銀灰の神楽   作:銀鈴

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遅くなりました


天に叢雲冠るが如く、█星を█え誓いの聖剣【06】

 ユ=グ=エッダ右舷、左舷、中央の3箇所で同時に発生した戦闘。それらの内最も苛烈であり最もユ=グ=エッダ側が劣勢な場所は、間違いなく中央1番艦の墜星とリィンによる戦闘だった。

 

「全くッ、墜星とはここまで出鱈目なものか!」

「リィン・M・D・ラーグルフリョゥトリムルン、貴様に用事はない。死にたくなければ、疾く去るがいい」

「余はこの場から、一歩も引くつもりはない!!」

 

 墜星の振るう巨剣と、リィンの振るう真魔剣ディーアボロスが火花を散らす。瞬きを1つする間に十数合、何度も何度も何度も何度も繰り返しぶつかり合う必死の戦況は、確実に墜星に傾いていた。

 

 秘呪解放──

 

「遅い」

 

 それは、至って単純な問題だ。リィンの総合的な力が、墜星に及んでいない。たったそれだけの、けれど覆し難い現実だった。

 ディーアボロスを起動し、秘呪で何重にも力を底上げしたリィンより、墜星の方が力が強い。剣技は遠く及ばず、動きの速さは同程度。防御が上手く、魔法は結晶部以外にしか効果をなさない。それでいて、隙をついて腕を斬り落としても再生される。墜星からの攻撃だけは乱舞する虹霓が防いでいるが、今度は集中力の差という現実が襲いかかる。

 

「ぐ、ぅッ!」

「無意味だと言ってる」

 

 墜星の巨剣を受け流し損ねて、リィンさんが大きく吹き飛ばされる。しかし空中で翼を広げ、風を掴み即座に対応。空を大地のように蹴り上げ墜星に向けて斬撃。更には10数個の秘呪を墜星の内部へ付与、炸裂させる。それは1度ならず何度も何度も、繰り返し墜星を砕き続けるが、()()()()()とばかりに再生した墜星に逆に斬滅される。

 

 ただそうやって斬ればいいだけの墜星に対し、同じ手を使わぬように戦わなければいけないリィンさんは、確実に集中力が消耗する。そもそも力が及んでいない以上、この奇跡的な拮抗状態は崩壊までの秒読み段階に入っていた。だからこそ──

 

「次のタイミングで、当方が介入の道を作る」

「あんな戦いを見せられると、ちょっと自信がないですが……腹は括りました。お願いします」

 

 大鎌に変形させた魔剣を握る手に、じっとりと汗が滲む。墜星を目の前にして、心は形容しようのない気持ち悪さに包まれている。今になって未来の出来事がフラッシュバックして、どうしようもなく身体が震える。

 だけど、大切な人とやると決めて、誓ったのだから。深呼吸1つ、それで震えは収まった。最後までやり遂げると、そう決めたのだ。アインと一緒に未来を生きるために。

 

「任せるといいと進言する。男としては不甲斐ないが、当方が万全の援護を行う」

「分かってますよ。だから、」

 

 何せ現在進行形で、私にはアインによる補助と強化魔法がかけられているのだ。そうでもなければ、墜星の前に立つことすら私には出来ない。

 

「これからの未来の為に、未来での借りを返しましょう」

 

 精一杯の笑みを作って、消し、頭のスイッチを切り替える。考えなしに戦いに参戦しても、未来でのように一撃で魔剣を砕かれるだけ。だからこその大鎌形態だが、私もリィン同様墜星に対する勝ち目はない。だからこそ、勝ちの目を作りに行く。

 

「シッ!」

 

 短く息を吐きながら、リィンさんが巨剣に弾かれたタイミングで疾走を開始。精一杯探知に対するジャミングはかけているけれど、あんな相手だどうせ気付かれている。

 

「漸く来たか、アヤメ・キリノ」

 

