「おらよっと……取り敢えず、コイツで最後か」
「ああ、みたいだな」
「あ、あはは、流石だね三人とも。ついていくのに精一杯だよ」
最初落ちた(というか落とされた)広間から続いていた通路を進んでいると、サラが言っていたように魔獣が徘徊しており、それを倒しながら進んでいるのだが、戦闘に慣れていないエリオットは既に息を切らしながらクリアたちに何とか食らいついている状態であった。
「大丈夫かエリオット? 少し、休憩しようか? 」
「うん……はぁはぁ、そうしてもらえると助かるかも」
「ふぅ…いったいどれくらい進んだんだろうな? 似たような道ばかりだからよく分からないが」
「まだまだあるんじゃねーの? 結構な高さから落とされてんだからよ」
座り込んでいるエリオットの周りを囲むようにクリアたちが立っているが、エリオット同様で慣れない戦闘が多かったためかリィンやガイウスもエリオット程ではないが、少し息を切らせて汗も掻いている。…クリアに至っては息も切れておらず、汗も掻いていないのだが。
「それはそうと、クリアは凄いな…」
「…なんだよいきなり」
「いや、さっきの戦闘もそうだけどさ、俺らのサポートしながら戦闘してただろ? 俺ら以上に動き回っているっていうのに全然疲れているように見えなからさ」
「あー…まぁ、スタミナには自信があるからな。ソレに、ちょいと厳しい環境で育ってきたからお前らよりも動けるだけだっての…あんま実力的には変わんねーさ」
頬を掻きながら苦笑するクリア。実際的には実力的にもそこそこ差があるのだが、クリアはあえてそれを言うことを控えた。別に落ち込んだりはしないだろうが、念のためにである。それに、クリア自身あまり学院に来る前のことを誰彼においそれと話したくはないのである。
「そうなんだ……うん、もう大丈夫。ゴメンね時間とらせて」
「気にすんなって。チーム組んでんだ、そこら辺は遠慮せずに行こうぜ? 」
「はは、そうだね。ありがとう」
クリアが言った言葉に照れくさそうに笑うエリオット。しかし、彼の後ろには魔獣が彼に狙いを定めていた。ソレにいち早く気づいたリィンがエリオットに向かって
「エリオット! 後ろだっ!! 」
「え? う、うわぁぁッ! 」
「ちぃっ! 」
完全に油断していたエリオットめがけて飛びかかってきた虫型の魔獣の攻撃はエリオットを押しのける形でその場から移動させブレードライフルで虫型魔獣の攻撃を間一髪でクリアが防ぐ。しかし、彼の両手が塞がっている今の状況では虫型魔獣に友好的なダメージを与えることができない。
そんな中、リィンたちの背後から一筋の閃光が飛んでいき虫型魔獣に直撃し、体制を崩す。そこにすかさずクリアは手に持っていたブレードライフルで魔獣の息の根を止める。
「良かった……大丈夫だったか? 」
「おう、助かったぜ…えーっと、確か…」
「マキアス=レーグニッツだ。…先程はすまない少し頭に血が上っていたようだ 」
魔獣の体制を崩す一撃を放った正体は先ほどの広間でユーシスと揉めていたマキアスだった。リィンたちもすぐにクリアの下に駆けつけて怪我はしていないか聞いてくるが、クリアは問題ないと返す。
「クリア=ヴィルヘイム…さっきは本当に助かったぜ」
「エリオット=グレイブだよ。よろしくね」
「リィン=シュヴァルツァーだ。よろしく」
「ガイウス=ウォーゼルだ」
それぞれ自己紹介が終わったところでマキアスが申し訳なさそうにクリアたちを見ながら何かを言おうとしているが、どこか躊躇っているようにも見えた。それが気になったクリアはそれを促すと、マキアスは言いにくそうに
「すまないが、君たちの身分を確認させてもらってもいいだろうか。…一応、貴族かどうか知っておきたくてね。ああ、別にそれで対応を変える訳ではないんだ。ただ、念の為に確認しておきたくてね」
「俺はそんな上品な血を持った覚えはないね」
「僕も、平民だけど………」
「俺は元々留学生としてやってきているし、貴族とやらがどんなものかあまり分からないな」
