銀灰の神楽   作:銀鈴

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真名看破済みなのでタイトル黒塗りはありません


魔を断つ剣、勇なる心、受け継ぐべき最後の光/The Brave【01】

 突入したリフンの街はエモフやサーマス同様に……いや、それよりも遥かに荒れていた。

 他の2都市が平原や草原における自然の氾濫に飲み込まれたのに対し、こちらは森林に取り込まれているのだ。

 無事だったのは堅牢な城壁のみ。

 門を潜り抜けた先にあったのは、ただただ緑と木々が織りなす自然の風景だけ。かつてその内側に繁栄していた都市は見る影もなく。文明という言葉が失われた場所へと、変わり果てていた。

 

『これ、は……転移陣など、どう探せばよいのだ』

 

 そんな光景を見てリィンが呟いた。見知らぬ街だった場所の、広大な範囲にあった1施設。更にその内部に転移陣はあるというが、そんなものどうやって見つければいいのか。

 いや、そもそもそれ以前にだ。魔法陣は現存しているのか、そして正しく動作するのかが問題だ。修復は可能だろうが、一体どうなるか皆目検討がつかない。

 

「アイン、探知の感度上げられます?」

「肯定する。ケラウノス、陽動の指揮権を預けても問題はないかと疑問する」

『問題ない。多少精度は落ちるが、部隊の指揮は本分だ』

 

 答えが返ってきて数秒、スクリーンに映る情報量が激増した。生身で使えば、確実に私の脳が焼き切れるであろう過剰探知。そのお陰で、視える物は格段に増えた。

 

「センサー良好、後は分析をどうにかしていけば──」

 

 集中の為、木陰で機体を一時停止。魔剣ユビキタスのネットワークに接続して、演算能力を跳ね上げる。

 本体であるアカネさん側と接続してないクローズドな物だが、貰い受けた10機分の演算能力は健在。一気に見え方が変わった情報を選別していく。

 

 魔力(マナ)センサーの反応から生命力(ライフ)センサーの反応を削除。空間識別系のセンサーで簡易的な地図を作成し、先の反応をそこに代入。“植物を含めた生命体を除く魔力を持つ場所”の位置が、地図上に表示される様にする。最後に次元系のセンサーで観測した、あからさまに位置がおかしい物を地図上で別色にペイントし除外。

 

「──大体、こんなものですか」

 

 ユビキタスとの接続をカット。手を止めた時、地図上に残っていた光点の数は78箇所だった。

 その内50個は街を守る壁をなぞるようにして、空中15メートル付近に等間隔で存在しているため除外。

 また空中にある23個は、光学センサーで捉える限り何もない空間だ。ここが深い森の中で人の手が入っていないことを加味すると、自然に出来た魔力溜まりだろう。或いは文明が残した遺産かもしれないが、今は関係ないので除外。

 

 よって、魔法陣が存在している可能性があるのは5ヶ所。

 

 街の中央、間違いなく稼働している魔力炉心の近くにある中規模の反応。

 私たちの現在位置である、街の東門近くにある小規模な反応。

 街の西門近くにある中規模な反応。

 街の流入している河川の出入り口、北側と南側の街端に存在する大規模な反応。

 手当たり次第にそれらを探すのも、この数であれば悪くはない手だと思うが……

 

「街の北と南にある反応、これは間違いなく消毒と浄化系統の魔法反応ですね」

 

 とりあえず判明している事実を告げる。

 絶対にと断言は出来ないが、9割の確率でそうだろうと確信している。何せ獣王国の王都と違い、ざっと探知した限りこの街の水道インフラは戦前……いや、それよりもっと昔の形式だ。だとするならば、川の水を全面利用して水道網を作りつつ、川上で軽い消毒、川下で強力な浄化をする様になっている。

 おあつらえ向きに魔力の反応も、川上と川下に1つずつ。確定とみて良いだろう。

 

