Fire Emblem ~漆黒の灰色 炎の紋章に導かれて~ 作: ノーリ
前回の続き、今回はパレス攻略の前哨戦ですね。
と言っても、今回はそんな感じでお話が展開しませんが。では、どんな感じに展開するかは、是非本文を読んでご確認ください。
では、どうぞ。
ディール要塞を陥落させ、マケドニア王家の末妹であるマリアを救出した解放軍。同時にそれは、彼女の姉であるミネルバをも仲間に迎え入れることにもなった。
大きな戦力を手にした解放軍は、今度こそその進路をアカネイアに向ける。そして今、解放軍はアカネイアの王都であるパレスを臨むところまで辿り着いたのだった。
「…派手にやっているようだな」
遠くから微かに聞こえてくる剣戟や鬨の声に、ガレスは思わずそんなことを呟いていた。今回は草原を駆け巡る戦いということでガレスにお声はかからず、後方待機を命じられていた。そのため、前線の戦況に思いを馳せながら思わず呟いていたのである。
(しかし…)
己の左側に視線を移し、
(どうしてこうなった…)
そうして今度は己の右側に視線を移してしみじみとそんなことを思う。何故なら、
「どうした? ガレス?」
左からアテナに話しかけられ、
「どうかしたの?」
右からマリアに覗き込まれたからだ。
「いや…」
言葉を濁す。まさか馬鹿正直に、お前らが悩みの種だ…などとは言えない。いくら傍若無人のガレスでもその程度のことは心得ていた。故に、
(本当に…どうしてこうなった…)
再度、自問自答するしかなかったのだった。
「さて…どうするか」
マルスから、今回のパレス攻めの部隊に選ばれなかったガレスが呟いた。
(他の連中のようにこまごまとした仕事をしてもいいが…)
補給物資の確認や負傷兵の治療、介護など、後方待機には後方待機なりの仕事がある。そして、出撃しない面々はそれに従事することになるのは当然のことだった。ガレスもそう言った考えが一瞬頭をよぎったが、
(バカなことを考えるものではないな)
すぐに否定した。そういった仕事に回れば、他の連中がビクビクオドオドするのが手に取るようにわかる。それでは効率的に逆効果というものであろう。
…まあ何より、そんな七面倒臭いことなどやりたくもないというのが本音だが。
「…寝るか」
休めるときに休んでおこうと頭を早々に切り替えたガレスが自分の天幕へ向けて歩き出す。と、
「ガレス」
不意に、誰かに声をかけられた。
「ん?」
声のした方向に振り返る。そこには、アテナが立っていた。
「アテナか」
ガレスがその名を呼ぶ。
「どうした?」
そして、用向きを尋ねた。
「今、暇か?」
「いや」
何となく嫌な予感を感じたガレスは即座にそう答えて否定した。もっとも、この後は天幕で休む予定なので大嘘なのではあるが。
「そうか。何の用があるんだ?」
だが、アテナも簡単には引き下がらずに食い下がる。
「…何でもいいだろう。お前には関係ないことだ」
その返答に、アテナはムッとした表情を見せた。
「ガレス、水臭い」
「何だと?」
少し語気を強める。
「何か用があるなら、アテナも手伝う。そうすれば、用、早く終わる」
「それで?」
「アテナと手合わせしてほしい」
「成る程な…」
ガレスが軽く息を吐いた。
「それが本音か」
「そうだ。アテナ、ガレスとまだ手合わせしてない。だから、手合わせしたい」
「ククク…」
今度はいつものように笑う。
「そう言えば、そんなこともあったか」
「忘れてたのか?」
アテナが心外だとばかりにガレスに尋ねた。
「ああ」
「酷いな。ガレス、薄情」
「否定はせん」
アッサリと、ガレスはアテナの言葉に同意する。
「だが、軽率な返答をしたことは詫びよう。済まなかったな」
「え…」
ガレスの謝罪にアテナが言葉を詰まらせた。まさか、ガレスが謝罪するとは思わなかったからだ。が、
「その上で言わせてもらうが、あの約束は反故にしろ」
「何故だ?」
そんなことを聞かされては謝られても納得はできず、アテナはガレスに食い下がった。
「簡単なことだ、俺は手加減ができん。だから手合わせなんぞはできんのだ。試合ではなく殺し合いになってしまうからな」