「そうか…」と少しホッとしたような表情でマキアスはそう呟く。そして、残りの一人…リィンを見ると自然とクリアたちもリィンの方へと視線が行く。当の本人はどこか複雑そうに目を閉じると
「――――――少なくとも高貴な血の生まれではないことは確かだ」
(? 少なくともってのはどういうこった? )
リィンの言い回し方が引っかかったクリアだが、周りの者たちはその事に気付いた様子はない。恐らく、彼の言い回しが引っかかったのはクリアだけだろう。…ただ、確証が無いためただの気のせいかもしれない。かと言って本人にそこまで立ち入ったことを聞くのはクリア当人としてもあまり好まない。なにせ、自身が立ち入られることを好まないからだ。
「ま、取り敢えず進むとしようぜ? この調子じゃ日が暮れても文句言えねーからな」
「あ、ああ。そうだな、そろそろ行こう」
難しい表情をしていたリィンはクリアの促す声に我に返りそう言う。その様子にエリオットたちも少し訝しげに思っていたが、特に問題はなさそうだと判断したのか、特にそのことについて聞こうとせず、前を歩くリィンについていくのだった。
◆
「おっと…」
「ああ、そなた達か…その様子だとそなたの方も頭が冷えたようだな」
「ああ……その件に関してはすまない。この通り頭も冷えたよ」
魔獣を倒しながら進んでいると、クリアたちは女子のチームと遭遇した。マキアスは場の空気を悪くしたことを申し訳なさそうに謝るが、青色の髪をポニーテイルにした少女が代表して
「もう済んだことだ。次から気をつけてもらえればいい」
と言いながら、優しく微笑んだ。マキアスはほっとしたように安堵のため息をこぼしていたのだが、その横で金髪の少女がリィンを鋭い目つきで睨んでいた。…勿論リィンはその視線にたじろいで何も言えずにいる。それを見かねたクリアが助け舟を出すかの如く
「あー、そういやあんたらの名前聞いてなかったな。俺はクリア=ヴィルヘイムだ」
「……ふむ、そう言えばそうであったな。私はラウラ=S=アルセイドだよろしく頼む」
クリアの意図が分かったのか青髪の少女…ラウラもクリアに続く形で自己紹介をはじめる。リィン、マキアス、エリオットは彼女のファミリーネームを聞いたことがあるようで目を見開いていたが、帝国の外から来たクリアとガイウスは首を捻って疑問を抱いているような表情をしていてた。
その後も互の自己紹介が続いていったのだが、問題は金髪の少女―――アリサ=Rと名乗る少女である。明らかにリィンに敵意をむき出しで自己紹介の時も敢えて言わなくとも良いことを言ってそのままその場を去っていった。当然リィンは落ち込み、周りのクリアたちは苦笑せざるを得なかった。
「……もしそちらさえよければ、僕たちと一緒に行動しないか? 女子だけで此処をうろつくのはいささか危険だと思うんだが…」
「――――――いや、気持ちはありがたいが遠慮しておこう」
「な!? しかしッ…『あーそりゃ残念。せっかく女子と組めると思ったんだが、断られちまったらしょうがねーか』クリア!? 君まで何を言っているんだ!? 」
「まぁ、落ち着けよ。じゃーな、ラウラとエマ。プンスカ怒って先に行っちまったお嬢とはぐれるんじゃねーぞー」
半ばからかい気味に言うクリアにラウラとエマは苦笑しながら、先に行ってしまったアリサの後を追うようにしてクリアたちの元を去っていった。しかし、マキアスはクリアの行いに納得がいかないようで彼に詰め寄り
「どうして彼女たちだけで行かせたんだ! 君も魔獣が危険であることは重々承知だろう!? 此処は、多数で固まって行動したほうが…」
「危険は少ないってか? まぁ、そりゃそうだが」
「だったら何故! 」
「アホか。お前 」
ポコッと軽くマキアスの頭が叩かれる音がする。突然のことに面食らったマキアスだが、すぐに正気に戻りまた怒鳴り出す。その様子をリィンたちは唖然としながら見ていながらも口を挟もうにも挟めない状況であることから何も出来ずにいた。クリアはというと、怒鳴り散らすマキアスの声を売るさそうに片手で耳を塞ぎながら、呆れたように
