ある日静希草十郎は蒼崎橙子の元を訪れ、「買い物を安く済ませたいので知恵を貸してほしい」とお願いをする。それを受けて橙子さんが活躍したり突っ込みを入れたりする短編物語。

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魔法使いの夜二次創作、一番乗りさせて頂きます。
というか他に書く人いないのか、少し悲しい・・・・・・。


魔法使いの夜で「つぼ算」

コンコンとドアをノックする。

 

「はーい。

 ・・・・・・あら」

 

ドアを開けて迎えてくれた女性は蒼崎橙子。

そして。

 

「おはようございます、橙子さん」

 

訪れたのは静希草十郎であった。

 

 

 

青子に倒され、呪いをかけられた橙子。

いかなる手段を用いてかそれを解呪し、いつの間にやら再びこの三咲町に戻ってきていた。

 

それを何故草十郎が知っているのか、それも家の所在まで。

 

ベオが話したのかもしれないし、橙子が自ら教えたのかもしれないし、たまたま街で行き合ったのかもしれない。

 

 

そもそも有珠の家で誕生会を開いた時には既に連絡先を知っていた模様だし、そこは重要なところではない。

 

ともかく、今日はこうして草十郎が橙子の家を訪れていた。

 

 

 

まぁ、とにかく上がりなさいと橙子は客を家に招き入れる。

家先で話をするのはよろしくない。

草十郎もそれを分かっているのかあっさりと家に入る。

しかし玄関から靴を脱いで家に上がることはしない。

その場で話を始めた。

 

「橙子さん、今日は橙子さんにお願いがあってきました」

「・・・・・・」

 

何故急に、しかも唐突に、どんなお願いを?

いくつもの疑問が同時に頭に浮かぶ。

一つ一つ確認して行くのもいいが、とりあえず話を聞こうかと草十郎に家に上がるように告げる。

 

 

そして、家に上げてお茶を出して橙子自身落ち着いたところで話を再開した。

 

「それで、何のお願いなのかしら?」

 

はい実は、といつになく流暢に草十郎が話し出す。

 

「先日家の掃除をしていたのです」

「・・・・・・家のと言うと久遠寺家?」

「はい、どこか掃除する所は無いかと言ったところ今まで入ったことが無いところを有珠に案内されまして。

 そこを掃除してほしいと言われたのです」

 

今まで入ったことが無いということは有珠が普段人を入れない西館、いわゆる「有珠ゾーン」と言う所か。

外ならまだしも有珠がよく家中の掃除など許したものだと感心する。

あの性格、埃をかぶっていようと誰にも触らせなさそうだが。

いや、魔術師には大体そんな傾向があるか、自分も含め。

 

それだけ切羽詰まった状況だったか、この少年に心を許したか・・・・・・。

 

ま、それは別にいいかと続きを促す。

 

「その部屋と言うのが思っていたよりも広くてですね、埃を取って片付けをしてみるとリビングくらいの広さだったんです」

 

それは本当に部屋?

どこかの空間に迷い込んでない?と思いつつ野暮な突っ込みはしない。

 

「いやぁ、本当に広くて広くて。

 それはもう乱取りでもできそうな広さでした。

 昨日もそこで有珠の適当なプロイとやり合って10回中8回負けたんですけど」

「むしろどのプロイを相手にどうやって2回も勝ったの」

 

思わず口が出てしまった。

いけないいけない。

 

「で、その部屋の窓近くに小さな棚がありまして。

 そこに石像が3体並んでいるんです。

 左から順に大、中、小と言った感じに。

 そしてその窓を換気の為に開けておくとどこからか猫が座り込みまして、そこで昼寝をするんです。

 そしてその猫を俺がぼーっと眺めてるというのが、まぁ日課になってまして。

 有珠もその部屋までなら入ってもいいと言ってくれましたし、時々一緒に眺めていますし」

 

うんうんと一人頷く草十郎。

それはそれは可愛らしい猫だと言っているかのように。

 

が、それを聞く身としては何とも言えない。

 

「・・・・・・何の話に来たの?君は。

 猫の昼寝の話?」

「あ、いえ、違いますよ。

 物事には順序と言うものがあるじゃないですか」

 

そりゃそうだけど、ならさっさと話してほしいと無言で訴える橙子。

それを悟ったのか、草十郎は本題に入る。

 

「昨日の事です。

 バイト前のちょっとした空き時間にその部屋にいたんです。

 いつものように猫が窓の所で昼寝をしていまして、それを俺が下からぼーっと見ていました。

 

 そうしたら・・・・・・あの猫は寝ているように見えても起きていたんですね。

 虫か何かが飛んでいたんでしょう、ピャッと飛び降りたんです。

 

 で、そのピャッと飛び降りた時に後ろ足で小さな棚に並んでいた一番左側の大きな石像を蹴飛ばしたんですよ。

 そしたら石像も蹴った猫に向かって「何すんだお前」という顔をしまして」

「したの!?」

「あ、いえ、そんな風に見えただけです、なんとなく。

 でもしたかもしれませんね」

 

