死の支配者《モモンガ》は古き知恵の悪魔《マヨ✩マヨ》と笑う   作:布施鉱平

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 ※この二次創作にご出演頂いているモモンガ様は、原作に比べて巨乳好きです。
 
 


二人と皆で異世界へ

「えーと…………どうなってるんでしょうか?」

「…………どうなってるんでしょうねぇ」

 

 モモンガとマヨ✩マヨの幻想は終わったはずだった。

 ユグドラシルの終了と共に視界はブラックアウトし────目を開ければそれぞれの部屋に、現実(リアル)に戻っている。

 そうなるはずだったのだ。

 

 しかし、二人の姿は変わらず王座の間に残されたまま────

 

 

 0:00:56

 

 

 時間は正確だ。

 サーバーはすでにダウンしているはずだから、この場所が存在すること自体がおかしい。

 

 モモンガとマヨ✩マヨは、思わず顔を見合わせた。

 

「サーバーダウンが延期になった、とか?」

「運営の粋な(はか)らいでロスタイムに突入した、とかですかね?」

 

 無数の可能性が頭を(よぎ)る。

 だが、それらを決定づける確証がない。

 

 二人はとりあえず今まで切っていた通話回線をオンにしようとするが────

 

「あれ?」

「ん?」

 

 コンソールが開かない。

 なにかエラーが起きているのかと他の方法も色々と試すが、どれもこれも一切反応がなかった。

 

 まるで、システムから完全に切り離されてしまったかのように。

 

「これは、まずいですね」

「ええ、どういう訳かわからないですけど、深刻なエラーみたいです。俺、明日四時起きなのになぁ」

「…………」

「? どうしました、マヨさん」

 

 マヨ✩マヨとの時間が少しだけ伸び、明日のことを考えると大変だと思いながらもモモンガが少し喜んでいる横で、マヨ✩マヨは深刻な様子で黙り込んでいる。

 それを心配したモモンガが声をかけると…………

 

「僕…………ナノマシン除去しないと、やばいことに…………」

「!!!」

 

 あまりにも楽しかったせいで、モモンガはマヨ✩マヨが抗ナノマシン障害を(わずら)っていることをすっかり忘れていた。

 マヨ✩マヨは『あと数時間は大丈夫』だと言っていたが、この状態がどれだけ続くのか分からない。

 強制終了も出来ない以上、マヨ✩マヨの命はこのエラーがいつ解除されるかに掛かっているのだ。

 

「大変だ!!」

 

 恐怖にも近い感情を覚え、思わず大声を上げるモモンガ。

 だが直後、その感情は不自然なくらい急に沈静化してしまう。

 

「…………あれ?」

 

 疑問の声を発するモモンガにマヨ✩マヨが顔を向ける。

 そして、どうしたのか(たず)ねようとしたその瞬間────

 

 

「どうかなさいましたか? モモンガ様?」

 

 

 初めて聞く女性の綺麗な声が、二人の耳に届いた。

 

 二人の視線がその声の発生源を探る。

 そして、誰が発したものであるかを理解したとき、二人は息を呑み、声を上げることすら忘れた。

 

 声を発したのは、白いドレスに身を包んだ金色の瞳の美女────

 

 意思を持たぬNPCであるはずの、アルベドだったのだから。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 ありえない。

 

 誰もいなくなった王座の間を一段高い場所から見下ろし、二人は共通の感想を抱いた。 

 

 データ容量的に、NPCの全てに声や高度なAI、表情などの複雑なエフェクトを仕込むことは不可能だ。

 だというのに、アルベドは声を出し、表情を変え、まるで意思があるかのように受け答えをしていた。

 

 アルベドだけではない。

 執事のセバスも戦闘メイド(プレアデス)達も、命令をすればそれに従って行動をするだけの柔軟さを示してみせた。

 

 現在のAI技術では、到底再現不可能な現象である。

 つまり、物理的にも不可能なら技術的にも不可能。そんなことが目の前で起こっていたのだ。

 

 微細な表情の変化。プログラムに縛られているとは思えないほど自然な受け答え。そして喜び、羞恥、快楽などの各種感情表現…………

 それらは控えめに見ても百年先の技術だ。

 

 もしモモンガかマヨ✩マヨのどちらか一人しかこの場にいなければ、自分が夢を見ているのではないかと疑っただろう。

 

 だが、二人が共にあるのだから夢ではない。

 

 夢ではないのなら、なんなのか。

 

 アルベドとセバスにそれぞれ命令を与え、戦闘メイド《プレアデス》を退室させたあとで二人が達した結論は『仮想現実が現実になった』という荒唐無稽なものだった。

 

 しかし、そうとでも考えなければ、今目の前で起きた現象を説明できないのだ。

 

「本当に、これでよかったんでしょうか?」

 

