学園黙示録〜暁の芸術家になった転生者〜   作:☆桜椛★

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第2話だ…うん!

小室 孝side…

 

 

それは、僕…《小室(こむろ) (たかし)》が非常階段でボンヤリしている時に起こった。校門の方から門を叩く様な音が響いて来て、そっちな方を見るとスーツ姿の男の人が門に何度も自分の体をぶつけていた。

 

 

「なんだアレ?不審者か?」

 

 

僕はその不審者らしき男の人の方を見ていると、4人の先生達がその不審者の方に近寄って行った。少し気になってそれを眺めていると、不審者の胸倉を掴んでいた体育教師の腕に不審者が噛み付き、肉の一部を噛みちぎった。

僕も一瞬何が起こったか分からなかった。話の内容は遠くてよく聞こえなかったが、突然体育教師が不審者に腕の肉を食い千切られ、吹き出る血を悲鳴を上げながら押さえて地面を転がり回った。

やがて完全に動きを止めた体育教師に心配した女性教師が近づいて行くと、先程まで動かなかった体育教師が体を起こし、その女性教師の首に食らいついた。

僕はその瞬間全速力で廊下を走って行った。アレはヤバいと、早く麗を連れて逃げないと、そう思った。

授業中の教室に駆け込み、先生が何か言っているのをガン無視してまっすぐ幼馴染の《宮本(みやもと) (れい)》の机に向かった。

 

 

「来い麗、逃げるぞ!」

 

「ッ!?はぁ?な、何言ってんのよ?」

 

 

麗の腕を引っ張って立たせると、教室の中がざわめいた。

それもそうだろう。俺は元彼女(・・・)の麗を連れ出そうとしている。今の僕はもう麗の彼氏じゃない。今の彼氏は……。

 

 

「どういう事だ?孝」

 

「校門で人が殺された。ヤバいぜ…」

 

「ッ!?本当なのか?」

 

「嘘を吐いてなんか得があんのか?」

 

 

井豪(いごう) (ひさし)》。僕の同級生にして親友。僕は不良というレッテルを貼られた落ちこぼれだが、こいつは頭脳明晰で空手の有段者、顔だちは整っており人当たりもいい、非の打ちどころのない好人物だ。そして、麗の今の彼氏でもある。

僕が永と話していると、麗は僕が掴んでいる腕を振りほどいた。

 

 

「待ってよ!いつも、何を考えてるんだか《パチン!》ッ!?」

 

「いいから、言う事を聞けよ!!!」

 

 

僕は麗が言い終わる前に叩いた。女子に手を挙げる事は今までなかったが、それでもここから一刻も早く連れ出す為に叩いた。先生を無視して永と麗に廊下を足早に歩きながら校門で起きた事を説明した。

そしたら永がそれなら武器が必要だと言い出して、掃除用具の隣にあったロッカーから野球部の誰かの金属バットを拝借した。麗は永がモップの先端を捻じ切って尖らせた槍を持っている。

 

 

「お前は?武器はいいのか?」

 

「空手の有段者だぜ?これでも。とにかく、学校を出よう」

 

「先ずは警察よ。お父さんも居るし」

 

 

僕は麗に携帯を渡した。校則違反はしておくもんだな…。

すぐに110番に通報しようと電話を耳に当てた麗だったが、目を見開いて固まってしまった。どうやら、110番がいっぱいで繋がらないらしい。それを聞いて僕と永も固まっていると、校内に放送が響き渡った。

 

 

『全校生徒に連絡します!ただ今、校内で暴力事件が発生中です!生徒は、先生の指示に従って、避難して下さい!繰り返します!校内で暴力事件が発生中です!生徒は、先生の指示に従ってッ!!?』

 

 

放送の途中で先生の声が聞こえなくなった。

……まさか!?

 

 

『ヒッ!?助けてくれ!止めてくれ!嫌だ!い、痛い痛い痛い!!助けッ!?い、うわぁあぁぁぁぁぁあ!!!』

ブツッ!

