傷有の魔女-スカード・ウィッチ   作:蒼咲紅音

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第3話「海の旅路」

リベリオン合衆国を2時間以上かけて一気に縦断し、駆け抜けていく。

五大湖の畔に位置する都市シカゴ上空に到達すると、

ファラウェイランドのガンダー空軍基地へと進路を取る。

 

ガンダー空軍基地はファラウェイランドの西端に位置し、

リベリオンやファラウェイランドなどの部隊が欧州へ渡る際の拠点のひとつである。

 

ガンダー空軍基地に一度着陸し、補給を済ませ北大西洋を航行している欧州行きの補給船団に合流、

着艦しそのまま護衛も兼ねて乗船し大西洋を横断する予定である。

 

 

二つの白い線を引きながら青空を飛行する二人、会話などは特になく只管に目的地を目指す。

リベリオンとファラウェイランドの国境に差し掛かり、ファラウェイランド側の管制設備に連絡を入れる。

 

「こちらリベリオン海軍所属の南瀬友姫、パトリシア・D・フレミングの二名、

これより貴国ファラウェイランド、ガンダー空軍基地へ航路を取りたい。

ええ、わかりました、貴国への入国許可感謝する。入国許可および基地への着陸許可が出た。まだまだ空の旅は長いし急ごう」

 

通信内容は聞こえているだろうが、確認のため南瀬は後方を飛行するパトリシアに声をかける。

パトリシアも了解と簡単な返事を返し先を急いだ。

 

 ファラウェイランド国境に入り、そこから更に1時間をかけガンダー空軍基地へ到着した。

補給を済ませ現在の合流予定の艦隊及び船団の位置を確認する。

 

 本来は軍港から乗り込み船旅をといった所であったが、多忙な南瀬の予定が立て込んでおり

どうしても出航に間に合わなかった為、海上でのランデブーというかなり無茶な行程になってしまった。

 

 ガンダー空軍基地の隊員が予定航路の描かれた地図を指さしながら情報を書き加えていく。

「現在、欧州への物資を積んだリベリオンの海上船団は護衛含め3隻、大西洋航路をブリタニア連邦経由で欧州を目指している、現在地は~」

 

 描かれた情報を見るに既に航路を半分を消化している。

この基地から数時間海上を飛び合流することになるが概ね予想通りのである。

 

 1時間もない補給を兼ねた休憩をし、補給完了と増槽の取り付けが終わったと報告を受けると二人は

 

「ガンダー空軍基地に協力に感謝します」

 

基地の整備員や訓練中のウィッチたちに挨拶を済ませ空へと飛び立つ。

 

 

 敬礼する隊員たちの前を勢いよく加速し大西洋へ向けて飛び立った。

どうにか日が落ちる前に合流できればと二人は加速していった。

 

 

 幸いにも海上は荒れることもなく順調に飛行すること数時間、航行する船団の無線範囲に入った。

 

「こちらリベリオン海軍所属の南瀬友姫、パトリシア・D・フレミングです。現在海上を飛行中あと少しで合流します」

 

少し荒いが無線が返ってくる、

「こちら大西洋艦隊所属第7補給船団の司令のアレクサンダーだ、話は聞いている合流を楽しみにしている」

 

その後も無線誘導を受けながら無事に船団へと合流した。

 

「長旅ご苦労だったな、司令のアレクサンダー・ヴァンドルフ、階級は少佐だ。貴官らの乗船を歓迎するよ」

 

 補給船のハンガーに装備やストライカーユニットを格納したのち司令室で挨拶交わした。

アレクサンダー司令は流石現場の人間、2メートルはあろう肉体は鍛え上げられ存在感を増していた。

 

 将校からの書類を手渡し今後の行程などを確認し、その後も現在の大西洋艦隊のウィッチのストライカーユニットの開発についてや

訓練の事など様々な話をした。

 

「有意義な歓談だったよ二人とも。さて、あと数日で欧州入りだが暫くはネウロイの心配もない安全な海域だ。式典に備えつつ艦内の業務を頼んだ」

バシバシと二人の肩を叩くと今日は長旅だったから休むように促され司令室から出された。

 

 元々長時間かつ長距離を飛行することが多かった南瀬は兎も角、さすがに半日近く飛んでパトリシアは疲れている様子だった。

 

「お疲れさまだパトリシア、さっさと私たちの船室で休もう」

 

「賛成だわ~というか友姫、あなたは疲れてないの?」

 

パトリシアは提案に賛成しつつ、どこかまだ余裕のある南瀬を信じられないモノを見る目で見ながら通路をふらふら歩く。

危なっかしい足取りのパトリシアの手を引きながら船室へ向かう。

 

「まぁ扶桑所属の時は夜通し飛び続けることもざらにあったからね、体力はあるほうだ」

 

 船内を進み充てがわれた船室へ到着する。

背負っていた荷物を投げ出すように床に落とし、パトリシアはそのままベッドに身を投げた。

綺麗なブロンドがベッドに広がり室内灯に照らされキラキラと光る。

 

 一方の南瀬は大きなカバンをベッドサイドに置き、束ねられた書類を大量にカバンから取り出し

サイドテーブルに積み上げてく。

 

ベッドに横になったままこちらを向いたパトリシアが書類を広げる南瀬に声をかける。

 

