「何度
『希望の
「『私達は今、
全ては、希望の明日を掴むために。
アヤメがイオリの模倣をするのではなく、初めてその立場を逆転させて。天に召し上げられた英雄が、今、大地に転醒した。
「刃金よ示せ、我らが祈り──無明の
響き渡るのは、聖剣の名残りを残しながらも未知の
アヤメ達の物とは違い、正規の形に近い勇者召喚の魔法陣。瞬く間に描かれきったそれは、海中に沈むロイドを巻き込み再構成を開始する。
「神剣創造・停滞開始」
それは壊れた願いが行き着いた先。
出来てしまった、否、当たり前のように実現させた技術の模倣。
何度世界を繰り返すことになろうとも、より良い未来を目指すという光が反転した闇の祈り。
「突き立てられし致命の劔、3
しかしどうした運命よ、その程度で止まると思うたか」
朗々と響く声には、もう躊躇いも戸惑いも存在しない。
それどころか寧ろ堂々と、譲る気はないと凝縮した光のように強く言葉が紡がれる。
少女然とした高い音から、女性らしい落ち着いた声音へ。
運命の
「我が名は英雄、全てを殺し、勝利を喰らう化物ぞ
果たしたのは転生による転醒。
輝く光の渦の中、姿を表したのは成長したイオリ・キリノとでも言うべき人物だった。
スラリと伸びた手脚に色素の薄い肌、長く伸ばした銀髪は1つに括られ纏うドレスは妙に戦闘的だ。異なるのは鎖で繋がれた8つに増えた棺桶を翼のように広げていること。そして周囲に、ロイドが握っていた双剣が彼女を守るように旋回していること。
アヤメ達のパッチワークとは違い、順当に成長した未来の可能性とでも言うべきか。
墓守り然としたその姿は、荒涼とした気配と寂しさを湛えつつも英雄として成立していた。
「なればこそ羽撃け翼、果てなき蒼穹すら駆け抜けて、剣の風は共に歩もう」
覚悟に応えるようにロイドの言葉が吹き荒ぶ。
言わずもがな、アヤメの時とは状況が違う。
あちらはあちらで大博打だが、この再誕はドブに金を捨てるよりも成功率が低く弱くなる。それでもなお、知ったことかと無理を通して通りを引っ込めた。
こんなところで止まっていられないと、黄泉帰りを含めた冗談のような覚醒を繰り返して。英雄とはそういうものだと示すように。
「死が2人を分かつとも、比翼の契りは終わらない
虹の彼方より我らに集え、墜ちた星の戦友よ!」
そうして黄泉帰った英雄の宣誓に引かれ、アヤメ達の魔剣から4振りの聖剣が離脱する。
戴雨神剣アマノムラクモ──墜星・八岐の剣が
神威抜刀フツノミタマ───墜星・金烏の刀が
神境偏在モチヅキ─────墜星・玉兎の砲が
永劫盛衰ヤマトテンジョウ─墜星・勇者の炉が
再誕した彼らの神の元に集結し、魔剣の曼荼羅へと帰還していく。
さあこれで最後の戦争だと。
自分たちが成した集大成が相手だと。
興奮した気配を隠す様子もなく、沈黙を保っていた聖剣達が起動していく。
「刃金の誓いを、改め祈る!」
──そうして、全員の言葉が重なった。
「我が身に流れる法則こそが、掛け替えのない我が世界
全てを喰らい飲み干して、新たな光に天昇せん
──
ただでさえ隔絶していた力の総量を、格を、その剣は鼻歌混じりに超越完了。
模倣から始まった守破離を超速で成し遂げて、幻想すら飲み込む2振り目の神剣が創成された。
「
再誕と共に、爆発する世界が凍てつく時の地獄。
こちらを押し込んでいた新世界の法則を押し返して、状態を完全な拮抗にまで持ち直させた。
『あれでも足りていなかったのかと辟易する』
『こうなるのは、予測できぬ訳ではおらなんだが……』
「まあ、らしいって事で」
当たり前のように行われた復活に、大きなため息を零しながらもアヤメ達が己の武器を構える。
やれるべきことは全てやった。
それでも常識を粉砕してくるのが英雄だ。
