Fate/Zero Over   作:形右

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 回想編が明け、漸く本編へ戻ってきたこの一話。

 団結の後、悪者退治へ移行といった感じですね。



第二十六話 ~もう一度始まりへ、巻き起こる乱戦の予兆~

 終わり、そして始まり

 

 

 

 美しく、尊い物語を見た。

 尊くも、酷く歪な物語を見た。

 酷く歪でも、とても優しい物語を見た。

 

 最初に、そこは地獄だった。

 

 誰もが願いを謳い、自分の中にあった夢を果たそうと必死だった。

 懸けた願いと賭した思いは、酷く汚れていて重いものだった。

 故に決して叶うことはなかったのだ。

 どこかで間違えていた。賭けるべき思いではなく、取るべきものを穿き違えていたのである。

 しかし、それを知ることが出来たのであれば――――

 

 

 

 ――――きっと、本当の意味で間違うことはないだろう。

 

 

 

 全く、柄にもない。恵まれ過ぎだろう、こんなのは。

 だけど、嬉しい。ひどく恩知らずなことだが、とにかく、嬉しい気持ちに嘘はないのだから。

「……ありがとう。ありがとう士郎。こんな僕を、救ってくれて。――あぁ、僕は本当に恵まれてる。

 息子たちが、こうして来てくれるなんて……本当に、分不相応なほどに」

「そんなこと、言うなよ。俺たちは、」

「……同意するのは癪だが、オレからも言わせてもらう。

 少なくとも、単なる同情で助けたわけじゃない。ここに至ったのは本当に偶然で、この小僧がそこへ行ったのも何かの手違いだ。だからこそ、これはアンタの掴んだ個うんであってだな――」

「おい、誰が小僧だって?」

「見た目通りだろう? まったく、中身が成長したかと思えばこれだ。自分自身にすら迷惑をかけるとは、ほとほと依代に同情する」

「この野郎。目的すら忘れて、自分殺しに来た奴が何をぬかしてやがる」

「――――」

「――――」

 微笑ましい小競り合いだが、互いの存在がアレなだけに、これ以上は拙い。

「あー、……その。士郎?」

 ひとまず声を掛けて制止させようとした。

 すると、

「「あ」」

 瓜二つな反応を見せてくれた。

 それがなんとも微笑ましくて、つい吹き出してしまった。

「……く、はははっ。ふふふ、あぁ――――本当に、僕は幸せ者だなぁ。こんなに思ってもらえてるなんて」

「「む……」」

 バツが悪そうな二人だったが、アーチャーの方のシロウがここでの最後の教訓を締める。

「……はぁ。まぁ、つまるところはそういうことだ。この小僧はともかく、私は外には行けん。あとは、アンタの選択次第だ」

 その通りであるし、これからすべきこともある。

 だが、ほんの少しだけ心残りがあるとすれば、それは。

「……そうか、残念だな。もう少し一緒に居たかったんだが」

「…………オレとしても、別にやぶさかではない。が、そこの小僧といつまでも顔を突き合わせてるのは少々癪でね……『ンんだとこの野郎』……喧しいぞ、この未熟者。

 まぁそもそも、元が部外者だ。早々に立ち去ることに異論はないが――まぁ、あの性悪ステッキの気まぐれでもあれば、また会えるだろうさ」

「そうか。……そうだな。うん、また会えるのを祈っているよ」

「光栄だ。――それじゃあな、爺さん」

「ああ、シロウ」

 思うところがないでもなかったが、それでも彼の去り際はあの黄金の丘ほどではなかったが、酷く穏やかで――とても、幸福そうな顔をしていた。

 けれど、そレが少し士郎には不満だったようだ。

「……ったくあの野郎。最後までカッコ付けやがって」

「ははっ。シロウは、士郎が走り抜けた道が眩しくて照れ臭いんだよ。きっと」

「……」

 口をとがらせる様は愛らしく、引き取ったばかりの頃を思い起こさせる。

 尤も、僕自身の記憶ではないが……あのステッキが作り出したこの空間では、どうやら並行世界に干渉が可能らしく、僕の中には確かに、これまで見た路の全てと、そこから派生する士郎の物語がしっかりと残っている。

