innocent時空のユーノくん短編集(CP雑多)   作:形右

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 どうも遅れましてすみません……ッ! 毎度おなじみのユーノくん短編でございます。

 今回のCP相手はヴィヴィオ。
 未来組の筆頭として、今回は先陣を切ってもらう事になりました。

 その関係もあって、今回はあとがきの様なものを載せて、未来組の外の面子を追加するうえでの確認をしていただこうと思っております。なお、それに加えて、今回のアンケートはその関連になります。
 今後の短編に関連するところなので、是非お答えいただけると助かります。

 今回のアンケートはこちらになっております。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=194613&uid=140738


目指す先に居る者

 来訪者 New_face.

 

 

 

 先日、グランツ研究所では《ストーリーモード》の実装実験が催された。

 とはいっても、別段された実験そのものは無事に終わった。

 むしろ驚きという点なら、後々になって実験中に外部からハッキングをされていた事実の方が大きいと言える。

 だが、研究所の面々はユーノを除いてさして驚きを抱いた者は居なかった。

 どうにも、首謀者には心当たりがあったらしい。……それが、かえって興味を引いてしまったのだろうか。

 

「えーっと……ここ、かな」

 

 色々な疑問を晴らすために、ユーノは一人行われたハッキングと関係深いらしい研究所を訪れていた。

 

 

 

 ***

 

 

 

 そもそもきっかけは一通のメールだった。

 皆が驚いていないので、ユーノはとりあえず後で聞けばいいか、と疑問の解決を先延ばしにしようとしたのだが、そこへ一通のメールが送られてきた。

 差出人は『Dr.J』という人物で、件名は『セクレタリーズ』なる団体への勧誘という内容。

 まあ、この時点で既に怪しさ満点である為、真面目に相手をする気など起きるはずも無かったのだが――

 

 《――先日の改変アップデート、その詳細を知りたくないかね?》

 

 ……ベタだ。あまりにもベタ過ぎるが、それが逆に興味を引いたのかもしれない。

 もちろん、怪しいことに変わりはないので、グランツ博士に訊いてはみた。

 すると、おススメはしないけど、危険というほどでもない――というお墨付き(?)はもらえたので、ユーノはとりあえず興味に任せて行ってみることに。

 

 ……と、そう決心したまでは良かったのだが、いざ目的地を前にしたユーノは足を止めてしまっていた。

 その理由はというと、

 

(…………この建物、なんでここに建てたんだろう……?)

 

 これである。

 そもそものメールからしてそうだったが、そこはあまりにもベタ過ぎた。

 そして、あまりにもふざけていると思えた。主に、特撮的マンガ的アニメ的な『悪』っぽい研究所が、当たり前の様に一般的な住宅街に建っている時点で。

 そう。ほとんど秘密結社じみた研究所が、何をどう間違ったのか、ごくごくフツーの住宅街の一角に建っているのである。

 これでふざけていないと初見で思える強者がいるとすれば、それはよほどの度量を持ち合わせている人間くらいのものだろう。

 少なくともユーノとしては、ここまで作り込むのならばもっとそれらしいところに建てるべきだと思った。彼自身も少しばかりずれている思考ではあるが、とにかく違和感を抱けただけマシと言ったところか。……普通ならばおそらく、「趣味が悪い」の一言である。

 にしても、こうもデカデカと建っていては、近所から苦情とかが来そうなものであるが、その辺りは諸々の事情から切り抜けられているらしい。尤も、初めてここに来たユーノがそれを知る由などないのだが。

 ともかく色々とアレであるが、ユーノはとりあえずインターホン(何故か律儀についていた)を鳴らしてみることに。

 ――――が、その判断を数秒後に悔いる羽目になる。

 

「はいは~い。勇者(プレイヤー)さん一名、ごあんな~い♪」

「――――へ?」

 

 気前よく聞こえて来た声と、唐突に開いた足下から始まる浮遊感と共に……ユーノは漸く、自分がそれなりに危機にいることを自覚した。

 

 

 

 ***

 

 

 

(え、何コレ? なに? どーゆことなのさこれぇッッ!?)

