緋色の軌跡   作:断頭台

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何とか、投稿できたけど、やはり出来が気になってしまう(-_-;)


act05

「ッチ、っんとにメンドくせぇなぁ……っと 」

 

「■■■■■■!! 」

 

魔獣がしつこく繰り出す攻撃をクリアは武器で防いだり、避けたりして直撃こそしていないが、あちこちに軽い傷を負っている。先ほどの挑発で、他のメンバーに攻撃は行かなくなった代わりに集中してクリアに攻撃が行くようになったのだ。

 

「口は災いの元って確か、東方の国のことわざってやつにあったよなぁ! 今がまさにその状況ってか……笑えねぇ」

 

「口ばっかり動かしてる暇があったらちゃんと引きつけておいて頂戴っ!! 」

 

「へいへい、わかってますよっと……全く、人使いの荒いお嬢だこと 」

 

余裕綽々のように軽口を叩いてはいるものの、今まで疲労という疲労を感じていなかったクリアも流石に疲れが出始めたのか、最初よりも動きが鈍り、息も荒くなってきている。

 

クリアだけに負担がいかないように、リィンやガイウス達前衛組が魔獣に攻撃をしているのだが、それでもリィン達の方に攻撃が行くことはなく、クリアへと攻撃を仕掛ける。

 

「ちっ……」

 

「クリアっ!? 」

 

ついにバランスを崩したクリアに魔獣の攻撃が襲いかかる。咄嗟に後ろに身を引いてダメージを逸らしたが、それでも勢いが強く、クリアは後方の壁へと叩きつけられる。

 

「いっつつ……洒落になんねぇ力してんのな…」

 

「大丈夫か? 」

 

「おう、サンクス。助かったわ」

 

ガイウスがクリアの補助をする。幸いにも、寸前で身を引いていたので直撃よりは大分ダメージを減らすことができたようだが、それでも体に蓄積されたダメージもあり、やはり最初のような動きはできず、一撃離脱で攻撃を繰り出すのが関の山になっていた。

 

「クリアは援護に回ってくれ、俺たちが前衛をやろう」

 

「……わりぃ、頼むわ。流石にしんどい」

 

「どうせなら、そこで休んでいるといい。貴様が休んでいる間に倒してやる」

 

「ハ、そりゃいい。じゃ、遠慮なくらくさせてもらっておくぜ」

 

クリアのその言葉を満足げに聞くとリィン達は魔獣に接近して、攻撃を繰り出す。魔獣の方も漸くというべきか弱ってきたようで、動きに鈍りを感じた。エマ、エリオットはアーツを中心に攻撃・補助を行い、アリサ・マキアスが銃・弓による中・遠距離の攻撃を繰り出し、リィン達前衛組が魔獣の攻撃を避けながら攻撃を行うフィーは状況に応じて中距離と近距離で立ち回っている。そんな中、クリアも

 

「……射撃はあんまり得意じゃねーが、このまま何もしないってのも、癪だからな」

 

そう呟きながら己の武器であるブレードライフルを構え魔獣に向けて放つ。それに魔獣はのけぞり、動きを一瞬止めてしまう。そして、その一瞬を集中力が極限状態まで高まっているⅦ組のメンバーたちが見逃すはずもなく、

 

「よし! 特大の行くよっ!! 」

 

そう言ってエリオットが放ったのは水属性上位に当たる導力魔法《クリスタル・フラッド》魔力でできた氷が魔獣を凍てつかせ動きを封じ込める。当然、魔獣は体を凍てつかせる氷を破壊する術を持っておらず身動きを取れないまま咆哮を上げようとする

 

が、

 

「今だっ!! 頼むラウラっ! 」

 

「ああ、任せるが良いッ!! 」

 

身動きの取れない魔獣の頭を自身の武器である大剣で叩き切る。すると、ゴトリと少し鈍い音を響かせて魔獣の頭は地に落ちる。魔獣の頭が、地に落ちたと同時に体は元の石へと戻り動かなくなってしまった。

 

「………やった、のか? 」

 

「みたいですね……」

 

「こ、怖かったー」

 

魔獣を倒したことを認識すると、メンバー達は腰が抜けたかのようにその場に座り込む。誰もがボロボロで汗だくになっている。

 

「それにしても、さっきの僕たちを包んだ光はなんだったんだ? 」

 

「確かに気になるな……この戦術オーブメントから出ていたように感じたが」

 

「それに、あの光に包まれているとき妙に力が湧いてきたというか、なんか不思議な感じがしたわ」

 

「ARCUSから出た俺たちを包む光……もしかしたら、アレが」

 

「そ、貴方たちが体験したあの現象こそARCUSの真価の一つね」

 

リィンの言葉を引き継ぐように聞こえてきた声。それは紛れもなく、クリア達Ⅶ組のメンバーを此処に落とした張本人……サラ・バレスタイン教官の声だった。

 

「ん〜♪ いや~やっぱり最後は友情とチームワークの勝利よね。うんうん、いろいろあったけどお姉さん感動しちゃったわ。それになかなかカッコいいこと言うじゃない。リィン」