 案の定、あと数歩で間合いの内側に入り・入り込むと言った距離で墜星はこちらに振り向いた。言葉には答えない、そんな余裕はない。墜星の左腕が霞む。巨剣が来るぞ、と本能が叫ぶが──今だけは却下する。何せ私の後ろには──アインがいる。

 

幻想世界(グレイプニール)断片投射(マルチシュート)!」

 

 瞬間、墜星の結晶から発生する青い波動。停滞をもたらすそれを体内から発生させられ、墜星の動きの格が数段落ちる。超一流には届かない私でも、ギリギリ対応できる程度の動きに。

 

「ハアァッ!!」

 

 気合一閃。12本の魔剣を束ねた大鎌の刃は、狙いを過たずに墜星を斬首した。内部組織を確認──完了。通常の人間と大差なし。飛ばされた頭の結晶化の開始を確認。猶予は無しと判断。

 

「まだ、まだァッ!!」

 

 振り抜いた大鎌の遠心力に体を預け、捻りを入れながら体を回転。一撃目より加速させた第二撃で、両腕ごと胸板で輪切りにする。腕、肺、心臓、骨、内臓組織を確認──完了。通常の人間ならば生存が許されないほど、内部の結晶化を確認。

 更に魔法で大鎌を加速して、独楽のように回転しながら第三撃。腰部を切断して脚を切り離した。ここの臓器にも何の特徴もなし。分かったことといえば、この墜星の性別が男ということ。そして下半身に行くほど結晶化の頻度が増していることくらいか。

 結晶には一切なんの術式も刻まれておらず、ただ濃密すぎる魔力が満ちているのみで……否、結晶の様子がおかしい。泡立つように、植物の早回しの様に、急速に結晶が成長するのが見えて──

 

「アイン!」

「転移術式《銀の門》・展開(セットアップ)!」

 

 直後私を銀の光が包み込み、激痛を伴いつつも、コンマ数秒のラグもなく墜星の背後上空へと転移させた。目の前にある光景は、分割された墜星のパーツから異常成長したクリフォトの結晶が形作る絶死の牢獄。直前まで私がいた空間を、鉄の処女(アイアン・メイデン)か何かの様に串刺しにしている空間だった。

 

「ッ!!」

 

 そんなものを確認しながら、消えていない遠心力と溜め込んだ力を解放。これを最後と区切り、魔法で自身の動きを加速。墜星を唐竹割にする3連斬を叩きつける。脳の中身──異常無し。心臓の中──異常無し。結晶化部分及び成長した結晶部分──異常無し。対象のエネルギー総量──変化無し。

 

 無・闇・土の魔法を即興合成改変、魔法陣を出力して魔法を起動。出癖で銀を含有させた杭も生成し、1番大きな墜星のブロックである右胸部を地面に固定。その後自分の慣性を0にし空間に叩きつける魔法で、結晶ごと爆発四散させた。

 さに慣性を殺したことにより安全に着地しつつ、魔剣の大鎌化を解除して双短剣へ。両手による速記で、最大限の妨害と解析を試みる。

 

 ・結晶は割れ砕け/る

 ・砕けたものは/戻らない

 ・隠し事は暴/かれる

 ・誰も嘘を/つくことはできない

 

 が、魔剣チョークの能力で描いた文字列は、独りでに動いた墜星の巨剣に砕かれた。この能力は一定範囲において『火は熱い』と言った様に『それはそういうものだ』という概念を作り出し、準拠させる力。成る程、こういうアプローチの仕方であれば墜星にも有効らしい。

 

「フッ!」

 

 得心している私に、浮遊して襲いかかってきた巨剣を受け流す。未来で一撃も受けることが出来なかったのは、あくまで墜星側の膂力が桁違いだったことが原因なのだ。こんな武器だけの突撃ならば、何の問題もなく対応できる。

 

「すまぬ、不覚を取った」

「仕方ないと思いますよ」

 