 

 あれよあれよと流れに呑まれ、気づけばいつの間にか袋詰め。オマケに簀巻きにされている為、うまく動けない。

 そのせいもあってか、ユーノの頭の中は、とにかく自分に訪れたこの理不尽すぎる状況へ向けた困惑のみが渦巻く。

 が、その困惑さえも長くは続かない。

 勝手に運搬されたかと思えば、今度は雑に袋から放り出されて暗闇の中。

 慌てて辺りを見渡すも、当然ながら暗闇では何も見えない。

 するとそこへ、

「――ようこそ我が研究所(ラボ)へ、ユーノ・スクライアくん」

 パッと注いだスポットライトに照らされた、白衣の男が姿を現した。

 もうこうなると、思考は停止してしまう。

 そうして、すっかり呆然とユーノは床にへたり込んだまま、事の成り行きを見守ることにした。

「ともかく、些か唐突な私の招待を受けてくれたことに感謝する。少々手荒になってしまったかもしれないが、ともかく君とは一度会ってみたかったのだよ」

「招待って……じゃあ、あのメールは貴方が?」

「その通りだ。――ああ、そういえば、まだ名を名乗っていなかったね? Dr.Jこと、ジェイル・スカリエッティだ。以後お見知りおきを」

 どこか得意げに、そして芝居がかった振る舞いで、どうやら少し高い位置にあったらしい最初の壇上を降りてくるスカリエッティ博士。

 自身の元へ向かってくる彼を前にして、ユーノは未だ言葉を失っていた――否。というよりも、雰囲気にのまれてしまっていたというべきだろうか? すっかり舞台にでも立たされたように、展開に呑まれてしまいそうになる。

 ちょうどそれは、この間の――

「あ」

 ――それが浮かんだ瞬間、ユーノは身体に掛かっていたタガが外れたような感じがした。

「ということは……。貴方が、この間の介入をした張本人……ということですか?」

「いかにも」

 ユーノの疑念の答えは目の前にある。

 だが、ユーノがそれを訊こうとするよりも先に、スカリエッティ博士はユーノに質問を投げて来た。

「その話に関連するところだがね、君はBDの現行のシステム環境についてどう思う?」

「どうって、少なくともそんなに問題はないかと」

「ふむ。問題がない、というのを不具合の意味合いでいえば、その通りだ。――しかしね、それをゲームの枠でいえば些か問題があるのだよ」

「……?」

「解せない、という顔だが――ずばりそれを結論から言えば、不可欠な存在が欠けているといえる」

「不可欠な存在?」

 ユーノはスカリエッティ博士の弁を聴いて考えてみるが、今一つ分からない。

 不可欠と言っても、システム上に問題がないというのなら、そんなものがあるというのは変な話ではないだろうか。

 そうユーノは思う。自然な発想だが、それだけで満足していることを嘆くように、スカリエッティ博士はこう語る。

「BDには決定的に、在ってしかるべきものが足りない。

 それは『悪』――確固たる『悪』が足りていないのさ! であればこそ、我ら〝セレクタリーズ〟はその補助活動を行っていたわけなのだが……」

 どうもユーノが此方へ来てからの期間では活動していなかったらしいが、それまでは『T&H』をはじめとしたショップに挑戦を行っていたという。

 そんな中で、一旦休止中だったそれを返上して急遽再稼働を始めたのは、グランツ博士の《ストーリーモード》実装が理由らしい。曰く、物語を謳うのであれば必然、『悪』の存在は今まで以上に必要不可欠であるから、だそうだ。

 だが、それならばシナリオやシステム系に置いての協力をすればいいと思ったのだが、以前ユーリにも似たようなことを言われたらしく、互いの主張を融合させる形を取ろうという事で一度は落ち着いたというが。

「けれど、グランツ君は私の意見より先に君たちにテストプレイをさせてしまったからね。……本当なら、あんなのは論外。あの時投入したものにしても、結局は付け焼刃さ。本来はもっと深く、もっと鋭いストーリーを展開してこそだと思わないか?」