 

「ぷ、おねーさんって柄じゃね……だっ!? 」

 

「うっさいわよ、クリア。せっかくいい気分なんだから水を差すんじゃないの」

 

「………へーい」

 

ヘラヘラしながら軽口を叩くクリアにサラはどこに隠し持っていたのか分からないが、棒きれのようなものをクリアの額めがけて投擲する。クリアもクリアでそれを避けるような動作はせず、敢えて当たる……というよりはさすがに疲れていて避ける気力もなかっただけのようだが。

 

「……単刀直入に聞く。バレスタイン教官、特科クラスⅦ組……その真の目的とはなんだ。まさか、身分に関係なく仲良くしましょう、というだけではあるまい」

 

「まぁ、その考えもないわけではないんだけど…やはり、一番は貴方たちが持っているその新型戦術オーブメント《ARCUS》の適合率がずば抜けて高かったってことね。貴方たちが体験したあの青白い光……アレは戦術リンクと呼ばれる今開発のものでね……究極的にはその戦術リンクでお互いの考えを読み取り、連携の強化を図ろうってもの。アンタたちも体験したと思うけど、戦術リンクの力は中々強みになるわ」

 

「……確かに、あの青白い光に包まれているとき、みんなの攻撃する場所が手に取るように分かった気がする」

 

「ええ、これが使えれば少数による精鋭部隊が誕生しますね……」

 

エリオットやマキアス達は納得したように手に持っている戦術オーブメント《ARCUS》を見つめているが、クリアはどこか納得していないかのようにサラを見ている。サラもそれに気づいていながら、敢えてその視線を無視して話を続ける。

 

「ま、オリエンテーションも無事終わったことだし、そうね。約束通り文句を聞いてあげる。トールズ士官学院はこのARCUSの適合者として君たち10名を見出した。やる気のない者や気の進まない者に参加させるほど予算的な余裕があるわけじゃないわ。それと、本来所属するクラスよりもハードなカリキュラムになるはずよ。それを覚悟してもらった上で《Ⅶ組》に参加するかどうか――改めて聞かせてもらいましょうか」

 

そう聞かれ、誰もが黙り込む。それを見て、言い忘れていたことを付け加えるようにサラは

 

「そうそう、別に参加しない場合は元々振り分けられるクラスハズだったところにちゃんと入れるから安心しなさい。平民なら平民のクラス、貴族なら貴族のクラスに、ね」

 

が、誰も一言も言わない中、目を閉じて考えていたリィンは静かに目を開き、サラを見据えると信念の通ったような待っくすぐな声色で

 

「――――――リィン=シュヴァルツァー。特科クラスⅦ組に参加させてもらいます」

 

「リィン!? 」

 

「……へぇ」

 

「一番乗りは君かぁ……何か色々事情があるみたいね」

 

サラは含みのある言い方をしてリィンに問いかける。が、リィンは静かに首を横に振り

 

「いいえ、俺の我が儘で行かせてもらった学院です。自分を高めるためならどんなクラスでも構いません」

 

「ふ〜ん、そっか。分かったわ。他はどうかしら? 」

 

サラに促されるが、まだ他のメンツは決めあぐねいているようで、黙り込んでいるまま。そんな中、クリアが一歩前に出て

 

「んじゃ、俺もやるわ。 クリア=ヴィルヘルム特科クラス《Ⅶ組》参加させてもらうぜ。 他のクラスにいるより、面白そうだしな」

 

「…アンタなら、そういう理由だと思っていたわよ。全く、面白半分でやるようなことじゃないってわかってるくせに…」

 

「ハハー、わりィわりィ。コイツだけは性分だからどうにもなんねぇんだよ」

 

「ま、いいわ。次…」

 

また、サラが促すと今度は決まったようで次々に参加の意思を伝えていく。そして、フィーの番になると、彼女はめんどくさそうに

 

「サラが決めていいよ」

 

「ダメに決まってんでしょ」

 

「……ちっ。じゃ、クリア。決めて」

 

「とんでもねぇキラーパスだな、オイ」

 

「あのねぇ………自分でちゃんと決めるって約束でしょうが」

 

呆れたようにサラはそう言いながらフィーを諭す。その姿はさながら年の離れた姉妹にも見え、Ⅶ組のメンバー達はどこか温かい目で見守っていた。

 

「む……めんどくさいなぁ。じゃぁ、参加でいいよ」

 

本当にめんどくさそうに参加の意思を告げる。……やる気がないわけではないようだが、別段やる気に満ち溢れているという様子でもないことから、参加でもそうでなくてもどちらでもいいと思っていたようだ。

 

その後、ユーシスとマキアスもいがみ合いながらではあるが、Ⅶ組参加の意思を告げる。まぁ、いがみ合いと言っても一方的にマキアスが噛み付き、それをユーシスが簡単にいなしていただけなのだが。

 

ユーシス本人としては、此処に来る前にクリアに向かって言った言葉の方が学院に来てからの何よりの本心であり、Ⅶ組に参加することの根幹とも言えるかもしれない。勿論、他にも理由はあるのだろうが。

