謎の飛行物体の一報から1時間程たった。
そろそろ距離も近づいてきたころだろう、そう南瀬が考えていると
「待機ご苦労だった。まもなく出撃の時間だ。だが無理はするな必ず帰投するように。健闘を祈る」
アレクサンダー司令から出撃命令が下る。
ハンガーのハッチが開き短い甲板とその先の照らされた白波が見える。
「南瀬友姫、出ます」
「パトリシア・D・フレミング、出撃します!」
二人の声に反応するようにストライカーユニットのロックが解除され発進促進システムの魔法陣が展開、
始動したエンジンと共に回転数の上がっていきプロペラ音が唸りを上げる。
甲板の両サイドのライトが順次点灯し短い滑走路を照らす。
その上を滑るように二人のウィッチが海と空の区別のつかない黒の中に飛んで行った。
南瀬は魔導針の反応を頼りに飛行物体の飛行高度5000mを目指し先行して飛んでいる。
パトリシアは魔導針こそ出せないものの夜間視と高位の動体視力
₍超音速の物体でも見切れる動体視力₎の複合魔法視力を持つ為、暗闇でも問題なく飛行できる。
「謎の飛行物体、やはり真っすぐこちらに飛んできているな」
南瀬は感知している物体の詳細を把握しようと魔導針の感度を調整していく。
「友姫、大きさとかは分かりそう?」
未だに姿の見えない眼前の飛行物体に警戒しながらパトリシアが聞く。
「まだ微妙だがかなり大きい…150mの10m位ありそうだ」
ビクッとパトリシアが震える。
そんな巨大な物体、ネウロイ以外あり得ないからだ。
「ネウロイで確定だろう、こんな大きい物体が高度を落とさず水平飛行を続けながら飛ぶものが他にある訳がない」
南瀬もパトリシアと同じ結論に至っている。
空を覆っていた薄い雲を抜け5000mの高度に到達する二人、月明かりの下、遂に飛行物体が遠くに確認できた。
「ネウロイのお出ましだ。下、聞こえるか。これより戦闘に入る!」
眼下の海にいる艦に無線を飛ばしネウロイに向かって一気に加速し南瀬とパトリシアが突撃する。
「距離、1000、900、500、来るぞ‼」
南瀬が言葉を発する同時に巨大な鉛筆の後部に2対X字状の翼が生えたネウロイが側面や先端、
翼などあらゆる場所から夥しい数の赤いレーザーを放ってくる。
二人はシールドを最小限に張りレーザーを搔い潜りながら正面から突っ込んでいく。
「左右に展開して側面をすれ違いざまに攻撃しましょう!」
パトリシアの声に頷き即座に二人は左右に展開し高速で側面に回り込み銃撃を叩き込む。
バァァァァァァという音と共にマシンガンの銃口から放たれた弾丸がネウロイの側面をそぎ落としていく。
後方まで一直線に撃ち込むとネウロイ後方ですれ違いながらお互いコアは見えなかったことを確認する。
そのまま攻撃を受けて若干減速したネウロイを追いかけるように上下に再展開し弾丸を叩き込んで行く。
「デカすぎて機関銃じゃ表面を削るばかりで埒が明かないな」
南瀬はそういうとMG15を背部に回し背中に担いでいた3mm機関砲を手に取る。
「その大きなの持ってどうするつもり?」
パトリシアがシールドを張りつつM2機関銃の射撃を続ける。
「こうするのさ!」
弾帯を30mm機関砲に繋ぎ引き金を引く。
ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!と1発1発が重い音を発しながら長い銃口から弾丸が滑り出していく。
巨大ネウロイの正面から高威力の大口径弾を食らわせる。
するとネウロイの叫びなのか甲高い声と共に巨大な体の先端部が大きく抉れ吹き飛んでいく。
このまま直系10mはあろうかという円柱状の胴体を反対側まで貫徹されるかと思ったその時、
ネウロイの胴体中央部が一斉展開し、小さな何かをばら撒き始めた。
「な、なに!?」
側面から攻撃を続けていたパトリシアがその目で小さな塊が一斉に周囲に飛んでいくのをとらえた直後
ネウロイを中心に300mほどの球状に膜のようなものが一瞬で広がり、彼女たちごと自身を閉じ込めた。
即座に南瀬は30mm機関砲を展開された膜に向けて打ち込むが穴が開いた瞬間塞がってしまった。
更にネウロイはその巨大な姿を二つに分けながら、抉られた先端部や膜の展開で残った部分を折りたたみ、再構築するように小型化していく。
「まずい、何かされる前にぶっ飛ばす!」
30mm機関砲を片方のネウロイに叩き込んだ。
小さくなったダーツ上のネウロイの胴体部分をへし折るように削り取る。
その中には赤く輝くコアが見えた。
「パトリシア‼左の分裂体の中央にコアだ!」
南瀬はパトリシアに叫ぶと二人はコアに向けて一斉に火器を浴びせる。
何発モノ弾丸が赤いコアに当たりひび割れていく。
そして砕け散ると同時にネウロイは白く砕け…なかった。
コアが砕け散った瞬間、即座に周囲の破片ごと再生、ふたつに分かれたネウロイは
南瀬とパトリシア双方にレーザーを打ちながら向かった突撃してきた。
「コアを砕いたのになんで!」
パトリシアは即座にシールドを展開して向かってくるレーザーを受け止める。
小さくなったネウロイは物凄い速さで球体の内部を飛び回りながら攻撃を強めてくる。
更に外側のネウロイは攻撃こそないものの徐々に内側に収縮を始めている。
「このままじゃ、逃げ場がなくなってやられちゃうよ、どしよう友姫」
お互いに背を預けながら徐々に中央に押し込まれていく。
南瀬はシールドで飛んでくるレーザーを捌きながら飛び回るネウロイを観察し思考をめぐらす。
(さっき、私たちは確かにコアを砕いたはずだ、なのになぜ奴は死ななかった?もともと別個体だった?