 隣に立ったリィンさんには目もくれず、私は自分で分割した墜星のパーツを注視する。再生速度確認──事前情報通り。再生部位も同様。左腕と巨剣を優先して、肉体の再生は始まっている。

 真っ二つにしたはずの頭部やばら撒いたはずの身体のパーツは、独りでに結晶そのものと化し砕けるらしい。ああそれと、わざわざ1番残った1番大きなパーツから再生するということも確認が取れた。目を潰された場合視界は数秒断絶されるが、痛みは全く感じていないらしい。あるいは耐えられるのか。そして、何より重要なことが──

 

「魔力が全く変動しておらぬ。墜星の不死身がどんなものか、余には凡そ想像がついたぞ」

「そうですね。私も気が付きました」

 

 墜星の持つ最も厄介な特性である再生。その原動力は墜星自身のものではなく、何処からかエネルギーを供給され続けている。恐らくアンテナの役割を果たしているのは左腕の巨剣。12分割になるようバラバラに刻んだお陰で、その供給元と力の流れも把握した。

 

「漸く気が付いたか」

「ええ、まさかクリフォトと繋がってるとは思いませんでしたよ」

 

 瞬く間に墜星のパーツから結晶が生え、砕けて、その中から無傷の墜星が再生し蘇る。今のところは、全て未来で得た情報通り。何も変わることのない、最悪そのままだ。

 

「得体の知れないものと繋がった、不死身の戦士。なんて言うんでしたっけこういうの。エインヘリャル? 神の使徒? それとも、死兵かアンデッド?」

 

 だけどまだ足りない。再生速度、優先度、不死性、その他諸々の性質は確認できたけれど、まだだ。まだ墜星は聖剣を起動していない。それを確認できなければ、()()()()()()()()は起動できない。

 だからこそ、腕一本はくれてやるつもりで煽ったのだが……返ってきたのは予想外の反応。驚愕と納得に満ちた表情だった。まるで意味がわからないその対応に、思わず大鎌を握りしめる。

 

「ほう、やはり親子ということか」

「何がです」

「真実など何も知らないというのに、勘と鎌かけでそれに辿り着く所だ。実によく似ているよ、貴様の母親イオリ・キリノとな」

 

 感心するかのように言う墜星を見て、頭に痛みが走った。戦闘中の意識でなければ、耐えられないくらいの激痛。その中から、朧げに蘇る小さな頃の記憶。まだ平和だった頃、パパとはまた別の私に剣を教えてくれた1人──その、誰かの筈。

 

「……貴方は、一体誰なんですか?」

「ああ、そうか。まだ俺は名乗ってすらいなかったのだな」

 

 そう問いかけた私に、一瞬だけとても悲しそうな表情を浮かべた墜星が言った。しかしすぐに、その表情は憤怒と歪んだ光に塗り潰される。

 

「我が()は墜星。墜星・八岐だ。最早それ以上でも、それ以下にもならない」

「じゃあ、改めて聞きます。人族だった頃の貴方の名前は、何ですか」

 

 八岐。墜星・八岐。未来での借りを返す相手の名を知れたことは良い。だけど腑に落ちない。この人が、そんな名前を名乗ることが。それにもうリィンさんが動いている以上、出来る限り会話を引き延ばそうとして──

 

「答えるつもりはない。どうしても知りたければ、俺を殺して認識阻害を解けばいい」

 

 一転、シャットアウトする様な言葉で八岐が会話を切る。

 

「そしてこれ以上、話すことも存在しない。また時を巻き戻され、情報を持ち逃げされては堪らないからな」

 

 馬鹿な、と。なんで知っていると、思った時にはもう遅かった。一瞬だけ出遅れた私に向けて、致命的なタイミングで巨剣が迫る。それでも無理やり大鎌を割り込ませ、直感で悟る。自分がこのまま断ち斬られる未来を。

 

「ッ、らしくないぞアヤメ」

「すみません!」

 

