innocent時空のユーノくん短編集(CP雑多)   作:形右

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 今回のお相手はすずか。
 たくさんのアンケートやご意見のおかげもあり、話自体はするするかけたのですが、少し投稿が遅れてしまいました。
 理由としては、アンケート総数が急に後半伸びたので、はやてちゃんに変わりすずかちゃんの短編を急遽製作したからというのが主だった理由です。

 とはいえ、結構この後につなげる要素を盛り込めたので、結果的には良かったかなとも思ってたり。あとで、前々から色々と展開をネタとして頂いていたので、そういったものを盛り込んで行こうかなとも。

 あと今回もアンケートを設置しておきました。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=192973&uid=140738

 〆切はコメントが来なくなったところを〆にしようと思います。
 ただ、後追いでコメントをするのも大丈夫です。
 頂いた意見は、ありがたく参考にさせて頂きますので、どうぞお気軽にコメントをいただけると嬉しいです。

 長々とすみません。
 では、本編の方をどうぞ――――



淡く月に沁み渡るものは

 甘く痺れる陶酔感? Be_carried_away_to_heart.

 

 

 

 夏も終わりに差し掛かり、だいぶ気温も落ち着いて来た頃。

 街に残る水気を感じさせる残暑の中を歩きながら、ユーノは一人、近場の本屋さんへ向かっていた。

 程なくして店内に入ると、新刊のコーナーで目当ての本を手に取る。

 そこから更に他のコーナーを回りながら、気になった物を見て行ったのだったが。

(……あ。そうだ)

 ユーノは不意に立ち止まり、何かを思いだした様に回っていたコーナーとは別のところへ向かう。

 ちょうど、頼まれていた用事を思い出したのである。

 今日出て来た最初の理由は欲しい本の発売日だったというのもあるのだが、もう一つ追加された目的がある。

(えっと、確か博士が言ってたのは……)

 そう。出がけに、グランツ博士に何冊かの本を見繕って来てほしいという頼みを受けていたのだ。

 何でも、次のBDのアップデートに関連しているとのこと。

(でも、何が関連してるのかなぁ? 伝説や伝承とか、或いはフィクションの系統でホラーとかオカルトっぽいのを見繕って欲しいなんて……)

 基本的に、BDは対人戦を主としたゲームである。

 ユーノの手伝っている『バンク』の生成や、グランツ博士の最も目指す仮想空間でのVRコミュニケーションなどの派生目標もあるが、伝説や伝承を取り入れるとなると、それはまるっきりRPGの様な――

「――あれ、ユーノくん?」

 と、ユーノがぼんやりとそんなことを考えていると、背後から声を掛けられた。

 振り返ってみたところ、そこには柔らかくウェーブの掛かった紫色の髪を靡かせた、大人しそうな少女が立っていた。

 なのはたちと同じ海聖小学校の四年生、月村すずかである。

「やあ、すずか。久しぶりだね」

 にこやかに挨拶をすると、すずかも「うん。久しぶり」と返す。

 彼女の反応にユーノはもう一度微笑み、すずかがここにいる理由を訊いてみる。

「ところで、すずかは何の本探しに来たの?」

 すると、すずかは「これだよ~」と言って、手に持っていた本を差し出して見せてくる。

 彼女が持っていたのは、ここ最近人気があるという話をよく聞く、ファンタジー系の小説だった。

 なるほど、とユーノは頷いて納得した様子を見せる。

 前にシュテルが面白いって言っていたので、彼もその作品を知っていたのだ。

「すずかは、こういうファンタジー系が好きなの?」

「うん。他にも結構読むけど、やっぱりこういうのが一番しっくりくる気がして。ユーノくんの方は?」

「僕はこういうのとか……」

 そう言って差し出された本と、差し出されなかった方の本を見て、すずかは不思議そうに首をかしげる。

「そっちのは、違うの?」

「こっちは頼まれ物なんだ。……でも、こういうのも割と読むかな。古い時代を調べる時とか、その時代背景を確かめられるし」

「あっ、そういえばユーノくんは考古学者さんだもんね」

「まあ、学者って言えるほど大したものじゃないけど……お爺ちゃんの手伝いの時とかは、そうかな」

 頬を掻いて、照れ臭そうに言うユーノ。

 そんな彼の様子に、すずかはどこか微笑まし気な表情を見せる。のほほんとした雰囲気が漂い、感じていた照れ臭さもだんだんと薄れ。話も弾んでいく。

 

