innocent時空のユーノくん短編集(CP雑多)   作:形右

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 どうも、遅れましてスミマセン。
 毎度おなじみのユーノくんの短編柄ございます。

 今回は初の複数CPを意識して書いてみたんですが……なんだか、パワー不足。コレなら寧ろ普段の方が複数CP書けてるレベルな気がしてます。というより、新しく舞台を据えようとして迷走してしまった感があります。
 実際、今回は結構此方の方が難産でした。多分、長編の方を早く出したいテンションに引きずられてしまいました。本当に申し訳ありません。

 ですが、次回への繋ぎとしてはそれなりに要素をぶち込めたので、完全に失敗というわけでもないですかね。まあともかく、今後は複数CPを書くときはもう少し話を練って、ココの短編を書く合間に複数を練って投稿みたいな、同時進行系にした方がいいかもです。

 とまあ、そんなわけですが、軽く初の試みを説明したところで、今回の短編について少し。
 今回は複数ですが、ちょっとだけ気持ちユーリに比重当ててみた感じです。今期の支部でのアンケートはユーリが圧勝でしたからね……。すごかったです。
 あと、《ストーリーモード》というものを書いてみることにして、少し遊んでみました。
 これまでに頂いたアイディアをぶち込みたくて、その土台を作ろうと思いまして。そこまでいったら次は思い浮かんでの通り、もう一人の博士と未来組の登場とかも書きたくなったので、そういった部分をかんがえてこうなりました。

 なので、次回以降また違った形で話を書けそうな気がします。では次回もよろしくお願いいたします。

 ――追記――

 今回のアンケートの方はこちらになります。
 https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=193827&uid=140738


それは未完成な世界で

 作りかけの物語 Unfinished_Story.

 

 

 

 『ブレイブデュエル』――通称・BDと呼ばれるこのゲームは、基本的にはショップでの対人戦を基本としたVRゲームである。

 プレイヤーは『スキル』を用いて対戦相手と戦うバトルゲームであり、そういった『スキル』は、店で一日一枚『ローダー』を引くことで獲得できる。時折イベント報酬として貰えるものもあるが、通常はこの一枚を積み重ねていくことで得られるものだ。

 なので、基本的にはRPGの様にストーリーは介在しないだが――

 

「――次回のアップデートでは、《ストーリーモード》の本格実装へ向けて動き出そうと思っているんだよ!」

 

 ――という博士の一言から、この度。BDに物語的な要素が実装されることとなった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 グランツ博士の言葉に、話を聞いていたユーノたちは驚きに目を見開き、口をポカンと空けて棒立ちしてしまった。

 しかし、そんな子供たちをよそにグランツ博士は解説を続けていく。

「これまでのステージはゲームに合わせたフィールド、もしくは現代の市街地などが主だったけど、ユーリの発案(アイディア)でいろいろな場所に行けるようにステージの幅を広げて、VR空間でのコミュニケーションやアトラクション、他にもいろいろな分野への発展に大きな足掛かりになった。……でも、これだけではBDが『ゲーム』である意味がない。そこで今回は、他の分野への派生ではなく、より『ゲーム』としての発展を目指して考案したのが、この《ストーリーモード》さ!」

 指さしたモニターには、大きく《Storry_Mode ‐Innocent_Oath‐》という表示が浮かんでいる。

 五つほどのステージが並んでおり、それぞれが何らかのコンセプトを持った物語の様だ。

「イノセント、オース……無垢な誓い、という事ですか?」

「そのとおり! プレイヤーが共に純粋な気持ちで同じ苦楽に挑む、という意味で〝無垢〟と〝誓い〟という言葉が合うと思ってね」

「うーん、そのまんま過ぎな気もするケドねー」

「き、キリエ……」

「ま。パパの考案だし? わたしは異存ないかなぁ~」

 どことなく棘のある言い方ではあるが、おおむね反対という事ではない様だ。

 しかし、まだ少しだけ疑問が残る。

 その為か、シュテルは博士に一つずつ確かめていく。

「そうなると、わたしたちを呼んだのはテストプレイの為に、という事でしょうか?」

「うん。その通りだよ」

「では博士、一つ質問なのですが……その《ストーリーモード》は何人でやるものなのですか?」

「将来的には人数に制約のない、主軸のみを定めたプレイヤーが紡ぐ物語を前面に押し出したいところではあるんだけね……現段階においては、通常のスタンドアロンRPGと同じように、元からあるシナリオに合わせて自分アバターをカスタマイズしてプレイ、といった形がほとんどかな……」

