学園黙示録〜暁の芸術家になった転生者〜   作:☆桜椛★

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第19話だ…うん!

デイダラside…

 

 

「いやいや、いきなり何言ってんだよ…うん。なんでいきなり手合わせしなきゃならねぇんだ?悪いが手合わせはしないからな…うん」

 

 

オイラはいきなり手合わせをしろと言う高城総帥に呆れ顔で聞き返した。というか絶対この人と手合わせしたくない。刀持たせたら多分オイラより強いだろうしな。術を使えばすぐに勝てるだろうが、オイラの起爆粘土は手合わせには向かねーし。

 

 

「そうか、それは残念だな。剣道や柔道などの武道の試合で無敗記録を残した元県警特殊急襲部隊隊員の暁月 デイダラとは以前から一度手合わせしてみたく思っていたのだがな」

 

「知ってて言ってたのかよ……」

 

「知り合いに警察関係者がいてな。君が警察を辞めたのをとても残念そうにしていたぞ?」

 

 

あぁ、なんか納得した。この人なら警察や自衛隊のお偉いさんが知り合いにいてもおかしくねーな。

 

 

「では私はこれで失礼しよう。お前達も各自自分の作業に戻れ」

 

 

高城総帥は部下達にそう指示を出すと、部下達は一礼して何処かへ走り去って行った。高城総帥と百合子さんも屋敷の中へ歩いて行った。

 

 

「はぁ…あんなパパは初めて見たわ」

 

「沙耶も親父さんの知らない一面があったんだな……って、毒島先輩?どうしたんですか?」

 

 

溜め息を吐く沙耶に孝は意外そうな表情をしていると、冴子が少し残念そうにしていた。オイラもなんで冴子がそんなに残念そうにしているのか理解出来ない。

 

 

「いや、実を言うと私も暁月さんとは一度手合わせ願いたいと思っていたのだ」

 

「お前もかよ……一応言っておくが、オイラは手合わせなんて面倒な事はしねーからな?オイラは武道家じゃなくて芸術家だ。手合わせするより究極の芸術を探求する方がいい…うん!」

 

「まぁ、デイダラならそう言うわよねぇ?」

 

 

麗はまるでオイラの考えが分かっていたみたいな表情で頷いた。オイラってそんなに分かりやすいのか?

オイラが首を傾げていると、辺りが薄暗くなり、空を見上げると灰色の雲が太陽を隠し始めていた。

 

 

「一雨来そうね。取り敢えずみんな中に入りましょう」

 

「そうだな………あん?」

 

 

沙耶達が屋敷の中に向かったのでオイラも付いて行こうとすると、1人の少年が妙に辺りをキョロキョロしながら建物の裏に歩いて行くのを見つけた。

あのガキ確か……バスで別れた紫藤の信者じゃねーか?何してんだあいつ?

 

 

「…?デイちゃん?どうかしたの?」

 

「デイちゃん言うな。ちょいと用事を思い出しただけだ…うん。先に行っといてくれ」

 

 

オイラは紫藤の信者が気になり、足音と気配を消してそいつを追いかけた。ポツリポツリと雨が降り始めるなか、そいつは建物の裏で携帯電話を取り出した。オイラは近くの木の陰に隠れて様子を伺った。

 

 

「えぇ…えぇ、そうです。……えぇ、逃げる準備を整えています。…えぇ、今助けを求めたら、中に入れてくれる筈です!紫藤先生(・・・・)!」

 

(紫藤……て事はあいつ、あの野郎にここに偵察するよう命じられたな?……ちょっとお話ししといてやるか)

 

 

オイラは木の陰から飛び出して一瞬で紫藤の信者の背後に立ち、苦無の切っ先を喉に突き付けた。先程まで気持ちの悪い表情をしていた紫藤の信者は目を見開き、動いた際に少し喉が切れた事で痛みを感じ、顔を蒼ざめた。

 

 

「よお?また会ったな…うん」

 

「ヒィッ!?お、お前は!!なんでここに!?」

 

「おっと、喋るんじゃねーよ。変な動きしたら殺すからな…うん」

 

 