 巨剣と大鎌がぶつかり合う直前、さらにそこにアインの防壁、丸い虹霓、そして一振りの魔剣が差し込まれた。おそらく気付かれていたけれど、不意打ちと挟撃を行うために、墜星の裏側に回ってたリィンさんだ。

 謝った直後、4人で受け止めたというのに耐えられない衝撃に吹き飛ばされた。障壁は一文字に両断され、虹霓はギリギリまで耐えるも崩壊し、幻想で作り出した大鎌は砕け、漸く勢いの弱まった巨剣をリィンさんが受け止める。そこまでして、ようやく両腕が痺れて使い物にならない程度の被害。私が長年突きつけられてきた膂力の差が、どうしようもない壁として立ちはだかっていた。

 

「今再び宣告しよう。審判の時は来た。希望の存在を証明してみせろ」

 

 墜星・八岐が告げたその言葉が、開戦の合図だった。

 

「リィン、合わせて!」

「分かっておる!」

 

 私とリィンさんが共闘したのは、アインの同僚であった2人と戦ったあの時一度だけ。だがそれが、今の私達にはあまりにも得難い千載一遇の経験となって効いていた。

 私が大鎌を振るえば、その隙をカバーしてリィンさんが妨害する。リィンさんが秘呪を込めた斬撃を撃ち込む瞬間、今度は私が墜星を妨害する。その上アインからの援護と支援が絶え間なく飛び交い、2人では対応できない隙も何とか潰してくれる。

 

 だがそれでも、当然戦闘は拮抗状態の維持すらままならない程押されていた。

 

 まるで片手剣でも使っているかのように、本領を発揮して振るわれる八岐の巨剣。暴風雨の様に荒ぶるそれに対して、大鎌と刀が衝突を繰り返すたびに爆発の様な衝撃が連続する。甲板も、大鎌の刃も、魔法も、全てを余波で粉砕し、私達の身体も壊しながら──どうしようもない。護虹剣ビスレストによる絶え間ない傷の治癒と疲労回復がなければ、こんな戦闘は1分と持たないだろう。

 有利を取れたのは、最初の不意打ちのみ。無論相手が無限に再生する以上、優位性なんてものはとっくのとうに存在しない。

 

 理由は単純。私達4人全員とその連携を合わせても、八岐の方が総合的に強い。前衛を張っている私とリィンさんは、まず小さいのだ。戦闘者としては、微塵も適していない程に。私は精々140cm前後、今のリィンさんも150〜160cm程度。対し八岐は、枯れた老人の様な身体とは言え180は越えている巨漢だ。

 リーチが違う。獲物の破壊力が違う。膂力が違う。スタミナが違う。挙げればキリがないほどに、総じて備わった能力が違い過ぎる。

 

「これも対応されるか。ならば、これはどうだ?」

 

 加えて、八岐のこの態度が問題だった。1つ1つ、私たちが対応出来ることを確認する様に技が振るわれ、対応できると確信された瞬間技が切り替わる。

 宣言通り見定めているのだろう、私たちを。八岐の言う希望になり得るのか。だがそのせいで、一瞬たりとも慣れや癖を読み取ることができない。スタイルが切り替わった瞬間、剣筋から動きまで、全てが別人のそれに切り替わるのだ。振るわれる武器は、変わらず巨剣一振りだけだというのに。

 

「リィン、あとどれくらい保ちますか!?」

「分からぬが、そう長くは保たぬ!」

 

 それでいて、もう1つ。

 多数の悪魔や人に相対するなら気にも留めない、魔剣の限界駆動時間という時間制限が私達には科せられていた。何故か八岐を斬っても斬っても、Ⅱ型以上の魔剣特有のエネルギードレイン式の無限駆動が機能しない。私達自身の体力を消耗させるだけで、魔剣本来の駆動時間を削られる。

 だのに、墜星は未だ聖剣を起動するそぶりすらない。切札をまだ切る事ができない以上、魔剣の限界駆動が終わった瞬間が私達の死ぬ瞬間なのは間違いない。

 

「寿命1月持ってけ! 第2封印パージ!」

 

 それまでに八岐の本気を引き摺り出すべく、躊躇うことなく残りの命を投げ捨てた。瞬間、大鎌の刃が緋色に染まり、待っていたとばかりにエターナルの出力が跳ね上がる。右刃に宿った憤怒/残影の力が、爆発的な膂力の上昇として顕現した。

 

「ほう。獣に染まれば、この剣にも傷を付けるか」

「はぁぁぁぁッ!!」

 

 斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬──ッ!!