 だから、こんな気持ちを抱くことも出来た。

 捨て去っていた。いや、捨て去ろうとして締め付けすぎたタガを取り払われて、歩める道を選べるのだという感覚。

 取り戻したそれが今、こんなにも自分の中を満たしている。

 ……本当に、これ以上ない幸運だろう。

 だからこそ、僕は此処から間違わずに歩み出さなくてはならない。

 そのためには、まず目を覚ますことからだろう。

 言わんとしたことが解ったようで、士郎は「そのうち終わる」と言って、広がっていたはずの剣の荒野が崩壊していく様を指さした。

 ……あぁ、夢の終わりだ。

 そんなことを思い、自身の周囲が崩壊していく様を目前にして目を閉じる。

 本当なら最後まで見ていても関係ないのだろうが、何となく、目覚めるのであればこうだろうかと思い、目を閉じた。

 自分の周りが崩れていく感覚がある中で、まるで出口を見失わないように、士郎の手の感触だけが閉じた視界の中ではっきりとわかる。

 これなら、見失うこともないだろう。

 崩れていく感覚から打って変わり、妙な浮遊感の中に放り出される。

 だが、そこからは先程までとは違い、どこかへ引き寄せられる感覚の中であった。

 漠然と、身体に精神が引き寄せられる疑似感覚なんだろうか、と思いつつ、瞼の裏をまた、どこかの世界が流れていく――――

 何か、大きな黒い渦を見た自分と幼い士郎。

 妙にデフォルメされたサーヴァントたちを使う士郎を、アイリと一緒に見守っている自分。

 そして、かなり恥ずかしい……いや、可愛らしい恰好をしたイリヤと、何故かちょっとぐれてしまったかのようなイリヤが、友人と思わしき少女と暮らしている世界。勿論、そこにはアイリも士郎もいて、自分もいる。

 そんな可能性もあるんだな、と感慨を抱きつつ、士郎の手と離れたところで、自分に立ち戻るのだなと理解する。

 さて、戦いに戻らなくてはならない。

 ……ただ。そういえば僕は城の中で倒れているわけだが、今どうなっているのだろう。

 僅かばかり不安に駆られながら、僕はそのまま、瞼の裏を刺す光の中に飛び込んでいった。

 

 

 

 *** 目覚めると混沌(カオス)

 

 

 

「――――ハッ」

 目が覚めた。

 身体を起こし周囲を見渡すと、そこは周りは先ほどまでいた城の廊下ではなかった。

 見知らぬ場所――とまでは行かず、そこは城にあるサロンの一つ。

 ただ、見慣れた場所であるにも関わらず、そこは酷く魔窟と化していて――――

 

 

 

「うぅぅ……さくらちゃぁぁぁぁん……さくらちゃぁぁぁぁん……!!」

「大丈夫だよ、おじさん。わたしちゃんとここにいるから」

「そうそう。わたしたち姉妹は最強なんだからっ!」

 

 〝〟

 

「……綺礼」

「……はい。何ですか、師よ」

「いや、どうということはないのだが…………あまり、楽しみを深みまで行かないようにね」

「ええ。弁えていますとも(真顔)」

「綺礼! アンタお父様に手ェ出したらマジカルタイムなんだからね!!」

「神父さん。おじさんにも手を出さないでね。受けっぽいから、多分負けちゃうから」

「桜ちゃん!?」

 

 〝……〟

 

「……我を踏破したのは生意気だな。しかし、この料理に免じて許してやらんでもない。――むっ、士郎。これはいい、気に入ったぞ!」

「あぁ、美味かったなら良かったよ。って、お前何時から俺のこと名前で呼ぶようになったんだ?」

「ふはははっ! 気にするでな無い。興が乗ったまでのことよ、もし期限を損ねたら吹き飛ばすのは変わらん」

「ギル? 士郎はこの後必要なんだから、吹き飛ばしちゃだめよ。それに! コイツはわたしのでもあるんだからね!」

「いや……今の俺は別に遠坂のでは……」

「なにかいったー? ()()くん?」

「……ナンデモナイデス」

「よろしい。それとギル、アイリさんの身体治せる妙薬とかある? この後キャスター倒したら、魂の回収は桜にお願いするけど、一応予防策は張っておかないといけないんだから」

「この我を誰だと思っている? そのような物いくらでもあるわ。だが、そのような人形風情に――『そうよねぇ、持ってるわよねぇ? なら、天下の英雄王だもの。気前よく振る舞ってくれるくらいの器はあるはよね。あ、もしかして一個しかないから、誰にも上げられないとかそういう? まぁ、出せないのは仕方ないかしら』――いくらでもあるわ! たわけめ、一つや二つ財を欠く程度、この我が出せない等ということがあるか!」

「そ、ならよかったわ。安心して任せられるし」

「いくらでも任せるがよい。この英雄王がしくじるなど、万に一つもないのだからな!」

(えっと……しくじりの元凶は黙ってるべきだよな。うん)

 

 〝…………〟

 

「すみませんでした、我が王よ……私は、私は……」

「……良い、良いのだランスロット。私たちは、きっとどこかでズレてしまっていた。しかしこうして、自分たちの歪みに気づけた。ならここで後悔にくれるよりも、前を見るべきだろう。

 少なくとも、私はあの物語からそれを学んだのだから……」

「そうですね……。……ところで、その……王は士郎を狙うのでしょうか?」

「なっ、何を――」

「いえ。リンもサクラも、シロウのことを気に入っていますし……このままでは貴女の出番のないまま終わってしまうかと思いまして、その」

「そもそもアレは私であって私ではない! 大体、実際のところほとんど言葉も交わしていない状況で何をそんなに通じ合えるものか」

「あ、二人共お代わりは?」

 

「「大盛でお願いします」」

 

