雪凪さん、ウチのキャラはこんなんじゃないという点があればご指摘くださいね。
ではどうぞ
act06
トールズ士官学院の入学式及び特科クラス《Ⅶ組》の成立から早、二週間の月日が経った。最初は慣れないことや戸惑うことが多かったクリア達だが、二週間もすると慣れたようで、何のトラブルもなく学院生活を送っていた。そして、ある日の午後のHRでサラは
「……そろそろ学院生活にも慣れただろうし、頃合でもあるから今日から自由行動日を挟んだ二日後、実習テストを執り行うわ。そしてそこで改めて《Ⅶ組》のカリキュラムについて説明するわ」
「! ようやくか… 」
「ど、どんなのなんだろう……」
今までは他のクラスと同じカリキュラムを受けてきたⅦ組のメンバー達だが、漸くⅦ組の特別カリキュラムを受けることになると聞いて好奇心を覗かせるものは少なくない。
「ってなわけだから、自由行動日をどう活かすかも君たち次第ね。遊ぶもよし、テストに向けて己を磨もよし、好きにするといいわ。 ……あ、あと部活動もいいかもしれないわね。今日から部活動に所属できるようになるわ。 ま、頑張りなさいな」
そう言うと、サラは副委員長であるマキアスに号令を促し、HRが終了する。すると、その直後にガイウス、エリオットはリィンと、エマ、アリサ、ラウラはそれぞれどの部活に所属するのかと会話に花を咲かせ、フィー、マキアスはそくささと教室を去っていく。そんな中、クリアとユーシスは
「なー、ユーシスはなんか部活に入んのか? 」
「ふん、なぜ貴様にそのようなことを一々言わねばならん」
「いいじゃねーか。あっちみたいに俺らも部活話で盛り上がろうぜ? 」
「部活話がしたいのであればアイツ等してくればいいだろう。 大体、なぜ俺なのだ? 」
「……ま、気分だな」
「今すぐ、あっちの会話に混ざって来い 」
シシシと笑いながらふざけた回答をするクリアにユーシスは青筋をこめかみに浮かべながらそう言う。そのやりとりはリィン達やアリサ達にも聞こえていたようで誰もが苦笑をしていた。
「でも、よく物怖じしなくて話せるよね。……僕だったらちょっと無理かなぁ…」
「ああ、俺もあそこまで露骨に近づくな、といった雰囲気を出されるとちょっと話しかけづらいな」
「そういう点で、見るとクリアって結構すごいのか? 」
「や、じょ、冗談だからそんなに怒るなって……」
「貴様の冗談は質が悪い上に、冗談に聞こえん」
平謝りをしているクリアを見てリィンは自分の言ったことを撤回したくなった。…まぁ、周りも周りでそんな訳あるはずもないか、と思ったようだが。
「……フン、付き合ってられん」
そう言って、ユーシスは席を立ち上がり、教室の出入り口の方向へと向かって行った。
「あちゃー、ちとやりすぎたな」
「流石に、な」
クリアの呟きにガイウスが同意するようにそう言う。が、ユーシスは教室を出る直前で
「………馬術部の見学に行く。来ると言うなら別に来ても構わん」
「クク………はいよ 」
素直に言えないユーシスに苦笑しながら返事をするクリア。それを聞き届けると、今度こそユーシスは教室を去っていった。その際、耳まで真っ赤になっていたのは羞恥心からだったのだろう。四大名門の子息であるというプライドから先ほどの言い方が最大の譲歩だったのだろう。
「本当仲いいよねクリアとユーシス」
「んー、まぁそうだな。 仲いい方ではあるか」
「? クリアにしては珍しいな。てっきり、『だろ? 俺たち親友だからな』とかいうかと思ったが……」
「………色々あるんだよ。おにーさんにはな」
「おにーさんって……同い年だろう」
「さてな。案外年上かもしんねーぞ? 」
からかうようにそう言い残して、クリアも教室を出ていこうとする。が、一瞬、本の一瞬であるが教室を出ようとするときのクリアの表情が全て抜け落ちたかのような無表情をリィンは見た。咄嗟に呼び止めようとしたが、それより先にクリアが教室の外に出たので、それは叶わなかった。
