見切り発車で書き始めたシリーズですが、どうか楽しんでいただけたら幸いです。
人類は太古の昔より異形の存在との戦いを続けてきた。
その戦いにおいて、先頭に立って居たのは、
強大な魔法力を持つ「魔女」
ウィッチと呼ばれる10代の少女たちであった。
1939年、黒海より出現した大規模な異形の存在、
「ネウロイ」と呼称される存在との泥沼とも言える戦乱へと発展していく。
桁外れ回復力と戦闘力、人を大地を死に追い遣る瘴気を撒き散らし、
あらゆる金属を取り込み、自身を複製、増殖を繰り返し、黒海より出でて欧州を侵略して行く。
いくつもの国が防衛線を張り、抵抗をしていたが圧倒的な戦闘能力、物量により戦線は後退を繰り返し、
遂には欧州の大部分、アフリカの一部に至るまでが陥落した。
ネウロイに奪われた欧州、アフリカの一部を奪還するために、
現代の魔法の箒「ストライカーユニット」と呼ばれる新たな力を手にし、
強大な魔力を持つウィッチが世界各地より最前線へと招集され、戦場へと飛び立っていった。
-1945年9月12日-
リベリオン合衆国テキサス州ダラス
ノースリベオン社ストライカーユニット開発試験場
まだ夏の面影を残す暑い9月のテキサス州のダラス。
そこにある軍事施設のひとつ、ストライカーユニット開発試験場の格納庫、
その前に、降り注ぐ日の光に照らされ煌めく美しい金髪を持つ、軍服を着た少女がいた。
少女は格納庫の大きなシャッターの横の扉を開けて、中に向けて声をかける。
「
しかし何の反応はない。
扉を
「まったく、約束の時間になっても起きてこないなんて一体どうしたのかしら?
お~い南瀬大尉どこですか?返事してくださ~い」
声を掛けながらさらに奥のほうに進んでいくと、倉庫の端の方で何かが動いた。
その音がしたほうに目を向けて見ると、書類や機材等の山の中から腕が伸び、
何かを掴もうともがいているのが目に入った。
「・・・何をしているの?」
金髪の少女がその腕に話しかける。
するとその腕、
「手を貸してくれ、寝ている間に机の上の雪崩に巻き込まれたようだ。身動きが取れない」
やれやれ、と金髪の少女がその腕を掴んで引っ張り上げどうにか救出することができた。
引っ張り出されたのは、黒く艶のある長髪に、
顔や首、腕や露出した足には大きな傷跡が残る小柄な少女だった。
助けられた少女は落ちた書類や機材を片付け、
軍服についた埃を叩き若干残っていた涙を拭い服装を正し、助けてくれた金髪の少女に話しかける。
「いやはや助かった。危うくこの異国の倉庫の片隅で仕事も道半ばのまま一生を終えるところだったよ。
ありがとう、パトリシア・D・フレミング大尉」
金髪の少女、パトリシアは、そのどこか他人行儀な謝罪にやれやれ、といった感じに首を竦めた。
「泣いていたようにも見えたのだけれど何かあったの」
と少女の目を見ながら訊ねてきた。
黒髪の少女はどう答えたものかと一瞬考え、結局適当に誤魔化す事にした。
「なに、崩れて埋まった時、頭に機材が当たってね、余りの痛さに涙が滲んだだけだよ」
そう答えるとパトリシアは訝しげな顔をしつつそれ以上の詮索はしてこなかった。
「ところで、私を探していたようだが何か用事かな」
黒髪の少女はパトリシアに訊ねた。
それを聞いた彼女は、少しだけ驚いたような、呆れたような顔をして少女の頭を掴むと、
「今日は大西洋方面を航行中の先発した補給、輸送艦合流に向けて移動する日でしょう!
1週間後に開かれる欧州での式典に参加するんだからしっかりしてください」
と怒り、少女のこめかみをぐりぐりと締め上げた。
「痛い、凄く痛い! すまない! 最近機体のほうの案件で忙しかったから忘れてっ 痛い!」
頭を叩かれて漸く少女は解放された。
涙目になりながらこめかみを押さえながら少女は立ち上がる。
「そうか、もうそんな時期か」
どこか面倒くさそうに少女は呟く。
それを聞いて、パトリシアはため息をつく。
この黒髪の少女、
現在はリベリオンの海軍航空機動隊に席を置く、技術開発及び試験飛行を主任務とする軍人である。
元は扶桑皇国の前線派遣隊でとある作戦の隊長を勤めていたらしいがリベリオンに飛ばされたらしい。
らしい、というのはパトリシア自身、この南瀬友姫の事を余り知らないのである。
上からの命令もあり、リベリオンでのバディとして彼女と組むことになった以上、
彼女について扶桑側から提供された資料には一通り目は通したが、
欧州や紅海沿岸部での作戦行動を数年続けた後、突如隊が解散。
その後リベリオンに来る1年程前の記録が怪我による療養以外記載がないのである。
不審にも思ったが、上官らも扶桑からはこれ以上の情報はないと素気無くあしらわれてしまった。
勿論、信用の置けない人物のバディをするのは
上層部への
結果から述べると、ウィッチとしての実力は模擬戦で戦った限り一流であり、
扶桑、リベリオン、カールスラントといった各国の主要ユニットを並以上に扱うことができるという器用さを持ち合わせていた。
模擬戦の際、頭部に魔導針を発生させていることから、ナイトウィッチの可能性がある。
また、その時にシャワーで見たその小さな身体や、整った顔には大きな傷跡が深々と刻まれていること位である。
彼女自身余り自身のことを語らず、もっぱらストライカーユニットの調整や、戦術について話す程度。
正直彼女自身の事となると分からないことがほとんどである。
そんな彼女をパトリシアは気に掛け、なるべく話しかけるようにしている。
そして、今回初めてバティとしてリベリオン合衆国から欧州への遠征に二人で向かうことになった。
南瀬自身はそのことをすっかり忘れていたようだが。
床や机に散乱した資料や機材を片付けながら、南瀬はパトリシアに声を掛けた。
「とりあえず私はこのストライカーユニットの組み上げを終わらせる。1時間ほどで終わる筈だ、先に遠征の準備を始めていてくれ」
そういうと、彼女は、ばらばらになった彼女の専用ストライカーユニットの組み上げ、最終調整に取り掛かった。
パトリシアも、遠征の準備に取り掛かるために倉庫から自身のストライカーユニットのあるハンガーに向かっていった。
欧州で開かれる式典、その遠征で起こることなどこの時の二人は知る由もなかった。