 と、スカリエッティ博士は結局のところ、先にテストされたことが不満で仕方なかったという事の様だ。

 子供っぽいようだが、それも美意識としてなら分からない気もしない。

 この辺りは、読書家な気質の表れだろうか。少しはユーノとしても納得する部分もあったのは事実だ。

 けれども、

「でも、それならわざわざあんなことしなくても、普通にグランツ博士に言えばよかったんじゃ……?」

 そうユーノが至極真っ当な意見を言うものの、スカリエッティ博士はと言えば、

「それじゃあ面白くないだろう」

 と、にべもない。つまるところ、彼の『悪』の美意識に置いてはこっちの方がいいという事だったのだろう。

 だが、それはあまりにも子供っぽいような。

 ユーノとしてはそんな心境だったのだが、しかしスカリエッティ博士の紡いだ二の句に言葉を失った。

「君にここへ来てもらったのも、一回はヒーローを担った役者が欲しかったからなんだ。あと、単純に君の能力はうちの好みだというのもあるが」

 情報型で、防御が難く、真っ当な精神の持ち主。

 だからこそ、『悪』に寝返った背景としては申し分ない、と。

 とどのつまり、ユーノはスカリエッティ博士に気に入られてしまったようである。……なお、その裏にはランスター家の末っ子経由で、中島家の四女からの口添えがあったりするのだが、それはまた別の話だ。

 で、結局。

「セレクタリーズに入ってもらえないかね? ああ、もちろん加入の報酬はそれなりに良いものを用意してある。防御型のそれもフィールド形成のスキル持ちにはピッタリの、AMFというものでね――」

 どうやら、『AMF』というのは他のスキルをランクB以下なら無効化してしまうものらしい。ユーノがそれを使えば、実に戦いの幅が広がる事だろう。というか、初めからそれが欲しかったのかもしれないが。

「で、どうかな? 入ってもらえないかね」

「…………うーん」

 ここまでの流れは実に強引だったけれど、最近のシュテルからもらっているお仕置きに比べればまだマシだった所為もあってか、ユーノ個人としては、別に協力自体はそこまで嫌ではない。

 しかし、

「でも……それって結局、ケンカを売りに行っているだけですし……」

 あまりみんなと敵対したくないという気持ちも、当然ながらあるわけで。

 ユーノは断りの姿勢を見せる。尤も、それは向こうも往々にして予想通りと言った印象らしい。

 そこで、と。

「仕方がないか。ならば『悪』らしく、勝負の上で勧誘するとしようか」

「え、勝負って――」

「ちょうど先日、うってつけの面子が入って来たのでね」

 そういって指を鳴らすと、新たに現れた影が。

 表れたのは、金色の髪に、黒いバイザーの様なものを付けた少女だった。

 どことなくシルエットは、前に合ったアリサに似ている気がする。だが、アリサよりはツーサイドアップにした髪が長い。

 その所為かちょうど、なのはのそれに重なる。

 だからかは分からないが、ユーノはその子の前に立っても、あまり緊迫した空気は感じなかった。それどころか、全く見覚えがないのに、何故か懐かしささえも感じる。もしかすると、身近な人物に似ているという既視感からかもしれない。

 そんなことを思っていると、その子がユーノに向けて宣戦布告を行った。

「では、全力で勝負です!」

 ビシッと刺された指に、逃げるのも無粋かと思い、ユーノは勝負を受けることに決めた。

 最初から、別に協力自体はそこまで嫌ではない。単純に渋る理由は、友人たちの前に敵として立ちふさがる事の方だ。

 つまるところ、それを決める為だというのなら、否も応もない。

 結局、必要なら戦いは避けられないのも道理だと理解しているがゆえに、ユーノは。

「――うん、いいよ」

 少女の挑戦を、真っ向から受けることを選ぶ。

 

 ――――そうして、移動した先は闘技場。

 

 ちょうどそれは、以前『セレクタリーズ』が一番初めの襲撃を行った時に用いられたフィールドである。

 其処に立つのは、向かい合った少年と少女。

 何方も似た髪の色を持つその二人は、静かに視線だけを交わし合う。そして、たっぷり一〇秒ばかりの間を置いて――彼らは、戦いの鍵となる言葉を口にする。

 

『――リライズ・アップ!』

 