追いかけて聞こうとしたが、クリアのことだ上手くはぐらかせてその場をやりきられると思ったリィンは追いかけることを断念した。これからまだ時間はたっぷりある、また、機会があるときに聞けばいいかと判断し、エリオット達と会話を再開した。……会話を再開させる前に変な顔をしていたのかエリオットとガイウスに訝しげに見られたが。
◆
教室を出たクリアは宛もなくフラフラと学院内を見て歩いていた。ユーシスのいるであろう馬術部の方へ行く前に、学院内を歩き回ろうと気分で思い、そちらを優先した。
「はー……入学して二週間経つけど、相変わらず広えぇなー。迷子とか出るんじゃねーんだろうか? 」
「むぎゅッ!? 」
そんな事を呟きながら歩いていると、軽い衝撃が胸のあたりに走り、ぐぐもった声がした。その事に驚いて少し視線を下げてみれば、平民クラスの緑の学生服を纏った茶髪の中性的な顔立ちをした学生がクリアの胸当たりに顔をぶつけていた。
「わりぃ……よそ見してたわ。怪我、ねぇか? 」
「いたた……うん! 怪我はしてないよ」
「そうかい。ぶつかって悪かったな じゃ 」
「あ! 待って待って! やっぱり怪我したかも!これは何か奢って貰わないとダメかも… 」
「嘘くさ 」
必死にそう言う学生を不審な目で見ていたが、唐突に大きなお腹の音が渡り廊下に鳴り響く。……原因となった人物は言わずもがな恥ずかしそうに顔を赤らめていた。 因みに余程お腹がすいているのか涙目になっている。
「……はぁ。仕方ねぇな」
「ほへ? 」
「……何か奢ってやるよ。ここで会ったのも、何かの縁だろうしな 」
「おお! ありがとー!! ……えっと、」
そう言って学生はクリアの両手をとって自分の小さな手で包み込み、ブンブンと激しく降っている。 こんな感じの対応をされたのはクリアも初めてだった様でその表情には少し戸惑いが見られた。
「クリアだ。クリア=ヴィルヘイム…お前は? 」
「僕? ナイラ・アルアジフ! ナイアでいいよクリア。あと、よく女と間違われるけど、れっきとした男だからね〜まぁ、間違えれたからって怒る訳じゃないけどね」
「へいへい。よろしくなナイア」
「えへへー! こっちこそ(ご飯)よろしくねクリア! 」
笑顔で再びブンブンとクリアの手を掴んで振っている。……クリアとしてはさっさとこの学生…ナイアに飯をおごっておさらばしたい気分なのだが、この嬉しそうな表情を見ていると、どうにも話が切り出しにくいようだ。もし計算してやっているのであれば相当な役者だろう。
そんな事を考えながらクリアは食堂のほうへと引っ張っていくナイアを見ているのだった。……しかし、この後クリアはナイアに飯を奢るといったことを大いに後悔する羽目になるとはこの時は思ってもいなかったのである。
◆
「…………」
「んー! 美味しいーッ!! あ、これも追加してもらっていいですか!? 」
食堂について、メニューを選び出したまでは良かった。しかし、そこから先は全くもっての予想外だったクリアは絶句するしかなかった。次々に食べてはまた追加の品を頼む。それの繰り返しでクリアは5回を超えたところから数えていない。考えていることといえばあの小さな体のどこにそんな吸収力があるのだろうという事だけだった。
「あー、幸せぇー……アレ? クリアは何か頼まないの? 」
「……ぜってぇ次からお前と食事しねえ」
「ええ!? な、なんで!? 」
「イヤイヤ、お前人の金でこんだけ食べてんだぞ!? ちったぁ遠慮しろ! 」
「えー…まだ食べ足りないよー」
「んなの知るか! 俺の金が無えんだよ! 」
そう言って無理やりメニューを選んでいるのを止めて支払いを済ませる。その際、ナイアの表情はとても不服そうだったが、クリアはそんなことを気にしている余裕がなかった。……なにせ、財布の中に入っている金の9割を持っていかれたのだから。
「おーぅ。 俺の財布がずいぶん軽くなったなぁ……」
「えーっと、クリア? 」
「え? ああ、大丈夫大丈夫、何とかなる…何とかするさ」
遠くを見ながらクリアはそううわ言のように呟いている。いつもの飄々とした態度が嘘のように暗く沈んでおり、目も虚ろになっている。正直に言えば相当怖い。隣にいるナイアも若干怯えている。