そして、ガレスがアテナの目をジッと見据える。
「俺が勝つにせよ、お前が勝つにせよ、どちらかが死ぬような結果がお前の望みか?」
「それは…」
アテナが口ごもる。アテナの望んでいるのはあくまでも手合わせであり、殺し合いではない。無論、自分が負けるなどとは毛頭思っていないが、かと言って本気になったガレスを、その生命を奪う以外で止められるのかと言われれば大いに疑問だった。今までの付き合いから、ガレスがこういうことで嘘を言うとは思えなかったからだ。
「…まあ、そういうことだ」
その、揺れ動くアテナの心情が推察できたガレスが再び口を開く。
「手合わせがやりたいなら、他の連中に頼め。相手によるが、大概は喜んで相手してくれるだろう」
最後にそれだけ言い残すと、話は終わったとばかりにガレスが止めていた歩みを再開し始めた。
「! ま「あ、いたいた」」
待ってと言おうとしたところで、そこにまた珍客が顔を出した。ガレスとアテナが声のした方向に顔を向けると、そこには先日救出し、戦列に加わったマリアの姿があった。
「マリアか」
ガレスが呟く。
「何か用か?」
ガレスが尋ねると、
「うん」
と、マリアが頷いた。
「探してたんだ」
「探してた? 俺をか?」
「うん」
再びマリアが頷く。
「物好きだな、お前も…」
何時ものようにガレスが咽喉の奥でクククと笑う。
「俺に関わると、他の連中がいい顔をせんだろう」
「うん。そうなんだよね…」
そこでマリアが納得できないとばかりに首を傾げた。
「なんでかな?」
「クク…他の連中は俺がイカれてるのが良くわかってるからな」
「? そうなの?」
マリアが今度はきょとんとした表情になって尋ねてきた。
「ああ。お前だって、ディール要塞で俺がお前たちの知らない暗黒魔法を使って敵兵をぶった斬ったのを見ているだろう?」
「うん。そうだけど…」
「人間ならば、得体の知れないものには恐怖を抱くものさ。言っておくが、それが悪いわけじゃない。寧ろ普通の反応だ。だから、普通の連中は俺を恐れる。俺に積極的に関わってくるお前や…」
そして、ガレスはアテナにスッと腕を向けた。
「コイツがおかしいだけだ」
「? 貴方は?」
そこでマリアはアテナに尋ねた。ガレスの隣に彼女がいたのは当然知っていたが、何せまだマリア自身が新参者ということもあって、主要な面々の顔と名前を憶えていないのだ。
「アテナだ。お前は…マリア…だったな?」
「うん、宜しくね、アテナ」
アテナとマリアが挨拶を交わす。ガレスを挟んで実に珍しい組み合わせであった。本来なら王女であるマリアはアテナの態度や物言いにムッとして腹を立ててもおかしくないのだが、そうならないのはマリアのもって生まれた性格というものだろうか。
「ああ。宜しく、マリア」
対するアテナはいつも通りである。まあ、アテナは誰が相手でも態度を変えないので当然と言えば当然なのだが。
そして、女二人が挨拶を交わすのを尻目に、ガレスはさっさとその場を立ち去ろうとした。が、
「ちょ、ちょっと!」
「待て、ガレス!」
当然、マリアとアテナがそれを許すわけもなく声をかけてその足を引き留めた。
「…何だ?」
仕方なく立ち止まると、鬱陶しそうにガレスが振り返った。実際、さっさと休みたかったので二人の相手をするのが億劫なのだろう。
「もう! せっかく尋ねてきたのにそんな扱いはないんじゃない!?」
マリアが腰に手を当てて怒っている。確かにご機嫌斜めなのだろうが、ガレスから見てちんちくりんの少女がそんな真似をしても怒りなど感じられず、寧ろ微笑ましい光景にしか見えなかった。
「そうか。だったら帰れ」
「むっ!」
ガレスの拒絶の言葉に、マリアは更に気分を害したようだった。口を尖らせて睨んでいる。あまり王女様らしくない仕草だが、妙に似合っているのは否めない。
「さっきも言っただろう、俺に関わると他の連中がいい顔をせん。特にお前はこの軍にとって立場上は敵とはいえ、一国の王女だからな。尚更俺と関わるのは良くはない。それに…」
「それに…何?」
「怖い怖いお前の姉に目を付けられても困るしな」
