そもそも、禁呪とはなにか。
この世界で魔法を学び始めた者が、いつしか学ばざるを得ない事柄の中にそんな問いがある。
初めは使ってはいけない術として学び、次に研究対象として構成を学び、凡そ1つは体得することになる禁忌の術。
《
便宜上『魂』や『魂魄』と呼ばれる、ヒトが持つ根幹部分にまで手を伸ばしたもの。それが禁呪と呼ばれる技術体系の共通項だ。
例えば削り取った魂をエネルギーに分解して放出したり、削った魂を自己吸収して短期間の強化に利用したり、対象の魂を自ら捻じ曲げさせたり……全て、取り返しのつかない結果を引き起こす。
「だからこそ──」
末席も末席なれどいち魔法使いの
何せこの禁呪は、容易にヒトの全てを捻じ曲げる。
見た目も、声も、辿ってきた過去も、紡がれる筈の未来も。何処かの誰かが勝手に願うだけで、抗いようなく破滅へと転じてしまう。神のように振る舞う、子供の精神へと逆行した大人が、大人の邪悪さで子供の純粋さを以って世界を塗り潰してしまう。
もし1つでも改変を通してしまえば全てが終わり。リィンの翼が飛べなくなったように、生き物として、ヒトとして当たり前のことすら出来なくなる。いや、それだけで済めばまだ良い方だ。最悪の結末は、そんな程度で収まらない。
「聖剣、臨界。
だからこそ私は叫び、電脳世界ならぬ魔法世界へと飛び込んだ。
薬の
「ッ──!!」
そして、そこからが地獄だった。
あくまで私の持つ対魔法技能は
「うぶ……おぇ……」
分かりやすく言えば、無数に氾濫する人の想いが作る大時化に私は呑み込まれた。善意や羨望なら耐えられた。だが今回の《現実改変》に関しては、毎秒数百個私たちへ殺到する魔法の大半は、悪意の願いで満ちていた。
ああしたい、こうしたい、こうなればいい……善意なんてものを押し流して氾濫する明暗のエゴ。現実改変が作る情報とエラーの嵐。暗い願いの海に明るい祈りが僅かに輝く大銀河。
吐き出しそうな嫌悪感と暴力的な情報量に溺れながら、初めの頃は10〜20個を打ち消した。慣れてきてからは50〜60、果てには自分でも驚いた数百個の禁呪を相殺していく。
「ぁ……ぅ……」
結果として、私は半ば魔法を相殺するだけの装置に成りかけていた。魔法の深奥へあまりに近付き過ぎて、ヒトよりももっと魔法に──いや、それよりも古い"力ある言葉"に親しい生物へ。きっと、精霊と呼ばれる存在に己の中心が変質していく。
「ひっ」
そんな状態の私を現実に引き戻したのは、
義足になった脚を幻肢痛に疼かせる、青白い絶死の光。魔法という便利な檻に雁字搦めに縛り付け制御・安定化させている、地球で言う水爆と同質の、しかし出力は桁外れに高い核融合反応。直近に感じたそんな気配が、精霊に寄りかけていた私をヒトの意識へと引き戻した。
そうなってしまえば、後はもうトントン拍子。
恐らく取り込んだ薬物に対して、耐性を獲得してしまったのだろう。回復を始めた五感で薄ぼんやりと、アインの背中に揺られながら状況を把握していく。
ただやはり、依然継続している禁呪に対抗する必要がある。その所為で事情はうまく掴めていないが、恐らく悪くはないのだろう。などと考えている間に、見えてきたのは眩い光だった。アレになら力を捧げてもいいと思える、優しくも鮮烈な輝きだ。
「ん……」
その輝きから感じる見知った気配に、思わず私はホッと息を吐いた。ああ、ちゃんと魔剣は起動できたのか。あの用途不明な外付け
その辺りでようやく、段々と意識がはっきりしてきた。城内に入ってからアインとリィンが、ミーニャ女王とアヒムさんが動いてくるのが伝わってくる。
「おはようございます、アイン、リィン。……なんとか、撤退は出来たみたい、ですね」
そんな中、取り戻した意識で魔力を手繰り自分に解毒の魔法を使いながら、かなり弱々しくなっている声音で私は話しかけた。まずい、思った以上に薬の反動で身体がボロボロだ。
「アヤメ! 身体は無事なのかと心配する!」
「まあ無事……ではないですね。禁呪を相殺し続けてただけとはいえ、薬の反動でボロボロです。多分、いま聖剣を解除したら死ぬ程度には」
