ガンバライダーロード Ep.戦姫絶唱シンフォギア   作:覇王ライダー

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第2話

立花たちの前に現れたのはガンバライダーと名乗る赤い戦士だった。

「えーと・・・。」

「ロードでいいよ。」

ロードはそう立花に言うと自分の持つ端末を手に取った。

立花はフラつく小日向を支えながら立ち上がった。彼女の体力も限界にきていることを考えると相当の距離を走ったことが伺える。

小日向はロードの元へと向かうと、一礼した。

「助けてもらってありがとうございます!」

ロードは気にしない。と手を横に振った。

「気にしないから大丈夫だよ。もっとも、僕のもう一人の人格なら偉ぶってたかもだけど。」

「もう一人の人格?」

小日向がそう返すとロードは何でもない。そう苦し紛れ彼女に笑みを返した。

小日向に続いて立花も一礼してロードへと歩み寄った。

「翼さんたちは?」

「僕の仲間が助けに向かってる。もうすぐ戦闘も終わるんじゃないかな?」

そう聞いた立花に言葉を返したロードがモニターを開くと、彼に似た赤い複眼の戦士が映っていた。

「チヒロ、もう終わるかい?」

「終わるわけあるか!!」

チヒロに間髪入れず言われると、ロードは一歩後ろに引いた。

「うるさいからうるさいから」

「うるさくもなるだろ!今着いたばっかだぞ!」

そのモニターを眺める立花と小日向はどうしたものかと首をかしげる。

たしかに形状は微妙に違うものの、全く同じ声の人間同士が喧嘩しているのだ。

その似せ具合は兄弟同士などではなく自分一人で会話しているようだった。

チヒロが戦っていたのは仮面ライダーザビー。ZECTの作り出したクロックアップシステムを持つ仮面ライダーだった。

ロードに文句を言いながらチヒロはザビーの攻撃を片手でいなしていく。その姿は余裕そのものだった。

ザビーのパンチを後ろ回し蹴りで弾き飛ばすとそのまま回り終わった後に首を回した。

「お前は・・・!?」

雪音がそう問うとチヒロは彼女に手を伸ばした。

「俺たちはコイツらを潰すためにきた。つまり今は味方って話だ。」

雪音はその手を取って立ち上がった。赤い戦士は少し強めに雪音の手を引っ張って持ち上げた。

「あいつらも仲間か?」

「あぁ、あの青いのも白いのも仲間だ。」

雪音へとそう雑に説明すると、マリアに加勢するしてシャドームーンとは青い戦士が戦っていた。

 