「なるほど……。では、現段階における規定人数は?」

 シュテルの一言に、嬉々として説明を続けていた博士が僅かに勢いを失った。

「……そこについては非常に申し訳ないのだが」

 実に申し訳なさそうに、博士は質問に対しこう言った。

「先日ユーノくんに見繕って来てもらった本のストーリーの内、幾つか参考にしてみたんだけど……どうにも僕は文才というモノが無くてね。構想こそあるんだけど、シナリオを書くまでには至らなかったんだ」

 父の弁に、キリエは「あらま」と口元に手を当てる。

 そんな反応も多少予期していたらしく、頬を掻きながら現在までに考えている構成を語っていく。

 

 ――一つ目と二つ目の物語は、よくあるスタンドアロンRPG。

 BDでいうところの『スキル』を『魔法』に位置付けて、出現するモンスターなどを倒しながら、最後のボスキャラを倒すといったもの。舞台設定としては一つ目がファンタジー世界での魔王討伐、二つ目はSFチックな銀河帝国での悪の帝国を倒すといった物語だ。

 基本的に道筋は一本に決まっていて、道中には《クエスト》が設定されており、それらをクリアしていくごとに『スキル』や、これまでのBDには無かった『アイテム』などを獲得していくことが出来る。

 

 ――三つ目は、ここまでの二つと同じシナリオありきだが、分岐が設定されている。

 一つ一つを紐解くごとに、当てはめられたルートを遊んでいく方式だ。なお、これには『バッドエンド』が用意されており〝ゲームオーバー〟ではなく、選択を違えると最後まで進めなくなって、失敗したら、そこからもう一回となってしまう。そして、ルートを進めるごとに、チェックポイント事の報酬と、最終的なクリア報酬を手に入れることが出来る。

 

 ――四つ目と五つ目は、いわゆるMMO系。

 道筋の決まったシナリオではなく、置かれた《イベント》を一つ一つプレイヤーたちがフィールド内から見つけながら、自分たちでクリアしていくと言った方式を取る。これだけならば、前の三つと殆ど条件は変わらず、強いて言えば少し面倒なダンジョンといった程度でしか無いが……この二つには、ほんの少しだけ特殊な仕様を取り入れる事を考えている。シナリオ通りに進むだけではないので、ただトントン拍子にクリアできるわけではない。そこで《鍛錬システム》を導入し、自分だけのオリジナル技を作れる仕様を取り入れてある。単独の必殺技から、コンビ、トリオ、或いはもっと大勢で放つ『必殺技』級のモノを、幾つかの定められた条件を満たすことで登録することが出来る。

 

「――とまあ、今のところ考えているのはこんなところかな。

 尤も、さっき言ったとおり、まだ全然シナリオもシステムも作り切れてないんだけどね……」

 そう博士は語るが、この構想を聞くだけでも子供たちの胸の内で、好奇心という名の炎が燃え始める。

 VR空間での対戦ゲームから、現実とは異なる世界を具現化できるゲームという側面を取り入れようというのだから、当然と言えば当然かも知れないが。

 ともかく、子供たちは完成途中でも遊んでみたいとうずうずし始めている。

 珍しく、普段はオペレーター役を買って出ることが多いユーリさえもだ。

 そうした様子を見て取って、博士は「これ以上長々と説明するのも何だね」と、早速ゲームを始めてみようかと促した。

 シミュレーターに向かおうとして、はたとユーリが足を止める。

 基本的にこの中で一番助手の適性があるのは彼女だ。つまり、彼女がいないと管制の役割が疎かになってしまうコトになりかねない。

 とはいえ、やってみたいという好奇心には抗えず、何処かおろおろし始めるユーリ。

 そんな彼女を見て、フローリアン姉妹が代理を買って出た。ほほえましそうにユーリの背を押して、シミュレーターへと向かわせる。

 そうして、『ダークマテリアルズ』の面々とユーノがシミュレーターに入ったのを確認し、フローリアン親子はいよいよ新しい世界戦(ステージ)へ子供たちを送り出した。

 