それをもう、墜星・勇者のお陰で知っているから。まるで物語の中にいる主人公のような再臨に疑問はない。
「ああ、全く。折角私が諦めようとしてたのに」
両断された大鎌を手放しながら、イオリは笑みを隠そうともせずそう告げた。アヤメ達の形態と違い表出こそしていないが、自らの内側に確かにある別の意思に向けて。
「どうしてくれるのさ。ロイド。まだ頑張りたくなっちゃったじゃん」
『後悔はないだろう?』
「当然。1人の人間として、あんなの見逃せる訳がない!」
視線が向かう先は、アヤメ達の転生体。
自分たちが教えた下地があったとはいえ、僅か数ヶ月で魔剣を理解し、聖剣を掌握し、新たな魔剣と聖剣を生み出した挙句、転生なんて真似までやってのけた正真正銘の天災的天才。
転生する名目上ループを成し遂げると誓ったが、胸にある本題はそんなことじゃない。
見たい。みたい。全てが見たい。
娘の、弟子の、集大成を見逃せない。
イオリ達の胸にあるのは、それだけの簡単な話だった。
既にその手に魔剣はない。聖剣もない。
だがそれでも、戦うには十分すぎる。
興奮のまま、神剣として再構成され成長した身体の腕をかざす。
「今はもう、私たちが挑む側だ。
加減はなし、全部見せて貰うよ最新の神!
大団円を求めるならば──私達程度、打ち破って見せるがいいッ!」
「全部を救うと決めたんです。やってやろうじゃないですかこの野郎ッ!」
刹那、激突する2つの神剣。
時間を止める炎と全てを台無しにする氷、光の反転した闇と闇の反転した光。チグハグで噛み合わないながらも正反対な2つの力が、真正面から激突した。
◇
「『オオオオオオオオォォォッ!!』」
『『「ッ、はぁぁぁぁァァッ!!」』』
最初の一撃で、力が拮抗していることを察した。
私達の放つ灰の吹雪に対しイオリが展開する炎の嵐。その激突の境界で、限界を越えた世界がひび割れ壊れていく。
まるで絵画の絵の具が剥がれて下地が見えるように。
これ以上、世界が壊れることを拒むように。
世界が割れた穴が拡散し、虚無に満ちた空間が広がっていく。
あんな場所に落ちたら帰って来れる保証はない。
だからこそ慎重に立ち回らなければいけない筈なのに。
「全くうちの両親はどうなってるんですかねぇ!」
苛立ちを吐き捨てながら、アインの技術を借りて愛銃を6連射。
世界に空いた穴すら利用して、肉食獣のように飛びかかってくる両親を牽制する。
多少こちらの神剣の方が性質的に有利だが、向こうの出力は天井知らずに跳ね上がり続けている。
これまでは飾りに近かった魔剣の曼荼羅……今や聖剣すら取り込んだそれは全てが限界駆動中だ。
既にかなりの数が失われているとはいえ、その応用力はまさに万能。
同じ“複数の魔剣の能力を同時に扱う”魔剣を担っていた者として、それは痛いほど理解している。
『警告! 右前方45度!』
アインの警告に合わせて愛剣を構え、次瞬には衝撃と共に吹き飛ばされた。
棺桶の翼を羽撃かせたことによる爆発的な加速、そこから繰り出されたのは恐らくクラッシャーの打撃か? 時間を弄ったような早過ぎる速度に、思考と理解が追いつかない。
「その程度じゃないでしょその剣の真価は!
法則破壊の力の真髄は!
私なんか倒してみせるんじゃなかったの、アヤメぇ!」
「こ、の、馬鹿力な母親めぇッ!」
思索の全てを放棄して、本能のまま染み付いた武による打撃を敢行。
間に合った拳による迎撃で、迫る
反対の腕で振われた
死角から迫る
絡め手を打つ暇もない、息をする間もない真正面からの超接近戦。
ママの得物は大鎌ではなかったのかと疑いたくなるほど、この距離での戦闘も巧みで嫌になる。
だがまだ少し、甘い。
私達の方がほんの少しだけ先にいる。
向こうが魔剣という領域で先にいるように、私達は人同士の殺し合いなら負けちゃいない!
