銀灰の神楽   作:銀鈴

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神楽舞い散れ哀れな巫女よ/The w‘α’rld is over【05】

 

「ねぇ、リィン・M・D・ラーグルフリョゥトリムルン。いや、転生神リィンネートの転生体。元々[この世界(アヴルム)]を司っていた《転生》の幻想を核にした神様」

 

 一体この現在(いま)は、何回目の世界なのかな?

 私達はこれまで何回『獣』を殺したのか、と。

 

「何を、言っておる……?」

 

 明かされた真実に、困惑した様子のリィンが言葉をこぼした。己が神の、そんな名前も知らない神の転生体である。そんなことを突然告げられても、理解できないということが本音だ。

 

「余は余だ、リィン・M・D・ラーグルフリョゥトリムルン以外の何者でもない!」

「いいや、違うね。アヤメとアイン君と違って、そんな無色と借り物の幻想で私の前に立っていられるのがいい証拠だよ。本来その程度なら、貴女もそこの王女様や最強と同じく止まってる筈なんだから」

 

 自分は自分である、まるで意味がわからない。そう言って否定するリィンに対し、もの言わぬ彫像と化した2人をイオリが指差した。

 考えてみれば、そこもまたおかしいのだ。アヤメとアインが止まってるいないことは、聖剣で制御こそしているが己の幻想世界という法則(ルール)を持っているから。

 

「それ、は……」

 

 続く言葉が出ず、リィンが口籠る。彼女には自らの法則(ルール)がない。止まっているミーニャやアヒムのように、魔剣由来の幻想しか持っていない。本質的には止まっていなければおかしな側なのだ。それが何故か、未だ自由に動けている。

 

「聖剣の詠唱からして、あれだけ自分は神の化身だって言っているのに気付いてない……か」

 

 告げるその目は冷ややかだ。確執があったのか、約束があったのか、その一切を内に秘め与り知ることが出来ない。だがそれでも、確実な失望と落胆だけは見てとれて。

 

「こっちとしても目覚めてくれないと困るから……少し、弄らせてもらうよ」

 

 瞬間、凪いだ世界に殺意の風が吹き荒れて。

 

調律、通常から特化モード。対人・記憶-800%

 

 古く現代では伝わらない言葉と共に、イオリの構える大鎌が組み変わる。晩鐘にも似た音と共に、その刃が光に包まれて──瞬間、コマ落としした映像のような不自然さでリィンの目の前に死神が()()()()

 

「ッ!?」

「なっ──!」

 

 咄嗟にリィンが展開した光陣結界は発生の途中で踏み越えられ、アヤメとアインはそもそもが間合いの外。イオリの速度が上がった訳ではない、だがあまりにもアヤメたちの速度が下がっている。

 

「思い出すといいよ、この世に残ったもう1柱」

 

 よって、抗うことは叶わず。三日月のような巨刃が、リィンを()()()()()()()袈裟斬りに両断した。

 

「かッ──は……?」

 

 死神の大鎌が通り抜けた部分に、擦り傷程度の傷もない。それどころか、ここまでの戦いで負った筈の負傷さえ綺麗に消滅し──

 

「「リィン!」」

「なん、だ……?」

 

 叫ぶアヤメとアインを気にする余裕もなく、両手で頭を抱えてリィンが蹲る。

 

 

 瞬間、リィンの脳内に溢れ出した存在しない記憶。

 

 

 まるでカメラのフィルムのような、黒くも映像が刻まれた細い帯。そんか記憶の塊としか呼べないナニカが、溢れた総量に耐えきれないように彼女の全身から噴出した。

 


 それは血に塗れた記憶だった。

 差し込む陽光が血煙で遮られる程の、屍山血河が築かれた地獄の戦場。ユ=グ=エッダであろう船は沈み、シヤルフが砕け、けれど悪魔は依然優勢。

 そんな状況の中心にあるのは6つの死体。

 アインと寄り添うようにしながら、下半身と顔面の半分を吹き飛ばされたアヤメ。

 同様に身体の半分ほどを消し飛ばしながらも、笑顔で息絶えたアイン。

 頭部がないが握る巨大剣と装いからミーニャ女王と分かる残骸。

 突き立てられた絶滅剣だけが名残りを示すアヒム。

 大鎌を振り抜いた姿勢で命を落としているイオリ。

 その背に寄り添うように、胴体に風穴が空いたロイド。

 そして、彼ら全てを踏み潰した7本の首を持つ『獣』。

 世界が幻想に染まっていく。あった筈の優しい日々が歪んで消えていく。赤い空、黒い雲、無限に連なる闇の群勢。【悪魔】が住みやすく消安い環境に、世界が塗り潰されていく。