「ラウラ達と行動するってことはラッキースケベを発動したリィンとその被害者であるお嬢…アリサも共に行動するってこった。リィンに他意はなかったとは言え相手は年頃の女子だ。事故だとしても自分の胸に顔をうずめた相手と行動するってのは抵抗があるだろ……多分」
「それは、そうかもしれないが…」
「そんな状況で共に行動してみろ? うまく連携が取れるとは俺には到底思えないね」
「む……」
「それにアイツ等なら大丈夫さ。特にラウラ……アイツは恐らく俺たち《Ⅶ組》最強だろうな」
「ああ、間違いないだろう。なにせ帝国に双璧をなす《ヴァンダール流》の対の剣術《アルセイド流》の使い手だ」
「「え、ええ!? 」」
クリアとリィンから衝撃の事実を伝えられたエリオットとマキアスは驚愕の声を上げる。ガイウスは成程といった感じで納得している様子を見せている。多方、ラウラの実力を感じ取っていたのだろう。
「あ、アルセイド流って帝国屈指の実力者《光の剣匠》ヴィクター=S=アルセイド子爵の!? 」
「ああ。彼女も名乗っていただろ? アルセイドって」
「た、確かに言っていたが…まさかあの」
「そんなに有名なのか? 確かにラウラ自身からはかなりの実力を感じたが」
「まぁ、有名っちゃあ有名だな《光の剣匠》は……ぶっちゃけ、有りえない程の実力者だしな」
四大名門のことを知らなかったクリアだが、光の剣匠…ヴィクター=S=アルセイドの事は知っているような口ぶりだった。しかし、ラウラがその《光の剣匠》の娘だと知った衝撃の方がエリオット達には大きかったらしく、クリアの呟きは誰にも届いていなかった。
「と言う訳だマキアス君。これで安心したかね? 」
「あ、ああ。それ程の実力を持った彼女がついていれば、安心だ…と言うか何だその喋り方」
「ま、そうは言いつつも『もしも』の事があったら心配だし、俺がフォローに行ってくるわ」
「お、おい!? 僕の質問は無視か!? しかも、さっきと言っていることが全く逆じゃないか!? 」
「細かいことは気にすんなよ石頭。 『もしも』の事があったらの保険のためだって言ってんだろ? 」
石頭と呼ばれたことにショックを受けているマキアスをよそにクリアはラウラたちが進んでいった方向へと歩き始めた。その様子に少し違和感を覚えたリィンだったが、その違和感を埋め込むように
「クリア、彼女たちのこと頼んだ」
「……おう、もしかしたら余計なおせっかいかもしれないけどな」
と、振り向くことなくヒラヒラと手を振ってさらに進みだす。その時のクリアの表情はリィンたちからは見ることができなかったが、まるで『重い足枷が外れたとでも言うような開放感溢れた表情』をしていたのだが、それを彼らが知る由もないのだった。
いや、かれこれ一ヶ月ぶりの投稿となってしまい、申し訳ないです(-_-;)
言い訳でしかないんですが、大学の方が色々と忙しくて中々書く時間を見つけられずにいました。ホントスミマセン。
漸く三話なんですが、全然進展してませんね…あははw…はぁ。さっさと序章を終わらせたいんですがまだまだ掛かりそうです予想ではあと二話くらいは序章なんじゃないかと
しかも、長い時間書いていなかったから、少しブランクと言えばいいんでしょうか? うまく書けていない気がします。というより、うまく書けていません。ハイ
時間がなかったからとは言え、サボってしまったツケでしょうかw これから元通り…欲を言えば、今よりもうまく書けるようになりたいと思います。さて、次回の更新ですが、上手くいけば明日、うまくいかなければまた来週となってしまいます。ああ、憎き大学寮生活。いや、中々楽しいんですけどねw
そんなわけで出来たら明日投稿できるように頑張りますので時間が空いた時でよろしいので読んでいただけると幸いです。ではではノシ