どっちなんだそれは。

もし本当に表情が変わっていたらそれは有珠のプロイの一つか魔法具の可能性がある。

それを目の当たりにしてよくも驚かないものだと今更ながら感心する。

 

「で、その蹴られた石像がごーとごーとと揺れまして、その内バランスを崩して真ん中の中くらいの石像に倒れたんです。

 そうしたらその石像も、同じように「何すんだお前」という顔をしまして」

「したの!?」

「あ、いえ、そんな風に見えただけです、なんとなく。

 でもしたかもしれませんね」

 

意味無く同じ問答を繰り返してしまった。

いけないいけない。

 

「で、その蹴られた石像がまたごーとごーとと同じように揺れまして、その内バランスを崩して右端の小さな石像に倒れたんです。

 そうしたらその小さな石像も、同じように「何すんだお前」という・・・」

「分かったから!それはいいから進んでよ!」

 

思わず声を上げてしまった。

だが橙子は悪くないはず。

 

「・・・・・・それでその小さな石像も揺れたんですけど、今度は隣に何もいないので仕方なく床に落ちてしまいました」

「・・・・・・つまり猫が石像を蹴落としたと」

「はい、そう言うわけです」

 

草十郎の言葉に頭を抱えてしまった。

一言でいえば済むことをこんなにも延々と語られるとは・・・・・・。

前言撤回、彼は何も悟っていなかった。

 

「・・・・・・それで?」

「はい、それでその下に丁度花瓶があったからたまりません。

 それに叩きつけられて花瓶が割れてしまったんです。

 俺も思わず「大変だ!有珠!」と声を上げてしまいました。

 するとすぐに有珠が来てくれまして、 「どうしたの、静希君?急にそんな大きな声を出して」と。

 で、俺が「花瓶が割れてしまったんだ!」と言うと、やれやれと首を小さく横に振り、こう言ったんです。

 

 「何を言っているの静希君、部屋が綺麗になって私もいい気分でいたところに「割れた」なんて縁起の悪い事を言わないで。

 

  静希君、これは割れたのではないわ。

 

 

  数が増えたのよ」」

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「時々面白い事を言いますよね、有珠は。

 「割れる」とか「別れる」とか言う言葉は縁起が悪いんですと。

 そう言う縁起が悪い言葉を言うものではない。

 同じことでもこれは「割れた」んじゃない。

 

 

 「数が増えた」

 

 

 いや、為になりましたよ」

 

「どう為になったの・・・・・・」

 

おかしい、有珠はそんな事を言う子だったか?

以前久々に会った時は戦闘だったし、日常会話を長々と交わしたわけではないので気付かなかったけれども、もしかして有珠は私の知らない間に別人にでもなってしまったのか。

橙子は再び頭を抱えてしまった。

 

「・・・・・・それで有珠が言うには、

 

 「その花瓶、以前使っていた物なの。

  作ったプロイの数だけ花を飾っていたんだけど、その内世話が面倒になってやめてしまったわ。

  この間静希君に掃除してもらった後に見つけて思い出に浸っていたんだけど・・・・・・。

  もし今この花瓶にそれだけの花を飾ろうとしたら小さいなと思っていたの。

  割れたのが幸いと言うと言葉は悪いかもしれないけど、これを機に大きなものに買い替えようかしら?」

 

 そう言うんです。

 だから俺が「じゃあ明日にでも新しいものを買ってくるよ」と言うと何か少し悩んだような表情で、

 

 「静希君、申し訳ないけどあなたは安い物をお礼を言って高く買ってくる不思議な人・・・・・・。

  食べ物ではそんなことが無いのに家具や装飾品では何故かそうなってしまうのよね・・・・・・。

  そこへ行くと橙子さんは人間が悪賢いから買い物が上手。

  アレを上手いことおだてて連れて行けば安く買い物ができるかもしれないわ」

 

 と言う事を言っていたんですけれども、

 

 

 橙子さん一緒に買い物に行ってもらえますか?」

 

 

「・・・・・・・・・・・えーと、何ですって?」

 

 

思わず聞き返してしまった橙子。

しかし仕方がない、何やらよくない事を言われていた気もするし。

 

「?俺の話を聞いてくれていなかったんですか?」

「いいえ、そう言うわけではないけれど。

 もう一度聞かせてもらえると嬉しいかしら」

 

橙子の言葉に首を傾げながらもお願い部分を繰り返す草十郎。

 

「いえ、ですから。

 俺は買い物が下手だと。

 そこへ行くと橙子さん・・・・・・あぁ、あなたですね。

 あなたは人間が悪賢い・・・あ、いえそうではなく、えっと。

 アレを上手いことおだてて・・・いえ、えーと・・・・・・」

 

ようやくそのミスに気付いたか、草十郎が慌てながら謝罪を口にする。

 

