RIDDLE JOKER:真冬の学院七不思議事件 作:タキオンのモルモット
それはそうとメモリアルクエスト再び出ましたね。呼符がうめえ。
午前一時、研究棟前。
在原暁、在原七海、二条院羽月、式部茉優、三司あやせ、壬生千咲、周防恭平。
以上七名、全員集合。
「⋯⋯まあ、ぶっちゃけた話。何調査しろって話なんだけどな。人居るし。」
「確かに⋯⋯研究棟は人が居るからあまり怖くないねぇ⋯⋯」
「お化けが出るなんて噂がある訳でもないしな」
「大体なんで態々こんな事を⋯⋯?疑念を解消するだけなら見せられなくても少しくらい自由見学の期間を与えたりした方が手間が掛からないんじゃないのか?⋯⋯理事長から何か聞いてないのか在原君」
「あー⋯⋯」
まさか理事長が心霊現象を体験してしまい、恐怖し、こちらが口実なんて言えるわけがない。
というかあの理事長がオバケが苦手とは⋯⋯想像もつかなかった。
「まあ、俺達は理事長に信頼されてると思っておけばいいと思うよ。」
取り敢えず、テキトーに誤魔化した。
あの後、隠し部屋のスイッチ周りは秘密を知っている俺達が捜索し、特に何も問題なく、研究棟探索は最後の一部屋となった。
「結局、何も無かったな」
「まあ、研究棟に関しては幽霊など関係ない、ただの噂話だ。何も無いのは当たり前だ。」
「ですねぇ、というか何でそんな話が今更出回ったんですかねぇ⋯⋯?私友達からここ最近になるまで七不思議なんて聞いたことないですよ?」
何も知らない二条院さんと壬生さんはそう呟く。やはり根も葉もない噂話として認識されているらしい、七不思議諸共。
「そもそも七不思議事態が不自然だ。」
「?何を言ってるんですか二条院先輩、七不思議なんて存在自体が不自然じゃないですか。」
「ああ、そういう意味ではなくてな。⋯⋯実はこの捜査を開始する前に、知識として七不思議というものを調べておいたのだが⋯⋯あまりにも『七不思議』という感じがするのだ。」
「?と言いますと?」
「うむ、調べたところ⋯⋯例えば、旧校舎のある学校では『旧校舎に女の霊が出現する』とか、不謹慎ではあるが、自殺者の出た学校では『自殺者の霊が彷徨っている』とか。所謂、特色が出る訳だ。だがこの学院の七不思議は、この研究棟の二つ以外、あまりにもテンプレすぎる。」
「成程⋯⋯つまりこの学校にありそうな噂がこの研究棟の噂以外ないという事ですか?」
「うむ、桜の木に死体が埋まっている、なんてものはよく聴く話だし、音楽室も美術室も、あの辺は全部テンプレだ。だから変なんだ。まるで下二つを広める為に七不思議という形で広めた────そんな風にも思える。」
「「「「「ゑっ」」」」」
ヤバイ、二条院さんを連れてきたのは失敗だったかもしれない⋯⋯。
「まあ、所詮誰かのイタズラだろう。この研究棟の噂が本当なら、理事長がそれを主導している、という事になる。私は理事長がそんな事をするとは到底思えない。」
「「「「「ホッ⋯⋯」」」」」
良かった⋯⋯!!二条院さんが人を疑う事を知らないタイプの人間で本当に良かった⋯⋯!!