 ――しかし、その時。

 送り出された彼らを追う様にして、どこからか、ある一つの改変情報(アップデートパッチ)が送り込まれたことに、それが起こるまで彼らは気づくことが出来なかった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 シミュレーターに入ると、いつもとは少し異なる形でアバターへの意識リンクが始まった。

 いつもならステージ選択などのシークエンスを挟むのだが、今回はそれらは特に無いらしい。博士の言っていた通り、まだ作成段階ということもあるのだろう。大まかに言えば、取り敢えず中に入って短いができた分のストーリーを試してみて欲しい、とのことだ。

 尤も、まだ超有名なRPGのそれを模しただけの職種選択から町を出てモンスターを倒し、最後の砦を崩すくらいのことらしいのだが。

 それでも十分に楽しそうなことに変わりはない。

 ないが、しかし――

「……どうみても、完成途中ってわけじゃなさそうなんだよなぁ」

 中に入って目を開け、開口一番にユーノはそんな事を呟いた。

 まだまだ未完成という話だったのだが、博士の未完成というのは凄く基準の高いものだったんだなぁと、ユーノは取り敢えず感心を露わに。

 そして、取り敢えず言われた通りに遊んでみようと思ったのだが、

「――――あれ?」

 一緒に入って来たはずのみんながいない事に気付き、キョロキョロと辺りを見回し始めた。

 しかし、最初からそれが当然であるかのようにユーノは依然一人でポツンと立ち尽くすばかり。事情が呑み込めず、外の博士たちと交信を試みるも、失敗。

 どうしたことか、いつもなら簡単に通じる声も届かない。あまりにも唐突な異常に、ユーノは途方に暮れていた。

 が、そうは言っても思考はまだ冷静。

 とどのつまり、失敗だったのなら一旦外に出れば良いだけだ。そもそもBDはそう言った生命に関わる安全機構は十分に施されているし、ユーノたちも万が一の脱出手段は知っているのだから。

 なので、ユーノは少し考えて外に出るべきかという判断を下そうとした。

 ――――が、しかし。

(……うーん、やっぱり未完成だったから複数のプレイヤーの同時リンクでエラーでも起こったのかな? だとすると、外に出た方が賢明か――ん?)

 目の前に、ゲームによくある指示の書かれたウィンドウが表示された。

 内容は実に簡素で、《先へ進め》というものだけ。

 何となくグランツ博士らしくは無いが、初期指示というだけならこんなものかと、ユーノは納得して指示に従う事に。

 シュテルたちが居ないのは気がかりだが、指示がある以上は、先ほどの安全措置の事も鑑みても、そこまで危険ということもないか、とユーノは思い歩き出す。

 ――この素直さが、ある意味で彼の欠点であると言える。

 というか、もう少しだけ早く彼がこの街に来ていて、某秘密結社のマッドサイエンティスト(笑)に出会っていたならば、おそらくコレがその手のものだと認めることができただろう。

 ……なにせ、呆れた事にウィンドウには凝った装飾で、しかも馬鹿正直とすら言えそうなほどに堂々と、《J・S_presents.》というロゴが書かれていたのだから。

 そうして彼は、気づかず素直にトンデモ博士の乱入シナリオの中に飛び込んでいく事になったのだった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 ――――で、その後。

 