「は、ハハ、アハハハハハ!! ああ、諦めないでよかった。辞めないでよかった! だって私は、こんなにも今を生きている!」
狂笑。恍惚とした笑みを浮かべたイオリ達を中心に、凄まじい勢いで炎が吹き荒れた。
脳裏によぎったのは、小さな頃に刻まれたトラウマに近い記憶。
魂に刻まれた教訓が、全力で警鐘を鳴らしていた。
「砕け散り我が魂の欠片。今、無限の刃となりて、神命を穿つ霹靂となれ!」
「ッ、冗談じゃ」『ないであろうと』『否定する!』
両親の背後、鳴動を始める魔剣の曼荼羅。
しかしそれは転生前に見た物の比はなく、そもそもが全ての魔剣が剣先をこちらに向けている異常事態。何が起きるかは明白で。
「
限界駆動した状態の魔剣群を全力で投射するだけ──という、案の定ロクでもない大災害が解き放たれた。
間違いなくテンションが上がったからやっただけど確信できる、馬鹿馬鹿しいまでの力押し。
そんなノリと勢いだけの技なのに、直撃すれば今の私たちであろうと間違いなく即死するだろう。
それどころか、下手に避けでもしたらこの
「合わせて2人とも!」
『当方は防御を、リィン!』
『ええい、言わずとも分かっておるわ!』
展開するのは銀灰色に染まった光陣を重ねた要塞。
神剣の能力を全開で使った中和防壁。だがそれだけでは押し切られるのは目に見えていて、故に。
『幻想収斂、編み込み、長くは保たぬ! 撃てアヤメよ!』
「【
真正面から、大災害に滅びの咆哮を叩き込んだ。
既存のルールを破壊するという性質が付与されているのに、魔剣群と光条は互角に拮抗していた。
全く冗談も程々にしてほしい。
数秒の後に防壁を抜かれ、けれどこちらの光も向こうに到着。
相打ちに近い形で双方が弾け飛んだ。
「ああ、イイ。すっごくイイ! これも止められるだなんて、あなた達3人は魔剣を生み出した私たちを越えている!」
傷を滅ぼし無かったことしながら、焼け焦げた身体を健常に回帰させ哄笑するママを睨み付ける。
知ってはいたが冗談じゃない。
これに加えて覚醒までしてくると考えると、私たちの敗北はそう遠くないだろう。
「ああ楽しい、こんな時間が無限に続けばいい……だけど、例え私たちを打倒したとして、どうやって世界を元に戻すの? その幻想では結局、何も残らない世界にしかならない」
ママ達の言うことは正しい。
私たちの進歩は所詮、行き着く先を変えられていない。
このまま私たちが勝利したところで、結局は誰も生きられない幻想に世界が染まるだけだ。
「百も承知ですよそんなことは!」
だが考えは、ある。
ある意味これまでの全てを台無しにしてしまうような、机上の空論に机上の空論を重ねたような話だが……策はある。
大迷惑な話になるけど、この世界の誰もが笑って終われる大団円になる秘策が。
「ならば良し!
両親の纏う空気が変わった。
さあ、また破茶滅茶が押し寄せて来る。僅かでも見逃したり、気を緩めることも出来やしない。
数を減らした魔剣の曼荼羅、渦巻くそこから一振りの剣が両親の手元に飛来して。
「
戴雨神剣アマノムラクモ、及び栄光剣マルミアドワーズ。天の叢雲
瞬間、その両腕にかつての光景が再現された。
黒いシャクナゲの花が咲くように鎌首をもたげる7頭の剣頭大蛇、対する右腕が掴み取ったのは薄く緋色に染まった片手半剣。そしてそれらの剣は全て、あろうことか
「ハッ──」
笑うことしかできない組み合わせの片割れは、記憶が確かであれば先代獣王の魔剣。遺失している絶滅剣ティタノマキアの同型機。なればこそ、何が起きるかは明白で。
「緊 急 回 避 ぃぃぃ!!」
レギオンβのジェットエンジンを複数呼び出し。跳ね回るピンボールのような急加速で脱出した空間に、絶死の極光を帯びた次元を断つ斬撃が8つ重ねで叩き込まれた。
『馬鹿であろう馬鹿であろう馬鹿であろう! 何じゃアレは!!!』
『まるで意味がわからないと戦慄する!』
当然のように崩落し、発生する世界の穴。
そこに紫電が走るように留まる絶死の光を見れば、これもまた受ければどうなるかは一目瞭然だろう。
死
剣戟を受けた瞬間、それが確定する。
だが──あの聖剣の破り方を私たちは知っている。それにこんなところで、私たちは止まっていられないから。
『心を鎮めよ、余! アヤメ、アインが揃えば不可能ではない』
リィンの言葉に、加速を強めながら深呼吸。
そう、こちらにはリィンがいるのだ。
八岐を打ち破った、頼もしい魔王が。
愛剣を順手に握りなおし、銃にも光の刃を展開。擬似的な二刀流を構えつつ、大鎌の翼に力を込める。長期戦になればなる程こちらが不利、ならば一撃で突き崩す!