 眩い光が二人を包み込み、戦いの為の衣装を生成し、身に纏わせた。

 纏った戦闘衣装を互いに観察し合い、相手の系統を見て取る。

 ユーノは一見装甲が薄く感じられるが、それは単純に後衛型――つまり、補助系統のスキルに優れたアバタータイプであるという事の表れだ。

 が、そんなこと少女はとっくに知っている。

 少女にとって未知であるのは、相手の系統ではなく、現時点での力量の方だ。

 逆に、ユーノからすると相手の少女が行ったリライズは、とても奇妙なものだった。

 真っ白な、純白を示す様なセイクリッド。それはちょうど、なのはが使っているものとそっくりだ。それどころか、容姿はなのはとはだいぶ異なるのに、その姿がどこかダブる。

 なぜなのか、それは分からない。

 けれどその疑問と同じだけ、どことなく心が高揚する。

 〝負けられない戦い〟

 そんな意識が、知らずユーノの内を埋めていく。

 何の根拠もない、けれど何故か譲れない様な、不思議な感覚である。仮想空間で本能に苛まれるなんて、ある意味滑稽かも知れないが、どうしたことかそれさえも好ましい。

 高揚し、逸る心を落ち着かせながら、二人は静かに視線を交わし合い、始まりの鐘を待つ。

 ちなみに、バトルの形式は一対一のマッチアップ。どちらかが相手を戦闘不能にした時点で、システムから制止が掛かり決着となる。

 そして、流れた時が鐘を打ち鳴らし、開戦の合図が告げられた。

 

 《DUEL_START!》

 

 

 

 ***

 

 

 

 ――と、そこから一気に場が動き出すかと思っていたのだが、意外なことに二人は未だ動かない。

 しかし、だからと言って口を挟むのは野暮だ。そうした理由から、観戦を決め込んでいたスカリエッティ博士をはじめとした『セレクタリーズ』の面々は興味深げに戦いの行方を見守っている。 

 もちろん、相手が動かないことに違和感を抱いたのは向き合っている二人も同じだ。

 奇しくもこの二人は、自分から攻めるタイプではない。どちらかといえば、彼らは『受け』の戦いを好む。

 片や拘束防御(ガーディングアレスター)

 片や回避迎撃(カウンターヒッター)

 真っ向から戦う上であろうと、相手からの攻撃を転じる事から始める型を取る。

 とはいえ、このままではらちが明かないのも事実――。

「――――ハァッ!」

 そのことを察し、先に動いたのは少女の方だった。

 勢いよく地面を蹴り、ユーノの懐へ飛び込む。そうして一撃を見舞おうとしたのだが、ユーノは正面からの攻撃を『ラウンドシールド』で防御し、後方へと跳躍する。

 そのまま上空へ上がったが、それを待っていたとでも言わんばかりに、少女は虹色に輝く光弾を撃ち放つ。

「〝ソニックシューター〟――ファイアッ!」

 音速の名の通り、それらの光弾は凄まじい速度でユーノへ襲い掛かる。

 だが、それだけではまだ甘い。

 ――ここだ!

 と叫ばんばかりの勢いで、ユーノは迫る光弾へと突撃していく。通常なら自殺行為も良い所だが、防御系に自信のあるプレイヤーであれば、その行動の意味も分かるだろう。

 そう、それは――

「――〝プロテクション・スマッシュ〟!」

 翡翠色に輝く障壁を展開し、ユーノは撃たれた『ソニックシューター』を弾き飛ばして相手に迫る。

 引いたかと思えば、突撃へと転換してきた彼に驚いたのか、少女はその体当たりをモロに喰らってしまう。だが、この戦法自体は割とチープなものだ。

 こうした対人戦でなく、レース等で障害物を破壊して進む際などにも用いられたりもする。

 尤も、それもアバターのタイプに寄りけりだが。例えば高速機動型の場合、そもそも障害物を壊しながら進むよりも、持ち前のスピードを生かす方が好ましい。

 つまるところ使いどころの話であるが、この瞬間に使用したのは上手い。

 実際、ダメージこそ少なかったが、不意を突かれた少女は体制を崩し、隙を生じさせている。そこを狙い打つようにして、ユーノは『チェーンバインド』を発動させて拘束を試みるが、見事な反応速度でかわされてしまう。

 どうやら、少女はどちらかというと近接が主らしい。

 いかにも手慣れた身のこなしを見せられ、ユーノは次の手への布石を積み立てようとした。――けれど、それは向こうも同じ。

 ユーノの放った鎖をかわしながら、少女は飛ぶ鳥を落とすための手を組み立てていた。

 

 

 少女の顔に笑みが浮かぶのを見て、ユーノは見えぬはずのバイザーの奥の瞳が輝きを得た様な錯覚に陥る。

 事実、それは正しかった。

 鎖の隙間を掻い潜った彼女の目は、かなり距離がある筈のユーノを些かの狂いもなく捉えている。

 何かが来るという予感。前兆を察し、ユーノの背筋がぞくりと震えた。

 往々にして、勝負事というのは初手で決まると言われている。――だが、後々の展開で覆ることもある。

 そういった場合、特にそれは受け手の側であることが多い。

 敵の攻め手を利用し、布石を散りばめ、もう一度盤上に自分の陣を再構成する。

 要するにだ。何も最初の手や、取っていた戦法が全てを現わす訳ではなく。寧ろそれは、逆に自分の手の内を相手に隠して好機を狙う姿勢でさえあると言うことだ――!

