シンデレラガールズの仲が良い。人によっては若干の百合描写注意。

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息抜きのおすそ分け。


なおかれ

 ひ〜かるらせ〜んを♪ ポケットに入れていた携帯が鳴る。

 

「んっ……加蓮からだ」

 

 スマホのロックを解除してメッセージを見れば、写真付きで早く来て! と急かす加蓮が。大きなテーブルに置かれたポテトはこんもりと山のように積まれていた。

 

「あいつ……また食べ切れない量を頼んだのかよ……」

 

 いつものトコね〜。こちらが了承の返事を送るよりも先にメッセージが届く。わざわざ言われなくても、写真に映るポテトの皿やテーブル、店内の様子で加蓮が何処に居るのかはすぐに分かった。何回目だと思ってるんだ。

 

「す、ぐ、に、行く、と」

 

 人通りの激しい往来の端に寄り、メッセージを送信するとすぐにポッケへ携帯をしまい走り出した。あ〜もう! 呼ぶならメニューが来る前に声をかけろよな!

 

 

 

「あ、奈緒! こっちー!」

 

 ファミレスに入り加蓮を探して店内を見回すと、お店の真ん中の辺り、テーブルと椅子ごとに設けられた仕切りの上に細い腕が踊る。そこまで駆け寄ると、送られてきた写真のまま減っていないポテトは、何故か2皿に、2人分のドリンクバーまで追加されていた。

 

「な、何だよこれ!?」

 

 あたしが驚いた声を上げると、加蓮は気にしないで、ほら! と暗緑色のドロドロとした液体の入ったコップを差し出す。

 

「ほら、飲んでみて?」

 

 ワクワク、そうわざとらしく口に出す加蓮の様子に、こうなってしまったら飲まなければ話が進まないことをわかっていたあたしは、渋々コップに口をつけた。

 

「ブッー!」

「あっははは! 吹いた! あは、あはは!」

「な、何だコレ!?」

 

 混ぜてみたんだ、全部! 無邪気に笑いながらドリンクバーのマシンを指差す加蓮は、無駄になっちゃうから少なめに注いだんだよ? 偉い? と何故か自慢げだ。

 

「あのなぁ、そりゃこないだ色々混ぜた時に無駄になるからやめろとは言ったけど、少なけりゃ良いってわけじゃないだろ!?」

「えー、褒めてもらえると思ったのに。ちゃんと覚えてて偉い! って」

「誰が褒めるか!」

 

 悪びれる様子もなくぶーたれる加蓮を、本当にしょうもないやつだと改めて認識する。って、あたしが何だよこれって言ったのは二倍になってるポテトのこと何だけどな!

 

「あ、これ? 奈緒も食べたいかと思って」

「あ〜のなぁ……自分が2皿も食べきれないのにそんな事考えなくていいから」

「えぇ〜! 食べれるよ! 今すっごくお腹空いてるんだから!」

「減ってないポテトの前で言っても説得力皆無だぞ」

 

 いまネイルしてるから食べづらい〜、奈緒が食べさせてよ。ほらほらー。爪に綺麗に施されたネイルを見せびらかしながら、こちらを向いて口を開けた加蓮がまた面倒くさい要求を始めた。

 食べさせる? あ〜ん、なんてっ、できるか!

 

「は・や・く〜。あ、ケチャップも付けてね」

 

 あんぐりと口を開けたままこちらを催促し続ける加蓮が、ちょっとまだなの? あご疲れたんだけど? と不満を口にし始める。パクパクと餌を待つひな鳥か、水槽の金魚のように口を動かす加蓮。

 あぁ、わかったから! 大人しくしてろって!

 乱暴にポテトをつまみ、ケチャップをつけてうるさく動く口へ突っ込む。ほらっ、食べろ!

 

「あ〜ん、うん! やっぱりポテトは美味しいね〜。もっと温かかったら最高だったのに」

「あたしは急いで来たんだから、そんな事言われる筋合いは無いからな」

 

 微妙に狙いがずれたせいで、加蓮の口の周りについてしまったケチャップをテーブルに有った紙ナフキンで拭う。唇を差し出して何故か目をつぶる加蓮は、もしケチャップがついてなければそれはもうセクシーなんだろうなと、女のあたしでも思った。今はされるままの赤ちゃん状態だけど。

 

「ん〜、ありがとっ。お返しあげる」

 

 ネイルが付いた指で、器用にポテトをつまみ上げた加蓮があたしの顔の前にポテトをぶら下げる。早く〜とあたしを急かすようにポテトをゆらゆら動かしていた。

 

「いや、ポテト持ってるじゃないか!」

「え? 別に持てないなんて一言も言ってないけど?」

「はぁぁ!?」

 

 憤慨し呆れて口を開けると、待ってましたっとつぶやいた加蓮があたしの口にポテトを突っ込む。そのまま唇を突っつき始めた。

 

「はぁ〜プニプニ。なにこれ」

「やめろォ!」

 

 しつこく触り続ける指を払いのけると、いいじゃん女の子同士なんだしと意味わからない理屈を言い出す加蓮。普通そんな事しないだろ!