 

 

その悲鳴を最後に、放送は終了した。しばらくの静寂の後、学校中がパニックに陥り、あちこちで悲鳴が上がった。廊下は人で溢れ返っているだろうと、永は管理棟から逃げる事を提案し、僕達はそれに従って廊下を走った。

途中、現国の授業の担当の先生に遭遇した。しかし様子が違う。足は出血してるし、顔色も悪く、眼球は白く濁っていた。

先生が僕達の方に向くと、麗に襲い掛かってきた!最初は躊躇っていた麗だったが、槍術部の力を発揮して心臓を突き刺した。しかし、心臓を突き刺したにも関わらず、先生は動き続けた。麗を助ける為に永が先生を羽交い締めにして引き剥がしたが、有り得ない怪力で永は顔を驚愕に染めた。先生は永の制服をガッチリ掴むと、離れようともがく永の腕に噛み付いた。永は必死に引き剥がそうとし、僕と麗も槍で突いたりバットで殴ったが先生は気にも留めなかった。最後に手が痺れる程強く先生の頭を殴ると、ようやく先生は止まった。永の腕は肉を削がれていた。

動かなくなった先生を見ていると下から女子生徒の悲鳴が上がった。下を覗くと1人の女子生徒が男子生徒に首に噛み付かれ、血を吹き出していた。

下から逃げるのは諦め、永の案で屋上に行って立て篭もり、救助を待つ事にした。なんとか無事に屋上に辿り着いたが、そこから見える町の様子は酷かった。更には近くに駐屯地が無いのに自衛隊のヘリまで飛んで来たが、僕達を無視して飛んで行ってしまった。

 

 

「病気の様なもんなんだ。〈奴ら〉は…」

 

「〈奴ら〉?」

 

「幾ら死人が襲って来ると言っても、映画やゲームじゃないからな。だから〈奴ら〉さ。〈奴ら〉は人を食う…そして食われた奴が死ぬと、〈奴ら〉となって蘇る。理由は分からないが、頭を潰す他に、倒す方法はない」

 

 

成る程な、だから〈奴ら〉か。…クソッ!いったい何がどうなってんだよ!?

僕がそう思っていると、永が天文台の方を見て、階段を上ってバリケードを作ろうと提案した。僕も今はそれが最善だと思った。

僕達はなんとか天文台の階段に辿り着いたが、最後尾の麗が〈奴ら〉に槍を突き刺したが、そいつに槍を掴まれてそのまま壁に叩きつけられた。

ヤバい!麗の奴槍を落としちまいやがった!!

永がすぐに助けに行こうとしたが、それより早く麗に襲い掛かっていた〈奴ら〉を巨大な白い鷹の様な鳥が足で捕らえ、鳥の背中から朱色の雲模様が付いた黒い外套を着た金髪の男の人が飛び降りてきて、鳥はそのまま〈奴ら〉を足で掴んだまま空に舞い上がった。

 

 

「な、なんだ!?」

 

「………え?」

 

「危ねぇから伏せてろ!上のお前等もだ!」

 

 

突然の事で唖然としていた僕達は反射的に指示に従って頭を伏せた。それを確認した男の人は片手を前に出して何かの形を作ると、声高々と唱えた。

 

 

「喝ッ!!」

ドガァァァンッ!!

 

 

すると先程〈奴ら〉を掴んだまま空に舞い上がった白い鳥が盛大に爆発した。

何をやったのかは分からないが、おそらくあの男の人がやったんだろうと自然と思えた。

その人は突然の出来事に動けない麗を抱き上げると、一気に僕達がいる所までジャンプして登って来た。そしてハッ!と我に返った永は麗を優しく下ろしている男の人に話しかけた。

 

 

「どなたか存じませんが、手を貸してください。そこの扉の中に椅子とテーブルがあるので、それで階段の入り口を塞ぎます」

 

「あ?まぁ、いいけどよ…うん」

 

 

僕達は麗をあの爆発で助けてくれた?人と協力して階段の入り口をバリケードで塞いだ。

 

 

 

 

 

 

デイダラside…

 

 

(はぁ、つい助けちまったが……普通にこいつ等の前で能力使っちまったなぁ。まぁこの非常時だから仕方ないか…うん。しかし、急いでたとは言え何も言わずに女子を抱き上げるのは不味かったな。しかも世に言うお姫様抱っこ…だったか?それしちまったしなぁ)

 

 

オイラは今、バリケードを越えようと力の無い体当たりを続ける〈奴ら〉(イケメン君がこいつ等をそう呼んでたからオイラも使うことにした)を天文台の屋根の上見ながら頭を掻いていた。

さっきの爆発で大半は爆発地点の真下に集まっているが、バリケードを作るのにガタガタ音を立て過ぎたから6体程階段を登ってバリケードに体当たりしてやがる。もう1発離れた場所で爆破する手もあるが、今はできるだけ起爆粘土は温存して置きたいからな。無くならないとは言え、使い切って時間が経たないといっぱいにならないからな。

 

 

「あ、あの……」

 

「あん?なんか用か?…うん?」

 

 

さっき助けた少女が下から話し掛けてきた為、オイラは屋根から飛び降り3人の前に着地した。

 