「一閃、必中!」

 虹色の輝きが、それまでとは比べものにならないほどの光量を放つ。

 まるでそれは、少女の全てが拳先に集約されているような一撃。近接の戦いを魅せながらも、セイクリッドタイプらしい弩級の威力を伴った、巨大な直射砲撃だ。

 

「――――セイクリッドォ……ブレイザァァァッッ!!!!」

 

 威勢良く叫ばれた技名と共に、虹色の光の奔流がユーノを呑み込む。

 拘束系のスキルを使っていたところを狙い撃ちにしたのだから、直撃か否かは、防御スキルの発動タイミング次第。

 無論、少女としてはきっとユーノが防御に成功している筈だと、半ば確信していた。

 だってあの少年は、彼女にとって世代を跨いだ師匠である以前に、そもそも母親(ママ)と同じくらい大好きなパ――。

「――――ッ!?」

 確信は真実へと変わり、そして同時にまた、先程のそれと同様に、受け手側の戦いの再現が為された。

「AS――〝レストリクションフィールド〟!」

 ユーノが発動させたのは、彼のアバタータイプの固有スキルで、『プロフェッサー』や『クレリック』に近いが、どちらかというと支援よりも防御や拘束などに特化した『ガーディアン』タイプならではの〝領域制御〟――つまり、相手の動きを一時的に制限する戦い方が出来る、と言うわけだ。

「しま……っ!?」

 気づいた時にはもう遅い。既に先程まで防御に使っていたプロテクションの応用で、少女は翡翠の鳥籠に囚われた。

 しかし、敢えて最小の封鎖にしなかったのかと言えば、それはコレが勝負だからと言う理由である。

 チーム戦ならまだしも、サシでの戦いでは動きを封じただけでは戦闘不能とは成らない。

 システム的にと言うより、このタイプが珍しいというのが主な理由だ。とどのつまり、なにかしらの技で相手を負けにしなければデュエルは終わらないのである

 故に、ユーノは少女を拘束して戦闘不能にしなくてはならない。だが、先程と同じようにすれば逃げられるのは必至。

 なら、初めから囲いを建てて捕まえれば良い。

 そうして封鎖領域内に生成した陣から鎖が飛び出し、少女は完全に拘束された。

 程なくそれをシステムが認識し、勝利アナウンスが響いた。

 

 《Congratulations! Yuno_scrya_WIN!!》

 

 

 

 ***

 

 

 

 ――で、確かに決着はついたのだが。

「んぁ~! は、はずれないぃぃ……!」

 未だ正体不明の少女はと言うと、ユーノの放った鎖に縛られたまま宙づりにされていた。なお、彼の名誉のために断っておくと、別にこれはユーノの趣味ではない。単純に身動きを取れなくしようとした結果と、フィールドがまだ消えていないという偶然の合わせ技である。

 しかし、なんだか技を放った方としては女の子を宙ぶらりんにしているというのはあんまり精神衛生上宜しくない。

「えっと、なんだか、その……ごめん。で、でも多分、そのうち終わるだろうから、もう少しだけ我慢してて貰えば……」

「……うぅ」

 しょんぼりしてしまう少女。そんな彼女になんと声を掛けて良いものやら、ユーノには皆目見当もつかない。

 というかそもそも、まだ名前すら聞いていなかった。

 その事を思い出して、些か絵面は悪いが、とりあえず名前を聞いてみることに。

「そういえばまだ名前聞いてなかったけど、教えてもらっても良いかな?」

 そう言ってから、名前を聞くなら先に名乗るべきかと「あ、僕はユーノだよ。ユーノ・スクライア」と付け足すと、少女の方もこれ以上藻掻いても苦しいだけと理解したのか、素直に名前を名乗った。