答えながら、アインの手を借りて背中から降りる。軽く手脚を動かして調子を確認するが、身体的不調は無さそうだ。割れそうで激しい頭痛以外は、大体少し疲労した程度で済んでいる。
「因みに、ここは王城の外縁部……でいいんですよね?」
「うむ。現状この城が、街に溢れた禁呪に対抗する最前線となっておる」
私の疑問にリィンが答えてくれた。どうやら私の時とは違い、安全圏に逃げ込むことは出来たらしい。
実のところ、禁呪には意外と対抗策が多い。研究者が健在だった頃までに発見されていた術であれば尚更だ。私や精霊の使う魔法のハッキングは例外として、結界、逆位相の魔法による対消滅、もっと単純に薬物投与など対策は無数にある。尤も効果を受けないだけで、効果を受けた相手を止めることは出来ないが、そこもカバーしているのが王城の防御システムだ。
安全なのは確かであるし、墜星の対策を考える時間も十分にあると思って良いだろう。
「ところで、近くに照明でもあるんですか? 目を開けてられないくらい眩しいんですが」
「確かに城壁の光で夜にしては明るいが、目を開けていられぬ程の光ではないぞ?」
「えっ?」
リィンの言葉に、慌てて探知で城壁の反応がある方向を向く。が、視界は変わらずホワイトアウトしたまま。アインの方を向けば微かに光の強さは弱くなったが、それでも目を開けたくない輝きがそこにある。……ならば、認めざるを得ないだろう。
「割れそうな程頭が痛いだけかと思ってましたが、目もイカレてましたか」
可能性として考えられるのは、薬の
「それは、あの時飲んでいた薬のせいかと疑問する」
「多分そうだとは思いますが、はっきりとは。でもそれにしては、解毒も回復魔法も効いてないんですよね」
取り敢えず、失明覚悟で片目を開けて確認するしかない。そう左眼を開いた瞬間だった。突き刺されるような激痛と共に、眩い世界が広がった。
通常の視界に重なるように、大気に煌めく輝きの奔流。私も、アインも、リィンも、全員が余りにも濃密なそれを纏っている。かつては空に見えたという星々の大河のように、小さいながらも鮮烈な輝きを放つこれらは──
「ッ、づぅ!?」
「アヤメさんが、目を覚まされたと聞きました! 無事なのですか!?」
なるほど、道理で何も魔法が効かないわけだ。全てを悟ると同時に、新たな輝きがこちらへ向かってきた。輝きに目を潰される前に目を閉じて、無事だと示すように片手を上げる。
声質からしてミーニャ女王。私の名前を躊躇いなく呼べる辺り、起きているのは私たち5人だけらしい。てっきりセプテントリオさん辺りもいるかと思っていたけど……まあ、事情が事情か。
「アヤメが眼をやられておる! ミーニャ女王の力で治せぬか?」
「ええと、リィン大丈夫です。これ多分、病気とか薬の影響じゃなくて」
「アヤメの『大丈夫』は、信じられないと否定する」
どうやら私の信用はとっくに地に落ちていたらしい。実際に失明してたとしても、アインの義眼と同じ方式で何とでもなる。治ることはないと断言できるが、ボロボロなことには違いないし素直に受ける方が良いか。
「あー……なら、お願いします」
「言われずともやります! 癒しなさい、《慈愛/残影》」
頭を下げた私に手を翳し、視界が再びホワイトアウトした。元徳スキル《慈愛》の能力は、魔力を含めた傷の完全治癒と一時的な能力強化。それは残影になっても変わることなく、瞬く間に私の身体を修復していく。体内に残った毒素を浄化し、傷を癒やし、魔力を充填し始める。
「やっぱり、特に変わりありませんね。格段に体調は良くなりましたが」
だが、それだけだった。義足周りは血行がよくなっているが脚は再生せず、全身……特に腹部にある傷跡もそのまま。頭痛は消えたが義耳に変化はなく、当然眼にも変化はなし。総じて、万全の体調に回復したと表現するのが正しい気がする。
「そんな……」
誰か呟いたのか、そんな言葉が耳に届いた。確かに魔法よりも上位の元徳スキルの残影で治らないのであれば、最早治療の見込みはないと言っていい。