マリアとの戦いに参戦した青い戦士はシャドームーンへと余裕の態度で来いよ。と手招きを加えた。

「あなたは?」

「僕の名前はノヴェム。彼らと同じ味方さ。」

ノヴェムと名乗る戦士はシャドームーンの攻撃を鮮やかに躱していく。

シャドームーンに一つも指すら触れていないものの、彼との実力の差を圧倒的に見せつけた。

「貴様、ガンバライダーか。」

シャドームーンの疑問にノヴェムは答える。

「ご名答。僕らを知ってるってことはここから派生したわけではなさそうだね。」

シャドームーンは剣を振るうが、青いガンバライダーはそれを全く寄せ付けない。

その間に入れないマリアは呆然と彼らの戦いを見ることしかできなかった。

シャドームーンの剣を片手で防ぐとマリアの方へ顔を向けた。

「今のうちに!」

「えっ!?」

慌てるマリアへノヴェムは優しく問いかける。

「君が今成すべきことはなんだい?守りたいものは?」

その瞬間に抑えられていたシャドームーンはマリアのいる方向へと突き飛ばされた。

マリアはハッとなってその銀腕でシャドームーンの溝内に拳を入れるとそのままシャドームーンは吹き飛び、ビルに叩きつけられた。

そのビルにはシャドームーンの埋まった跡が残された。

「ガハッ・・・!!」

叩きつけられたシャドームーンはゆっくりと去ろうとする。しかし、ノヴェムは何発か銃撃を加えた。

「マズイ・・・。」

ノヴェムはもう何発か射撃を加えるがシャドームーンは歩き続け、灰色の壁の中へと姿を消した。

「逃げられたか・・・致し方なしだね。」

ノヴェムはマリアへと手を差し伸ばした。彼からハイタッチを求められているようだった。

「ナイスプレー。」

「・・・えぇ。」

マリアはそのハイタッチに答えてハイタッチすると、フフッ。と青い戦士は笑みをこぼした。

「ったく、ノヴェムの奴かっこつけやがって。」

チヒロは雪音をかばいながらザビーへと攻撃を加えていく。彼と黄色い複眼の戦士の差は歴然としていた。

「くっ・・・。」

「これで終わりか?ZECTの仮面ライダーも大したことねえな。」

「っ!!」

ザビーが怒りを表して攻撃しようとしたその瞬間だった。

「この私が相手にいることを忘れるな!」

そう言いザビーを烈火の一撃が襲う。その一撃は風鳴の風林火山であり、剣を回転させ纏った炎を使って切り裂く技である。

背中から斬撃を受けたザビーはそのまま吹き飛んで倒れ込んだ。

風鳴の通った後には炎の焼き焦げた跡が地面に付いていた。

「サンキュー。」

「例にも及ばない。」

チヒロと風鳴はそう言って肩を並べる。雪音は立ち上がって、その間に入った。

「だったらあんたらの弾幕は任せな。」

「あぁ、任せたぞ雪音!」

そう言って風鳴と雪音とチヒロはそれぞれ分かれて戦闘へと向かった。

 

一方で暁と月読のところに向かっていたのは白いガンバライダーだった。

「あなたは・・・?」

月読の言葉に白いガンバライダーは声の方向に振り向いた。

「私はガンバライダー"ディバイド"。あなたたちの援軍に来ました。」

その声と仕草から二人でも相手が年上の女性だということがすぐわかった。

ディバイドは周囲にいた怪人たちに拳を振るっていく。

「じゃあ、とっておきいきますね!」

ディバイドはベルトから一枚のカードを取り出すと、それをもう一度装填した。

「どうなってるデスか!?」

そう言ってディバイドが光を纏うとその光からディバイドは分裂し、二人になっていた。

「二人に」

「なったのデース・・・。」

二人になったディバイドは背中合わせになりそのまま足に雷を纏ったまま走っていく。月読と暁はそれを呆然と見つめる。

「ライジングマイティキック!!」

敵は吹き飛び、そこから二人の見る範囲では周囲の敵は爆散していた。

「今のは?」

暁の言葉にディバイドは近寄って頭を撫でた。

「あれはライジングマイティキック。半径3kmは吹き飛ばす技です。」

「は・・・はんけ・・・。」

驚く二人にディバイドは笑ってみせた。

「大丈夫ですよ。皆さんに危害は加えませんし。」

そう言ってディバイドも通信を開く。そこにはノヴェム、ロード、チヒロの姿があった。

「終わったか?」

「あぁ、こっちはなんとか。」

ディバイドの周囲の煙を見て全員が彼女の使った技が大方察せる。恐らく3kmは地面が削れているだろう。

「・・・これは報告書もんだね。」

ノヴェムがそう肩を落としたようにそう言うとチヒロが肩を叩く。

「俺たちはもう関係ねえんだし良いんじゃねえか?」

そうだったとノヴェムがすくめた肩を立て直した。雪音たちが見る限りでも彼らはどうも訳ありでこちらに来たことが伺えた。

「お前らは一体・・・?」

三人がベルトを外して変身解除すると、そこには二人の男性、そしてモニターには一人の女性が映った。

「・・・アレ?」

響たちの目の前にいたロードと名乗るガンバライダーは彼女たちの前から消失し、その姿を完全に消した。

「ロードさんは?」

チヒロは自分を指差した。響たちはその動きからチヒロ、そしてロードの言いたいことが直ぐに理解できた。

「じゃあさっき言ってたもう一人の人格って」

「そういうことだ。俺とロードは二人で一人。」

そして一瞬にしてさっきまでの冷淡な目は少し朗らかな優しい目に変わった。

「あんまり説明してなくてごめんね。僕らも時間がなかったもんだから。」

いいえ。と二人は軽く断りを入れて話を続けた。

「あなたたちの目的って何ですか?」

「その前にいいかしら?」

マリアが割って入ると、三人に少しずつ歩み寄った。三人もまたマリアの方を向いた。

「あなたたちの戦いぶり、そして助けてくれたことは見事だったし感謝してる。でも、本当にあなたたちを信じていいのかしら?」

「マリア!?」

風鳴が止めようとすると雪音は行こうとする風鳴を止めた。

「あなたたちはショッカーが現れて少ししてからこの場所に来た。あまりにも偶然と言うには弱いんじゃないかしら?」

マリアの言葉に口を出すものはいなかった。静まり返った時、ロードが口を開いた。

「僕らがここに来た意味を聞いた上で判断してくれればいい。それでも信じられないのであればそれまでの話だろう?」

マリアは納得したのか少し頷いてから後ろへ下がった。

下がったことを確認するとノヴェムたちはそれぞれ目を合わせた。

話そう。彼らがここに来た意味、そしてこれから為さねばならぬことを。

 

