弟と一緒に地球という人外魔境に送られた下級戦士だけど何か質問ある?   作:へたペン

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少し素直になる話。


其之二十四『兆し』

 目を覚ますとロープで縛られていて状況が理解できなかった。

 今はカメハウスの外にいるようで、カカロット達も同じように縄で縛られている。

 カカロットと亀仙人が居るのに全員が捕まり無力化されている今の状況が信じられない。

 一体眠っている間に何があったのだろうか。

 

「確かに3個あったわ。遠慮なく頂いて行くわね」

 

 するとカメハウスからドラゴンボールを手にしたブルーが出て来る。

 そのもう片方の手には変身したランチがやはり縛られた状態で抱えられていた。

 

 どうやら洞窟の倒壊を恐れるあまりエネルギー波の威力を抑えすぎたらしい。

 それにしてもまさか潜水艇なしで生き延びるとは思いもしなかった。

 しっかり死んでいるかどうかを確かめておくべきだったと後悔する。

 

 

「あら、化け物が目を覚ましたみたいね。でもお仲間も不死身の化け物でなくて安心したわ」

「くそ! 放しやがれオカマ野郎!!」

「下品な言葉を使う女ね!! 今すぐに殺してもいいのよ!?」

 

 

 ブルーはドラゴンボールをリュックに入れ、ホイポイカプセルから散弾銃を取り出し、ランチを乱暴に地面へ放り投げるとその頭部に銃口を押し付けた。

 力が入りにくいように縛られているが縄はエネルギーの刃を出せば切断できる。

 だが今迂闊に動けばランチの命はないだろう。

 

 

「一人でも殺してみろ。今度こそ貴様を殺してやる」

「あらやだ怖い。貴女がそこで大人しくしてくれたら、貴女以外は助かるかもしれないわね」

 

 

 どうやら私を生かすつもりはないらしい。

 だがブルーは私に銃口を向けようとしない。

 銃では威力不足な事を悟られているのだろうか。

 

 

 

 

 

「頭を吹き飛ばしても動いてきそうで怖いわね。そうだわ! 貴女にはバラバラになってもらいましょうか!! これは強力な時限爆弾よ。制限時間は5分。精々遠くに運んで消し飛びなさい!!」

 

 

 

 

 

 ブルーはランチに銃口を向けたまま時計型時限爆弾のスイッチを入れ地面に置き、私を警戒しながらホイポイカプセルで飛行機を出しそれで飛び去って行く。

 

 爆弾の威力がどれほどのものかわからないが放っておけば全滅だ。

 私はエネルギーの刃を手から出して縄を切り裂いて解き時限爆弾を手に取る。

 時限爆弾は時間指定と起動装置はあるが解除装置がついていない。

 ブルーの言う通り遠くへ持って行くしかないだろう。

 

 

 爆発の規模がわからない以上、これは覚悟を決めるしかないか。

 

 

「キャロ! 早くそれを何とかして!!」

「すぐに何とかする。それと今まですまなかったな()()()。カカロットの事を頼んだぞ」

 

 

 時間がないからブルマの縄だけ切断し、私は財宝が詰まれた亀仙人の潜水艇に乗り込む。

 本当はしっかり今まで名前で呼べなかった事を謝りたかったが時間がない。

 皆ともっと話をしたかったが時間が足りない。

 

 

「キャロットさん、何をする気ですか!?」

「キャロット早まるでない!!」

「姉ちゃん!? くっ、くそっ!! ほどけねぇ!!」

「キャロット無茶すんじゃねぇ!!」

 

 

 皆の心配する声が聞こえる。

 心配してくれる仲間の為なら悔いはないと思えるようになった。

 サイヤ人としては甘い考えだけど、私らしい選択だと思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんで私は今まで皆の事を名前で呼んで、もっと素直に話が出来なかったのだろう。

 それだけが心残りだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 複雑な操縦は出来ないが飛行機を真っ直ぐ飛ばすくらい私にも出来る。

 親切にも簡単な操作の仕方にしてくれているカプセルコーポレーションに感謝だ。

 私は潜水艇を飛行モードに切り替え、ただがむしゃらに真っ直ぐ空を目指す。

 

 残り爆発まで5秒。

 カメハウスはもうはるか遠くだ。

 もう操縦しても操縦しなくても距離は稼げないのでキャノピーを開いて脱出を試みる。

 それでも至近距離の爆発だ。

 後は強力な爆弾というフレーズが大げさなものだと祈ることしか出来ない。

 

 

 

 

 爆弾が爆発し、自爆した時とは比べ物にならない衝撃が私を襲う。

 

 

 

 

 意識はぎりぎり保てるが体がピクリとも動かない。

 痛いし熱いし何も見えないし最悪だ。

 それでも私が生きているという事はカメハウスに届くほどの惑星攻撃に使うような爆発物でなかった事に安心感している自分が居る。

 

 

 

 

 ふと、カカロットの気配が強くなった気がした。

 大気がカカロットの気配で満ちた気がして、どこか心地が良い。

 

 

 

「姉ちゃん!!」

 

 

 

 近づくカカロットの声。

 その後すぐに抱きしめられる感覚。

 全身が痛いけど、その暖かな温もりに身を預けて私は意識を手放した。

 

 

 後で聞いた話だが、ブルマがロープを斬る前に私が乗った潜水艇が爆発したところを見たカカロットは自分でロープを引き千々り筋斗雲で落下していく私を助けてくれたらしい。

 なんでもその時カカロットを中心に謎の衝撃波がほとばしり、危うく皆吹き飛ばされて海に落ちるところだったという。

 おそらく怒りか何かをきっかけに戦闘力が爆発的に上がった余波だろう。

 

 カカロットは私をカメハウスまで運んだ後、そのままブルーを追って行ったらしい。

 

 

「まったくもう! 何とかしてって頼んだけどあんな無茶は頼んでないでしょ? 怪我一つせず戻って来たからいいものの心配したんだから」

「すまん、ぶ……」

「ぶ?」

「ブルマ……」

「よろしい。次からはあんな無茶するんじゃないわよ?」

 

 ブルマがわしゃわしゃと嬉しそうに微笑みながら私の頭を撫でる。

 名前を素直に呼ぶだけでこんなに喜んでくれるなら、悪い気分ではない。

 

 いつ終わるかもわからない人生だ。

 もう少しだけ素直に生きようと思った。

 

 




悟空は『最強への道』の怒り状態になって縄を吹き飛ばしたようです。
戦闘力が足りてS細胞が多かったらきっと超サイヤ人になっていた事でしょう。

突貫で少し半端になってしまいましたがこれにてキャロットの名前呼びが解禁されます。

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