「済みません、そういえば有珠が言っていました。

 「その説明は本人に言わない方がいい」って」

「もう聞いたわよ!!」

 

ガー!と怒鳴った後でがっくりとうなだれる橙子。

そんな事を有珠に言われたのはまだ仕方がないとして、草十郎の口から聞いたせいで少々ダメージが上がった気がする。

 

「・・・・・・ようするに私を連れて行って少しでも安く買い物をしてきなさいと、そういうことね。

 それを長々と・・・・・・10分以上もかけてする話じゃないわよ・・・・・・」

 

ため息をつきながらもお茶を飲んで気持ちを切り替える。

 

「まぁいいわ、付き合ってあげる。

 出掛ける準備をするから待ってて」

「はい、ありがとうございます」

 

何とか許してもらえた草十郎は反省しているのかしていないのか満面の笑顔だった。

それを見て再びため息をつきつつも悪い気はしない橙子であった。

 

 

 

 

 

そんな経緯を経て街に繰り出した橙子と草十郎。

 

「・・・・・・えっと、橙子さん」

「・・・・・・何だ?まだ何か言いたいことがあるのか?」

「えっと、何と言いますか・・・・・・どうして眼鏡を取ってるんですか?」

「・・・・・・何だか今の君相手ではこっちの性格じゃないと持ちそうにないからな」

 

それはどういう意味ですかと聞くこともできずにいる草十郎。

だが買い物に付き合って下さいと言った手前黙っているわけにはいくまい。

やがて思い切って話しかけてみた。

 

「お忙しいのにお連れして、すみませんでした」

「・・・・・・今更べんちゃらを言うな」

 

冷たい。

いや、それはこの話し方のせいかもしれないが。

ともかく少しでも機嫌が良くなって貰えるようにと、草十郎は話題を変えようと画策する。

 

「それにしても、買い物には上手下手というのがあるんですね」

「む・・・・・・そうだな。

 上手下手と言うと語弊があるかもしれないが、確かにちょっとしたコツはあるかもしれないな」

 

話題の変更に成功したようだ。

橙子の機嫌がいくらか直ったように見える。

 

「へぇ、どういう事に気を使うかと言う心得とかがあったりするんですか?」

「そうだな・・・・・・まず商人(あきんど)に足元を見られるのはよくない」

「ほぉ・・・・・・足元を見られるとまずいと」

「ああ、それは一番やってはいかんな」

 

笑みを浮かべつつそういう橙子。

そして草十郎に振り返り、話を続ける。

 

「そうだな、折角だしその辺の授業を簡単にしてやってもいいぞ」

「よろしくお願いします」

 

よく分からないが提案を断らない方がよさそうだと思い、草十郎は頭を下げた。

 

 

「例えばだ、これから私と君がシャツを一着買いに行くとする」

「え?」

 

授業が開始した直後、首を傾げる草十郎。

まだ難しい説明はしていないのに、と思いつつ話をする橙子。

 

「いや、だから。

 これから私と君がシャツを一着買いに行くとする」

「・・・・・・違います」

 

・・・何がだ、と今度は橙子が首を傾げる。

そんな橙子に草十郎は告げた。

 

「俺の話を聞いて無かったんですか?俺達は有珠に言われて花瓶を買いに行くんですよ?」

「それは分かっている!仮の話だ!」

 

分かれ!と怒鳴る橙子。

仕方がない。

 

「・・・・・・それでだ、例えば君が・・・・・・ウニクロのシャツが欲しいとする」

「橙子さん、ウニクロは他の作品に愛用している人がいる気がします。

 Nike(ニケ)でどうでしょうか」

「・・・・・・何を言っている?

 まぁ、別にニケならニケでもいいが・・・・・・。

 君がニケのシャツが欲しいとする。

 しかし店に入るなり「ニケのシャツが欲しい」と言ってはならん」

 

そうなんですか?と草十郎。

 

「でもニケのシャツが欲しいならそう言わないと通じませんよ?」

 

そんな言葉にフフッと笑いながら話を続ける。

 

「そこだ。

 わざと「何か品物を見せて欲しい」と遠回しに告げる」

「はぁ、わざと」

「そうだ。

 すると向こうはオススメの商品や何かを見せてくるだろう。

 そうしたらまずはそれに傷を付けるんだ」

「傷・・・・・・橙子さん、さすがに商品を破るのは良くないかと」

「いや、そうではないよ・・・・・・口で傷を付けるんだ」

「え・・・・・・橙子さん、ベオじゃあるまいし食いつくのはさすがに・・・・・・」

「物理的に傷つけるところから離れろ!ケチを付けろと言っているんだ!」

 

察しろ!と怒鳴り声が上がる。

 

「例えば、「柄がぼやけてる」とか」

「なるほど、「柄がぼやけてる」・・・・・・」

「それから「裏地が気に入らない」とか」

「なるほど、「裏地が気に入らない」・・・・・・」

「「サイズが違う」などいくらでも言いようがある。

 そうして一通り傷つけた後に、

 