『「天・地・空、次元断混成接続。武技ーー
腕が引き千切れそうな負荷を感じながら、アインと私で繰り出したのはかつて八岐が得意としていた斬撃の
次元を切り裂く性質をそのままに、銃弾の1発ですら粉微塵に刻む大嵐が発生し──
「斬閃拡張、焼き尽くせ。次元断・十重奏!」
黄金の死光を纏った両親の絶剣が、その全てを打ち砕いた。
一撃の威力で劣るこちらに、本家本元の聖剣を振るうあちらが競り勝つのは道理。
だが私達の目的は、両手の剣をこの迎撃に使わせること!
『余が裂くモノは世界に在らず。今より過去に、斬り捨てたという事象のみを刻み込まん!』
サマーソルトの要領で宙返りをしながら、翼の刃をリィンに任せ両親を照準。
八塩折之酒は用意出来なかったけれど、英雄はここに1人いる。
それも八岐、貴方の認めた最後の1人が。
『神威抜刀──クサナギ!』
だからどうか、安らかに。
これまでの再現した剣の極みではなく、リィンが振るうことで完成するよう馴染んだ絶刀。それが距離も時間も切り裂いて、ママ達が握る聖剣を切り裂いて
最終セーフティ解除
リクエスト承認ーー機動衛星砲モチヅキ強制起動
地上からの座標入力を確認
目標:アヤメ・キリノ
当該区域への砲撃準備
さあ次は何だと、ママ達に視線を向けるより早く聞こえたのはそんな合成音声。
心の中で最大級の舌打ちをしながら天を見上げれば、そこには案の定──黄金の絶光に輝く歪んだ
対星殲滅兵装起動
エネルギーチャージ──完了
「英雄を照らせ月の師弟よ。一世一代の晴れ舞台、ここに再び飾るがいい」
こちらに休む暇など与えないと言わんばかりに、聖剣モチヅキによる極大の光輝が
しかも冗談と言って欲しいことに、先程打ち破ったはずの2振りの性質、斬撃と絶死が加わっている。
更にリュートさん達の魔剣であったロストフェイトの、《幻想》特効とでもいうべき性質までもがそこには乗っていた。
「
故にもう、躊躇っている理由はないと。ここまで聖剣に付け続けていた拘束を全て解き放つ。
待っていたと言わんばかりに命を吸い上げ、ドクンと脈打つのは2つの刃。
右手に握る空気を求める炎の様な赤い刃。
義手の内側では深い水底のような青い刃。
それぞれが解き放たれ、左腕から過剰生産された銀灰が蒸気のように噴出する。
「幻想全開、吹 き 飛 べ ぇぇぇぇぇッ!!」
左腕に愛剣を持ち変え、私達の幻想の一部であるである銀灰を最大限に放出。灰そのものを極大の斬撃として、次元を断ち切る鋭さを乗せて解き放った。
一点集中の極大斬撃は光を呪い、滅ぼしながら世界を切断。
月そのものを両断するまでには至らずとも、砲身施設の破壊には成功したらしい。
数秒の投射の後、宇宙からの極光は消失した。だが──
「絶焦と絶凍を知らしめせ残火の鳥よ。忠義の果てを見せるがいい」
まだ終わらない。今度は、イオリ達の姿が増殖する。
2、4、16、256──無数に増え続ける能力は金烏の聖剣フツノミタマ。その手にある鎖の巻き付いた純白と漆黒の刀身は、私達の聖剣の基礎ともなっているニヴルヘイムとムスペルヘイムに違いなくて。
刹那。絶対零度と灼熱地獄の
斬撃と絶死、大出力に幻想特効の性質まで獲得しながら。
「が、あぁぁぁァッ!!!」
息が出来ない。
目が開けられない。
自分が何処にいるのか、どうなっているのかも理解できない。
『技を借りるぞ、セプテントリオ!』
アインの言葉に、大鎌の翼に接続された、八面体の氷結晶が鈍く輝く。
全く仕方ないと、けれどあんたなら使い熟せるだろうと、信頼に顕現したのは空色のグリーヴ。
私の義足を覆うように、氷の夢想が脚に宿った。
『秘呪多重解放──
解放されたのは、エネルギーを簒奪/保存する吸血の秘呪。
炎熱と氷獄という単なるエネルギーの偏移でしかない能力には、恐ろしいほど有効的に突き刺さる。
牙の螺旋が渦巻く度に熱凍の地獄は薄れ消え、私達の負った傷は急速に再生していく。
お陰で意識は保てたが、まだだ、まだ終わってない!