「リィンは為政者としてどう思います?」

『余か? うむぅ……重要な施設であれば、守り易くするため中央に置くのが筋ではないか?』

「だが管理が冒険者ギルドであったのなら、その可能性は低いと否定する」

 

 リィンの言葉に納得しかけていた時、そんな異論が挟み込まれた。

 

「今も昔も、冒険者の地位は低いと否定する。城塞都市であったのならば、なおさら中央には権力者が位置していた筈だ」

 

 否定はできない。寧ろそういう立場から見れば、アインの言葉もまた正論だ。冒険者の社会的地位は低い。うち(獣王国)の王都において、かつて街の中心近くにあったギルドが今はスラム街と隣接していることがいい証明だ。

 

「……了解です、決めました」

 

 出来ればアヒムさんからも意見を聞きたかったが、多面作戦の情報処理を一心に受け負っている人に聞くわけにもいかない。

 

「まずは直近の小反応、次に中央、最後に西門の反応へ向かいます」

 

 とりあえず道なりに、けれど探索自体は東門と西門の反応を重点的に。これが一番ロスがないだろう。

 念のため確認も取ったが、3人からの異論はなし。もし手掛かりすら見つけられなければ、再探知かしらみ潰しに探すローラー作戦しかなくなるが……どうやら、運は私たちに向いていたらしい。

 

『アヤメよ、そこの物がそうではないか?』

 

 機体のアーム部分で瓦礫を切除し、退かし、緑に覆われた残骸を探ること十数分。瓦礫の中に埋もれた小さな輝き。機体のセンサーが辛うじて捉えていたそれを、目敏くリィンが見つけてくれていた。

 

「ちょっと待ってください、確認します」

 

 安全確認をし、機体のハッチをオープン。久しぶりに外界の空気へ生身を晒し降機。瓦礫の中から見つけた物体を手に取った。

 細かい傷に塗れ、深いひび割れが走っていてなお形を保つ透明な水晶玉。魔力は……流れる。機体が探知していたのはこの物体だ。

 

『水晶玉、であろうか。確か未来予知などに使うと記憶しておるが』

「確かに水晶玉ならその用途で間違ってませんけど、これは違いますね。これは魔導具です」

 

 私の知る魔法術式が刻まれていることを確認しつつ、リィンにもよく見える様に掲げ持った。

 

「通称『転職玉』。正式名称は長いので勘弁して下さい」

『ああ、あの転職術式の元になったという』

 

 納得する様なリィンの声に頷いた。

 ステータスシステムに於ける段階的な成長制限解除、及び技能成熟補助能力付与装置……だったか。

 つまり職とは言っても社会的な方ではなく、ステータスシステム上のジョブを得る為の道具がこの水晶玉だ。現代ではママが術式としてばら撒いたせいで、以前よりその重要性は低くなっている。だがそれでも『転職玉』は、社会的に重要な役割を果たしている魔導具だ。

 そして戦中・戦前期において、転職玉の管理権限は最も使用機会の多い冒険者ギルドが掌握していた。つまり、だ。

 

「まさか1箇所目で見つかるとは思いませんでした。でも、ビンゴです」

 

 この魔導具が存在する以上、元の建造物は冒険者ギルドか盗品店の2択になる。そして街の入り口という立地から考えて、盗品窟の可能性は限りなく低い。ああいう店をやるなら、治安最悪の地域のさらに奥深くか、絢爛豪華な中心街の2択に限る。よって必然的にその答えは1つ。

 

「この場所こそが、城塞都市リフンの冒険者ギルド跡地でしょう」

 

 魔導具じたいが貴重品には違いないため、ここが放棄された時のこともある程度察せられるが……まあ、今はいい。目的地が見つかったことの方が重要だ。

 

『なんと言えばよいのか。考えておったのがバカらしくなるほど近かったのう、冒険者ギルド』

「そうですねぇ」

 

 頷きながら転職玉をスキル内に回収。そのまま操縦席に帰還し、機体のハッチを閉じ密閉する。

 

「さて」

 

