ…。ぼくも、いく…」

 

 弱々しくも、真っ直ぐな瞳がアタシを見つめる。

 

「充分だよ、洸輔。お前のその気持ちが、アタシ達を強くしてくれたんだ」

「え…?」

 

 ボロボロになった体を優しく抱きしめてやる。いつも、洸輔は何かに怯えて、苦しんでた…それでも。

 

「あんたは、必死に戦ってくれたよな。さっきもそうだ、きっと私達には分からない『何か』に苦しめられてんのに……こんなになってまで」

 

 だから

 

「今度は、アタシがあんた以上に…頑張る番だ」

 

 須美や園子、洸輔、安芸先生、学校のみんな……そして、大好きな家族。皆が生きる、大事な世界を守る。

 

 それが、アタシの戦う理由。

 

「二度目になるけど……またな」

 

 今度は振り返らず、敵の方を睨みつけ……突撃する。

 

 私は、勇者だ。そして、何より…三人の友達だから。

 

「だから、絶対に…守るんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 

 崩れ落ちる。奴の、もう一人の僕の言う通りだった。

 

「動…けっ!二人を…銀を…助けろよ!!」

『助けるな』

「っ!?ごふ…えほ…がぁ!」

 

 心臓を鷲掴みにされたような。一瞬、意識を失いかける、その場から動くことすら……もうままならなかった。

 

「……信じて…くれたんだ…」

 

 事情を何も話せない僕を。

 

「友達だって…言ってくれた…」

 

 君達の未来を知っているのに動けない、僕を。

 

「だったら…立て…たてよ…」

 

 立って!戦え!!

 

 守りたいんだろうが!!!

 

『歴史に、運命に、刃向かうな』

 

「っぅ…あ」

 

 脳裏に浮かぶ言葉が、僕の意識を、完璧にシャットダウンさせた。その場に倒れふせる事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここは、あぁ見飽きた場所だ。

 

「随分な物言いだな、けどお前にとっては三回目だし当然か。んで、どうすんだ」

 

 どうするって…?

 

「折れるのか?終わりか、お前は」

 

 どうしようも…ないんだ。手綱を握られている僕は、ただ…神樹のいう事を聞くだけの…そう、意思を持つことすら許されない兵器でしかないから。

 

「兵器、ねぇ」

 

「そう、お前は兵器だ。少し毛色が違えど…形的には兵器ってやつで間違ってない」

 

 そう、だよな。神に力を与えられた事で、人間という枠組みから外れた者。自身の事を知らず、本能のまま行動していたツケがこれである。

 

 僕は悪い事をしたのか?このような出来事に苦しませられるような何かをしたのか?

 

 違う、そうではない。ただ、そうなる『運命』が、天草洸輔の人生にあっただけ…それだけの話。

 

「改めて聞いて良いか……てめぇは全部知った上でどうするんだ?」

 

 これから…あぁ、これからか。でも、これからなんて僕にあるのかな。だって結末は…。

 

 「ここで足掻いたトコで、運命に抗ったトコで…変わらないかもな」

 

 ハッと鎧に身を包んだ騎士は鼻で笑った。だが、その笑いには嘲笑というより…怒りのようなものを感じた。

 

 「じゃあ、何もしねぇのか?何もせず…自身の崩壊を待つって?笑わせるなよ」

 

 けど!神樹に、作られた僕じゃ…もう…

 

「お前を信じてくれたあの三人はどうする?」

 

「お前を信じて待ってる結城友奈、それと…三枝だっけ?そいつらもいる」

 

「何より」

 

 兜が割れ、騎士の顔が明らかとなった。

 

「三ノ輪銀に、あそこまで言われたんだぞ」

 

 綺麗な顔立ちとは対照的にその目はこちらを貫くのではないかというほど鋭いものだった。

 

「もう一度、聞いてやる」

 

 胸ぐらを掴まれ、そのまま引っ張られる。

 

 彼…彼女?の顔とのが縮まる。騎士は僕に向かって質問する。

 

「天草洸輔、お前は……本当はどうしたい?今は余分なものは捨ておけ、ただ…ただ、自分がどうしたいのかだけ…それだけ答えろ」

 

 ……僕は。

 

「お前は?」

 

 ……負けたくない。

 

「何にだ?」

 

 ……自分を、天草洸輔という一人の人間に課せられた運命に、負けたくない。

 

「じゃあ、どうする?」

 

 ……叛逆してやる。真っ向から、否定してやる。僕の存在、在り方、何もかもが間違っていると言うのなら、僕はそんな事はないのだと吠え続けてみせる。相手が神様?知った事か、今更そんな事どうでもいい。

 

 僕の全部を……好き勝手にはさせない。例え神様が相手だとしても、こっちだって譲れないものがあるんだ。だから────!