「ご、ゴメンなさい…僕が調子に乗って食べ過ぎたから……」
「……はぁ。もう過ぎだ事だ。気にして…入るけど、ま、大丈夫だ」
「で、でも……」
「奢った俺が大丈夫って言ってんだ。あんま気にされると、こっちもあんまいい気になれねぇよ。……そうだな。もし引け目を感じてんなら、これは貸一だな。いつか返してくれればいい」
申し訳なさそうに俯いているナイアの頭にぽん、と手を乗せ乱暴に撫でながらそう言う。いきなりのことで驚いたのか、目を丸くしてなされるがままになっていたが、嫌ではないようであった。
「……うん。分かった、きっと返すよ。で、またこっちが大きな貸し作ったらまた、奢ってくれる? 今度はクリアも一緒に食べてさ」
「…ハ、おう。ただ、今度は少しは加減しろよ? 」
「その時のクリアの態度次第だね 」
ニヒヒ、と悪戯っぽく笑うナイアの表情にはもう先程までの落ち込んだ様子はない。何時までも、辛気臭い顔をして相手に迷惑かけるのが嫌だったのだろう。 クリアには経済的迷惑をかけたわけではあるのだが。
「…言っとくが、この貸しはデカいからな? ちょっとや、そっとじゃ返せると思わねぇこった」
「分かってるよ。…何か、困っていることがあったら呼んでね。出来る範囲で力になれるように頑張るからさ」
「そいつは楽しみだな」
そう言いながら、食堂に備え付けてある時計をふと見ると既に時間は既に学生たちが完全下校する時間寸前だった。クリアはどうりで少ないはずだと思いながらも、ふとあることを思い出した。
――――――馬術部の見学に行く。来ると言うなら別に来ても構わん――――――
ユーシスこの言葉。一件冷たいように見えて、彼が友人であるクリアに最大限の譲歩としていった事、クリアはそれをすっかり忘れてしまっていたのだ。 たかだか友人だから謝れば済む、のかもしれないが、ユーシスは普通以上に気難しい性格をしているためどうなるかわからない。
そう考えたクリアの顔色はみるみると青白く染まっていく。それを不審に思ったナイアはクリアに声をかけようとしたのだが、
「わりぃ! ちょっくら用事思い出したわ!! じゃな、ナイアッ!! 」
「へ? あ、うん……また今度ねー!! 」
疾風のごとく駆け去るクリアに呆然としていて彼の背中が少し見えるくらいになったところで、漸く我に返りそう言葉を掛けるが、届くはずもなく帰ってくるのは虚しい静寂だけだった。
因みにその後、馬術部が活動をしているグラウンドに向かったのだが、誰もおらず寮についたクリアをユーシスが冷たい目で睨んでそれにいつもの体裁を保とうともせずひたすら謝っているクリアをリィン達は見たらしい。
……ああ、今回は本当にひどい出来だと思います。うぅ、これは本当に凹んでしまう。
今回は結構難産で、考え考えしていたはずなんですけどねwまぁ、これは雪凪さんのキャラメインの話になってしまいましたが、それ以外はユーシスメインですね。
Ⅶ組の中ではユーシスが一番気を許すことができる(男の中では。勿論、女子の中ではフィーです)、という設定でありますので、それは当然なのかもしれませんが。リィン達とも仲が良いのではありますが、現状では一線引いていると言いますか、そんな感じでユーシスやフィーのように接することはあまりないですね。いずれは、違うかもしれませんがw
と、こんな感じで少し補足を入れさせてもらったのですが、はぁ……ヒロインどうしよう。ダブルヒロインと言う事っていうか、原作ヒロインを使うことに違和感を覚え始めた私です。
てか、この方向で行くとクリアくん原作ヒロインの誰かと結ばれることなく、第二のサラ教官(男バージョン)が出来上がってしまう。どうしてこうなったw
現在どうするか、考えながら書いていますが、もしよろしければアドバイスなど頂けると幸いです。
長々と私の愚痴を書いてしまいましたが、今後ともこの作品とお付き合いいただければ、と思っています。
ではまた次回お会いしましょうノシ