それならば片方は砕け散るはずだ。瞬時に再生するなんてことは聞いたことがない…まさか)
何かを思いついた南瀬はパトリシアに提案をする。
「この状況を打開する方法を1つ思いついた。ただし敵のコアの位置と特性が私の予想通りだった場合のみ有効だが」
若干焦りの滲む顔で南瀬は言う。
「どの道待っていてもやられるだけ、話して」
パトリシアも余裕はない。
分かったと南瀬は話を続ける。
「恐らく、あのネウロイは2機でコアを共有していて片方だけ壊してもコアはもう片方に転移しまた再分裂し再生していると思う。
だから同時にコアを破壊するしかない、そして観察しているとあいつらは左右から挟み込むように追い立て来ている」
話している間も徐々に球体は狭まり小さくなっていく。
「ここからが作戦概要だパトリシア。君は“目がいい”ね?そんな君なら任せられる」
そういうと手に持った30mm機関砲に球を1発だけ込めてパトリシアに手渡し、
南瀬は背負っていたMG15や残りの球をすべて投げ捨て刀を手に取った。
パトリシアも重たい30mm機関砲を受け取るとM2を背中に回した。
そしてホルスターから抜き出したM1911A1を1丁を南瀬に手渡す。
「作戦はこうだ、私が一度上昇しあの2機のネウロイを引き付ける、同時に君は真下に飛んでくれ。
その後私が急降下しながら奴らを連れて君に向かって真正面から飛び込む
君はその目で奴らが私の左右に来る瞬間、引き金を私に向かって引いてくれ。
私は飛んできた弾丸を刀に魔力を込め、振動操作能力を使って切り裂き
同時に左右に弾を斬り飛ばして魔力を乗せた弾丸でコアを打ち抜く」
とんでもないことを平然と言い放つ南瀬。
しかし、パトリシアは彼女の状況を打開する為に毅然と立ち向かう姿に答えた。
「わかった。絶対に外さないでよね」
南瀬は笑った。
「なぁにそれはお互い様だ、それに外したら二人仲良くこの空でお陀仏さ、
ま、ネウロイなんぞに殺される気はないんでな。必ず成功させる」
作戦は決まり二人も覚悟を決めた。
息を整え二人は背中合わせのままカウントダウンを始める。
「「5」」「「4」」「「3」」「「2」」「「1」」 「「GO!」」
南瀬は上に、パトリシアは下に一斉に飛ぶ。
南瀬は受け取ったM1911A1で飛び回るネウロイを撃ち2機を引き付ける。
「こっちだネウロイ!掛かってこい!」
そして球体の天辺まで来ると銃を懐に仕舞い、抜き放った刀を構えた。
2機のネウロイが左右から向かってくるのを確認しパトリシアに向かって降下を開始する。
「しっかりついて来いよ!」
後方から飛んでくるレーザーを交わしながら急降下していく。
下方でパトリシアは真っすぐ銃口を飛んでくる南瀬の刀の先に合わせて行く。
呼吸が浅くなり前身の揺れを減らしていく。
脇を締めネウロイと刀の位置関係だけに集中する。
時が止まりそうなほどゆっくりと過ぎていく、そしてパトリシアは息を止め
引き金に掛けた指に力を込める。
「見えた!」
ダンッ‼という音と同時に球が放たれた。
次の瞬間、青白く刀が光り、火花が散る。
二つに分かれた弾丸は真っすぐに2機のネウロイを貫通した。
そしてパトリシアの真横を南瀬が通過し上空ではネウロイが砕け散る。
二人を閉じ込めていた膜も消え去っていく。
二人は初めての戦闘を乗り切ったのだった。