 一息つき改めてレーダーを確認するが、近隣に魔力の反応はなし。

 よって、面倒くさい事実が判明した。

 転移陣はリフンのギルドが管理していた物で、しかし反応があったのは同ギルドが管理していた転職玉のみ。つまるところ、王都への転移陣は既にその機能を停止させていることになる。

 

「まずは地中の探査を……」

 

 アームの向きを180度回転。先にある銃剣を地面へ突き刺し、近くの地中へ集中探知を開始する。

 私の知っている転移陣は、後にも先にもただ1つ。私が旅に出た時に利用した、カンザキ家の保有していた物のみだ。故に探すのは小さな空間。魔力の淡い光が照らしていた石造りの小部屋。あの部屋の中心には、紫に発行する魔法陣が鎮座していた。

 

「よし、見つけました」

 

 急速に描かれていく地下のマップから、下水道や表層の水路を除外。そうすれば何重にも地下空間があったらしい地球と違い、簡単にその空間がある位置を探知できた。

 

「前方5m地下18mに1辺が3.12mの立方体があります。転移陣はそこでしょう」

「認識した。だが……」

「ええ、魔法陣の機能は停止してるので修復の必要があります」

 

 それに、そんな小さな空間にレギオンαは侵入出来ない。転移後改めて、機体を展開し直す形となるだろう。後々を考えると不都合だけど、やるしかないか。

 

『修復は可能か?』

「正直、現物を見ないことには何とも」

 

 アヒムさんの質問に静かに首を横に振った。

 稼働している転移陣を見たことはある。知識もあるし、理論も把握している。だがそれでも、破損状態が分からないまま断言は出来ない。特に転移座標の情報が破損してたりしたら、本当にお手上げだ。宛先不明の手紙が届かないように、転移には失敗する。

 

「リィン。修復作業中は無防備になるので付いてきて貰っても?」

『あい分かった。余は構わぬぞ』

 

 しかし駄々を捏ねていられないのは、冒険者も軍人も、そして私の様な立場でも変わらない。やれるだけの手は尽くす。それだけだ。

 

「当方は──」

「陽動の継続と警戒をお願いします」

「……認識した」

 

 アインとアヒムさんには、まだ陽動作戦を継続して貰う。開拓の実利がある以上、特に決行直前まで止める理由がない。

 それに魔法陣のある空間には、何があるか分からないのだ。ならば護衛を頼むのは、手隙のリィン以外あり得ない。……あの、だからそう不満気な顔をしないでほしいんだけど。

 

「行ってきます。1時間経っても戻って来なかったら、その時はよろしくお願いします」

 

 そう言い残し、ハッチを開いて再度外へ出た。

 さっき地図上で示した位置は寸分違わず記憶している。後部コンテナからリィンが顔を出したのを確認しつつ、大凡入り口の直上に当たる位置へ登っていく。

 

「リィン、ちょっと魔力借りますよ」

「別に構わぬが……何をするのだ?」

「一気にぶち抜きます」

 

 手を繋いだリィンから魔力を借り受け、両の掌程度の魔法陣を形成。自前の探知で距離と深さを再測定し、魔法の影響範囲を確定。ボーリング調査用の魔法を少し弄って、これでよし。

 

「《ボーリング・改》」

 

 可能な限り小規模に抑えた魔法は、瓦礫も土も石も鋼も切り裂いて直径3m程の棒状に加工した。あとはそれをスキル内部に取り込めば終わり。そこには深さ約20m、底の見えない穴がぽっかりと口を開けていた。

 

「浄化は必要か?」

「一応お願いします。内部の状況も分からないので」

「うむ、了解した」

 

 用心はしておくに越したことはない。流石に私も、骨や死体の上に飛び込むとかはごめん被る。あとは疫病やモンスターの巣窟と化している可能性も捨てきれない。ならば一度リィンに、浄化で焼き払って貰うが吉だ。

 

「手応えはあります?」

「殆どないの。恐らく飛び込んでも問題はないであろうな」

 