 ――そして、十分ばかりの談笑の後。

 話の流れでユーノは、すずかを研究所の自室にまで招いていた。

 

 好きな本や、ユーノがこれまで巡って来た遺跡などの話を訊いたすずかが、もっと彼の話を聞きたいという事で、立ち話を続けるのもなんだから、とユーノは彼女をここへ連れて来たのである。

 部屋の広さは手狭でも、かといって広すぎるでもなく、程よいスペースを確保した部屋だった。

 大きな本棚が四方に立ち並んでおり、窓際の方には机と椅子。真ん中に来客用のテーブルがあり、二人掛けソファが向かい合わせに置かれている。そして、その隣には小さな戸棚があり、その上に電気ケトルなどが載せられていた。

 テーブルを挟んだ向かいにすずかを案内して、ユーノはすずかに飲み物の用意を始めた。

「はい、どうぞ。まあ、ディアーチェほど上手く入れられるわけじゃないけどね」

 苦笑しながら紅茶を渡して、ユーノも自身のカップを手に座る。

 彼が口を付けると、すずかも「ありがとう」とお礼を言って紅茶を口にした。

「――あ、美味しい」

「良かった。

 でも、すずかは家でメイドさんがもっと美味しく入れてくれるんじゃない? ……えっと、ノエルさんとファリンさん、だったかな?」

「うん、合ってるよ。……あれ、でもユーノくん二人と会ったことあったっけ?」

「直接はないけど、前にシュテルがすずかの家に行った時の話を聞いたから」

「……そういえば、確かに」

 そう呟いたすずかは、前にシュテルにちょっとしたイタズラをしたことがあったのを思い返した。

「ふふ。シュテル、あの後しばらくそのコト根に持ってたからね。何回か愚痴に付き合ってたんだよ」

「ふぅん……」

 楽しそうに笑うユーノ。……尤も、付き合わせていたシュテルの方からすれば、楽しくなかったと言えば嘘になるものの。決して愉快なだけではなかったらしいのが、少しばかり困りどころだったのだが。

 そんなユーノの話に、すずかはどこか興味深そうな様子で聞き入っていた。

 シュテルが愚痴をというのが、今一つ想像できない様である。それに気づいたのか、ユーノも「まあ、確かに」とまた苦笑。

 実際、シュテルは文句を面に出す様なタイプではない。

 全くではないとはいえ、何時までも尾を引くことは珍しいのも確かだ。

 だから、正確には愚痴を延々聴かされていたわけではなく、どちらかというとそれは、寧ろ気晴らしと呼んだ方が正しいかも知れない。

「シュテルの場合。鬱憤はBDとかでの戦闘で晴らしたり、読書とか近所のネコと遊ぶとかしてリラックスするときもあるけど、案外こういうので晴らすのも多いんだ」

 そう言って、ユーノはすずかにある一枚のボードを差し出して見せた。

「……チェス?」

「そう。これは結構昔からやってたんだけどね? 最近だと、将棋とか囲碁なんかもよく誘われるんだ」

 曰く、思考の海に沈むことで邪念を排斥しているのだそうだ。

 確かに、没頭して戦いに挑めるのなら、それはそれで余計なことを考えずに済むのかもしれない。……とはいえ、グランツ研究所内でも、見に来るのは素直に関心のあるユーリや、時々はやてと駒を合わせているディアーチェくらいなものなのだが。

 と、それをユーノから聞いて――すずかは二人からすれば読書と同じような感覚なのだろうなと思うと同時に、少し気になった。

 ユーノの、腕前の程が。

「ねえ、ユーノくん。わたしも、ユーノくんとちょっとチェスしてみたいな」

 勢いでそう訊くと、ユーノは「良いよ」と言って、白と黒のポーンを一本ずつ手に取る。そうして持った駒を手の中で合わせて混ぜ、一本ずつ駒を握りこんだ手をすずかに差し出して来た。

