innocent時空のユーノくん短編集(CP雑多)   作:形右

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 めちゃくそ遅くなりまして申し訳ありません……!

 とはいえ難航はしましたが、どうにか形にはできました。
 今回から少し続きものにして、温泉旅行の三部構成にしてみようかと思ったのですが、なんだか思ったよりも登場キャラを多めに書けなかったので、五部くらいに分けてみようかなぁと思っております。

 あと複数CPでのイベント系なお話なので、なんとなくイメージとしてはノベルゲーないしエ◯ゲーっぽいことの運びを意識してみました(笑)。
 まあその関係もあり、だいぶギャグ要素強めですが、楽しんでいただければと思います。
 ……ちなみに、今回出番のなかった闇王様については次回出てくるのでご安心を。

 なお、今回のアンケートはこちらになります。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=195475&uid=140738


湯処での物語の始まり

 唐突な一声 Beginning_to_trip.

 

 

 

 海鳴温泉。

 それは、海鳴市からほんの少し離れたところにある温泉街の通称である。

 程よく自然を残しながらも、その上でここ数年の開発によって他の施設も備えた利便さも相まって、全国的にも良い温泉として名が知られている。――とはいえ、それも短い連休くらいであればどちらかというと地元に住む人々の憩いの場としての側面が強い。

 だからだろうか、

 

「――――いきなりですが、温泉旅行へ行きましょう!」

 

 そんな唐突な一言が飛び出し、とんとん拍子にある連休の物語が幕を開けたのは。

 

 

 ***

 

 

 始まりは、未来組が来訪した翌日の事――。

 直ぐに帰ってしまう様な展開(よてい)だった筈なのだが、どうにも御都合主義的(おあつらえむき)なことに、ヴィヴィオだけでなく彼女の友人らを始めとした――否。それどころか、また別の時間軸からも来訪者が来てしまった。

 とはいえ、妙に懐が広い面子が多い所為か。

 或いは、以前にも同じことが在ったからなのか。

 そのどちらなのかは定かではないが、ともかく比較的あっさりと受け入れられてしまった未来組の子供たち。

 ここまではさしたる問題でもないのだが、如何せん人数が多い。

 そこで、親睦会もかねた温泉旅行を提案してきた。なお、発案者はヴィヴィオである。

 なんでも、彼女の家では海鳴温泉によく行くのだとかなんとか。

 同じ高町家の娘であるなのはや、アリサとすずかも『それいい!』とあっけなく同意した辺り、どうやら高町家と月村家、バニングス家の恒例は、ヴィヴィオの未来でも引き継がれている模様である。

 ちょうどこれまた都合の良い事に、秋の団体割があったため、かなりいい塩梅で部屋や広間を確保できた。

 

 ――――と、そんなこんなで現在。

 

 BDに関連するショッププレイヤーの子供たちと、その保護者である家族たちは、海鳴温泉へと向かう車に揺られていた。

 因みに、参加者は未来組の十三人に加えて。

 BDのショッププレイヤーの『エレメンツ』『八神堂』『ダークマテリアルズ』『ギアーズ』の子供たち。

 なのは、フェイト、アリシア、アリサ、すずか、スバル、ティアナ。

 ユーノ、シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ。

 はやて、ヴィータ、リイン、アギト。

 アミタ、キリエ。

 と言った少女たちの外にも――

 チンク、ディエチ、ノーヴェ、ウェンディといった中島家の面々。

 ハラオウン家の長男であるクロノや、『T&H』のスタッフチーフであるエイミィ。

 なのはの兄と姉である、恭也と美由希。すずかの姉である忍。

 そして、そこに保護者枠として士郎、桃子、リンディ、プレシア、シャマル、シグナム、アインス、グランツと言った大人たちが一緒に行くことになった。

 なお、一部不参加の面子もいるが、所用だそうである。

 しかし、集まった面子だけでも総勢なんと四十八人。

 下手な団体旅行よりも人数の多い、まるっきり修学旅行か何かの様だ。

 無論、この人数を一気に移動させるのは難しいので、集合までは各々の車などによって宿を目指すことになっている。

 因みに、ユーノはというと、グランツ博士の走らせるワゴンでの移動となった。……ただ、助手席に座ったので、真後ろのシュテルがなんとなく面白くなさそうにしていたのは余談である。