 

「しっ!よく吠えた!」

 

 えっ?

 

「それでいい、もしここでまたウジウジしやがったら叩き斬ってやろうと思ったが……そうしなくて済みそうだ」

 

 えぇ……

 

「んだよ、元はと言えばてめぇがメソメソしだすのが悪いんだろうが。まぁ、いいか…とりあえず、合格だ」

 

 肩に剣を担ぎながら、騎士はこちらを見る。その目にはもう、僕に対する怒りはない。

 

「けど、これで終わりじゃねぇ。こっからが正念場だ。お前は吠えた、だから俺はお前に渡す。今まではそれで終わりだったが……今回はそうじゃねぇ。渡された後からが本番だ」

 

 それは…どういう意味、なんですか?

 

「それは理解しない方がいい。分かっていない上で、『それ』に直面した時のお前自身が決めろ。押し潰されるのか、それとも立ち上がるのか。どっちを選んでも、俺達は文句を言うつもりはないからな。それと最初にあった時に言ったこと忘れてねぇよな?」

 

 自分を見定めろ……ってやつか。

 

「それだ、その言葉を忘れるなよ」

 

 雷鳴が僕を撃つ、真に力を授けてくれたのだと瞬間的に理解した。

 

「いいか、お前の決意は無駄にはならん。だが、まだだ、忘れているものはあるぞ。だから、それを必死に掴み取れ」

 

 胸を強く、ドンっと拳で叩かれる。

 

「俺『達』がでしゃばれんのは、本当にこれが最後だ。後は、ここから先の道をどう歩むか…テメェが決めろ」

 

「お前も、俺も……欠陥品だ。だけど、それが自分を諦める理由にはならねぇ」

 

 叩かれた胸から、熱いものが込み上げる。同時に自分を縛りあげていた物が落ちていくような……そんな感覚がした。

 

「行けよ、兄弟。抗ってこい」

 

 目の前に広がる光へと、背を押され踏み込んだ。

 

 振り返らず、その手に、胸に宿った力を確かめながら…告げる。

 

「あぁ、ありがとう。モードレッド」

 

 英雄の名を口にして、不敵に笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その攻撃は、もう覚えたっ!」

 

 化け物の攻撃を寸前で躱して、斧を振るう。

 

「それもっ…さっき見たっての!!」

 

 相手からの抵抗による攻撃、それらを致命傷以外のものは全て無視して攻撃に全神経を集中する。

 

「化け物には…分かんないだろう、この力っ!!」

 

 痛い、痛い…それでも、止まるわけにはいかない。

 

「これこそが…人間様の!気合いって、やつだ!」

 

 吠え続けながら、踊るように…斧を振るう。バーテックス達が徐々に押されて、後退していくのが分かる。

 

(これなら)

 

 しかし、油断した。

 

 三体に意識を向けてばかりいたから、忘れていた。こいつもいたんだという事を。

 

「か、仮面の…」

「さぁ、英雄、迎えに来た、ぞ!!」

 

 ガラ空きになった胴体に向かって、漆黒の剣が振るわれる。

 

 まずい、こんなのもろにくらえば……

 

(死ぬ…?)

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃん!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 けど、その黒い剣は私には届かなかった。白い刀身の剣が刃を止めている。

 

「ははははははは!!!!!待ってて、大正解だ!」

 

 それを見て、仮面は嬉しそうに笑った。

 

「…ほんと…に?」

 

 鎧が私を守るように、三体のバーテックスと仮面の男の前に立ち塞がっている。兜が重々しい音を立てながら、動いた。

 

「遅くなって、ごめん」

「…なんで」

「君のおかげだ、銀」

 

 そいつは、こちらを真っ直ぐ見つめた。その目には、先程のものとは違う。強い、決意のようなものを感じた。

 

「君を、一人で行かせない。僕も一緒に……運命に抗う!」




 希望を繋げ、諦めるな。

 次回十九章『またねの続き』、お楽しみに。
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