 先手後手を決めるトスだ。

 じゃあ、とすずかは彼の右手を選ぶ。

 握られていた駒は白、先手はすずかに当てられた。

「それじゃあ、始めようか。制限時間は特に決めないけど、良い?」

「――うん」

 柔らかな表情であるが、ユーノには一切の油断がない。

 ……似た空気を、以前感じた事がある。

 それは、それほど昔のコトではなく、BDでのレベルアップを図り、全体に視野を向ける為の特訓を行った時の――。

 

「――――チェックメイト」

 

 短く告げられた声が耳に届いたとき、すずかは自分がどれだけの時間を板に齧りついていたのかを認識した。

 既に日は傾き、すっかり赤く染まった空が視界を埋める。

 思考に陶酔(ぼっとう)しすぎた後の静かな疲労感と高揚が、自分の中を満たす感覚は、実に甘い満足感を齎す。

 鼓動は早くはないが、拍を強め……時を忘れ、余分な思考さえ忘れる世界にのめり込んでしまったのは、どことなく魔的ともいえるかもしれない。

「……すごい」

 口から漏れ出した言葉は、飾りを忘れた短いものだった。――しかし、表すにはそれで事足りた。十分すぎるほどに。

「本当にすごいね、ユーノくん……」

「ありがとう。すずかも良い打ち手だったよ」

 にっこりと微笑むユーノ。

 ……悔しいが、それにまた痺れるような感覚が脳髄を奔る。

 前にはやてと行った時とはまた少し違う、緊迫とは無縁の――否、むしろ緊迫が最大まで解放され、逆に無を生んだような感覚だった。しかしユーノの方はというと、まだサバサバした雰囲気で呑気に外を眺めていた。

「それにしても、すっかり暗くなっちゃったね。本の話をしようと思ってたのに、ほとんどこっちに使っちゃったなぁ……」

「……そう、だね」

 少し声の引っ掛かりを覚えつつも、すずかは返事を返す。

 だが、頭の中に在ったのはまったく別の思考で――単純に言うと、自分でも驚くほどにはっきり、『悔しい』と感じていた。

 勝負だけではなく、そこに付随する全てに、悔しさを感じている。

 だからだろうか。

「……でも、まだもう少しなら時間あるから……お話、したいな」

 そんなことを、口にしていたのは。

「そう? じゃあ、どれにしようかな。すずかのにする? それとも――」

「ユーノくんのが良い」

 びっくりするほど、ワガママに言い張ってしまうのは。―――悔しさの中に、ほんの少しの妬ましさがあったからかも、知れない。

 とはいっても、それはどちらかというと、人に向けられた妬ましさではなく。

 これまで自分が今を知り得なかったことに対する、憤慨の様なものだったのかもしれない。

 

 そうして話を始めた二人は、今日ユーノがグランツ博士に頼まれて見繕って来た伝承本の話をしていく。

 が、伝承と言っても、それは英雄譚より――

 ほんの少しだけ不気味で、美しい吸血鬼の物語であった。

 

 

 

 

 

 

 ……因みに。

 その時に語られた発想を博士が聞いていて、後々にBDに新たなモードがアップデートで加えられることになるのだが、それはまた別のお話。

 

 

 

 *** 更なる余談

 

 

 

「…………ユーノ」

「……は、はい、なんでしょうか……?」

「――――その状況は、いったい何なのですか?」

「……(すやすや)」

「……ひ、膝枕……かな?(ダラダラ)」

「………………………………………………………………………………………………この間はヴィータに、おまけにナノハまで毒牙に懸けたかと思えば……今度はすずかときましたかそうですか…………ええ、わかってましたよどうせそんなことじゃないかとは」

「あ、あの……シュテル?」

 

「――――少しばかり、頭を冷やしましょうか、ユーノ」

 

 ……その後、ユーノは安寧とは無縁の時間を過ごすことに。

 そうして、反省をさせられたにもかかわらず、思いの外積極的なお嬢様に、屋敷まで連れてかれることが増えたとかなんとか。

 

 

 

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