 リィンがそう言うのならば、本当にもう大丈夫なのだろう。顔を見合わせ頷きあって、躊躇うことなく深い穴に飛び込んだ。

 数秒の浮遊感に身を任せ、着地したのは全く光の差し込まない空間だった。幸いにして夜目は効く。お陰で探し物はすぐに見つかった。

 部屋の中央、土砂と瓦礫に埋もれ光を失った魔法陣。やけにゴデゴテとした装飾があるのは不思議だが、かつて見たものと形は酷似している。これが転移陣で間違いないだろう。

 

「リィン、瓦礫の撤去手伝って下さい。出来るだけ、下の地面は傷つけないように」

「光は要るか?」

「念のため付けておきますか」

 

 そうやって照らし出された部屋は、どうしようもないほど荒れ果ててていた。地面は辛うじて平面を保っているけど、側面の石壁はひび割れ、あり得ない形に歪み、湧き水が漏れている部分すらある有様。天井に関しても同様で、恐らく精巧なステンドグラスでも嵌められていたのだろうが、奥の照明となる道具ごと崩壊。魔法陣の上に、基礎構造ごと降り注いでいた。

 

「次元魔法系統の、空間拡張が崩壊したっぽいですね」

「ふむ?」

「アレです。獣人界でよく見た、外観と部屋の広さが合ってない部屋。それと同種の魔法が使われていて、魔力切れで崩壊したのかと」

 

 そうでなければ部屋の四方にある石壁が、子供が捩じ切った粘土のように歪んでいることに説明が付かない。なんて推論を話しながら、ミスリル合金で描かれた陣に覆い被さる瓦礫を撤去。掘り出した、のは良いのだが……

 

「半分、潰れておるな」

「潰れてますね」

 

 6年という年月か、あるいは単なる衝撃か。転移陣は完全にその機能を失っていた。

 しかしここまでは予想通りだ。あんな街の惨状かつ反応が無かった時点で、完全な形で魔法陣が残っているなんて期待は捨てている。

 

「でも、大切な部分は少し欠けてる程度で残ってます」

 

 肝心要の転移に関する座標とパスワードの記述。少しの歪みと断線はあるものの、それが残っていたから問題ない。

 欠損している魔法陣の記述は、転送速度、転移対象物の保護、双方向に転移を知らせる仕組み辺り。ちゃんと魔法を学んだ人なら、多分誰でも治せる。

 

「問題ありません。10分で直します」

 

 それにこれでも、そういう作業は私の本職だ。

 見れば分かるし、分かれば治せる。

 

「頼もしいのぅ」

「もう戦闘じゃ、あまり役に立てないですからね」

 

 右手に分析を終えた、魔法陣と同材質の合金棒を生成。軽い雑談をしながら、大枠の欠損部分を魔法で溶かし埋め修繕していく。その後の座標部分も、概算で位置を出しながら不具合がないよう修正。

 ……最後に残ったパスワード部分。明らかにランダムな文字列な癖に、一部欠損しているせいでここが一番時間が掛かった。日本語で例えるなら「あ」と「お」、アルファベットなら「α」と「o」とでも言うべきか。まあ、魔法陣も正常に稼働したし問題ないだろう。多分。

 例えズレたとしても、計算上半径100m圏内で収まっている。正解が類推すら出来ない以上、これで良しとするしかない。

 

「最終確認よし。これでいつでも飛べます」

 

 四つん這いから立ち上がり、アインから音叉槍(レギオンα)を受け取り言った。

 そう、これで最終決戦に赴く準備が整ってしまった。そう認識して、思わず心臓が跳ねたが……覚悟は、決めた。

 

「最終通告だ」

 

 静謐が満ちる部屋の中に、アヒムさんの低い声が響いた。

 

「これより先は戦場だ。言うまでもないだろうか、迷えば死ぬ。加えてアヤメ・キリノ、アイン・ティアードロップ。貴様らには今、十全に使える高位の魔剣がない」

「承知の上です」

「問題ないと否定する」

 