 たった1人生き残って、何もない世界の中で。リィンが哭いていた。どうして自分だけが生き残ったのだと。自分しかいない世界なんて意味がないと。

 そうしてやがて、握るディーアボロスが砕けリィンも地に伏せる。

 世界を賭けた相打ち、それがこの世界の結末だった。

 

「認められない。こんな結末。力を、奪わないと」

 

 死して冷えた筈のリィンの身体が、突如口を開いた。

 

「幻想世界──転生、起動」

 

 映像が途切れる。


 それは滅びの記憶だった。

 

「やった……やっと、倒し、た……」

 

 息も絶え絶えと言った様子で、凍てついた銃型の聖剣をアヤメが掲げる。その眼前に広がるのは、永久凍土の地獄界。

 ミーニャ女王は死んでいた。『獣』貪り食い散らかされ。

 アヒムも同様に死んでいた。『獣』に一文字を刻んだ果てに。

 リィンも殆ど死にかけていた。辛うじて聖剣に生かされながら。

 そしてこの場に、アインの姿はない。

 代わりにアヤメの隣に立つのはセプテントリオ。

 

「ああ、これで終わりだ」

 

 答えるように告げる言葉には、極度の疲労が見て取れた。けれどああ、悲しいかな戦争は終わらない。

 

天地失墜(Fallendown)──無限の闇を照らせ導きの魂星( Tyrfing Ewigkeit )三度の願いを果たしても(Meteor)

 

 解放された最後の聖剣。誰もそれに抗えず、しかして流れは変わらずに。挑んだアヤメとセプテントリオが、イオリとロイドを打ち倒す。が──

 

「嗚呼……世界が、凍って、滅んで……」

 

 刹那、世界が地獄に包まれた。

 海が凍り、空が凍り、ありとあらゆる全てが凍てつきながら滅んでいく。この世界で彼と彼女が至った幻想世界《凍呪》、世界がそれ一色に塗り潰されていく。

 

「認められない。こんな結末」

 

 死して冷えた筈のリィンの身体が、突如口を開いた。

 

「幻想世界──転生、起動」

 

 映像が途切れる。


 それは蹂躙の記憶だった。

 海から無限に浮上した悪魔の群れ、それだけではなく空を覆い尽くし、彼方には山岳の如き巨体も影を見せている。

 既にアヒムは前線へと時間稼ぎに出撃して行方不明。

 ミーニャ女王は民衆の暗殺により磔にされ数日前に死亡。

 アヤメとジークは幻想に至らず、リィン自身何の思い入れもない獣人界から魔界は移動させていた。

 ゆえにこの世界には未来がない。誰かがイオリとロイドを目覚めさせることも、墜星が打ち倒されることもない。よって結末は1つ。

 

「嗚呼……世界が、停滞()まって、何も無くなっていく……」

 

 示されていた刻限。結晶樹の崩壊と共に世界が停止する。誰も、何も、もう動けない死の世界。

 

「認められない。こんな結末」

 

 死して冷えた筈のリィンの身体が、突如口を開いた。

 

「幻想世界──転生、起動」

 

 映像が途切れる。


 それは、今の世界によく似た記憶だった。

 流れは何も変わらない。ただ1つの差異は、アヤメが戦えなかったこと。大好きな両親に刃を向けることが出来ず、戦闘の最後の最後でトドメをさせなかった。

 

「やっぱり……やだよ、出来ないよ。ママも、パパも、殺せないよ!」

「──そっか」

 

 追い詰め、追い詰めた果て。刃を取り落としてアヤメが泣く。殺せないと、現実よりも心が優しかったが故に刃を振り抜けない。

 

「残念だよ。それじゃ世界は救えない」

 

 風を裂いて振るわれた大鎌。ごとんと、アヤメの首が落ちる。

 こうなってしまえば、もう魔剣/聖剣使いでも生きていられない。加えてアヤメの聖剣は2人用、戦場に立っていたアインからもその加護が喪失する。

 

「本当に、残念だ」

 

 ならば必然、起こることは1つ。アインが静止する。《呪滅》の幻想が消えたことで、もうこの世界に立ち入る権利が無くなった。

 

「私の戦場はここじゃない」

 

 その光景を見て、明らかに人ならざる様子でリィンが口を開いた。

 

「幻想世界──転生」

 

