穂乃果ハッピーバースデー。

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高坂穂乃果生誕祭2018Ⅵ

真姫は苦悩していた。

「歌詞って、どうすればいいのよ……」

いい感じのメロディが浮かんだので作曲してみたのだが、歌詞が決まらない。歌詞担当にお願いしてみたが、

「せっかくの機会ですし、真姫本人が作詞してみてはどうでしょう?」

と言われてしまった。

「曲は色々作ってきたけど、作詞って思えばした事なかったわ……」

メモ程度に書き起こした楽譜を見ながら、主旋律を少しだけ弾いてみる。ポップで明るく、聴くだけで元気の出てくるようなメロディ。底抜けの明るさでみんなを引っ張っていくリーダーには、ぴったりの曲だと真姫は自信を持って言えた。

「……あーもう! どんな歌詞にすればいいのよ!」

それ故に、歌詞が決まらない。

別に歌詞が無くても、穂乃果は喜んでくれると思う。思うのだが、

「……絶対、歌いたがるのよね……」

曲をプレゼントした時、間違いなく訊いてくるだろう。「歌詞は無いの?」と。当然無いものは「無い」と答えるしかないのだが、その後してくるであろう懇願の視線に、真姫は耐えられる気がしなかった。

つまりは結局の所、今作詞するか後で作詞するかの違いでしかないのだ。そして真姫は、『作詞ができなかった』と思われるのが嫌だった。

ペンを片手にノートを開いた真姫は、やはり固まる。歌詞が出てこないのだ。

「どうすればいいのよ……」

天井を仰いだ真姫は、ふと海未の言葉を思い出した。

『作詞に行き詰まった時は、文字ではなくイメージを考えるようにします。言葉を繋げていく事でも、歌詞になるんです』

「イメージか……。穂乃果のイメージといえば……おバカよね。あと猪突猛進。考えなし。ノーブレーキ」

本人には言えないな、と真姫は口元を綻ばせる。

「走ってるイメージもあるわね。風も追い抜きそうな勢いで」

『走る』、『風追い抜く』。真姫はノートにメモしておく。

「あとは……目は真剣なのよね。誘ってくれたあの時からずっと。私には眩しいくらい輝いてて」

『真剣』、『目の輝き』、『まぶしい』。

「一番になろうって、いつも背中押してくれるわよね。いつも笑って、自分じゃなくて誰かのために」

『一番になる』、『笑顔』、『背中を押す』。

「きっと、雨が降っても喜びそうよね。それさえも味方にしそうな感じするわ」

『雨の粒』、『光って』。

「……穂乃果の応援って、不思議とエネルギーこもってるのよね。やっぱり、熱すぎる心のせいかしらね?」

『熱い応援』、『負けない』。

 

 

楽しそうにノートにメモを綴っていた真姫は、ふと一ページが埋まるほど書き出した事に気付いた。

「私、いつの間に……」

しかも書いてある内容は、穂乃果をベタ褒めするような事ばかり。

「……ナシナシ! こんなんじゃ穂乃果調子に乗るし、歌詞進まないし!」

謎の言い訳をしながら消しゴムを手に取った真姫。消す直前に、メモが目に飛び込んでくる。

「……これ、穂乃果に対する、私の印象なのよね」

『アイドルやりませんか?』

脳裏に浮かぶ、屈託ない笑顔。

「…………。はぁ……」

真姫は苦笑して、大きく息を吐いた。

「……分かったわよ。誕生日プレゼントくらい、ちょっとだけ素直になるわよ」

誰への言葉なのか、真姫はメモを組み合わせていく。メロディを口ずさみながら、当てはまるフレーズを歌詞として乗せていく。自分でも驚くくらい、スムーズに。

「──そうだ。ここまで作ったなら、タイトルも必要よね……」

歌詞とはまた違う難しさ。このメロディや歌詞を言い表すような、ぴったりな曲名。

「穂乃果はずっと、夢を追いかけてる……。夢が穂乃果の原動力……。夢がない穂乃果は、穂乃果らしくない……。──あ、」

真姫の中で、何かがカチリとはまった。

「ふふ、ふふふっ」

真姫は思わす、声を漏らした。

穂乃果には、少し勿体ない曲名かもしれない。だがぴったりだと思った。

 

 

 

 

「──『夢なき夢は夢じゃない』」


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