 紆余曲折の冒険の末に――というわけでもなく、ユーノは至極あっさりとゴールらしき《魔城》という固有名のダンジョンへ足を踏み入れていた。

 ぶっちゃけ攻撃型で無いとは言え、その辺のモンスターを退けるだけならユーノも然程苦労しない。

 バインドで集めて、結界の中に閉じ込めて、あとは放置。

 前にディアーチェとスバルとティアナの特訓に付き合った際、バインド系や結界系のスキルが苦手なレヴィがかつてやった練習の応用をしてみた技だ。

 まあ、ただ通るだけならバリアを纏って歩くだけでも事足りる。

 ユーノの持つ《プロテクションスマッシュ》というスキルは、型こそ《プロテクション》系の魔法そのままだが……このスキルは、バリア系の弾く特性が強化されており、防御系であるのにれっきとした攻撃として機能する。

 その硬度は、なのはやシュテルの砲撃すら弾き飛ばしながら接近できるレベルで、《バリアブレイク》の特性を付加したものでなければ易々と超えることはできない。

 そんなわけでユーノはてくてくと城の中へ。

 入ってみると、丁寧に見取り図が書いてあるのを見つけた。こういうところは、ゲームダンジョンのありがたいところだ。

 偶に祖父と遺跡発掘に行くと、大きいものだと慎重に進まなくてはならず、下手をすれば貴重な財産を壊す事さえある。

 ある意味、一番ゲームダンジョンの攻略に当ててはいけないタイプだったかもしれない。……主に制作側の矜持的な意味で。

 実際どっかの秘密結社(ラボ)では、今回の主犯がちょっとだけ引きつった笑いを零しており、最後は「フゥーハハハ!」と笑い出して「コレで最後だと思わぬ事だな! まだまだ刺客はいるぞ、さあこのシナリオをこえてみたまえ!」なんて言って妹に怒られていたりもしたらしい。

 

 ――閑話休題。

 

「えーと、部屋が三つで最後に屋上……か」

 セオリーなら、恐らくフロアごとにボスモンスターでも設定されているのだろう。

 取り敢えずそれを倒して上に行けば、あとはクリアという事になる筈。そう思い、ユーノはさっそく上に上がって行ったのだが……。

「え? 部屋ひとつだけ?」

 目の前に据えられたデカデカとした扉に、思わず拍子抜けした。

 どうやら、とにかく倒して進めということなのだろう。そうなると、逆にモンスターがめちゃくちゃ強い、ということなのだろうか。

 ともかく、ここに居ても始まらない。

 意を決して扉をあけて――――

 

「ハーッハッハッハ!」

 

 ユーノは、めちゃくちゃ聞き覚えのある声を耳にした。

「……レヴィってば、何やってるのさ……」

「何をやってるとか、ボクだってぇ知らん!」

「えー……」

「誰が呼んだかしらないが、この《雷刃の間》を任されたフロアマスター! それこそがボク、レヴィ・ザ・スラッシャーさ!!」

「あ、マスターなんだ。ボスじゃなくて」

「そりゃあ、上にみんな居るし? ボクだけボスってのも変じゃん」

「それはそうだけど……」

 にしたって酷くないだろうか。どこがというわけではないが、色々と。

 ユーノがそんことを考えていると、レヴィは。

「まあ、確かにいきなりだったけどさー。あっちの博士ならこんなもんじゃない?」

「へ?」

 あっちの博士という知らないフレーズに、思わずユーノは間の抜けた声を上げた。

 しかし、レヴィはちっとも気にしていない様子で、とにかくユーノにバトルをしようと急かしてくる。

 別に普段なら何の問題も無いのだが、どうにもまだ話が見えない。なのでユーノは、レヴィの誘いに乗りきれずにいた。

「ねぇレヴィ、後じゃダメ?」

「えー、それじゃつまんなーい」

 不満そうに手に持ったバルニフィカスを弄んでぶーたれるレヴィ。だが、正直ここで戦っても特に何もないような気がして、ユーノ的にはあまりバトルはしたくない。

 なので、

「えっと……なら、ほら。このあと買い物に行くつもりだったし、ソーダ飴買ってく――」

「ホント!?」

「う、うん」

「やったー! じゃあ今は我慢する~♪」

 モノで釣ってみることにしたのだが、思いの外効果覿面だった。

 別段ここで戦うコトにこだわっていなかったレヴィは、ご褒美付きなら後でも良いと納得してくれたようである。

 ホッとしながらユーノは先へ進むことに。

 上へ続く扉の前に行くと、レヴィがそれを開けてくれた。どうやら、フロアマスターと評したのは何も名称の上だけでなく、どうやらボス討伐のように倒して開閉ではなく、上に進む扉を本人が開けられる仕様からも来ているらしい。