少年はガタガタ震えだしたが、涙を流しながらも声を出すまいと固く口を閉じた。彼の手に握られている携帯からは先程から『どうしました?返事をして下さい』という紫藤の声が聞こえてくる。オイラは携帯を取り上げて、代わりに電話に出た。

 

 

「よお、誰かと思えば、偉大なる紫藤教の教祖様である紫藤センセーじゃねーか。まだ生きてたのか?…うん?」

 

『ッ!?だ、誰かと思えば…我々とバスを高城さん達と捨てた化け物ではありませんか。まだ生きていたのですね…』

 

 

紫藤は震える声で返事をして来た。にしても化け物か、オイラより〈奴ら〉の方が化け物だと思うがな。それよりさっきから電話の向こうから喘ぎ声が聞こえるな。

 

 

「そっちは随分楽しんでるみてーだな。ガキ共の喘ぎ声が聞こえてくるぞ?」

 

『あ、貴方にはもう関係のない事でしょう?』

 

「あぁ、関係ねーな。だが、警告しておく……お前等がこの屋敷に近寄る様なら、バスごとお前等を爆破する。もし生き残っていたとしても消し飛ばしてやるよ…うん。このガキは諦めな。オイラにお前と通話しているのを見つかった時点でアウトなんでな…うん」

 

『フッ、別に構いませんよ。我々は今貴方がいる場所が安全だと分かっただけで十分です。彼にはもう少し頑張って貰いたかったのですが、仕方ありませんねぇ。では…』

 

「……切りやがった。ほら、携帯は返すぞ。見逃してやるからこの屋敷から出てけ…うん」

 

 

紫藤はそのまま電話を切った。オイラは見捨てられて膝から崩れ落ちたガキに携帯を投げ返し、屋敷の中に入る事にした。正直ああは言ったが、ここでガキを殺すのは面倒だからな。それにこいつだってまだ生き残りたいだろうし。

 

 

「…………(の所為だ)

 

「あん?なんだって?」

 

「お前の所為で……僕は…僕は、紫藤先生に見捨てられたんだぁぁぁぁぁ!!!

 

 

ガキはいきなり叫び出したかと思うと、ポケットからカッターナイフを取り出してオイラに襲いかかって来た。嘘だろオイ、あの野郎に見捨てられたぐらいでオイラを本気で殺しにくるか?

オイラはブンブンとカッターナイフを振り回しながら突進してくるガキを躱し、ジャンプして近くの木の枝に飛び乗った。ガキは狂った様にドス黒い殺意のこもった目でオイラを睨み付ける。

 

 

「おいおい!オイラはお前を見逃してやろうとしたのに、いきなりカッターナイフで切り掛かるか普通?…うん」

 

「黙れ!紫藤先生は、この屋敷の偵察を僕に頼んで下さったんだ!もう少しで紫藤先生の頼みを完遂出来たのに…お前が…お前がぁ!!

 

 

ガキはカッターナイフの切っ先をオイラに向けて叫ぶ。オイラは仕方なくポーチに手を突っ込んで起爆粘土を用意する。そして『口』から吐き出された起爆粘土を握ってムカデ型を1つ作り、バレない様に地面に落とした。

 

 

「最終警告だ。今すぐカッターナイフ仕舞ってこの屋敷を去れ。死にたくなかったらな…うん」

 

「殺す!殺してやる!!お前を殺して、紫藤先生の下に戻る!そうすれば、紫藤先生はもっと僕を頼ってくれるんだ!」

 

「んじゃ、さよならだな…うん!」

 

 

オイラはムカデ型起爆粘土を操り、地中を移動させてガキの足元から飛び出させ、ガキを拘束した。ガキはなんとかオイラの起爆粘土の拘束から逃れようと力を込めるが、そんなのは無駄だ。

 

 

「バスでも見せたよな。オイラが作った粘土アートは爆発する。そして、今お前を拘束しているそのムカデもオイラが起爆粘土で作った粘土アートだ。この意味が分かるよな?…うん?」

 

 

オイラが印を結びながらガキにそう言うと、ガキは途端に顔を蒼ざめ、振り回していたカッターナイフを落とした。

 

 