そう言ってまたガレスがクククと笑う。言葉では怖いなどと言っているが、微塵もそんなことを思っていないのはその態度からでも容易にわかった。
「姉様は怖くなんかないもん!」
「わかったわかった」
子供をあやすかのようにマリアをあしらうガレスは、今度はアテナに視線を向ける。
「お前はまだ何か俺に用があるのか?」
「え?」
アテナが戸惑いながら答える。
「手合わせの件なら詫びて断っただろう? 他にも何か用があったのか?」
「あ…と…」
アテナが口篭もる。マリアと挨拶をしている間に自分たちを無視してさっさとその場を後にしようとしたために思わず引き留めてしまったのだが、では用件はと言われると返答に窮していた。ガレスに見抜かれた通り、それ以外にさしたる用件などなかったからである。ただ自分たちを置き去りにして去って行こうとしたのが気に食わずに引き止めただけだった。
「ないようだな…」
それを見透かし、ガレスが身を翻した。が、歩き出そうとして右側が若干重いことに気付く。
「?」
不審に思って視線を向けると、マリアが自分にしがみついてい光景が目に入ってきた。
「…何の真似だ」
ガレスがマリアを見下ろしながら口を開いた。ガレスにとってマリアの体重などどうとでもできる重さなので強引に引き摺ってもいいのだが、そんな真似をすればまた面倒なことになるし、何より本気でミネルバに目を付けられかねない。そのため、内心では非常に面倒臭く思いながらも仕方なく理由を聞いた。
「一緒にお話でもしようよ~」
(そんな理由か…)
どうにも、頭がクラクラするようなマリアの一言に、ガレスは頭を抑えて天を仰ぎたくなった。自分の危険性は先ほど十分に伝えていたし、実際、マリアも自分が救出されるときにガレスがあの敵兵をどうやって屠ったかは目の当たりにしているので、釘を刺せば大人しくなると思っていたのだが…
(甘かった…)
予想外の展開に発展したことにガレスは内心で溜め息をつかざるを得なかった。ゼテギネアの皇子として、ゼノビアの反乱軍相手に殺戮を繰り広げたダークプリンスであったが、この世界に堕ちて暗黒道の支配から解放されつつあるからかどうにも調子が狂う。
(かつての俺だったら容赦なく殺しただろう。仮にそうせずとも、張り倒すか投げ飛ばすぐらいはしたと思うが…)
今はどうにも、そんな気分になれなかったのだ。無論、力的にやろうと思えば当然できるのだが、どうしてもその気が出ない。
(こうなったのを喜ぶべきか悲しむべきか…)
自問するも答えは出ない。そうしている間もずっと、マリアはガレスにしがみついている。
(本当に妙なガキだな。生命を助けたのは確かだが、俺のような得体の知れない奴に臆せずに関わろうとするとは。だが)
それがうざったいのは本心だ。しかし、僅かでも嬉しさがあるのもまた確かだった。
(やれやれ…)
それを自覚したため、ガレスも観念する。
「わかった」
そして、マリアに向けてそう答えたのだった。
「え?」
粘ったとはいえ予想外の返答だったのだろう、マリアがきょとんとした表情でガレスを見上げた。同じくアテナも、ビックリした顔になってガレスを見ている。
ガレスはそんな様子の二人に目もくれずに周囲を見渡す。と、近くに一本の大きな木が生えているのを見つけた。
「立ち話は面倒だ。あの木の下へ行くぞ」
「う、うん…」
おっかなびっくりといった感じにマリアが答える。ガレスはそのままその木の許へと移動した。はからずも、マリアを引きずるような形で。
「! ま、待て、ガレス!」
そんな二人に置いてきぼりにされたアテナが、慌ててガレスたちの後を追ったのだった。そして、冒頭の状況へと向かうのであった。
木の根元に腰を下ろしたガレスが、現在自分が置かれている状況に頭を悩ませている。そうしながらも、
「ねえ、ガレス♪」
マリアが話しかけてくる。その表情は本当に楽しそうだ。
(本当に、読めんガキだ…)
ガレスはその表情を見て心底そう思う。自分の置かれている立場と、危険性については先ほど十分に説明したのに、それでも離れることなくこうやって張り付いてきているのだから当然である。