 アルベドに第四階層のガルガンチュアを除く全階層守護者を第六階層に集めるよう指示したモモンガは、自分の判断が正しかったのか確信を持てずにいた。

 

「階層守護者たちは、全員レベル百の強者です。もし反乱されたりしたら、俺たち二人じゃ敵いませんよ。それぞれの階層に留めて、俺たちが会いに行ったほうが良かったかも…………」

「いえ、モモンガさんの判断は最善だったと思いますよ。例えば会社が異常事態に巻き込まれたとして、一番偉い人が個別に重役を訪ねて回るのは違和感がありますからね」

 

 マヨ✩マヨが、モモンガの判断に間違いはないと後押しをする。 

 それはその場しのぎのお世辞などではなく、素直な感想だ。

 

 先ほどの判断にしてもそうだが、マヨ✩マヨはこのような事態に陥った直後に支配者然とした態度を取れるモモンガを正直すごいと思っていた。

 

 急に支配者ロールを始めたその精神性もすごいが、動揺しながらもちゃんとアルベドやセバスに指示を出すことができた行動力は賞賛に値するものだと思う。

 

 もし自分ひとりであれば、ただひたすらにうろたえて無様な姿を晒していただろう。

 だが、なんの因果か共にこの異常事態に巻き込まれてしまった以上、自分もモモンガを見習って冷静に振舞わなければ、と心に誓った。

 

「幸い僕らの手元には、宝物庫からモモンガさんが持ってきてくれた世界級(ワールド)アイテムと、僕が持ってきた世界級(ワールド)アイテムがあります。これを駆使すれば、たとえ全階層守護者に反乱されたとしても逃げることはくらいは容易でしょう」

「ほんと、マヨさんが世界級(ワールド)アイテムを持ってきてくれて助かりました」

「僕も百万近く使った甲斐がありましたよ」

「そんなに使ったんですか!? あっ、また沈静化した…………」

「さっき言ってた感情の沈静化ってやつですか? アンデッドの精神作用無効によるものですかね?」

「えぇ、ゲームだった頃には俺自身の精神にはなんの効果もありませんでしたけど…………」

「それも、この世界が現実だという仮定を後押ししますね」

「はい。もしこれが仮想現実だったとしたら、VRの技術は使用者を洗脳できる可能性すら出てきちゃいますからね」

 

 感情を即座に抑制する機械技術。

 それが怒りだとか不安だとか、一つの感情に対して作用するものであれば薬でも同じようなことができる。

 

 だが、全ての感情を平坦になるまで抑制する薬などありはしない。

 もし発明されたら、精神科医は軒並み廃業だろう。  

 

 そして、もし仮にそんな技術が秘密裏に開発されていたのだとして、それをわざわざ終了間近のゲームシステムに適用するようなアホなことはしないはず。

 だがら、逆説的にこれがゲームではない可能性の証拠にもなる。

 

「18禁行為も、問題なく行えるようですしね」

「うっ、それは、忘れてください」

 

 先ほどアルベドに行った行為を思い出し、モモンガは内心で赤面し悶える。

 18禁行為が可能か確認するためだったとはいえ、あれは明らかに揉みすぎだった。

 

「いや、忘れるとか無理でしょう。あんながっつり両手で揉みしだいておいて」

「ぐっ!」

「アルベド、最後の方膝ガクガクしてたじゃないですか。あれ、多分ちょっと達してましたよ」

「がはっ!」

「まさか友人と友人の娘(のようなもの)の情事を目の前で見せ付けられることになるとは…………」

「すいませんでした! もう勘弁してください!」

 

 幾度となく精神の沈静化を繰り返したモモンガだったが、それでも間断なく訪れる羞恥心に沈静化が間に合わず、ニヤニヤとした笑みを浮かべるマヨ✩マヨに勢いよく頭を下げた。

 

「はいはい、頭を上げてくださいモモンガさん。これからは、僕相手にも簡単に頭下げちゃダメですよ? モモンガさんはこのナザリック大墳墓の絶対的な支配者なんですから」

「…………それ、やっぱりやらなきゃダメですかね?」

「そもそも支配者ロール始めちゃったのはモモンガさんじゃないですか。それに、さっきも話し合って確認したでしょう? アルベドやせバス達の反応を見る限り、彼らはモモンガさんが一番の権力者であることに一切の疑いを持っていません。むしろそれを望んでいるようですらありました。なら、とりあえずは彼らの反乱を招くようなことがないように、彼らの望む支配者然とした態度を取り続けるべきです」

「キツイなぁ…………俺、ただの一般人ですよ? 会社に後輩はいましたけど、部下すらいないただの平社員なのに…………」

「僕だってそうですよ。でも、実際アインズ・ウール・ゴウンのギルドマスターなのはモモンガさんだし、支配者ロールと似たようなの────魔王ロールとかは時々やってたじゃないですか」