-ある日のことだった-

GRZ社を脱退した檀 黎斗はもともと父が経営していたゲンム・コーポレーションを継ぐこととなった。

そんな彼が継いでから1ヶ月もしない頃だった。

GRZ社から実質上の脱退を喰らったチヒロたちはゲンム・コーポレーションの社長室にいた。

「何の用だ。」

ノヴェムたちが行儀よく座る中、チヒロはガラスの壁にもたれかかって檀に鋭い目つきを向けた。

「そんな鋭い目つきを向けないでくれ。君たちには協力を要請したいだけなんだ。」

無論、そんなことを一言で言って信じるほど彼らと信頼度があるわけじゃないことは檀も悟っていた。

三人が疑問符を浮かべる中話は続いた。

彼の話はこうだ。

GRZ社に所属していた三人のガンバライダーがある世界に向かった時、そこで消息不明となり消えたという。

勿論他のガンバライダーも何人か捜索に向かったものの帰ってくるものは一人もいなかったらしい。

そこには悪の組織"ショッカー"が絡んでいるらしく、彼らの手に負えないので三人の実力を買って是非戦ってほしい。ということだ。

「やだね。」

チヒロは長々と話を聞いた上でキッパリそう言った。九重は何か言いたげにしたが、彼の意見に返すことは出来なかった。

心配じゃないわけじゃない。仲間が消息不明になっていく様をチヒロはともかく九重は放っておけるような性格ではない。

しかし何故脱退した彼からそんな依頼が来るのか、そして何故彼が今になってチヒロや自分に告げたのか。そこだけがどうしても引っかかったのだ。

「でもチヒロさん!」

止めようとしている広瀬の声も聞こえていない。チヒロがその場を去ろうとしたその時だった。

「君がドライバーを託した財団Xがショッカーの裏で働いているかもしれない。と言ってもか?」

チヒロの足は止まった。

-財団X-

裏組織では有名な財団であり、怪人は勿論、超常犯罪などに多く携わっている所謂"悪の組織"である。

チヒロたちはかつて彼らにガンバドライバーの情報を渡し、その影響でポケットモンスターの世界にいたクリスタル、ルビー、サファイアやその他の人たちに多くの被害を与えた。

ロードは人格内でチヒロへと問いかけた。

「チヒロ、これは彼の罠だ。君を向かわせるための」

「それでも、またサファイアたちみたいな人間が、被害者が出ることが避けられないなら戦う意味はあるだろ。」

ロードはため息をついた。彼が一つ決めたことが生まれると、そうそうに退かないことを彼も知っていたからだ。

ロードが静かに奥底に隠れると、チヒロは檀へと近づいた。

「上等だ。ショッカーも財団Xも俺がぶった斬る。」

九重はホッとした。これで一つでも世界が救われるのならどうであれ良いんじゃないかと。

 

一通りの経緯を話し終わると、チヒロは瓦礫を軽く蹴ってマリアたちの方を向いた。彼の冷淡な目は鋭く、意図していなくても睨みつけているようにも見える。

「俺の目的はあくまで財団Xだ。そこに行き着くために戦う。」

天邪鬼が。九重はそう思いながらチヒロへと近づいた。

「それに向かうにしてもショッカーは倒さなきゃいけないって話さ。」

「それは分かったんですけど」

小日向がチヒロへと声をかけた。チヒロはその冷淡な目のまま小日向の方を向いた。

「なんでここの世界って分かったんですか?これまで反応もなかったみたいですし。」

チヒロはパネルを開き、三人のガンバライダーの映像を流した。そこには三人のガンバライダーと何体かの怪人が戦っていた。

「ガンバライダー名"ゲニウス"、"アニマ"、"メイス"。この三人に付けられていた発信機がこの世界で途切れていることが確認されてる。」

「世界が妥当なんじゃないか?という話になったんです。」

なるほど。と装者たちは納得する。

「これだけ意味があるんだもの。信用しないのは酷ね。」

マリアがそういうと、後ろにいた暁と月読も頷く。

風鳴と雪音も思わず笑みをこぼすと立花がチヒロへと声をかける。

「あと疑問なんですけど、何で服がボロボロなんですか!?」

このバカ!全員がツッコミを入れようとするとノヴェムとチヒロは軽く笑みをこぼした。

「ほら、いつの日か言われるって言ったじゃん。」

「しゃーねーだろ服なんて興味ねえんだから!」

二人が笑みをこぼしている様を見て風鳴とマリアは思った。

"なんだ、普通に笑えるんじゃないか"


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