 なお、レヴィはと言うと暇だからと言って持ち場を離れて付いてくることになった。

 で、更に上へ――するとそこには。

 

「くくく……。どうやらレヴィはやられたようだが、我はそう易々とは行かぬぞ? 身の程を知れよ下郎、ここは王のごぜ――って、何をしとるのだレヴィ!?」

「んー、何って言われても……。ねぇユーノ、ボクって今、どんな状態?」

「なんだろう……判んないかも」

「じゃあ、テキトーでいいや。ええと、うん! 強いて言えば、勇者ご一行に加わった元・幹部、みたいなカンジ!」

「この大たわけぇ! 何を勝手に光オチしておるのだ貴様はぁ~~ッ!?」

「えー、だってユーノがソーダ飴買ってくれるっていうから」

「ぐぬぬ~~ッ!! ……というかユーノ、貴様も貴様だ! 勇者役に据えられているならそれらしく振る舞わぬか! いかな余興とはいえ、少しは乗ってやるのが人情というものであろうに!」

 それは確かに風情がなかったな、と反省しつつも――ユーノもユーノで、何となく魔王の城的な場所で、幹部役から人情を解かれている現状に何となく腑に落ちないモノを感じていた。

 こうなってしまうと日常(いつも)のやり取りと大差ない。

 すっかり雰囲気が失われてしまったが為に、ディアーチェは怒って「ええい、もう興が削がれた!」とフロアをさっさと開放してしまう。

 なお、なんとなくキャラ的には「さっさといけ」などと主人公を行かせそうなタイプにみえるが、存外さみしがりの女の子な我らが闇王様は、てくてくと進む一行に加わるコトを選んだようである。

 尤も、コレもまた何時ものことなので誰一人として気づかないのが不幸中の幸いだろうか(八神堂の子狸あたりは多分嬉々としてからかってくるはずなので)。

 

 ――――そんでそんで?

 

「まあ、こうなるよね」

「ですね」

 

 ここまでくるとサクサク進むわけで、さっさとシュテルを一行に加えて更に上へ行くことに。

 だが、ただで加わるのは割に合わないとシュテルはユーノにちょっとした小芝居(けいやく)を挟んできた。

「ではユーノ、お願いします」

「う、うん……でも、ホントにコレやらなきゃダメ?」

「はい」

「…………わかった」

 因みにそのお願いとは、

「ええと……〝では、麗しき炎よ。我が槍としてこの先の全てを支えてくださいませんか〟?」

「もちろん、この身は御身が為……永久の果てまで、お供いたしましょう」

 

「「――ここに、契約は完了した――」」

 

 なんだかどっかの騎士の誓いのような小芝居であったという。

 読書家なシュテルは、案外ディアーチェよりもハマりやすいロマンチストだった様である。……なお、契約の言葉は本人の希望で、かなり私欲まみれだったりするのだが、気づいたのはディアーチェくらいだったという(なお、王的には別にどちらも自分のなのだから、くっつこうがくっつくまいが問題は無いとのことらしい)。

 

 で、最後の部屋へとやって来たのだが――

 

「えっと……〝わたしはもう、目覚めてしまった……だから、ここへ来てはいけなかった。あなたを滅ぼしてしまうから――〟で、次が……(ぶつぶつ)」

 中では何故か、ものすごく一生懸命に台本(らしきオブジェクト)を片手に練習しているユーリの姿があった。

 それに気付いて、一行はそっと部屋を出る。幸いと言うべきか、ユーリの方も台本を読むのに一生懸命だったようで、部屋に入ったことも出たことも判らなかった様だ。……ちょっとばかりシステム上の問題を感じなくもないが、まあそれはともかくとして。