(いくら俺が命の恩人とは言え、限度があると思うがな…)
不思議でしょうがなかったが、いくら頭を捻っても答えが出るわけはない。マリアが何を考えているのかなど、わかるわけはないので当然ではあるが。
そんなことを考えてマリアへの返事が遅れていると、
「ガレス」
今度はガレスを挟んでマリアと反対の左側にいるアテナが話しかけてきた。アテナも、ガレスやマリアと同じように木の根元に腰を下ろしている。と、
「アテナ、今私がガレスとお話してるの」
マリアが割り込んできた。
「だから、貴方はちょっと黙ってて」
「けどガレス、マリアに答えない。だから、アテナが話しかける」
「答えてないけど、まだちょっとしか時間経ってないでしょ?」
「そうだけど、だからってアテナが話しかけちゃいけない理由はない」
二人のやり取りで、ガレスを挟んでいるマリアとアテナの雰囲気がちょっと変化したのをガレスは感じた。
(女の鞘当てか。面倒な状況になったな…)
状況が悪化しそうな空気を感じ取ったガレスはフルヘルムの下でうんざりとした表情になって溜め息をついた。とは言え、この状況を招いたのは自分なのだからどうしようもない。
自分が好んで招いたわけではないのは誓って言えるが、それでも野放しにしておくと後々面倒なのは手に取るようにわかっていた。
「…その辺にしておけ」
故に、全く気乗りはしないがガレスが二人に口を挟む。
「ガレスは黙ってて!」
「ガレス、うるさい」
と、当然このように左右から怒られることになる。女同士の我のぶつけ合いだから仕方ないかもしれない。そしてこういう状況になると、普通は男は引っ込むものだがガレスが引っ込むわけはなかった。
「そうか」
そのまま立ち上がる。
「では、お前たちで楽しく話でもしていろ」
そう言って、そのままその場を立ち去ろうとするので、マリアとアテナが慌てて引き止めた。
「ま、待って!」
「待て、ガレス!」
「何だ…」
億劫な感じを微塵も隠さずにガレスが振り返った。
「まだ何かあるのか?」
「『何かあるのか?』じゃ、ない!」
おかんむりなのはマリアである。
「何でそういうことするの!」
「お前らが黙っていろと言ったんだろう。だったら、俺がここにいる意味はない。どこで何をしようが俺の勝手だ」
「そういう問題じゃないもん!」
マリアの機嫌は斜めのままだ。ガレスとしても的外れなことを言っていることと、マリアが何を望んでいるのかはわかっているのだが、自分を置き去りにして張り合う二人付き合ってられないと思ったのもまた事実である。と、
「ガレス」
今度はアテナが口を開いた。
「何だ?」
ガレスがアテナに振り返る。どうせマリアと同じようなことを言うのだろうと思っていたガレスだが、その思惑は見事に裏切られることになった。
「その…すまなかった」
そう言って、頭を下げたのだる。
「む…」
そう出るとは思わなかったガレスが言葉に詰まり、
「え…」
マリアも思わず驚いていた。
「アテナが悪かった。ガレスに最初に話しかけたのはマリア。そのマリアを差し置いてガレスに話しかけたのはアテナが悪い」
「…それで?」
ガレスが続きを促す。
「だから、もう少しアテナたちと付き合ってほしい。頼む」
「……」
頭を下げているアテナを見ながら、ガレスは何も言わない。側にいるマリアも、どうしたらいいかわからず、キョロキョロとガレスとアテナに交互に目をやっている。そして、
「…わかった」
少しの後、ガレスがそう答えた。そして、先ほどの場所まで戻ると同じように腰を下ろして木の幹に背中を預ける。マリアとアテナも慌ててガレスの後を追い、こちらも先ほどと同じようにガレスの左右に腰を下ろした。
「さ、マリア」
腰を下ろして早々にアテナが口を開く。
「え?」
「マリア、ガレスと話があるのだろう? だから、アテナ譲る」
「う、うん」
頷くも、マリアは先ほどの威勢はない。どころか、少ししょげ返っているようにも見て取れた。
(…そうなるぐらいなら、最初からあんな真似をしなければいいものを)
そう思ったガレスだが、冷静になったからこそ自分の行動を省みたという風に取れないこともない。