「だから大丈夫だと……私の感覚が間違っていないなら、今のミーニャ女王が私の気配を探れば理由はわかるかと思いますが?」
「私が、ですか?」
「ええ。獣人の中でも、ライオンハートを起動してそこまで精霊と親しくなった貴女なら」
何か言いたそうにしていたアインを手で制しつつ、反対の手でミーニャ女王を促した。今もホワイトアウトし続けている視界は恐らく《魔眼》。ママから遺伝したと考えればおかしくなく、それが今となって目覚めた切っ掛けは1つしか考えられない。
「嘘、この反応、精霊。いえ、精霊になりかけている……?」
「やっぱりですか」
案の定、半分くらい精霊になりかけていた。
獣人の王からお墨付きを貰えたお陰で、自分の状態を確信を持って判断できる。原因も魔法ハッキングの乱用と明白である以上、この答えに間違いは無い。
「認識、した? つまり、アヤメは精霊に成ったということで良いのだろうか」
「いえ、体感ではまだ半半くらいかと。この眼を含めて細々と変質してるみたいですが、まあ些事です」
四半獣人の半精霊で大罪人、まるで属性のバーゲンセールだ。
そんな自嘲は置いておいて、アインの言葉を否定した。そう簡単にヒトを捨てたりなんてしないし、出来ることでもないのだから。そして変質しているらしき感覚も、もう慣れたから問題ない。魔剣や聖剣といった素の能力から数倍に跳ね上がった能力で活動する状態を経験している以上、本当に些事でしかない。
「余としては何でも構わぬが、アヤメよ。その眼について、何か解決策は持っておるのか? アヒム殿が戻るまでには、決着をつけたいのだが」
「あります」
迷うことなく断言した。
そう、私が半分精霊と化しているなら解決策は簡単だ。
精霊部分を誰かと契約させて、力をそのヒトに分け与えればいい。多くの強力な精霊がやってきたように、魔力そのものを視るこの眼も落ち着くだろう。
「私としても早々に解決したいので、単純明快に。アイン、私の右眼をあげるので右眼下さい」
「認識した。必要であるのなら断る理由はない。だが、大規模な術式による手術が必要ではないか?」
「精霊契約の術式で概念的に入れ替えるので、そこら辺は問題ないです。魔力そのものの流れが見えるようになるので、きっと便利ですよ」
精霊契約とは文字通り、精霊とヒトが交わす契約のこと。必要な物はお互いが媒介として納得できる物が1つに、契約する意思と相性。極めれば完全転身などが習得できる獣人の切札。
元来の意味では純血種の獣人のみが可能な契約だが、身体の一部を取り替えるという手法を取れば他種族でも契約は可能となる。唯一の記録者である私のママとお義母さん曰く、殆ど婚姻を結ぶようなものらしいけど今更な話だ。
「だが、便利という理由だけではないと否定する。アヤメ以外に頼まれた場合、当方はこんなことは許諾しない」
「私もですよ。アイン以外にはあげません」
外野で前例がどうのと話しているミーニャ女王とリィンの言葉をBGMに、アインに抱きつくようにしてコツンと互いの額を合わせる。まさかお義母さんの教えてくれたママの惚気話が役に立つなんて、今の今まで思いもしなかった。
「名付けは省略。答えてください──〈愛しき我が半身よ。貴方の半分を差し出してくれる?〉」
「認識した。〈是非もなし〉」
旧来から伝わる、問い掛けと応答からなる簡易な詠唱。
ホワイトアウトしていた視界が晴れる。私とアインの間に新しい繋がりが構築され、自分の物ではない魔力が身体に溶け込んでいく。温かくて心地の良い感覚に目を開ければ、魔力の輝く世界でアインと目が合った。
「ちゃんと、見えてますか?」
「肯定する。確かにこれでは、目が灼けそうだ」
「アインの目、残ってる生身の方を貰っちゃいました」
「アヤメの為であれば、惜しくはないと否定する」
紺碧と紫、私とは左右反対の
「この非常時にイチャつきおってからに……それで、問題はないのであろうな?」
リィンの言葉に頷いて、輝く城壁の外を見上げた。そこに見えるのは、闇に包まれた空へ幾筋もの光が天高く昇っていく幻想的な光景。私が予想した通り、敵が天に居ることを指し示す道標が煌めいていた。