「い、嫌だ!助けてくれ!さっきのはちょっとふざけただけなんだ!」

 

「ハンッ!お前はオイラの警告無視して殺す気でいただろうが。今更そんな事言っても意味なんざねーんだよ…うん」

 

 

オイラの返事を聞いてガキは今度は泣き始めた。……うん、ちょっと原作のデイダラのセリフ言って爆破してみるか。

オイラは印を結んだまま、前世でデイダラが“CO”を使うシーンのセリフを言った。

 

 

「さあ、怯えろ!!驚嘆しろ!絶望しろ!!泣きわめけ!!オイラの芸術はァ……喝ッ!!」

 

「や、止め…!!!」

ドゴォォォン!!!!

 

「爆発だァ!!!」

 

 

起爆粘土は盛大に爆発し、ガキは跡形も残さず消し飛んだ。オイラはその爆発に満足し、先程より強くなっている雨が更に強くなる前にその場から去った。

 

 

 

 

 

 

ガキをオイラの芸術で爆破し、屋敷に戻って飲み物を飲もうと思っていると、沙耶と孝とコータが階段を駆け下りて来たみんな何やら慌てた様子だが、何かあったのか?

 

 

「おいお前等!そんなに慌ててどうしたんだよ?…うん?」

 

「あ!デイダラさん!今裏の方から爆発音が聞こえて来たんですけど、何かあったんですか!?」

 

「あん?あぁ、ちょっと侵入者を排除しただけだ。オイラの芸術でな…うん」

 

「侵入者?まさか〈奴ら〉がいたの!?」

 

オイラの口にした侵入者という言葉に沙耶が反応した。まぁ確かに『侵入者』とだけ言っても今じゃ生きてる奴か死んでる奴かで別れるわな。

 

 

「いや、紫藤の奴が偵察目的で生徒を1人送り込んで来ていたんだよ…うん」

 

「なんですって!?という事は、さっきの爆発は…!!」

 

「おっと!オイラはちゃんと警告したし、最後のチャンスをやったぜ?だがあのガキはそれを自ら捨てて、オイラを殺しに掛かって来たんだぞ…うん」

 

 

オイラは先程の事を詳しく説明した。すると3人は納得してくれたが、沙耶はすぐに苦虫を噛み潰したような表情をした。

 

 

「でも参ったわね。ここが安全だと分かったなら、紫藤は多分高確率でここに来るでしょうね。しかも見捨てられてすぐに貴方を殺そうと考えるまで、みんなを洗脳してるとはね……」

 

「オイラもアレには驚いたぜ…うん。いきなり狂った様にカッターナイフを振り回して来たからな。それにあいつの目、あの野郎に見捨てられたぐらいであんなドス黒い殺意を籠らせるとは思ってなかった…うん」

 

「やっぱり、別れて正解でしたね」

 

 

コータの言葉にオイラ達は激しく同意した。もしあのバスに残ってたらヤバかったろうな。信者共が束になって襲って来そうだ。

 

 

「それより麗と毒島はどうした?あの2人なら真っ先に確認しに来そうなんだが?」

 

「毒島先輩なら、沙耶の親父さんに呼ばれて別室に。麗には念の為、静香先生とありすちゃんを見てもらってます」

 

「あ、そうだわ。暁月、貴方どうせ今暇でしょ?ちょっと付き合ってちょうだい」

 

「あん?デートの誘いか?…うん?」

 

 

オイラがちょっと揶揄うつもりでそう言うと、沙耶が顔を赤くして顔にパンチしてきた為、オイラはそれを躱して謝った。

 

 

「ハハッ♪悪い悪い。ちょっと揶揄っただけだ…うん」

 

「次は無いわよこの爆弾魔アーティスト!!」

 

「へいへい。で?何すりゃいいんだオイラは?」

 

 

オイラが沙耶に質問すると、沙耶はまだ拳を握り締めていたが、溜め息を1つ吐くと内容を説明した。

 

 

「これから苦情を垂れ流す難民達と話をしに行くから、貴方にはもしもの時のためについて来て欲しいのよ」

 

 

………なんか面倒な事になりそうだな。


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