 が、

「わたしは、高町ヴィヴィオって言います。St.ヒルデ学院の四年生で――」

「え? ザンクト……ヒルデ? それに高町って……」

 何となく聞き覚えのある単語に、ユーノは思わず少女――ヴィヴィオの言葉を遮ってしまった。するとヴィヴィオは、何故か焦り出す。

「あう……。えっと、そ、そこんところはその、あんまり深く考えないで頂けると嬉しいというか何というか……」

 何だか怪しい。そう思ってしまう程度には、目の前の少女の言動は不自然だった。

 というか、考えないでと言われても、知っているのは仕方が無いというか、実はなじみ深かったりするというか、知り合いのお姉さんがいるというか、もっと言うとそこに通っていたこともあったような。

 それに、〝高町〟という名字は――

「――ヴィヴィオ。もしかして、君って……?」

「ひぅ!(こ、この流れで身バレは非常にアレなのでは!?)」

 何かに感づいてしまったらしいユーノに、ヴィヴィオの生存本能が拙いと警告を鳴らした。主に存在的な意味での危機に。

 その所為か、ヘンに焦った様な言動が漏れる。

「あ、あのあの! そこんとこは今、見逃してくださると非常に助かると言いますか……というかあんまり深く考えられちゃうとわたしの存在そのものが危ういと言いますか……と、とにかく説明はしますから、今だけはあんまり深く考えちゃいけませんっ!」

 ノーモア、存在消滅! と、ヴィヴィオが凄く焦った様子で告げるのを見て、ユーノはますます訳が分からないと言った表情を浮かべ、首を傾げた。

 そこで運がいいのか悪いのか。

 仮想空間は一気に消失し、現実へと二人は帰還することに。

 

 

 

 ***

 

 

 

 気づけば、そこは既にシミュレーターの中だった。

 とりあえず外に出ると、同じようにヴィヴィオも中から出て来ている。

 そこで、先ほどの続きを聴こうとしたのだが、それよりも先にスカリエッティ博士がこんなことを言って来た。

「ひとまずはお疲れ様と言っておこう。いやはや、今回の結果は些か残念だが、大まかな目的は果たせたから良しとしておこうか」

「目的……ですか?」

「ああ。――とはいっても、僕の目的というよりは、今回叶ったのは彼女の望みの方が大きかったがね」

「ヴィヴィオの?」

 視線を向けると、ヴィヴィオは何やらブツブツと呟きながら何かを考えている。

「……ええと、とにかくあんまり推察されるとダメで、とにかく出生に関するところはNGってことだったし、あんまりそのあたりの関連も言っちゃダメだし…………あぁ、でもパパだしなぁ……下手に隠して話すと一気にバレそうな、あーでも全然話さないのもそれはそれで逆にマズいんじゃ…………(ぶつぶつ)」

「? どうしたのヴィヴィオ。……っていうか、パパって君の?」

「ひゃうっ!? え、ぁえ……? あ、あああ、いやその……パパっていうのは別に目の前のユーノさんのコトじゃなくてですね!? ええとえっと――あ、そう! わたしのパパのコトなんです! 未来の!!」

「未来? ……え、つまりヴィヴィオは――」

 何かを言おうとしているユーノは、事の確信に迫ってしまったのだろうか。

 これは非常にマズいのではないか。ヴィヴィオはぎくぎくぅ!? と背筋を張り、額にだらだらと冷や汗を流す。

(マズい! これはマズいよ!? 下手したらわたしという存在デリート街道まっしぐらだよ!? ……あ、でももしかすると逆にキューピットになっちゃったりして――って、いやいやそうじゃなくて! その前にホントにダメな事態に……ッッ!)

 が、しかし。

「未来から来たってこと? 本当に?」

「はぃぃぃい! ……ハイ? え、そっちですか?」

「いや、だって未来だよ? SFみたいな話じゃない。一番確かめなきゃダメなところは其処だと思ったんだけど……」

「あ、はい。大丈夫です。そこで大丈夫です」

 セーフ! と、内心ガッツポーズなヴィヴィオ。

 どうやら肝心なところでは鈍かったらしい。九死に一生を得た気分でふぅと額の汗を拭い、一息つく。

 その間にも、ユーノはスカリエッティ博士の方を向いて、本当なのかを確かめている。

 実はユーノが来たまえにも同じようなことがあったらしいことを聞き、それについてユーノはポカンとして驚いている。大袈裟に驚きこそしないが、十分に衝撃的だったのだろう。否、寧ろ衝撃的すぎて言葉を失っているのかもしれない。