 こうなると困ってしまう。確かに始める前から、ユーリはとてもこの《ストーリーモード》を楽しみにしていたのは判っているし、せっかくあそこまでしているのに、何となくこのままの流れで終わりにするのは忍びないといえる。

 ――となれば、残る選択肢は一つだ。

 

「――――」

 重々しい面持ちで、扉をゆっくりと開ける。

 すると、中でユーリも気づいたらしくほんの少しだけ焦った様子があったものの、直ぐさま台本を隠してユーノたちをフロアマスターらしく出迎えた。

「来て……しまったのですか」

「うん。――ここまで来て、君に会わずには帰れない」

「…………だめ、なんです。わたしはもう、目覚めてしまった……だから、ここへ来てはいけなかった。

 あなたを、滅ぼしてしまうから――――ぇ?」

 最後のところで、ユーリはちょっと怪訝な顔をした。

 理由がよく分からなかったが、僅かに流れた沈黙の間に答えを見つける。そもそもココまでのフロアマスターを配備していた以上、倒して進む形である筈だから、一緒に来るなんてコトはないだろう。

 そこがまずイレギュラー。

 気づいた瞬間、ユーノはしまったと思うも、どうすることも出来ない。そうして馬鹿正直に焦りを覗かせるユーノを見て、ディアーチェは呆れたように助け船を出す。

「なんだ? そんなに意外か、ユーリよ。我らがココにいることが」

「……ぁ、は、はい……」

「ふふっ、まあ確かに……我らは本来こやつを排斥するための刺客ではあった。

 だがな――それなりに見込みがあると思ったのよ、こやつを見てな。

 そもそも我らに、この城は狭すぎる……。であればこそだ、外へ行くぞユーリ。こんなとこで燻っていては、紫天の盟主の名が泣こうが――――」

 と、流れるようにスラスラと芝居がかった台詞を並べていくディアーチェ。

 あまりにも饒舌に回る舌に、思わず全員がぽかーんと口を開けて唖然としていた。

 が、すっかり置いてけぼりになってしまった周りだったとはいえ、ノリの良いレヴィは戸惑いを残しながらも「そ、そうだぞー!」とか乗っかり始めている。

 そんな熱のようなモノに押され、ユーリたちも雰囲気に流されて、それっぽい台詞を口にしていく。

 

「それでも、ダメなんです……わたしは」

「目を背けないでください。仮に世界の全てを喰らう毒であろうと、わたしたちはあなたを見捨てることはありません」

「そうだよ、ユーリ。――待ってて、ボクたちが今、君を必ず助けるから!」

「だから行こう――僕たちは、君に来て欲しいんだ」

「そういうことだ。

 ――来い、ユーリ。コレは命令ぞ? 貴様は盟主ではあるが、統べるのは我が役であるからな。ただバカデカイだけの力も、我という制御機構(ユニット)を経てこそ真価を発揮できるだろう」

「……ぅ……ぅぅ、――ハッ!? ぁ、ぇぇっと……ダ、ダメです……それでも」

 若干演技が崩れかけていたものの、どうにか進めることは出来ている。

 このまま行けば、説得で終わりそうだと思った――その時。

 

 

 ――ピコン♪――

 

 

「「「???」」」

 

 すっかり忘れていたシステムウィンドウが、唐突に表示される。

 そこにあったのは、実に簡素な指示。クリア条件が設定されているゲームなどにありがちな、チャンスアタック指示だった。

 

 《システム異常を検出――対象・ユーリを救うために、彼女を覆うバリアを破壊してシステムを上書きし、彼女を取り戻せ!》

 

 瞬間、ユーリの周囲を三面のバリアが覆う。

 突然かつタイミングが良すぎるその現象にユーノは再度呆気にとられた。

 が、しかし。

 それを見ても尚、他の面々はユーノとユーリを除き、何となく察したような表情をしている。

「やれやれだな。まあ、何となく予想はしておったが……」

「ええ、まったく」

「面白くなってきた……!」

「ま、テンプレートではあるが確かに何もなしでは気も引けるというものか……。平和ぼけした結末も悪くはないが、自ら切り開くのも悪くない。

 ん? どうしたユーノ、呆けておる暇はないぞ」

「え、あ……う、うん。わかった!」

 よく分からないけど、何かをやらなきゃならないのは判った。

 ……そうして、そこから一気に始まったのは、一言で言えば最終戦争。

 

「走れ明星、全てを焼き消す炎と変われ――!」

「いっくぞぉ~! パワー極限ぇぇん!!