 音の壁を突き破りながら乱舞する大鎌。赫怒に焼かれた思考が沸騰するのを自覚しながら、暴れ馬の様な感情を無理矢理に御して八岐に叩きつける。そうして遂に、八岐の巨剣を傷付ける様になったエターナルは、払った代償に確と応えて戦況を一転させた。攻守交代。叩きつける斬撃の狂嵐は、戦闘の流れをこちらに傾け始めている。

 

「成る程。命を削れば、俺であろうと圧倒できるか」

 

 だが、それでも届かない。

 納得する様に言葉を零す八岐は、斬撃の大半を受け切り、受け流している。大鎌は巨剣を削り、秘呪の込められた剣が身体を裂く。だが部位の欠損という墜星の再生における、決定的な遅れを齎すには至らない。

 

「4対1というこの状況を加えるとすれば、圧倒程度では些か残念ではある。だが満点とは言わずとも、及第点ではあるのだろうな」

「まずいアヤメ、避けろ!」

 

 遠心力と身体能力全てを使った大鎌の乱舞は、突然止めることは叶わない。故にリィンさんの忠告は遅く、力を溜めるように一瞬動きを止め、斬撃を全て身体で受け止めた墜星に私が出来ることは殆どない。例えそれが、絶対切断の予兆だと頭では理解していても。

 

「ッ!!」

 

 身体の動きは止められない。けれど動きならば無理矢理になら変えられる。斬撃の軌跡を変え地面を殴打。反動で身体を吹き飛ばしながら魔法で動きを制御。首をひねることで、絶対切断の斬線から無理くりに自分の首を外した。

 景色がズレる。右の獣耳が空を舞う。幾つか身体の筋を痛めるような動きをしても、完全回避には至らなかった。そして当然、元に戻ろうとする世界が、時空間を揺らす激震を発生させた。

 

「ッ──アぁぁッ!?」

 

 激震に巻き込まれ獣耳はミンチ肉の様になり、正面から激震を受けて私は吹き飛ばされた。ぐわんぐわんと、世界が揺れる。世界が歪む。血の臭いが酷い。獣耳があった場所から、ドクドクと血が流れ続ける感覚が嫌に鮮明だ。脳震盪でも起こしたのだろうと当たりをつけて、それでも大鎌を支えに立ち上がる。

 

「前提条件は合格だ」

 

 ビフレストによる癒しか、あるいはアインの回復か。それが間に合ってきたのだろう、歪む世界の中、八岐の言葉が耳にするりと滑り込んで来る。

 

「故に、今こそ断言しよう。

 ここが第2の始まり、運命の転換点。

 枷が消えた歯車が回り、噛み合った最初の特異点。

 さあ、見せてみろ。力を、意思を、可能性を。そして何者にも変えがたい、未来(きぼう)の光を。

 俺たちが守り続けたこの世界が、無駄ではなかったと示してくれ」

 

 爆発し荒れ狂う氷焔の嵐を背景に、八岐の持つ魔力が跳ね上がる。爆発的に跳ね上がる力の総量に、どこか線香花火の最後に似た儚さを幻視して──

 

「刃金を穢せ、我が絶望──無明の過去(きのう)へ閉ざすため」

 

 世界と己を呪い穢す聖なる剣の、呪詛に似た詠唱が解き放たれた。




アヤメ 残り126日
アイン 残り100日
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