 

 そうして、紆余曲折――というほどでもない道中を終えて、一行はいざ温泉宿へと到着を果たした。

 

 

 *** 一つ目、それは星 Root_of_Stern.

 

 

「きゃっほー! 温泉キターッ!!」

 車から降りるや、早速とばかりにレヴィがはしゃぎだした。

 それにちょっと苦笑気味のユーノだったが、

「は、ハイテンションだね……」

「だってだって! ボクまだここに来たことないし、温泉って初めてだもん!」

「言われてみれば確かに、わたしたちは温泉に来たのは初めてでしたね」

「……まあ、それはそうだけどさ」

 そう。夏にヴィヴィオとアインハルトが来たとき、銭湯やキャンプ、清流で水遊びなどはしてはいたが、温泉には来ていなかったのである。

 新鮮さにはしゃいでしまうのも、無理からぬことだろう。

 とりわけ、

「シュテル~、ユーノくーん」

「ファ……もごっ、」

「(だ、ダメだよハイトくん! 生まれのことバラしちゃ!)」

「(そうですよ。将来、ハイトさんとヴィヴィオさんが生まれなくなってしまうことも、あるかもしれませんし……)」

 こうして、たくさんの友人たちに囲まれているのだから。

 楽しさもテンションも、友達の数だけ掛け算式に倍増していくというものだ。

 と、そんなことを思っていたところに、引率を買って出てくれている保護者組から声が掛かる。

 曰く、部屋の方は自分たちが大まかな準備に立ち会っておくから、夕食までの間は自由に過ごして構わない──とのことだ。

 こうして訪れた自由時間に、お転婆な子たちはいっそうはしゃぎ出す。どことなく小さな嵐を思い起こしながら、みんなが散り散りになっていくのをユーノはぼうっと見ていた。

 しかし、呆けたまま、というのもあまり建設的ではない。せっかくこんな良い所へ来たのだから、楽しまなければ損だろう。

 そうユーノが本腰を入れて動き出そうと思ったところへ────

 

「ユーノ」

 

 シュテルが声をかけて来てくれた。

 どうやら、みんなとは行かずに彼のことを待っていたらしい。

「一緒に回りませんか?」

 断る理由などないユーノは、その誘いを受けた。クロノあたりと回ろうかと思っていたのだが、ちょっとだけ年上の悪友はというと、姉貴分と妹分に挟まれとっくに連行済みである。

 となれば残る躊躇いも消え去った。

 尤も、ユーノがシュテルの誘いを断る気など更々無いのだが。

「じゃあ、行こうか」

「はい」

 そういってゆったりと歩み出す二人。

 何となく老成している気がしなくもないが、何故かその後ろ姿は妙に様になっていたという。

 

 

 ***

 

 

 手始めに二人の向かったのは――

 

「足湯……?」

 そう、ユーノの弁の通り、二人の向かった先は足湯スポットだった。

 にしても、何故ここだったのだろうか。

 ふと気になり、ユーノはそれをシュテルに訊いてみた。すると、シュテルは「前から少し興味があったので」と応える。

「そうなんだ……」

 とユーノが納得しているのを他所に、シュテルは早速と言わんばかりに彼の手を引き、中へと入っていく。

「思ったよりも空いているようですね」

「みたいだね。じゃあ、座ろっか?」

「ええ」

 返事や内部を観察するのもそこそこに、関心が先に立った二人は、席に腰を下ろして足を湯につけてみる。

 すると、

 

「「……おぉ……」」

 