「問題はないと否定する。この聖剣による禁呪の
「予想通り遥か天上。空の彼方に、墜星はいます」
「待って下さい。それは本当ですか?」
残る問題はどうやって向かうかだと思案していると、驚愕に満ちた表情のミーニャ女王が話しかけて来た。私がどれだけ意識を飛ばしていたかは分からないけれど、まだ情報の共有が済んでいないらしい。
「肯定する。だが、信じるかどうかは貴女次第だ。ミーニャ女王陛下」
「……見当もつかない攻撃である以上、手掛かり無いよりはマシですね。分かりました、アヒムが戻り次第情報を共有。御二人が言う空の敵へ向けて、攻撃を仕掛けます。魔王リィン、貴女の居城は動かせますか?」
「恐らく無理であるな。ユ=グ=エッダもこの街とさして状態は変わらぬ。行くのであれば、余達のみの少数精鋭しかあるまい」
「随分と簡単に、御二人のことを信じるのですね」
そんな空へ向かうことを大前提とするリィンの言葉に、疑念の表情を浮かべてミーニャ女王が言った。私たちのことを信用しきれない、そんな感情が嫌というほど伝わってくる。
「当たり前であろう。アヤメとアインは魔王国を救った恩人にして英雄にして戦友である。そちらの都合が悪いというから公言しておらぬだけで、余は、ユ=グ=エッダの民はそう思っておる。それを信じぬと言うのであれば、それは信頼への裏切りであろうよ」
まあ余の義姉と義兄という点もあるが、と豪放磊落にリィンが笑う。それに対して信じられないという視線を向けるミーニャ女王も、不敵な笑みを返すリィンも、どちらか悪いという話ではない。
前者であれば私達を信頼しすぎであるし、後者であれば慎重であるというだけ。とはいえ心情としては、やはり力を貸すのならリィンを優先したい。なんて考えを、今は一先ず振り払う。
八岐の時とは違って、直接打って出て来ないせいで説明があまりにも難しい。しかし協力を取り付けない限り、この最低で国単位、最大で大陸単位で起きている大災害は止められない。
「ええと……」
だからこそ、感覚に大きく頼った結論をどうにか言語化しようと、ここまでの経緯を振り返る。この精霊の眼について。判断した根拠について。それ以前に墜星という存在との交戦経験や、大罪の情報について。更には玉兎との遭遇経験を、アヒムさんを交えて検証したいと、そう考えて────ふと、心に1つ黒い染みのような疑念が湧いた。
あまりにも、都合が良すぎないか?
問題に対する解決策が、目の前に用意され過ぎている。
敵の居場所が分からないから、敵の居場所が分かる眼に変化した。その変化に必要な情報は何故か10年以上前から知っていて、何故か妨害出来るはずの魔力の流れを辿れている。
おかしい。それはあまりにもおかしい。禁呪なんて物を使える存在が、そんなぞんざいな魔法制御で所在を明かすことなんて考えれない。
思い返せば、八岐の時もそうだったのかもしれない。打倒不可能な強さの敵が現れたから、過去に戻る術を思い出した。戻った先の過去で打倒し得る力を得た。ニードヘッグから反撃した際には、なぜか見逃されて生き残った。
いいやそれ以前に、何故あのとき私たちとアヒムさんとの戦いに玉兎は割って入った? そんなことをする理由は、欠片も存在しない筈だ。
思いも覚悟も、過程と辿った結末は本物だと確信できる。嘘なんて一片も有りはしない。だけど、そこに至る過程がおかしい。本来あるべき筈の道を、数段階飛ばして進んできたような違和感がある。
例えるならば、
「……」
「アヤメ?」
そう、成長だ。私たちを成長させて何がある。墜星にとってどんなメリットがある。力、世界を救う、悪魔、聖剣……神? ぐるぐると空転していた思考回路が止まったような気がした。それはきっと、真実と呼べる何かの影を踏んだか、手を掛けたような瞬間で──
「まーだその程度しか進んでねぇのかよ。話が
思考を断ち切る声が、耳元で聞こえた。
同時に私のに触れた玉兎の手を通じて魔力で干渉され、私はさっきまで考えていた、考えて、いた……? 何を、私は考えて……?