 「いやぁ、いい物が無いなぁ。

  しかし一度店に入った手前手ぶらで出るわけにもいかん。

  ・・・・・・そうだな、ついでにニケのシャツがあったら見せてくれるか?」

 

 とこう言うわけだ。

 本当はこれが一番肝心なんだが、こうやってさり気なく切り出す」

「な、なるほど」

 

草十郎が感心したように頷く。

 

「そうしたら向こうがニケを出してくる」

 

橙子がそう言うと、分かりましたと草十郎が割って入った。

 

「今度は褒めるんですね」

 

だがしかし、橙子は笑いながら首を横に振る。

 

「それはよくない。

 今まで散々ケチをつけていた人間がその商品を出した途端に、「柄が気に入った!裏地もいい!サイズもぴったりだ!気に入った!これはいくらだ?」などと言ってみろ。

 「ははぁん、これは気に入ってるな?」と思われ、その後に「多少高く言っても買うに違いあるまい」と思われる。

 そうなってしまったら3000円のシャツだろうが3500円、4000円、4500円と高値を吹っ掛けられるだろう。

 こちらには元値が分からないので言い値で買うしかない。

 多少交渉したところで元値より高いだろうな。

 

 そこを「どうもこれは柄が気に入らん、裏地もよくない、サイズも合わないしどうせ仕立て直ししなければ着られないのだし・・・・・・まぁ、安ければ買ってやってもいいかな?」と言うわけだ。

 

 さっき告げた「ついでに~」と、この「安ければ~」。

 この二つが上手い具合に合わさり、「これは下手をしたら買ってもらえないかもしれない」と思わせられるのだ。

 その後「・・・・・・多少安くしておいても買ってくれれば儲け物」と思ってくれればしめたもの。

 3000円のシャツを2500円、2000円と値切ってくるだろう。

 

 そこで2000円なら2000円で手を打っておいて、

 「そうだ、ズボンも買おうと思っていたんだ。見せてもらえるか?」と切り出す。

 向こうは今しがたシャツを2000円で売ってしまった手前ズボンだけ元値で売ることができないわけだ。

 「何故ズボンだけ値が高い?シャツは安いのに?この値段なら買おうと思っていたけれどズボンがそんなに高いんじゃ買えない」と客が判断したら折角値切りした意味がないからな。

 

 そしてズボンも1000円安くなれば上下合わせて2000円の得となる。

 

 ま、こんなところを持ってして、買い物の上手下手になると言ったところか」

 

話を終え、自慢げに橙子は草十郎に目をやる。

 

「どうだ、為になったか?」

「・・・・・・な、なるほど」

 

が、当の草十郎はよく無い反応。

むむ、と不満気な表情になる橙子。

 

「分かったのか?分からなかったのか?」

 

「・・・・・・えっと、つまりその・・・・・・。

 

 「柄がぼやけてる」「裏地が気に入らない」「サイズが違う」

 ↓

 「1000円お得!」

 

 と言う事ですか」

 

・・・・・・分かって無いな、こいつ。

頭を抱えたくなるがこの性格(モード)でそれは絵にならないので我慢する。

 

頼りない男についてきてしまった・・・・・・。

 

 

 

 

 

そんな話をしているうちに、やがて目的地に着いた。

三咲町から離れ、もはや隣町の一角。

瀬戸物を取り扱う店がずらっと並ぶ風景がそこにあった。

 

「どうだ?少年。

 ここに来たことはあるか?」

「いえ、初めて来ましたけど・・・・・・」

「なら凄いものだろう、この風景。

 ここに並ぶ店は全て瀬戸物の店だ。

 花瓶はもちろん皿、壺、何でも揃う。

 時々魔力を帯びた掘り出し物もまぎれているから昔はよく来たものだ。

 しかし最近は瀬戸物も進んだな」

「・・・・・・瀬戸物が進むんですか?」

「・・・・・・進むというのは「進化している」と言う意味だと分かっているか?

 鮮やかな色の物を作ったり、薄く作り上げたり。

 それだけでなく様々な形の物を瀬戸物で作り上げたりとな。

 安土桃山の時代には瀬戸物で作った枕と言う物もあったらしい。

 今の技術をもってすれば瀬戸物で作れないものは無い事だろう」

 

フフンとまるで自分の事のように紹介をする橙子。

それだけここが気に入っているという事か。

 

「今の技術なら何でも作れますか?」

「ああ、何でも作れるだろう」

 

ふむ、と考え込む草十郎。

感心してくれたか、お姉さんは嬉しいぞ、とほほ笑む橙子に向かって、草十郎は告げた。

 

 

「しかし瀬戸物の布団は寝にくいと思います」

 

 

「・・・・・・君は瀬戸物の布団で寝たいのか?」

「いえ、固くて冷たそうですからお断りしたいです」

「では誰がそんな物を作るというのだ?」

「いや、何でも作れるって・・・・・・」

「さすがに限度がある。

 瀬戸物の布団は私も勘弁だ。

 作る人間もいないだろう」

 

その言葉にまたしても考え込む草十郎。

そして。

 

 

「瀬戸物の塵叩きは色んな物が壊れそうです」

「・・・・・・既に壊れてるんじゃないか?君の頭の中身とか」

「瀬戸物の上着は着にくそうな・・・・・・」

「君は私をバカにしているのか!?」

 

そうではない!と橙子は近くの店の一角を指差す。

 

「あそこに置いてある瀬戸物でできた置物を見てみろ。

 立派な物だろう?