「ホント、なんだ……へぇ、未来からかぁ」

 ともかく、ユーノはBDの無茶苦茶さを改めて痛感していた。

 ――未来とさえ繋がれる技術。

 言葉にしてみるとフィクションの定番の様だが、実際に目にしてみるとなんとも不思議なものだ。

 まじまじと見つめられ、たじろぐヴィヴィオ。けれど、ユーノの方はまだ彼女の事情が呑み込み切れていないため、まだ興味冷めやらぬといった様子である。

 それに、

「――ん?」

 ユーノはまだ彼女が此方へやって来た目的を聞いていない。

「そういえば、博士の話だとなんか前にも来たことあるみたいだけど……今回の目的って、何だったの?」

「え――あ、それは……その」

 つんつんと指先を遊ばせて、ヴィヴィオはどこか応えづらそうにしている。

 そうなってくると無理に聞くのも悪いだろうか、とユーノは返答を断ろうかと思っていたのだが、先にヴィヴィオの方が意を決したらしい。

 しかしそれでも少しバツが悪そうに、ヴィヴィオは明後日の方向を見ながらこう語る。

「あー、ええとですね……。前回の来訪の時は、わたしたちがスカリエッティ博士に頼み込んでこっちのマ――じゃなくて、なのはさんたちとBDで戦ってみたくて来ちゃったんですけども……」

 曰く、未来ではなのはを始めとした現在のショッププレイヤーたちは、ヴィヴィオたちを指導することはあっても、全力での戦いはしてくれないのだという。

 それが不満で前回は此方へ来たらしいのだが、今回は少しばかり事情が異なるそうな。

 何でも、前回の記録を友人たちと見ようとした際に、偶然発生した事故に巻き込まれてまた此方へ来てしまったらしい。それで、転移の衝撃でマシンは直ぐには修復できず、ならこちらにいる間に、前回戦えなかったユーノと勝負をしたかった、と、そういうことのようだ。

「――なるほど。うん、大体事情は呑み込めたかな。でも、相手に選んでくれたのは嬉しいけど……みんなとやった後だと、僕じゃ少し力不足じゃなかった?」

「いえいえ、そんなことないです! というか、わたし結局勝てませんでしたし……縛られましたし……」

「ご、ゴメン……。あ、ところでこっちにいる間は博士のところに宿泊するの?」

「そこはですね……。前は結構色々回ったんですけど、今回は割とすぐに直りそうなので、ちょっと寂しいですがあんまり過去と関わるのもよくないかなぁと思って」

 それで知らせていなかったのだ、とヴィヴィオは言う。

 確かに、時間軸は一つでない可能性もあるのだから、あまり大きく変わってしまいそうなことは避けるべきなのだろう。その辺りはユーノにも判っていたので、口を挟む事ではないかなと思った。

 そうして大体の事情が呑み込めた辺りで、スカリエッティ博士が口惜しいがここいらでお開きにしようかと言って来た。なお、ユーノのデータを登録しておいたので、今後は気軽に来てもいいとのことだ。

「いいんですか?」

「もちろん。それに、隣はちょうど私の姪っ子が住んでいてね。多分知ってるとおもうが、一応言っておくとスバルたちのコトさ。ああ、それと〝セクレタリーズ〟に参加したいときはもっと遠慮なく来てくれると嬉しいかな」

「あはは……。か、考えておきます」

 それにしても、スバルがスカリエッティ博士の姪っ子だったとは。世の中って狭いなー、とユーノはしみじみとそんなことを思った。

 が、そうして呆けていられたのもつかの間――。

 

 

 びりっ……びりりり……バチッ……バチバチッッ…………バリバジィバリィッッッ!!

 

 

 

 ……どうやら、この過去と未来の交差。

 彼を加えた、邂逅劇と騒動は、まだまだ終わらないらしい。

 

 ――――そうして、また光の中から子供たちが飛び出してきた。

 

 

 

 *** オマケ?

 

 

 

「とゆーわけで……来ちゃいました♪(眩しい笑顔)」

「何故か成り行きでヴィヴィオのことを預かることになっちゃって……。でも、みんなは面識あるし、問題ない……よね?(苦笑い汗たらり)」

「………………(にっこり)」

 

 …………ユーノの、明日は平和とは程遠い(かもしれない)。

 

 

 

 

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