「シィッ!!」
ゾワリと背筋を走った悪寒に、反射的にエターナルを抜刀。聖剣の運動力制御を駆使し、人体の稼働する範囲内であり得ない挙動をして反転。その動きのまま斬り払うが、既に声の主は既に掻き消すように姿を消していた。
「上か!」
一拍遅れてアインの魔法が炸裂し、リィンの秘呪が生む破壊の銀河と、ミーニャ女王が放つ精霊の波濤が殺到した。
「おーおー、好き勝手やりなさる。見敵必殺は嫌いじゃねぇが、拳を振り上げる相手は見定めた方が身のためだぜ?」
誰も何も、一切の反応が出来ないまま。呆れたような言葉を呟きながら、その存在は現れていた。
壊れた白衣の
その
「そらよ! 殺しちゃねぇから好きにしなッ!」
即座に動いた呆然とする私たちに、その得体の知れない2色の人型が投げつけられた。咄嗟に私は聖剣の力で、ミーニャ女王はその手で受け止めたソレらは──
「リュート、さん……?」
「レーナ!」
見たことがないほどボロボロになった、私の育ての親2人だった。
私が受け止めたリュートさんは黄金の戦装束を無惨な程に砕かれ、全身が酷く血に染まっている。特にその中でも大きな傷は、背中に走った深い真一文字。辛うじて息はしているようだが、虫の息と言っておかしくはない。
ミーニャ女王が受け止めたレーナさんはもっと酷い。重装のリュートさんに対し私のような軽装であったせいか、見るからに怪我の箇所が多い。そして何よりその内面、魔法回路の損傷があまりに深刻だ。まるで、破損したエンジンにターボ燃料をぶち込んだかのよう。
「は……ぇ……?」
そして、そんなことよりも衝撃的な事実が目に入って来た。
2人持つⅡ型魔剣ドヴラクルとホタルマルが、揃って致命的に壊れている。ドヴラクルは何がどうなればそう変化するのか、内側から刀身が花のように咲き広がり剣の体を成していない。ホタルマルに関しては、断ち切られたのか殆ど刀身が残っていない。誰が見ても不可逆に、修復不能なほど魔剣は崩壊していた。
なぜ墜星が突然打って出て来たのか。アヒムさんの警戒をどうすり抜けたのか。なぜカンザキ夫妻が聖剣の影響下で起きていられるのか。魔剣、回復、状況……叩きつけられた膨大な量の情報に、一瞬頭が真っ白になる。
「オイオイオイ、こんくらいで動揺されちゃ困るぜ"銀灰の巫女"さんよ」
当然、戦場でそんな隙だらけの姿を晒せば当然の報いが訪れる。
気がついた時には既に遅し。目を灼く魔力の煌めきを纏い、まるで星のような輝きから医療用メスが伸びてくる。速い、リュートさんか邪魔、躱しきれないッ!
「たかだか育ての親が死に掛けてるだけじゃねえか」
「たかだかでは、ないであろうが!」
咄嗟に顔を逸らし、左眼に対する直撃だけは回避。代償に左頬から左の人耳までを痛みを感じるより早く切断され、直後にリィンの
アヤメ 残り89日
アイン 残り91日
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《アヤメの現在の所持魔剣》
【Ⅰ型魔剣】(たくさん)
・スラッシャー ・ピアッシャー
・クラッシャー ・ディフェンダー
【Ⅱ型魔剣】(23振り)
・ユメウツツ ・チョーク
・コドク ・レッドキャップ
・ルンペルシュテルツヒェン
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