 

こうして、Ⅶ組は無事誰一人欠けることなく正式に設立されたのだが、色々と問題が立ちふさがる。前途多難な設立のようにも感じられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、オリエンテーションがあった日の夜のこと。クリアはⅦ組に宛てがわれた第三寮館の屋上で酒を飲んでいた。部屋で飲んでいれば確実に見つかってしまい、説教の後、サラに酒を奪われてしまうことを理解していたため、屋上で飲んでいるのだ。

 

「あー……今日は疲れたな。けど、面白い奴もいたもんだな」

 

そう言いながら、ユーシスのことを思い出す。四大名門という大貴族の嫡子でありながら、固まった考えを持っていないところには好感が持てた。性格に難が有るようだが。

 

「懐かしいなぁ…俺に噛みついてくる奴なんて、『アイツ』くらいなもんだったからなぁ……」

 

そう思いながら、クリアが思い出すのはここに来る前の自分がいたところのこと。捨てられて身寄りのないクリアを拾ってくれた『あの人』がリーダーだった、クリアのたった一つの居場所。

 

その居場所も、『あの人』が死んでしまい、そこにいる意味を見いだせなくなり去ってしまったわけだが。

 

「……いけね、感傷に浸っちまったな。せっかく、旨い酒なんだ感傷に浸ってまずくなったら元も子もねぇな」

 

「あら、確かにこの酒うまいわね〜」

 

「だろ? 値段もそこまで高くねぇのに、この旨さ……ってサラさん!? 」

 

「やっほ〜……感傷に浸ってたクリア君♪ 」

 

おちょくるようにそう言われて、柄にもなくクリアは顔を赤らめる。サラの方はというと『してやったり』といったような感じでニヤニヤしている。

 

「い、いつから? 」

 

「ふふーん♪ ……聞きたい? 」

 

「いや、やっぱいいや。どうせ、最初っからいたんだろうし」

 

「は・ず・れ。途中からよ。ちょーっと、涼みたくなったから屋上に来てみたら妙に感傷に浸っているアンタが居たってわけ」

 

「………忘れてくれ」

 

恥を忍んでそう頼むクリア。流石に恥ずかしかったのか、はたまた自分の柄じゃないことを気にしているのか分からないがその顔は先程と同様赤く染まっていた。サラはサラでグビグビとクリアが持ってきていた酒を容赦なく飲みながら

 

「ん〜そうねぇ……本来ならこのことで一晩からかい倒すんだけど、いい酒飲ませてもらったし、いいわ。忘れたげる。感謝しなさいよ〜? 」

 

「ぐ……」

 

「ま、一つ真剣な質問。やっぱり、『あの人』の事割り切れてない? 」

 

言葉を詰まらせるクリアにサラは今までの雰囲気を一変させ、そう尋ねる。クリアもバツが悪そうな表情をして少し顔を俯かせ小さく頷く。

 

「そっか……アンタが他のⅦ組の子達と話しているの見てなんか壁があるように感じたけど、やっぱりそれは間違いじゃなかったか…」

 

「もう、結構経つけどさ……やっぱ、割り切れねぇんだわ。 過ぎたことに囚われてちゃ前になんか勧めねぇって分かってんだけどよ 」

 

そう言いながら、クリアは立ち上がり、寮の中へと戻る階段のほうへと向かっていく。

 

「ちょっと、クリア。この酒どーすんのよ? 」

 

「ああ、ちょっともう飲めねぇから、サラさんが飲んでてくれ んじゃ、おやすみ…」

 

引き止めることもかなわず、クリアはそのまま階段を下りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その姿を見送ってサラは軽くため息を吐くと、

 

「全く……何がもう飲めない、よ。私より酒強いくせに」

 

不満げにそう呟いてクリアが残していった酒を一気に飲む。少しアルコールがキツかったためか喉が熱い。

 

「ほんっと……ままならないわねぇ 」

 

一人夜空を見ながらそう呟く。彼女の心持ちとは裏腹に夜空を星たちが綺麗に彩り、此処トリスタ……引いては帝国を照らしているのだった。

 




やっと、クリアの過去にホント少し触れることができました!やー、ここまで少し長かった気が(たった5話だけど)プラス、漸く序章を終えることができました。

少し、だけ今回はなんかサラ教官のターンを作りましたが、どうですかね? これってラブコメ臭匂います? 書いている自分じゃ分からなくて……そこらへんどーなんだろw
もしよければ、意見もらえると嬉しいです。

それと、ヒロイン候補の件ですが、締め切らせてもらいます。一応、現段階のヒロインとしてはフィー、サラ教官、ついでに確実に出番が少ないであろうシャーリィです。

原作で言うエリゼ以上に出番がないですがw 

で・す・が、オリキャラの方はまだまだ締め切らないので是非という方がいればご提供よろしくお願いしますm(__)m

ヒロイン・オリキャラのご協力を下さった皆さん、本当にありがとうございます。これからも、更新&文才があまりよろしくない私の作品を読んで頂ければ幸いです。

ではまた次回にお会いしましょう。それではノシ

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