 映像が途切れる。

 

 幾千、幾万、次から次へと溢れ出る、この場において誰も知らない筈の記憶。作り物というには余りにも想いが篭り過ぎていて、偽物と断ずるには余りにも数が多すぎる。

 

 なれば、自ずと真実は1つに絞られる。

 

「何、なのだ。余は知らぬ、こんな記憶を余は知らない!!」

「知らなくても、これが真実だよ。これまでの貴女がどうであれ、神の写し身であることに間違いはない」

 

 そうして皮肉なことに、その記憶はあまりにも破滅であふれていた。『獣』を倒せなかった未来。倒したが2人の英雄を止められなかった未来。英雄を倒した結果、破滅的な幻想に世界が包まれた未来。そもそも前提を満たせず、停滞が溢れた世界。

 ありとあらゆる選択肢が、強制的に削られていく。破滅と失敗の結末が無限に見せつけられて、選択肢できる行動が1つしかないことを示していく。

 

「そして、これがさっきの問いの答えだよアヤメ」

 

 蹲るリィンから視線を外し、自分の娘に視線を向けてイオリが告げる。

 

「今が何回目かは分からないけど……少なくとも、私たちは数千、数万回は悪魔を殺している。そんな事実は何処にもないけれど、殺したという情報はこの通り残っていた」

「……つまり、私たちの存在自体が古の妖刀や聖遺物の類だと?」

「そ、大正解。尤も、そこのリィンの裏側にいる奴が力を奪ってもいたみたいだけどね」

 

 物に念が宿りただの刀が人を殺す刀に変じたものが妖刀、対極の信仰が集まったものが聖遺物というのなら。『獣』を数千数万と殺した『人』に、そういった性質が備わるのもある種の道理だ。

 それに加えて他の要素もあったのならば、『獣』が弱すぎると感じたのは正しい感覚だった。なまじ納得が出来てしまうせいで、アヤメも迂闊に否定が出来ない。

 

「ならば余は、余は一体誰なのだ! 己が背後にいるという神は知らぬ、己の名前は違うと否定される! 答えよ、余は一体誰なのだ!」

 

 迸る絶叫と共に振るわれた、秘呪の銀河を背負った聖なる大鎌。冷たい停滞を纏った魔なる大鎌がそれを受け止め──それが、戦の火蓋を切って落とす切っ掛けとなった。

 

「さあね! ただ今の貴女が、あの糞女神じゃないことだけは保証してあげるよ!」

 

 噛み合った大鎌が如何なる術理かすり抜けて、回転するイオリの背後に回る。同時、リィンに向けて旋回して迫る棺桶群。単純極まる物理の暴力に、数瞬前までの鈍重さが嘘のようにリィンが舞った。

 

「秘呪解放──全弾発射(フルバースト)

「効かないね、そんなもの!」

 

 解き放たれた無数の秘呪、魔族という種が連綿と重ねてきた一子相伝の魔法群。魔法が効きない一部の【悪魔】にすら通じたそれを、イオリは笑顔で弾き返す。

 

「さあ、ここが! 

 この場所こそが世界の終わり! 

 数多の運命が紡いだ果て、未来の収束点!

 残された選択は2つに1つ!

 『私たちに殺されて世界を滅ぼす』か!

 『私たちを殺して世界を救う』か!

 話はこれ以上なく単純、両方なんて選べない。己の信じる道を貫いて、私たちの屍を超えてゆけ!!!」

 

 そんな、魂の叫びが耳に届く少し前。私とアインによる、剣聖(パパ)との戦闘も始まっていた。

 

 

 リィンが斬りかかったタイミングに合わせ、無理矢理心を殺しながら加速。身体に纏わりつく《停滞》を《呪滅》で焼却しながら、銀灰色に染まった刃を(はし)らせる。

 

「シィ──ッ!」

「こうして刃を交えるのも、久し振りになるな」

 

 けれど当然、私の一撃は通らない。

 逆手で放った斬撃は、ズラした筈のタイミングに合わされて流水のように受け流された。刃が然りと交わっている筈なのに、鍔迫り合うこともなければ音もしない。まるで空振りしたかのような異様な感触。

 それもその筈。だって私の剣は、私の体格に合わせて変化しているけれど、それでも同じ剣聖の剣なのだから。使ってきた年季が違う以上、技だけでは通じない。剣士としての優劣は明白、あちらに軍配が上がる。

 

「だと、しても!!」

 