『通じ合いすぎて逆に気持ちいいくらいですねぇ~。あ、ちなみに英霊とは精神的だけでなく、物質的な縁も必要なんですが、士郎さんの場合〝鞘〟があれば、後は魂の本質の部分で双生児の様に似た英霊ということでアルトリアさんが呼ばれたりしますぅ~』

『無駄に細かい解説、有難うございます姉さん。ですが、それで言ったらエミヤ様の方が呼ばれやすいような気もしますが……』

『あー、確かに。ですがサファイアちゃん? 一つ言っておきましょう。――主人公属性は消得ない! いじょうでーす♪』

『なるほど。摩耗しても本質は変わらない――結局のところ、気に入らない自分の所より他人を優先させるわけですね』

『えぇ、ホント正義の味方ですよねぇ~。……まぁ、その分女の子との縁もふかいわけですけれども(面白いからいいですが)』

「ちょっと、ルビー。呑気なこと言ってないで、他にすることないの?」

『え~、だって切嗣さんはそこでぼーっとしてますし、ケイネスさんはランサーさんと仲深め合って(意味深)ますしぃ? ふっ、私の出番はここまでだ――みたいな感じでいいじゃないですかぁ~』

「なに勝手に脚色してんのよ……。看病してるだけじゃない。なんか、物分かり善くなってるっぽいのはありがたいんだけどね。まぁそれはいいわ」

『あぁ~ん、ここからがいいところですのにぃ。もぉ、凛さんってばいけずぅ~。

 あ、おはようございます切嗣さん。ご機嫌うるわしゅぅ~♪』

 

 〝………………なんだこれは〟

 

 如何せん理解しがたい光景が広がっている。

 魔窟。いや、これはもはや地獄を越えた何か――いわゆるカオスだ。

 切嗣の中を締める感情は主にそんなモノであった。

 唯一の救いがあるのだとすれば、見知った顔が皆無というわけではないという点ぐらいだろうか。

 しかし、妻のアイリや相方の舞弥。そして、あの中で知ることになった息子(仮)の士郎の姿もあるわけなのだが……それでも、やはりなんというか、場が、カオスだ。

 

 ――――が、その雰囲気を一掃するのはやはりというか、凛であった。

 

 

 

「ちゅうもぉーーく!」

 

 思わず一同の目が凛へ集まる。

 見た目幼い少女であるのに、なぜここまで見ずにはいられないのか。

 美しさ故か……いやもちろんそんなことはなく単純に怖いだけだである、主にステッキの所為で。

 と、皆の心境をさておいて。

 凛は早速、今後示すべき指標を告げる。

 

 

 

「ここにいる以上、皆まで言わなくても――この先になすべきことはわかっているはず。

 それなら、あとは行動するのみよ! 願いの杯はすでに泥。不満があるのなら、この理不尽を覆すために汚染を清めることから始めなくちゃだめよ!

 で、あれば――――!」

 

 

 ぐっ、と拳を握り、熱弁を振りながら天へ拳を突き穿つ。

 

 

 

「己の業があるのなら、まずは目の前の壁を壊すことから!

 そして、真の勝利を手にして、先へ駒を進めるのよ!!

 さあ、本番のときは来た――ここに集いしは、歴戦の魔術師、蛮勇を誇った無双の英霊!

 勝利とは、己が障害を屠った者にのみ与えられる栄光の言葉! 拳を振るうは、この戦いを乱すものを倒すために!

 ならば、敗北をよしとするか? ――否! それならあとは戦争!

 わたしたちの戦いはここからだぁあああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

「「「お、おぉーっ!」」」

 

 

 

 

 

 

 戦え! 己が正義()のために!!

 

 

 

『……回想(たたかい)は終わり、遂に始まりへ戻った云々かんぬん〜〜〜そして、すでに是非もなし。

 目指すは残る一気の英霊――否、狂った快楽主義者。

 悪性の一体を打倒し、一同は汚れた杯を壊すために(かなり強引に)手をとった!

 さあ、君の目指す明日はもうすぐだ!

 では次回、Fate/stay Zero over――――

 〝真っ赤に弾けろ、俺が正義だ!

 血濡れの戦いの果てに待つ、奇跡の末路とは? 死線を越えた先に待つ究極の一撃! 

 征服と正義の戦いの結末へ向けて、少女たちの思いが輝きを放つ!!

 願った想いの路を超えて、アンリミテッドバースト! スターダストリジェンダーの煌めきに、ダークネスブロッサムがアイン・オフ・ソウル!!〟』

 

 

 

『……姉さん。半分近くは当たってますが、そのタイトルは如何なものかと』

『何ですと――っ!? この、脳死しそうなほどにヒートした熱量! 世界を超えるか魔法に変わるレベルで良い感じにまとまっているじゃあないですか!』

『…………』

『まさかの沈黙!? うぅ〜、良いですよ良いですよぅ……どーせその通りにさせて見せるんですからぁーっ!』

『はぁ……』

『ため息!? しかし、そんなことでこのルビーちゃんを止められるとは思わないことです!

 さあ、次回も心して刮目せよ――――っっ!!!!』

 

 

 

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