(やれやれ…)
呆れつつも、ガレスは今度はその場を離れなかった。その後は暫く三人で穏やかな時間を過ごすことになる。その光景を、今回未出撃になった他の面々は不思議なような驚いたような表情で見ていたのであった。
「ん…?」
三人で時間を過ごしてから暫く後、あることに気付いたガレスが不意に顔を上げた。
「どうしたの?」
マリアが首を傾げる。
「いや…どうやら大分趨勢が着いたようだな」
「そうなのか?」
アテナが不思議そうな顔でガレスに尋ねた。
「ああ。剣戟や鬨の声の中心部が大分動いている。今の場所はパレスがあるだろう場所にほど近いところまで来ているようだな」
「へぇ…」
感心したような表情になってマリアが目を丸くした。
「ガレス、凄~い♪」
はしゃぎながら、マリアが横からガレスに抱き着いた。その行為にアテナが少しムッとして口を尖らせる。
「…止せ」
だが、ガレス自身もまた戸惑っていた。確かに鬱陶しくもあるが、持て余しているわけではない。だが、とにかくこういうことは今は止めてほしかったのである。何故なら、
「んっ、んんっ!」
不意に、咳払いが聞こえた。チラッとガレスが顔を巡らせると、そこにはマリアの隣に立って木に背を預けているミネルバの姿があった。
「マリア」
ミネルバが諭すようにマリアに話しかける。
「そんな真似してはいけません」
「どうして?」
ミネルバに振り返り、マリアが首を傾げた。
「貴方は王女なのですよ。みだりに他人と慣れ慣れしくするのは褒められたものではありません」
「だってぇ…」
敬愛する姉に諭され、マリアはシュンとしてしまう。その姿に心を痛めるミネルバだったが、この件に関しては譲るわけにもいかなかった。
(やれやれ…)
そんな姉妹のいざこざに巻き込まれる形になったガレスは、どうすることもできずに黙っているしかなかった。
今回の戦場は開けた場所と言うことで、最初は当然ミネルバも出撃予定だったのだが、敵に長距離弓兵であるシューターが配備されていることが判明し、急遽、ミネルバの出撃は取りやめになったのだ。
とは言え、偵察や状況把握などに飛兵が活躍するのもまた当然のことなので、出撃のメンバーに入れたいのもまた事実。そこで今回は、ミネルバよりも小回りが利いて身軽なシーダが選ばれ、ミネルバはお留守番となったわけである。
出撃メンバーから外されたミネルバは少し不満気ではあったが、それでも決定した方針には逆らうことはせずにそれを受け入れた。そのため、今回同じように出撃メンバーから外れたマリアを探していたのだが、見つけた時側にいたのがガレス(と、アテナ)だったのである。そして、マリアの隣にガレスの姿を見たミネルバが慌ててマリアの許にやってきたのだった。
マリアはいきなり現れた姉の姿に驚いたが、素直に事情を説明すると何とか納得してもらえた。その代わり、ミネルバもそこに(お目付け役として)留まるようになったのだが。
こういった経緯で、このおかしな一団にミネルバも加わり、よりおかしな一団になっていたのだった。そのため、他の面々からの好奇の目はより一層強くなったのだが、マリアとアテナは元々それに気付いていなく、ガレスは面倒臭いので放置していた。ミネルバだけは神経を尖らせていたが、どうしようもないと思って諦めていたのである。
まあ、そんなこんなで留守番の時間を過ごしていた一団だったが、パレス周辺から大きな鬨の声が上がったのが風に乗って後衛部隊の陣まで届いてきた。
「終わったようだな…」
それに気付くと、ガレスが立ち上がった。それに追随するように、アテナとマリアも立ち上がる。
「…わかるのか?」
ミネルバが窺うようにガレスに尋ねた。
「ああ」
短くそれだけ答えると、ガレスは歩き出した。
「あ、ガレス!」
「待ってよー!」
アテナとマリアがその後を追う。複雑な表情でガレスたちの…特にマリアの後ろ姿を見ていたミネルバも、やがて三人を追って歩き出した。
ガレスの言った通り、解放軍はパレス周辺での激戦になんとか勝利を収めた。そして解放軍は今、その大きな目的地の一つであるパレスへと臨もうとしているのであった。