 ならばそれ以外の手を使うまで。聖剣により身体を完全制御し強制操作。あり得ないはずの力と正確性を保って、追撃を敢行する。

 受け流される愛剣を手放しながら順手に反転。疑似的な燕返しを繰り出し片剣を押し込み妨害。その上から空いた左手で打撃、体勢を崩しに掛かるが失敗。力が、剣聖(パパ)を上回れていない。

 

「──狙い撃つ!」

「甘い。そんな程度の腕の男に、娘と未来は託せない」

 

 そういう事は言わないと宣言したのは嘘だったのか、或いはそういった冗談を交えられる程に余裕があるのか。何処となく満足そうに笑いながら、アインの狙撃を開いた片腕と翼で全て弾ききった。

 慣れなのか技術なのかは分からないが、剣聖は本来2刀流を基準とした剣だ。私は片刃を失ってしまったが相手は万全。私でも出来ることをやれない筈がない。

 

「どうして、私の方が比重が重そうなんですか、ねぇッ!」

 

 間合いから飛び退きながら再び愛剣を逆手に。腕の影に隠すようにして視認性を下げ、間合いと奇襲性を構えの時点で形成。劣化コピーでこそないと信じたいが、事実私は技術勝負では勝る部分が殆どない。

 ならば例え、振るいたくない相手に、振るいたくない殺人剣を振るうことになろうともやるしかない。間合いは不利。加減なんて出来ず、余裕なんて持てず、惑うことすら許されない。

 

「ふぅ──」

 

 息を整え、左腕を前に出しながら半身に。けれど決して目は逸らさず、一撃でその首を落とすつもりで自分を研ぎ澄ませる。覚悟は、決めた。決めたのだ。

 刃が届けばよし。まあ届かないだろうが、アインのサポートにはなる。真正面から挑んでも勝てず、上に回り込めば突きがくる。左右は長剣が、下方は私の経験不足。何処かを通って背後に回るのは……悪寒がする。選択外。

 

「そちらが来ないのなら、俺から行くぞ」

 

 気持ちは心の奥に封じ込めて、空を踏み締め疾走した。後も先も考えない、負荷で自分の足を粉砕する勢いで加速する。剣聖術ではない私の収めた技。白虎式生存殺法。その奥義を惜しげもなく全て切る。

 普段は脚を壊すから使えなかった、霊馬の足を得る加速歩法。

 普段より精度を上げた、揺らめく霊鳥のように霞む幻惑歩法。

 鋼のような剛体を得ながらも柔軟性は失わない呼吸法。

 千里を見通す鷹の如く視覚を強化する精神統一。

 そして、心臓を異常拍動させることで全能力を引き上げる外法。

 

「──ッ!」

 

 刃を起こした愛剣に釣られ、片方の長剣が迎撃に向かう。お陰で攻撃を通す隙間ができた。あっさり弾かれた愛剣を尻目に、強く拳を握り込む。打撃の奥義の1つ、鎧ごと内部を粉砕する剛拳を胸ぐらに叩き込み──

 

「……すまないな」

 

 背負った翼による推力で衝撃を逃された。同時にアインが放ったバリエーション豊かな射撃も、弾丸を恐ろしい精度で切断することで不発させられる。

 ()()()()()()()()()()()。ここは翼持ちにとっての独壇場である空、たった一瞬でもそれが頭から抜け落ちていた事実に舌打ちする。ああ、だけど。それよりも何よりも。今の言葉は腹立たしい。

 

「自分を悪役だって言うなら、そんな辛そうにしないでくださいよ!」

 

 反撃。叫んだ私に向けて、全く理解できない剣筋から双剣の刃が飛来した。気がついたら目の前にあった。そうとしか思えなかった程、隔絶した実力の斬撃。駄目だ、受け切れない。

 

「させる訳ないと否定する!」

 

 瞬間、割り込んだのは光の障壁。弾丸を起点に発生した光陣の結界が、一瞬だけ剣聖の刃を押し留める。拮抗は長く保たないが、稼げた時間が生死を分けた。

 義手の半ばからの切断。咄嗟に全てを賭けて後退したお陰で、義手が丸ごと使い物にならなくなった程度で被害は済んだ。切り落とされた先はそう遠くない空中で静止、起爆は出来そうにない。

 

「さあ、ここが! 

 この場所こそが世界の終わり! 

 数多の運命が紡いだ果て、未来の収束点!

 残された選択は2つに1つ!

 『私たちに殺されて世界を滅ぼす』か!

 『私たちを殺して世界を救う』か!