万が一少しでも捜査しようとしてたら全力で止めなきゃならない所だった。
「まあ、そうですよね。確かにこんな噂流したところでメリットなんてありませんもんねぇ。」
危なかった、本当に危なかった。
彼女達二人を除く全員で冷や汗をかきつつも、最後の一部屋の探索を終わらせ、俺達は研究棟の出入口へと向かった。
「すいません、理事長からの頼みとはいえこんな夜遅くに⋯⋯」
「いやいや、理事長の頼みならばしょうがないよ。まあ、何も無かったろう?」
「何も無くてよかったです⋯⋯一応私も出入りしますし⋯⋯」
「ははっ、そうか、式部君はこういうのがダメな人間か!!」
「はは、あはは⋯⋯」
警備員の人達と談笑しつつ、次に見て回る噂に目を通す。
「暁、次はどうするつもりなんだい?」
「そうだな⋯⋯取り敢えず次は一番面倒臭いの行ってみるか。」
「となると、木の下に死体が埋まっていて、夜な夜な呻き声が聞こえるってやつだっけ?まあ確かに土を掘らなきゃならないし⋯⋯」
「取り敢えずスコップを寮から取ってこよう、確かあったはずだ。」
二条院さんがそう言って、他の皆も異存なし、と言って一度寮に帰ろうと足を向けた瞬間────
何かの割れる音がした。
即座に振り返り、音のした方を見る。上。窓が割れて、ガラスが降っていて、その落下地点には────
「あやせっ!!」
能力を最大限に解放し、最高速で走り出す。そのままあやせの元へ辿り着き、あやせを押し倒し、上に乗ってガラスの破片を背中で受け止める。焼けるような痛みがするが、どうってことは無い。
「暁!?」
「⋯⋯ってぇ⋯⋯無事か?あやせ⋯⋯」
「何やって⋯⋯暁こそ大丈夫なの!?」
「大丈夫だ、問題ない。」
実際、あの時のように出血は酷くない。ただのかすり傷みたいなものだった。
「二人とも無事か!?」
そこから二条院さんを皮切りに集まってくる。特に問題は無いと伝え、七海に治療を頼んだ。
「ふぅ⋯⋯もうヒヤヒヤさせないでよお兄ちゃん⋯⋯」
「悪い悪い、つい身体が⋯⋯」
「全く⋯⋯」
「暁、大丈夫なの?」
「大丈夫だ、七海が治せる範囲みたいだしな。特に問題は無いだろう。あやせこそ無事か?」
「うん、貴方のお陰でね。ありがとう、暁」
「恋人を守るのは当たり前だ。⋯⋯とまぁそれは置いておいて⋯⋯」
何故、ガラスが割れたのか。
「いきなりガラスが割れるなんて⋯⋯」
「それも外にガラスが降ってきた、という事は研究棟内部から割れたということだな。問題はこれが事故なのか故意なのか⋯⋯故意だとして誰がなんの為にやったのか⋯⋯」
先ずあやせを意図的に狙った、これは流石にないと思う。あやせを狙っていた連中は全員捕縛した。もう残党もいないと情報を吐かせた。
それが嘘だという可能性もある。が、可能性は限りなくゼロと言っていい。仮に残党だとして今更何故、という話になる。
となると他は────
「大丈夫か君達!!」
「「理事長!?」」
そこまで思考していた所で、理事長が騒ぎを聞き付け飛んできたようだ。
「一応七海に傷を塞いでもらったので無事です」
「そうか⋯⋯それは良かった⋯⋯しかし何故研究棟の窓ガラスが⋯⋯?」
「理事長、一応聞きますがヒビが入っててたまたま壊れたとかそういうのは考えられませんか?」
「無い。仮にヒビが入っていたとして⋯⋯例えば突風で石が飛んできて、それがガラスに当たった、と言うなら、まあ納得はできる。だが、見ての通り風はゼロ。更に外側にガラスが散らばっている事から内部から壊されたのは間違いないだろう。」
つまり、人為的な仕業以外、考えられないという事だ。
「さ、暁君!!大変!!大変なのっ!!」
「式部君?どうしたのだそんなに慌てて⋯⋯」
「り、理事長!?いや、とにかく大変なんです!!ぼ、防犯カメラのえ、映像がが」
「防犯カメラの⋯⋯」
「⋯⋯映像?」
警備員室は混乱の渦に包まれていた。
「何事だ!?」
「り、理事長⋯⋯!?こ、こちらを⋯⋯」
理事長に続き、入った俺達も全員映像を見る。
────誰もいない部屋
何者も居ない、その部屋の隅の1mを超える大きさの観葉植物がふわり、と浮いた。
そのままそれは、まるで誰かが振り回しているかのような軌道で回転して────
ガラスにぶち当たった。
「なっ⋯⋯」
「馬鹿な⋯⋯!!」
「嘘⋯⋯でしょ⋯⋯!?」
「こ、これは⋯⋯」
「じょ、冗談⋯⋯だろう?」
「まさか────」
「────ポルターガイスト⋯⋯?」
茉優先輩の声が、やけにクリアに聞こえた気がした。
さぁ!ややこしくなってきたぞー(白目)