最後の聖剣が残っている。
さあ動け、動け私の脚。
こんな場所で足を止めていたら、次の攻撃に対応出来ないぞ!
「──さあ、行こうか私の親友!」
私が意識を取り戻すより一手早く、食い散らかした地獄の先。
そこに地上に墜ちた星の光が顕現していた。
その出力は既に限界を数度は突破、決壊したダムのように無限の魔力を放出していて。
「虚空の彼方へ消し飛べ、
薄暗い影が私たちを包み込んだと気付いた瞬間、全身を捻じ切られるような強烈極まる圧力が私たちを包み込んだ。
勇者の聖剣ヤマトテンジョウによる無限出力と、
髪の毛一本分の容赦もなく、炸裂するのは必殺の力。
転移魔法の意図的な失敗による滅殺を目論む魔法。
挙句、何処とも知れない異空間へバラバラに転送することで、無限に再生する生物であろうと殺し切るという殺意に満ちている。
「『『い、が、ぁぁぁぁぁぁッ!!』』」
しかもどうやら、この必殺は霊体にまで作用するらしい。
リィンとアインも激痛に思考を邪魔され、有効打を探すことが出来てない。私だって見つけられない、切れる手札が残ってない。
…………やっぱり、私たちはここまでの存在だったんだろうか。
そんな嫌な言葉が頭をよぎった。
違う、違う、違う!
そんなことはない!
もう2度と私は諦めない、そう誓ったんだ。
だから絶対に、ここで死んでなんて、いられない!!!
諦めてなんかやるものか!
《そう、その勢い。それでこそ私とマスターの愛娘》
気合いを胸に意識を繋ぎ止める刹那、そこにあり得ない筈の声を聞いた。
《大丈夫、私が守る。だからアヤメ、アイン、リィン。私たちの大切な子供達。貴方達は先に進んでマスターを助けて》
ずっと胸元に下げていた、家族写真の入ったロケットから抜け出して。
視界を横切ったのは、
《娘を助けてくれて、友達になってくれてありがとう》
ずっとずっと会いたかった、私のもう1人のおかあさん。
《轢新剣ステイルメイト──変成、占錬回帰カドケウス》
懐から勝手に飛び出した魔剣が姿を変える。
無数の鋼の外殻が組み合わされたコアが剥き出しの小剣から、二体の蛇が絡み合うような意匠と広げた翼の意匠が目立つ杖へ。
《さあ、行って。
「──待って、お
言葉より早く気配は遠ざかり、代わりに私たちを虹色に揺らめくベールが包み込む。
玉兎の記憶でも見た、ママ達の時代における最終手段。
幻想世界《無限》
次元を操る最高峰の精霊が残した置き土産が、私たちを強制転送の影から隔離した。
『『アヤメ(よ)!!』』
分かっている。
チャンスは今しかない。
きっと行くには今しかない。
だから悲しくて、嬉しくて、溢れる涙が止まらなくても。
涙を拭いて、一歩前へ。
奇跡を確かに握りしめて、立ち止まらない!
「これで、終わりだぁぁぁぁぁッ!!」
次元の加護を犠牲に、乱れた時空を突っ切って。
私たちは最後の突撃を開始した。