 

「あたしと奈緒の仲だから」

「絶対違うからな!」

 

 仲良しだったらみんなやるよ? とか調子のいいことを言う加蓮にはっきりと否定をする。このままだと、またこの前みたいに一方的に丸め込まれるかも知れないし。あたしがそう告げた瞬間に、加蓮はハッとした顔ですぐに俯いてしまう。よく表情が見えないが、どうせいつもの嘘泣きなんじゃないか? もう騙されないからな!

 

「ぐすっ……あたしは……奈緒の事こんなに好きなのに……ぐすっ……奈緒は、あたしのこと好きじゃないんだ?」

 

 騙され……ないからな……。いや、よく見ると肩が震えてるし、頬を涙が伝っているような……。う。何だか凄く胸が痛む様な……。

 

「わ、分かったよ! か、加蓮のことは……す、好きだって!」

「……ホント?」

 

 俯いたままの加蓮が聞き返してくる。嘘じゃないからな、いつもからかって来ることばかりだけど、本当はそれが加蓮なりの心の許し方だっていうのは、分かってるつもりだし……。

 

「じゃあ、口開けて」

「うぐっ……」

 

 わざわざ自分からあ〜んしてもらうなんて、そんな恥ずかしいこと出来るかっ! そう思うけど、それで加蓮が元の調子に戻るなら……まぁ、ちょっとならいいかな……。

 

「わ、分かったよ……」

 

 顔が赤くなり、血が集まるのを感じながら控えめに口を開く。前を見ると、涙目? の加蓮がまたポテトをつまみ上げてあたしの口に運ぼうとしていた。

 

「そ、その、恥ずかしいからなるべく早くしてくれよな」

 

 こんな、周りからすぐ見られちゃうような場所でずっと口開けて待ってられるか。そんな気持ちで中々ポテトを口に入れてくれない加蓮を急かすと、小声で、囁くような声でもう少しだから待ってて……と返される。

 うぅ……早くしてくれ。少しずつ口に近づいてくるポテトを、固唾をのんで見守っていた。

 

「ふふっ……かーわいいっ」

「えっ?……なっ!?」

 

 突然、加蓮は持っていたポテトを目にも留まらぬ素早さで自分の口に放り込み、空いていたもう片方の手であたしの唇をまた突き出したのだ!

 

「うぉぉぉぉ! やめろぉ!」

「ふふ、食べさせてあげるなんて一言も言ってないから」

 

 遮ってもずっと唇をぷにぷにし続ける加蓮は、思いっきり憤慨するあたしを尻目に、スマホを取り出して写真を撮り始めた。

 

「う〜ん、柔らかいね。凛にも教えてあげよーっと」

「は? ちょ、待てって!」

 

 あたしが加蓮の操作するスマホを取り上げよう動いた瞬間に、ポケットに入れていたスマホが突然震えた。まさか……いや、いくらなんでもそんな事……。嫌な予感がしてすぐさまポッケに手を突っ込み取り出すと、ポップアップ通知には北条加蓮さんがグループに写真を送信しました、と表示されていた。

 

「あ、ごめん。トラプリのグループと事務所の連絡用グループ間違えちゃった」

「何してんだよ!?」

 

 ワーオ、すごいねー! 気の抜けたフレデリカさんのメッセージから始まり、続々とメッセージの通知が届く。

 

「消せっ! 早く!」

「えー、勿体無いなー」

 

 大惨事が起きているというのに、何故かのんきな加蓮に抵抗されながら何とか送信取り消しをすることに成功する。卯月が、消しちゃったんですかー? と残念がっているが、とにかく恐ろしい事態がひとまず防げた事にほっと胸をなでおろした。

 

「ちぇーつまんないのー」

「あのなぁ、あたしにとっては全然面白くないからな!」

 

 焦ったせいで小腹が空いたと、加蓮の携帯を奪うために立ち上がっていた状態から腰を下ろし、ポテトを手にとって口に運び始めた瞬間、再度スマホに通知が届いた。

 

 渋谷凛さんがメッセージを送信しました:保存した。

 

「いや何やってんだあいつ!?」

「やっるー。さすが凛だね」

「笑い事じゃないからなコレ!」

 

 加蓮だけに掴まれた弱みのはずが、なぜかこの数日後には事務所全体に広がっていた。あたしの写真を通貨代わりにするなって!


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