 まるで生きているような、今にも動き出しそうな、物でも言いそうな、とこう言うことが言いたいわけだ」

「な、なるほど・・・・・・あぁ、あそこの女性が男性を膝枕して耳掃除している奴ですか。

 確かにすばらしい出来です、まるで本物ですね」

「そうだろうそうだろう」

 

草十郎の言葉にフフンと笑みを浮かべる橙子。

が、そこで終わらないのが今日の草十郎である。

 

「でもその隣の暖簾(のれん)の間から首を出している丁稚(でっち)さんの方が良くできていますね」

「・・・・・・?」

「ほら、あの鼻の下の伸びた具合と言い・・・・・・まるで生きているような!」

 

草十郎の言うその丁稚さんを見つけ、橙子の表情がひくっと変わる。

 

「・・・・・・少年よ、あれは生きている」

「今にも動き出しそうな」

「見ていれば動くぞ、絶対」

「物でも言いそうな・・・」

「言うわ!」

 

拳骨でもしてやりたい気分になった橙子であった。

 

 

「まぁいい、とっとと店に入るぞ。

 探しているのは花瓶だったな」

「どこかオススメのお店とかは?」

「私もしばらく来ていない。

 あちこち入っていい物を探すのがよかろう。

 ちなみに少年よ、予算はどれくらいだ?」

「予算・・・・・・有珠から渡されたお金と自分のを合わせても二万円ほどでお願いしたいです」

「二万あれば十分だ」

 

しかし今「自分のと合わせて」と言ったか?

少女の為に自腹を切ってよりグレードの高いものを買おうという心意気。

そこだけ聞けば立派なのだがな、と橙子は近くの店に入って行った。

 

 

 

 

 

「失礼するぞ、主人」

 

橙子が店に入るなり、女性の店員が笑顔で近寄って来た。

 

「いらっしゃいませぇ!何かお探しですか?」

「ああ、花瓶を探している。

 良い物はあるか?」

「もちろんです!こちらに並んでいますよ」

 

スッと店員が指さす方には色とりどり、形様々な花瓶が並んでいた。

これだけあれば有珠が気に入りそうな物もあるだろう。

ヘンテコな物を買ってやりたい気もあるが、あの有珠が自分を頼れと言ってきたのだ、答えてやりたくなるのが人情というもの。

 

「ちなみに値段は?」

「はい!本日はセールスを行っていまして!

 おまけにこんな早朝に来て頂いたのです!お安くしておきますよ!

 本日は晴天で気分もいいですしさらに格安!

 精々勉強させて頂き、ぐーんと負けてどーんと負けましたところ!

 本日こちらの花瓶のお値段は一律15000円で提供させて頂いております!」

 

ドーンと一気にまくし立てる店員。

流石の橙子も押し負けかける。

 

「あ、ああ、そうか、うん、よくしゃべる店員だ・・・・・・」

 

小さく一息つき平静を取り戻すと、橙子は反撃を行う。

 

「ところでその値段。

 えーと・・・・・・セールスを行っているんだったか」

「はい!他にも色々と・・・・・・」

「ああ、うん、その・・・興味本位で聞くんだがね」

 

こほんと一息つくと一気に問いかける。

 

「仮にセールスを行っていなくて、だ。

 おまけに早朝でも無くて、今日が晴天でも無くて。

 精々勉強しなくてぐーんと負けずにどーんと負けなかったら・・・・・・いくらだった?」

「・・・・・・」

 

店員の動きが止まる。

しばらくしてようやく動き出した店員は言葉を捻りだした。

 

「・・・・・・に、二万円くらい?」

「くらいって・・・・・・」

 

思わず苦笑いをする。

 

「まぁいい、ともかく今は15000円なのだろう?値段的には丁度いい。

 ちなみにその上のサイズは?」

「はい!こちらのサイズは下のサイズの丁度2倍!

 30000円で提供させて頂いております!」

「ふむ・・・・・・」

 

橙子は暫し花瓶を見回し、やがて一つに目を付ける。

 

「何かお気に召しましたか?」

「ああ、だがちょっと待ってほしい。

 実は今日は知人に頼まれて来たものでな、連れがいる」

 

橙子はそう言うと未だ店に入って来ない草十郎を見に外へ出る。

すぐに見つけた。

が、何か様子がおかしい。

 

「おい少年、いい物を見つけたぞ。

 君も確認してほしい。

 

 どうした?さっさと来い。

 何故上着を脱いでいる?まだ寒い時期ではないか?