「集え星と雷、我が闇の下へ……ッ!」

 

 展開はもう読めたと言わんばかりに、一気に力を解放していく。

 赤と青、そして紫に輝く三つの力が集約し、最後の再開を阻む障壁へと注ぎ込まれた。

 

「真・ルシフェリオーン……ブレイカァァァ――ッ!!」

「雷刃封殺爆滅剣! またの名をエターナルサンダーソード、効果――相手は死ぬぅぅぅ!!」

「これこそ我が砕け得ぬ闇、王足る力――〝ジャガーノート〟ぉぉぉッ!!」

 

 三人の魔力の飽和攻撃が放たれると、ユーリの周囲に張り巡らされた障壁は跡形もなく消え去った。

 どうやら急造だったのは、何もシナリオやシステムだけではなかったらしい。

 が、別にそうでなくともこの威力ではシステムの上でもかなりオーバーロードだった気もするのだが。

「……やっぱり、すごいや」

 さりげなくユーリの方にも結界を展開しつつ、それでもユーノはそう思った。尤も、ユーノ的には魄翼のスキルを持っている彼女に守りは必要ないかなとも思っていたのだが――ユーリとしては、いきなり始まった流れに驚いて動けなかったので、実は結構助かっていたりもする。

 と、そうして――――

 

「――――じゃあ帰ろうか、ユーリ」

 

 

 ユーリの額にそっと手を翳し、ユーノはそう言った。それに、ユーリは微笑みながら「はい」といって彼に身を委ねる。

 すると、

 《システムの上書き終了》

 というアナウンスが響き、仮想空間は一気に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

「――大丈夫ですか!?」

 開口一番、五人の視界にはアミタの顔が飛び込んできた。

 しかし、ユーノは何なのかよく分かっていない。とはいえ、他の面々は苦笑しながら例のアレだと告げて、グランツ博士は「やっぱりか」と頭を抱えている。

 どういうことなのだろうとユーノは疑問符だらけではあったものの、一先ず皆は判っているらしいので、とりあえずは置いておくことにした。

 けれどこれさえ、まだ始まりの前奏曲でしかないと言うことを、未だ彼らは知らずにいた――

 

 

 

 

 

 

 オマケという名の幕間

 

 

 

「――あのねぇ、ジェイル? いい加減こう言う唐突な不正アクセスは止めて欲しいんだが……」

『フフフ……いやいや、やはり何事にも「悪」に徹しなければ悪役(ヒール)の意味がない』

「……まあ、そのやり方でだいぶ盛り上げになっている面もあるけどねぇ。にしても、今回のは一体何だったんだい? 別に《ストーリーモード》に参戦したいなら、普通に……」

『それじゃあ面白くないじゃないか。――なにより、これで足掛かりは整った』

「??? 足掛かり……?」

『その通り! 一度ヒーローを担ったモノが「悪」に墜ちる、なんともポピュラーで面白いじゃないか。ちょうど協力してくれやすそうだからね』

「…………まさかとは想うが、手荒なことはしないだろうね?」

『何を馬鹿な。ちゃんと合意の上で参加してもらうさ。手荒なのは趣味じゃないしね――――ん?』

 

 ――――バチ……バチバチ……ッ! バズッ、ジリ、バズヂィ……ッッ!!

 

 新たな来訪者。

 それは、唐突に――新たな風を呼び寄せる。

 様々な物語が交錯する時、もっと先へ続く路が開く。

 

 

 

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