 如何に自分とリィンが前衛とはいえ、気を抜けば私達は木端のように飛ばされて死ぬ。それを理解しているかとの問いに、私たちは頷いた。一応、心配されているらしい。伝わりにくいが。

 

「魔王リィン、仕留めるならば速攻だ。聖剣など、そもそも使わせるな」

「それが出来れば最善であるな」

 

 これまでの墜星には出来なかったが、今回はこちらにも最強の矛がいる。墜星を低く見積もるつもりはないが、不可能ではないだろう。

 

「──行くぞ。問題ない、最後に“勝つ”のは我々だ」

「転移陣、起動します!」

 

 雄々しい宣誓に背を押されながら、転移陣を起動する。

 瞬く間に魔法陣の発光が強まり、魔力が昂り増大していく。数百キロメートル単位の超長距離転移。修復に狂いはなく、問題なく魔法が起動して────────

 

 

装填(Loading)──幻想世界・黒白二剣』

 

 

 転移の実行中という、あり得ないタイミングでそんな声が聞こえた。まだ此方と彼方は、繋がってすらいないというのに。

 

 

『術式介入。座標を固定しろ

 武技ーー次元操りし楔錨の宝槍(ディ・ロンゴミニアス)

 

 

 光り輝く槍の穂先が、計4つ。私達を貫くように出現していた。

 

「「「ッ!?」」」

「チィッ!」

 

 突如現れたそれに対処できたのはアヒムさんただ1人。私は魔法の制御に手一杯で、アインは私を守ろうと動き、リィンは一瞬反応が遅れたせいで刃が届かず。

 

 成す術もなく、光り輝く槍の穂先は私達3人の心臓を貫いた。

 

「──ぁ、」

 

 ()()()()()。けれど何か、何か致命的な部分が固定されたような。楔を撃ち込まれたような感覚のまま、私の手から離れているのに転移陣が正確に起動した。

 段々と視界の暗転が始まり、転移特有の浮遊感に包まれる中。絶対に話すまいとアインの伸ばした手を掴み取る。同時に義手を目一杯伸ばし、リィンの尻尾も掴み取る。これでどうか、一緒の場所に転移してほしいと願い──魔法が完了した。

 

 

「まずは、遠路遥々(えんろはるばる)ようこそ。生き残りにして行き詰まりの人類諸君」

 

 気がつけば、()()()()()見知らぬ場所へと転移していた。

 朽ちた玉座、ボロボロの絨毯、空が見える天井、割れたガラス。総じて『廃墟』以外の言葉が見つからない謁見の間に、そいつは居た。

 

「手荒い歓迎は許して欲しい。僕としても、あまり無駄な時間は使いたくなくてね」

 

 屍人のように真っ白な血の気が失せた肌と、乱雑に伸びた癖のある黒髪。他の墜星と違い、その目は白目が黒に、黒目が蒼に変色している。

 

「君達の奮闘に心から盛大な拍手を。欠片も逃さず見ていたよ。そしてだからこそ、改めて名乗らせて貰おう」

 

 その身に纏うのは、そんな死者という印象からは対極にある聖鎧としか呼べない質素ながらも剛健で煌びやかな鎧。そして、あの記憶にもあった聖剣と呼ばれた剣。

 

「僕の名前は墜星・勇者。(ふる)き世界の墓守にして、墜ちたる星が最後の1柱」

 

「真名を天上院 匠。この国における最後の犠牲者、38代目召喚勇者、最後の生き残り。そしてアヤメ・キリノ。君のお母さんの親友でもあった男だ」

 

「折角だ。殺し合う前に少し、話をしようか」

 

 あまりにも闘争という言葉から、縁遠いような気配と雰囲気で。疲れ切った老人のような笑みを浮かべ、倒すべき敵だった筈の相手はそう言った。

 




アヤメ   残り22日
アイン   残り36日
残存正規兵 約2,000人
残存人口  約280万人

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