 おまけに何故腰に巻いている・・・・・・ほら、裾を引き摺っているぞ。

 裾を引き摺っていると言っているのだ、ほら。

 何をしている?転ぶぞ。

 さっさと来い、ほら。

 どうした?裾を引き摺っている・・・いや、裾を引き摺っているって。

 足元が危ないぞ」

 

一向にこちらに来ない草十郎に、橙子は思わず自分から駆け寄る。

 

「さっさと来いと言っているのだ。

 何をしているのださっきから・・・・・・」

 

そう言われ、草十郎はいつもの真面目な表情で答えた。

 

 

「いえ、足元を見られないように」

 

 

「・・・・・・・・・・・・うん、まぁ、それくらいのことはやると思ってたよ。

 いいから来い」

 

上着を元通りに着せて店まで引っ張っていく橙子。

そして店に入ると花瓶の前に連れて行き、一つを指差す。

 

「これがいいと思うのだが、君から見てどうだ?」

 

それを見て草十郎は、むぅと考え込む。

そして。

 

「・・・・・・これは具合が良くないです」

 

そう返事をした。

 

「む・・・・・・そうか、何がどう具合が悪い?」

 

「何が具合悪いって、そう・・・・・・

 

 

 柄がぼやけています」

 

 

「・・・・・・・・・・・・大分鮮やかだと思うのだが」

 

「裏地が気に入りませんね」

 

「花瓶のどこに裏地があるというのだ・・・・・・」

 

「サイズが違う・・・・・・がっ!?」

 

ついに拳骨が飛んできた。

しかし自業自得である。

 

「もういい。

 店主、これをくれ」

「はい!ありがとうございます!15000円になります!」

 

店主かどうかは知らないが笑顔で返事が返って来たのでよしとする。

と、そこで橙子は店主を呼びとめた。

 

「ああ、すまない。 

 それで一つお願いがあるのだが」

「はい、何でしょうか?」

「いや、トントン拍子に話が進んで結構、安い、買った!と言いたいところなんだが。

 実を言うとね、先程言っただろう?知人に頼まれて買い物に来たと。

 あそこにいる冗談の好きな男の身内に頼まれて来たのだよ、「あなたは買い物が上手だ」と言われてな」

「冗談の好きな男って・・・・・・」

 

それは遠回しにバカと言われたようなものだと思うのだが。

そう言いたげな草十郎を無視して橙子は話を進める。

 

「「買い物が上手だ」なんて事を言われて買い物に来た者が「店の者の言い値で買ってきました」なんてとても言えないだろう?

 その壺の値段・・・・・・15000円の内、5000円と言う半端な値段を安くしてもらうことはできないかね?」

 

その橙子の言葉に、店主の表情が変わる。

 

「ご、五千円ですか!?

 いや、しかし・・・・・・」

「分かっている、既に十分負けた金額だというのだろう?分かっている分かっている。

 しかしこれは今だけの話ではない、後々ということがあるからな。

 例えばこれから先、私だけでなく私の家族、知人、友人、この辺りに来るようなことがあったら他の店には一切やらん。

 真っ先にこの店に来させよう。

 贔屓にさせてもらうぞ。

 その代わりだ、この五千円と言う半端な金額を負けて欲しいわけだ。

 五千円だぞ?なんか半端ではないか、気色悪いではないか。

 この半端な五千円を取り除いて、一万円ピッタリと言う事で手を打ってはくれないか?な?な?な?な?な?」

「ちょ、ちょ!ちょ!」

 

橙子の有無を言わさぬ連続攻撃に思わず身を引く店主。

このまま押し切りたかった橙子としては逃げられた気分。

だがここで負けはしない。

 

「頼む、頼むよ。

 ここで一つあっさりと頷いてくれたら私は凄く感謝するぞ。

 もはやこれはここだけの話ではない、この店の将来に関わる話になると分かっているか?

 私はこう見えて顔が広い。

 あちこちの人間に声をかければこの店の商品なぞその日のうちに無くなる可能性もあるわけだ。

 それだけの上客を目の前にして五千円を取るか?

 まさかそんなケチな商売をさせてもらっているなどとは言うまいね?