 思わず声が漏れてしまった。

 足湯というのは、見かけの上ではただ足をお湯につけているだけでしかない。だというのに、思いの外これが心地良いのだから不思議なものだ。

 屋外の簡単な入浴施設。しかも、日本の場合は基本的に無料で足湯は利用できる。

 更に、服を着たまま温泉に浸かれるという手軽さや、足元から身体を温める事によって、身体にも良い効用をもたらすことも。

 まあ、そういった理屈を抜きにしても気持ち良いものは気持ち良い。

 何となく足元から疲労感を抜き去れていく様な、甘い陶酔感に包まれていく。

 そうして、どのくらい使ってたのだろう。

 時間を忘れてしまうくらい足湯を堪能してしまった。我に返ったユーノが、そろそろ上がろうかとシュテルに言おうと思い、傍らの彼女の方を向き――。

 思わずユーノは、言葉を失ってしまった。

「…………」

 僅かに火照り、赤みを増した肌。何時も少し半目がちな瞳も、鋭さを無くて柔らかな色を放つ。普段かけているメガネは外しているので、余計に蒼さが際立っている。そして、ほんの少しだけ汗を孕む首筋がやけに色っぽくみえて――――

「――? ユーノ、どうかしましたか?」

 と、惚けた頭に掛かった靄を、向けられた声がクリアに晴す。

「ッ!?」

 一瞬、自分が何を考えていたのが理解できなかった。しかし、回転の良い頭は都合良く前後の思考を忘れさせてはくれない。

 この時ばかりは己の記憶力を恨みがましく思うユーノだったが、自分で自分を恨んでも何も変わらない。当たり前だが、今はその道理さえ恨めしい。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いとはこのことか。

 そんな見当外れの思考が過ぎるが、とにかく今はシュテルへの返事が先だ。先程から此方をほわほわと見つめてくる視線を一度外して貰うためにも。

 あまりにも柔らかな表情を前にし続けていたら、いつか抑えが効かなくなってしまう。何となくだが、そんな気がした。……実際のところ、むしろ向こうからすれば(ヘタレなければ)受け入れ体勢は完全解放状態(オールグリーン)なのだが、自分の思考を邪だと思ってしまったユーノにはそれを察するだけの余裕など無かった。

「い、いや……その、なんでもない……うん、なんでもない、よ……?」

 それ故にか、平静を装った筈の返答にも力が無い。

 が、シュテルもシュテルで鈍かった。

「??? はあ、なら良いのですが……」

 返事こそ届いたものの、シュテルには赤くなったユーノの顔の意味が分かっていなかった様である。尤も、身体を温める湯治の場において――見惚れていた訳でもないのに――火照る意味合いを察せというのも無体な話だが。

 結局、その後ユーノが足湯を出ようと提案したことで場は流れることに。

 そうして二人は、また別の場所へと向かっていくのだった。

 

 

 

 が、しかし――そう都合良くは進まない(Stern√_out.)

 ユーノとシュテルは並んで軽く温泉街にある店でも見て回ろうかと思っていたのだが、そこへ雷光の如く襲来する少女が一人。

 

「みつけたーッ!!」

 

 何事!? と、二人が驚いたのも無理はない。

 例えそれが見知った友人の顔であろうと、いきなり大声を上げて目の前に現れたら誰でも驚く。

 しかし、どうやら向こうは全くのお構いなしのようである。

「ユーノ、シュテルン! 力を貸して!!」

「レヴィ、とりあえず落ち着いて――『あー、もうっ、急いでるの! もうどっちでも良いからちょっと来てってばぁッ!!』――え、あ、ちょ……レヴィ……待っ、てぇぇぇ~~~ッッ!!!???」

 軽い断末魔のように。或いは嵐のように。

 うるさかった筈の音は何時しかそのまま風に解けた。

 と、勿論そんなことで片付けられるはずもなく。

「………………ハッ――ユーノ、レヴィ……!?」

 ある意味得物を掻っ攫われたシュテルは、我に返るや二人の追走を試みるが、生憎とレヴィのパワーは留学生組(マテリアルズ)の中でも頭二つは飛び抜けている。

 華奢な見た目に反し、レヴィは同い年の男の子くらいならああして振り回して走れるぐらいのタフネスに溢れている。残念なことに、どちらかと言えば読書家(インドア派)なシュテルには、BDの中ならともかく、現実でレヴィに互角で追走を挑めるだけのパワーは無かった。