 

「あ、さっきは助けていただき、ありがとうございました」

 

「あぁ、気にするな。オイラも黙ってお前を抱き上げちまったからな。急いでたとは言え、済まなかったな…うん」

 

「い、いえいえ…」

 

 

さっき助けた少女がペコリと頭を下げながら礼を言ってきた。こっちも抱き上げた事を謝罪したら思い出したのか少し顔を赤くしていたが許してくれた。

 

 

「あの、貴方は自衛隊か何処かの部隊の人でしょうか?」

 

 

少女と話をしていたら少し顔を歪めているイケメン君にそんな事を聞かれた。もしかしてこの2人は付き合っているのか?こりゃ悪い事したな。

 

 

「去年まで警察の特殊急襲部隊の隊員だったぞ…うん。だが今日ここに来たのは別の理由だ。ここで校医をしている静香を迎えに来たんだ…うん」

 

「静香先生の?でも、学校中こんな状況じゃ…」

 

「……はぁ。じゃあ聞くが、その学校にいるオイラ達はどうなんだ?もう死んで〈奴ら〉のお仲間か?…うん?」

 

 

険しい顔をしながら言う黒髪の少年にオイラは少し睨みを利かせて聞き返すと、少年は一歩後退ってから「すみません」と謝った。黒髪少年はイケメン君と少女にジト目で見られている。

まぁ確かにここに来る途中そんな事も考えたが、あいつがそう簡単に死ぬとは思えねぇし、もし死んで〈奴ら〉になってたら……責めてオイラの芸術であいつの人生の幕を引いてやる。

 

 

「…ッ!ガフッ!ゲホッ!ガハッ!」

 

「永!?どうしたの!?孝、永が!!……ッ!…なんで?どうして?ちょっと噛まれただけなのに…どうしてこんなに酷く……」

 

 

さっきまで黒髪の少年…孝だったな。そいつをジト目で見ていたイケメン君もとい永が急に口元を押さえ、血を吐いた。

おいおい、まさかこいつ……?

 

 

「お前、まさか…噛まれたのか?〈奴ら〉に……」

 

「ゴホッ!ゴホッ!…えぇ、ここに来る途中に。映画通りだって事ですよ…ハァ、ハァ、噛まれただけでアウトなんだ」

 

「そんなの嘘!そんな映画みたいな事…絶対に「周りは映画通りだ」ッ!!」

 

「ハァ…ハァ…孝、済まないが、手を貸してくれ」

 

 

腕を抑えながら苦しそうにしている永が孝にそんな事を言い出した。ついさっき初めて会ったオイラだが、永が何を考えているのかはすぐに分かった。

 

 

「…お前、死ぬ気か?…うん?」

 

「「ッ!!?」」

 

「ハハッ…分かっちゃいますか?…僕は、人間のまま死にたい。〈奴ら〉なんかになりたくない!!」

 

 

永はオイラの目をしっかり見ながらそう訴えた。その眼は少し白く濁り始めていたが、確かな覚悟を持っていた。

オイラは少しの間その眼を見つめ、目を閉じて腰のポーチに手を突っ込んで起爆粘土を用意した。孝と少女は永の方を向いている内に手の『口』から吐き出された起爆粘土をグッと握り、起爆粘土を10体の蝶々の形にした。オイラはそれを永に見えるようにしゃがみながら言った。

 

 

「コレはさっき〈奴ら〉を吹き飛ばしたオイラの作品と同じ物で出来ている…この意味が分かるな?」

 

「ッ!ダメッ!止めて!永は〈奴ら〉になんかならない!」

 

「……分かりました。やってください」

 

 

オイラは立ち塞がる少女を無視し、永の返事を聞いて頷いた。少女をどかして孝に預け、離れるように命じてオイラも永から離れた。孝が暴れる少女をなんとか引き止めている内に起爆粘土を操作して永の周りを漂わせて印を結んだ。

 

 

「何か、言い残す事はあるか?…うん?」

 

「じぁあ、最後に1つだけ…頼みがあります。……2人を…孝と麗を…頼みます」

 

「あぁ……分かった」

 

 

オイラの返事を聞いて永はフッと微笑んでゆっくり目を閉じた。

 

「お願い止めて!!いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「あばよ……喝ッ!!」

ドドドドゴォンッ!!

 

 

蝶々型の起爆粘土は連鎖爆発して永の体を吹き飛ばした。少女…麗はそれを見て永の体があった場所に座り込んで泣き始め、孝はそんな麗を慰めていた。オイラはその2人をただ黙って見ていた。


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