 私自身も贔屓にさせてもらうと言っているのだ。

 是非とも、是非とも頼むよ。

 この五千円を負けて欲しい、頼む、な?な?な?な?」

 

「あ、あうあうあうあう・・・・・・」

 

やがて店主は目を回しながら頭を抱え、半分涙目になりながら頷いた。

 

「・・・・・・わ、分かりました、五千円引いて一万円で手を打たせてもらいましょう・・・・・・」

「ありがとう、助かるよ。

 いやぁ、実にいい店だ、これからも来させてもらうよ」

「あ、ありがとうございますぅ・・・・・・」

 

ほろほろと涙を流す店員をよそに橙子はその花瓶を手に取ると草十郎に声をかける。

 

「おい、決まったぞ。

 この花瓶を買って帰る。

 支払いは頼んだ」

 

そう言って笑顔で店を出るのであった。

 

 

しばらく花瓶を眺めていると草十郎が店から出て来た。

 

「払ってきましたよ。

 しかしあれだけ話してたんですから、形だけでも橙子さんが払った方が良かったんじゃ・・・・・・」

「何を言っている、君の買い物だろう?」

「・・・・・・それはそうですけど・・・・・・あれ?」

 

と、草十郎は橙子の手に持つ花瓶に目をやる。

暫しそれを眺めた後にポンと手を叩き、橙子に告げた。

 

「橙子さん、済みませんがそれサイズが違います。

 割ってしまった花瓶が確かそれくらいのサイズですから、それより大きいサイズの花瓶を買って帰らないと・・・・・・」

「知ってるよ」

「!?」

 

サイズが違う事を知っていたと?

 

「ど、どうして知ってるんですか?」

「有珠がプロイの数だけ花瓶に花を生けていた頃は私もまだ仲が良かったからな。

 その花瓶なら見たことがある。

 確かにこれくらいのサイズだった」

「じ、じゃあなんでそれを買ったんですか!?

 大きいサイズの花瓶が確かその上の段にあったはず・・・・・・!」

 

買い直さないとダメじゃないですか!と声を上げる草十郎の口元に、橙子は人差し指を当てて黙らせる。

 

「大丈夫だ、お姉さんの魔術でこの花瓶を大きくしてやろう」

 

そう言って笑った。

 

 

「・・・・・・空気を吹き込んだら大きくなる魔術とかあるんですか?」

「そんなものは無い」

 

そう言うと橙子は草十郎に花瓶を持たせ、指示を出す。

 

「左へ回れ、もう一つ回れ、そしてそのまままっすぐ歩け」

「・・・・・・それだと元の店に戻りますけど」

「それでいい。

 さぁ、いくぞ」

 

橙子は笑いながら草十郎の前を歩きだした。

 

 

 

 

 

「やぁ、瀬戸物屋の、失礼するよ」

「ぐすぐす・・・・・・はっ!いらっしゃいませぇ!

 ・・・・・・あ、あら、これはこれは、お忘れ物でしょうか?」

 

再び店に入って来た橙子をそう言って出迎える店主。

その目元にはまだ涙が浮かんでいるように見える。

支払った一万円も置きっぱなしな辺りしばらく泣いていたのだろう。

 

「「お忘れ物でしょうか?」と言うところを聞くと・・・・・・顔、覚えてくれているな?」

「顔、覚えてくれているな?って・・・・・・今しがた値切って買っていかれたばかりじゃないですか・・・・・・」

 

橙子の言葉に「何を言って・・・・・・」と未だ涙目で訴える店主。

 

「いや何、折角花瓶を買って店を出たのにこの男、今更サイズが違うなどと言いだしてな。

 まったく、そんな大事なことは最初から言っておけと言う話だろう?

 本当に冗談の好きな男だ、ははははは」

「・・・・・・俺はちゃんとさいsy」

「黙ってろ」

「はい」

 

草十郎の言葉を笑顔で封殺した後、橙子は改めて店主に向き直る。

 

「そう言うわけですまんな。

 一つ上のサイズの花瓶が欲しい」

「は、はい!」

 

店主は涙をぬぐうと即座に営業スマイルに戻り、橙子たちを再び花瓶の棚の前に案内した。

 

「こちらの上に並んでいるのが大きいサイズの花瓶となります!

 こちらのサイズ、下のサイズの丁度2倍のお値段で提供させてもらっております!

 下のサイズが本日セールスを行っておりまして!朝商(あさあきな)いですし!晴天ですし!

 精々勉強してぐーんと負けてどーんと負けて15000円で提供させてもらっております!

 なのでその2倍と言う事で!30000円でのごていky・・・あれ?」

 

と、そこまで言いかけて店主の動きが止まる。

何やら考えている様子。

 

「・・・・・・そちらのサイズ・・・・・・確か・・・・・・一万円でお買い上げになられたんですよね?