 話はこれ以上なく単純、両方なんて選べない。己の信じる道を貫いて、私たちの屍を超えてゆけ!!!」

 

 そうして、仕切り直しのために距離を取った時だった。死神(ママ)の魂が叫ぶような声が聞こえたのは。迷うなと、失望させるなという言葉。

 

「無理……ですよ。やっぱり私には、私には出来ません!」

 

 激励だと言うのはわかっている。

 このままでは世界が滅ぶのもさっき知った。

 私たちが倒すだけでは駄目で。

 私たちが倒されるのも駄目で。

 投げ出すことは、許されない。

 だからこそ私たちは、剣聖と死神を上回ったうえで更に本来の世界を取り戻すさなくてはいけない。それは私だって、理解している。しているが……!

 

「2度もパパとママを、失いたくなんてないんですよ! しかも今度は、自分の手で!!」

 

 ()()()()()()()()()()

 

 どうしようもない我儘で、自己を優先する最悪の言葉で、状況が見えていないと言われてもおかしくない。だけど、だけど、それでも言わずにはいられなかった。

 

「すまない」

 

 私がまだまだ小さかった頃、困った時に呼べば助けてくれた無敵の両親(ヒーロー)。たけどああ、だからこそ。今回に限っては救いの手は何処にもない。伸ばした手は振り払われ、掌に残ったのはどうしようもないという現実だけ。

 

「それでも、私たちは救って欲しい。アヤメ達に生きていて欲しいんだよ」

 

 涙に崩れる私に向けて、寄り添うアインに向けて、混乱に揺れるリィンに向けて、どこまでも優しく突き放した言葉が投げ掛けられる。それしか道はないのだと、再三示したように諭される。

 

「だから」

 

 続いて、呟かれた言葉。

 

「まだ駄目だって言うなら、目を覚まさせてあげる。私たちは──どうしようもない敵だって」

 

 それに何故か、心臓が嫌に脈打った。

 

「全ての魔剣よこの手に集え! 我が魂の系譜よ!」

 

 そう高らかに告げ、天にその手を掲げた瞬間。

 流星のように、無数の刃が飛来した。

 愛剣の中に納刀していた魔剣たちも、一切の例外なく。

 




アヤメ   残り7日
アイン   残り13日
残存正規兵 約1,000人(事実上3人)
残存人口  約147万人(事実上3人)

士気? 最悪以外の何かあると?

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《聖剣:原始魔剣エイヴィヒカイト》
 機械的な構造を持つ機関銃⇔大鎌への変形機構を持つ兵装、合体により砲撃形態の巨大な槍⇔長剣二振りの双剣へと変形する兵装からなる聖剣。
 現在、世界に存在する魔剣/聖剣の始まり。際限なく魂を暴食し、強欲に命を吸い尽くす、原初の魔剣にして聖剣。
 所有者:墜神
  真名:イオリ・キリノ
     ロイド・キリノ

【能力】
 基準値 : EX 限界値 : 測定不能
 照準 : B 範囲 : EX 操作 : C
 維持 : EX 強度 : A++

【詠唱】
 刃金を穢せ(に満ちよ)、我が絶望(祈り)──無明(希望)過去へ(未来を)閉ざすため(掴むため)
 神剣到想・鍛造開始
 ああ、忌々しきかな我が運命。我がひと時の幸福さえ、汝は斯様に奪い去るのか
 無限に連なる闇の群勢、悪魔の進撃は止まらない
 瞳が映す未来の果ては、三界(さんかい)(ほろ)びる世界の破滅
 我が身を捧げた献身さえも、無限の悪意に届かない
 なればこそ、我、幻想と罷り成る
 我が身は既に幻想(ユメ)の器、無垢なる(つるぎ)に請い願う
 例えこの身が砕けようと、いつかの未来、光なき戦乱の地平が果てに、平和の灯火を創成せん
 是非もなし。(やいば)折れ(つばさ)砕けるその日まで、その道行を斬り拓こう
 禊ぎ祓え誓いの聖剣、果てなき未来に繋ぐため
 ー限界突破(コンプリート)
 天地失墜(Fallendown)──無限の闇を照らせ導きの魂星( Tyrfing Ewigkeit )三度の願いを果たしても(Meteor)

【効果】
 ①通常駆動
 ・自身のステータス上昇900%
 ・[任意の生物]特効0〜900%
 ・[任意の存在]特効0〜900%
 ②天地失墜
 ・捕食による自己の進化(暴食)
 ・系譜魔剣の完全制御(強欲)
 ・和平と救翔の幻想
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