「まだ仕事するの?少しは休んだらどう?」

 

邪魔になる長い黒髪を適当に括り、ペンを取り出し書類に取り掛かる南瀬はサラサラとペンを走らせながら答える。

 

「この航海の間に式典の情報交換での内容精査や他国への質問を詰めなくちゃいけないんだ」

 

 次々に紙の束を片付けていく。

文字に図面に数式と様々な内容がびっしりと書き込まれた草案を訂正しながら進める。

 

 特に分厚い束の表紙には「噴流式魔導エンジンの実用化と高高度高速飛行について」と書かれている。

 

 現在、扶桑とリベリオンは現在の魔導エンジン方式のストライカーユニットに変わる、

噴流式魔導エンジンを搭載した従来を超える高速戦闘を可能とする通称「ジェットストライカー」と呼ばれる

新型ストライカーユニットの開発を進めている。

 

 しかし、様々な問題があり開発は難航している。

そのため、先行して開発しているカールスラントから技術の提供や資料の獲得、ないし探りを入れられればと画策している。

 

 これまで多くの反攻作戦で徐々に人類の版図を取り戻しつつあるが未だネウロイによる侵攻や侵略は止まったわけではない。

こちらの技術進歩を超えるペースで進化し、人類に牙を剝いてくるネウロイ。

 

 超大型のモノや高高度高速戦闘を可能としたネウロイの出現に従来のままでは太刀打ちができなくなる時が来る。

 

 ネウロイの巣の破壊に成功した作戦の報告なども届いているが、数人のウィッチが特異的な力をもって成功したものが多く再現性には欠ける。

 一つ間違えば多くを失いかねない綱渡りであることは間違いないだろう。

より迅速に、多くの者が失われないためにもと、各国は日々新兵器、新技術を開発し戦場へと送り出している。

 

 そして、それは南瀬も変わらない。

自身の身を使い多くの技術と戦術をデータ化し、

それをフィードバックしてストライカーユニットの改良、

多国籍のウィッチが参加する連合軍の統合戦闘航空隊という形式によって出てくる整備の問題を解決を目指している。

部品や部材の融通ができるようにするための技術を開発、テストを続けてきた。

 

「ストライカーユニットや武装を共通整備ができるようになればウィッチはより広く、多くの戦地で展開できる」

 

 南瀬はそう言いペンを止めた。机に積まれていた束は一応の終わりを見たようだ。

顔を上げてパトリシアの方を見るといつの間にか寝息を立てて眠っていた。

下敷きになっている掛け布団をかけてやり、南瀬はシャワーへ行き部屋を片付け眠りについた。

 

 

 

 それから数日はパトリシアは館内での掃除や訓練などの業務に参加し、南瀬は書類仕事と船内の会議に参加をしていた。

そして、明日にはブリタニアの港に着くという夜、時計の針が0時を回った頃艦内に警報が響く。

 

「全艦乗員に告げる、現在高度5000mを高速で飛行する物体がブリタニア連邦の北を通り抜け大西洋上空を南下し南に向かっているとのこと

 本艦は当海域より進路を北へ変更し飛翔体の正体を探り、敵勢存在ネウロイであった場合、ウィッチによる戦闘に入る、各員戦闘配置につけ‼」

 

 飛び起きた南瀬とパトリシアは掛けてある軍服を取り足早に着替えなが船内を抜けハンガーへ向かう。

ハンガーでは既に整備班が二人の発艦準備に取り掛かっている。

 

「南瀬友姫大尉、パトリシア・D・フレミング大尉、既にストライカーユニットの準備はできています」

 

 足早に一人の整備兵の青年が駆け寄り声をかけてくれる。

綺麗に磨かれた機体に並べられた装備からこの艦の連度の高さが伺える。

 

「有難う、素晴らしい仕事だ。これならたとえどんなネウロイが出ようとも滅ぼせる」

 

南瀬は整備兵の仕事を讃えながら、並べられた武装を手に取っていく。

白鞘の扶桑刀を鞘から抜き、刀身を確認し二本を腰に差す。

そして持ち込んだ大型機関砲、5式30㎟機関砲の確認をし弾帯を肩に掛け、MG15機関銃にマガジンをセットし準備をする。

 

パトリシアもブローニングM2機関銃の点検、

置かれていたM1911A1 2丁のスライド、マガジンを確認し両脇のホルスターに収める。

 

「全く、欧州までは書類だけが敵だと思ったんだがな」

 

南瀬は面倒くさそうに呟きながらストライカーユニットに向かう。

 

「確かに。欧州の戦線もかなり後退している筈なのにこんな西の海まで飛んでくるなんて一体何だろうね」

 

パトリシアも疑問に思いながらストライカーユニットの発艦装置に上っていく。

 

「司令のアレクサンダーだ、ウィッチの二人には申し訳ないがこれも仕事だ。楽しい航海はここまで

 ここからは海上での夜間作戦行動に入る、現在謎の飛行物体は依然高度5000mを時速800kmでこちらに南下中だ」

 

こちらのストライカーユニットの最高時速を超える高速物体、一体何なのか。

その答えはこの空の上で確かめるしかないようだ。

 

 二人のウィッチはストライカーユニットに足を入れ、武器を手に取り空を見上げた。

初の二人での実戦が始まろうとしてる。

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