「ああ…………俺が魔王で、マヨさんが悪の錬金術師でってやつですか」

 

 モモンガはマヨ✩マヨと遊んだ過去に思いを馳せる。

 

「魔王になりきって、マヨさんに大量殺戮用の毒薬作りとか命じましたっけ」

「そうそう、僕もノリノリで作りましたねぇ。わざわざたっちさんとかウルベルトさんに高位モンスターの素材データまで取ってきてもらって」

「【多頭水蛇の肝(ヒュドラズ・リヴァー)】でしたっけ? あれ、ひどかったですよねぇ…………毒耐性を半減させたうえに複数の毒系重バッドステータスを付与するとか狂ってるでしょ。それだけならまだしも、効果範囲が一階層覆い尽くすくらい広いうえに、システムに回復アイテムだと誤認識させて味方にも問答無用で効果が及ぶとか、もう使い道が…………」

「いや、僕も実際に使うつもりはなかったんですけどね…………るし★ふぁーさんが…………」

「あぁ、そうでしたね…………るし★ふぁーさんが」

 

 

 ────ほんと、ロクなことしねぇなあの人は。

 

 

 という言葉を、二人はなんとか飲み込む。

 

「…………っと、そろそろ行かないと、階層守護者たちが揃っちゃいますね」

「あ、そうですね。最悪戦いになるかもしれないことを想定すると、先に戦闘系の魔法やスキルの効果を確認しておかないと」

「実際のところ、どうなんです? モモンガさん。魔法とか問題なく使えそうですか?」

「ええ、コンソールは出ないんですけど…………うーん、なんて言ったらいいのか、自分の内側に意識を集中するとでもいうか…………そうするとなんか魔法の使い方が浮かび上がってくるんですよ」

「へぇー、なんだか格好いいですね」

「マヨさんは…………ああ、そうか、攻撃系の魔法やスキルは一切持ってないんでしたっけ」

 

 モモンガはマヨ✩マヨのキャラビルドを思い出して納得する。

 

「ええ、僕は生産特化ですから。ゲームだった時もナザリックに引き篭ってひたすらアイテムの研究してましたので、戦闘能力はおろか戦闘経験もほぼありません。そっち方面ではお役に立てず申し訳ない」 

 「いやいや、マヨさん達生産職の人が一生懸命アイテムの研究をしてくれたからこそ、俺たちは安心して戦えたんです。これ以上ないくらいに助かってますよ」

 

 頭を下げるマヨ✩マヨを、モモンガは慌てて引き起こした。

 モモンガも含め、戦闘を行うギルドメンバーが使用する消費アイテムは、基本的にナザリック生産職の面々が研究開発したものがほとんどだった。

 

 その中でもマヨ✩マヨが作る消費アイテムは、戦闘能力を完全に放棄して生産系のクラスを取りまくった結果就くことが出来た特殊クラス【無より生み出す者/ゼロ・トゥ・オール】のスキルのおかげで、出来上がったアイテムの性能が通常より二割ほど高いものとなっていた。

 

 ピンチの時、何度マヨ✩マヨが作ったアイテムに助けられたか分からない。

 マヨ✩マヨはナザリックの戦闘基盤を下から支える重要な存在だったのだ。

 

「じゃあ、戦闘職が伊達じゃないってことを確認するためにも、階層守護者が集まる前に第六階層に行きますか」

「はい…………うぅ、緊張する…………あ、沈静化した」

「…………便利ですね、それ」

「ええ、今のところは…………」

「これからだって、間違いなく必要になりますよ。モモンガさんには頑張って支配者ロールして貰わないといけないんですから」 

「あぁぁ…………マヨさんも、手伝ってくれるんですよね?」

「もちろんです。まぁ、基本矢面に立つのはモモンガさんですけど」

「ひどい!」

「ふふふ、適材適所ってやつですよ。モモンガさんには魔王ロールの経験があるし、精神を沈静化する特殊能力もある。さらに顔が骸骨だから表情も読まれずに済みますしね」

「…………マヨさんの顔だって、表情なんてわからないじゃないですか」

「さ、行きますよ」

「スルー!?」  

 

 なんだかアルベドが見ていたら嫉妬しそうなくらい、熟年夫婦ばりに仲の良い掛け合いをしながら、モモンガとマヨ✩マヨは王座の間を後にした。

  




 …………なんだかモモンガ様とマヨ✩マヨがイチャイチャしてますが、BLには発展しません。
 
 モモンガ様にはアルベドがいるしね。

 …………マヨ✩マヨにも誰かくっつけてやろうか…………


 とりあえず、連続投稿はここまでです。

 次に投稿するまで、どれくらい開くかなぁ。
 
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