 ・・・・・・2倍なら・・・・・・二万円・・・・・・そんなバカな!?」

 

ぶわわ、と大量の涙があふれ出した。

 

「ご、五千円でもあれだけ困ったのに!その倍の一万円なんて!!」

「分かっている分かっている」

 

ぽんぽんと店主の肩を叩く橙子。

 

「もちろん一万円ともなれば大金だろう。

 だがしかし、これはもうこの場だけの話ではないのだ。

 私の家族、知人、友人、皆揃えてこの店の商品買い漁らせようではないか。

 だから安心しろ。

 今の目先の一万円を惜しんではいい商売はできないぞ。

 それとも何か?これだけの上客に「こんな店に来なければよかった」と言わせて店を追い出す気か?ん?」

「あうあうあうー!」

 

その後も何やら話をまくし立て、店員の涙で水たまりができる頃、再び店員は頷いた。

 

「・・・・・・分かりました・・・・・・二万円で持って行って下さい・・・・・・」

「いやぁ、話の分かる店主で助かったよ。

 この店を選んで本当に良かった。

 これからも是非贔屓にさせてもらうよ」

 

はっはっは、と笑う橙子と泣き崩れる店主。

草十郎はただその光景を震えながら見守ることしかできなかった。

 

「うむ、では二万円だったな」

「・・・・・・はい、二万円でよろしくお願いします・・・・・・」

 

そんな会話に、草十郎は財布を取り出そうとする。

が、橙子がそれを止めた。

そしてウインクして見せる。

その仕草にドキッとするわけでもなく、まだ何かするつもりか?とたじろぐ草十郎であった。

 

「ところで店主」

「ま、まだ何か!?」

 

店主もビクッと飛び跳ねている。

可哀そうに。

 

「そう驚くでない。

 実はな、さっきも言っただろう?あの冗談の好きな男がサイズを間違えて買ったと。

 だからその大きな方の花瓶を持って帰れば、この小さな方の花瓶はいらん勘定になるだろう?

 別に持って帰っても構わないのだが、小物と違って多少場所はとるしな。

 この花瓶・・・・・・いくらかで買い取って貰えると助かるのだがなぁ・・・・・・?

 いやいや、元々はこちらの買い間違いのせいだし?

 少々の損はさせてもらっても構わないんだがなぁ・・・・・・?」

 

チラチラと店主を見ながら呟くようにそう言う橙子。

 

それを聞き、涙目だった店主の表情が一変する。

 

「・・・・・・何をおっしゃる・・・・・・何をおっしゃる!

 今の言葉は気に入りません!

 「少々の損はさせてもらっても構わない」?

 うちはそんなケチな商売させてもらっている覚えはありませんよ!?

 ただちょっと外まで持って行っただけじゃないですか!

 そんなので損なんてさせられません!

 元値の一万円で買い取らせてもらいましょう!!」

 

ズギャーン!と格好よく店主はそう告げた。

そんな態度が気に入ったのか、橙子も手を叩きながら笑顔を浮かべる。

 

「いいねぇ、「そんな商売させてもらっている覚えはない」と来たか。

 素晴らしい!やはりこの店を選んで良かったよ。

 これからも是非とも贔屓にさせてもらうよ」

「もちろんです!」

 

さっきまでいじめていたように見えたのだがいつの間にやら仲良くなっている二人。

傍目に見ている草十郎には理解できない光景である。

 

「そうか、ありがとう、ではこの花瓶は一万円で買い取ってくれるのだな」

「はい!もちろんです!」

「そうかそうか」

 

橙子は笑顔のまま「ところで」と言葉を続ける。

 

「さっき支払った一万円があったな?」

「はい?何ですか?」

「さっき支払った一万円だ、まだそこに置いてあるやつ」

「???ええ、まだレジに入れないでここに置いてありますけど」

 

ふむ、そうかと頷き、橙子は告げた。

 

 

「さっき支払ったその一万円とこの花瓶の一万円、足して二万円。

 

 この大きい花瓶を持って帰っても問題ないな?」

 

 

??????????

 

 

店主と草十郎の頭に大量の?が浮かぶ。

 

さっき支払った一万円とこの花瓶の一万円で足して二万円????

 

 

「では失礼するぞ」

 

橙子は小さな花瓶を置くと、最初から目を付けていた大きいサイズの花瓶を手に取り、フリーズしている店主と草十郎を置いて店を後にした。

 

 

 

「ちょ、橙子さん!?」

 

店から大分離れたところで、遅れて来た草十郎が橙子の肩を掴む。

 

「どうした?少年よ。

 見事に手に入っただろう?大きいサイズの花瓶が」

「いや、それ・・・・・・サギですよね?」

「鷺?この花瓶にそんな絵は無いように見えるのだがな」

「そのサギじゃなくて!詐欺ですよ詐欺!」

 

「・・・・・・少年よ」

 

捲し立てる草十郎の肩をポンと叩くと、橙子は告げた。

 

 

「これは魔術だよ」

 

「どう見ても詐欺です、本当にありがとうございました」

 

頭に怒りのマークを浮かべながら草十郎は即答した。

 

「詐欺とは失礼な。

 日本語でこう言う状況を何と言うか知っているか?」

 

橙子はビシッと草十郎を指差しながら告げる。

 

 

 

「こっちの「思う壺」ってね」

 

 

 




おあとがよろしいようで・・・・・・って壺じゃなくて花瓶じゃないか(

タイトル見て内容から落ちまで分かった上で笑ってくださった方がいらしたらありがとうございます。

良い子は真似しないようにね。
というか真似して上手くいくわけでもないけど。

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