「はぁ……はぁ……ッ! く――っ、レヴィ……あとで、覚えて……置いて、下さい……ッ!!」

 そうして舞台は移りゆく――――

 

 

 *** 二つ目、それは雷 Root_of_Levi.

 

 

 ――――星光の少女が温泉街にも拘わらず、湯浴みとは全く別の理由でヒートし、汗を流していた頃。

 半ば拉致された我らが翡翠はと言うと、

 

「…………で結局、判んないのって、このスタンプラリーの事だったの……?」

「うん!」

 

 自分を振り回してもなおパワー極限(ひゃくばい)な雷光と共に、スタンプラリーの順路(コース)に立っていた。

「――――――」

 正直、こんな事だったのならシュテルを置いてこなくても良かったんじゃないかとも思ったが、レヴィは是が非でもクリアしたかったのだろう。なら、とりあえずシュテルには後でしっかり謝る事にして、今はレヴィに付き合ってスタンプラリーを先に終わらせてしまおうと思った。

「でさでさ、ここんとこが判んなくてさぁー……だからユーノ、こーゆーの得意でしょ? 教えて! お願い!!」

「分かったよレヴィ。でもさ、今度こういうことがあったら、次はもう少し落ち着いて説明してくれると嬉しいな」

「うん! するする! めっちゃ説明するから!」

 だから今はこっちの方を教えて! と、口と思考が完全に乖離しているのが丸わかりなレヴィに苦笑しつつ、ユーノはレヴィの分からないというところを一つ一つ丁寧に解いていくことに。しかし、それはどうにも順調にいくだけの道のりと言うわけにも行かない。

 

 問題自体は比較的簡単であるものの、場所が東西から森の方と非常に広くに渡っており、移動範囲が大きい。

 おまけに、謎解きの後に温泉饅頭の大食いだの、まだ昼間なのに射的をやれだのと、どことなくバラエティ番組のそれに近いものばかりやらされる。

 ――尤も、幸いというかちょうど傍に中島姉妹やランスター家の末っ子がいたので手伝って貰えたのは幸いだった。……なお、未だに中島姉妹は温泉饅頭の大食い記録を更新し続けている模様である。

 閑話休題(それはおいておいて)

 そうした序盤を通り過ぎると、何故か森の木の洞であったり、小さな洞窟や吊り橋だのと、自然豊かにも程があるラインナップでコースが組まれている。

「……此処って、ホントにただの温泉街なのかな……」

 謎が多く、ちょっと不思議な街。それが海鳴市である。

 が、レヴィはと言うとそんな彼の心境とは裏腹に、完全にこのスタンプラリーをエンジョイしていた。

「あーっ! ユーノユーノ、彼処に宝箱あった~!」

「ちょ……走っちゃ危ないよ、レヴィ」

「あ、ゴメンゴメン」

 無論、まさか渓谷の上というわけではないので、吊り橋と言っても比較的低いものであるが、落ちれば怪我をしてしまう程度には高さがある。

 とりわけ、レヴィは力持ちだが体格は華奢だ。隙間に落ちてしまうことも十分に考えられる。

 そうした理由もあり、ユーノはレヴィを支えていたのだが、

「もう、レヴィってば……」

「むぅ……。だぁって、ユーノがゆっくり過ぎるんだもん」

「別にそんな早く行かなくても、スタンプは逃げないよ?」

 加えて、正直見てて危なっかしい。どうにも離す気が起きないというのもあるが、単純に後続の自分がレヴィの駆け足で足場が悪いのも少しある。

 それにしびれを切らしたのか、レヴィは。

「じゃあ、これでいいじゃん」

 そういって、ユーノの腕を抱き込んで引っ張る。

「ぇ……ぁ、レヴィ……ッ!?」

「えへへ~、コレなら良いでしょ? ボクってあったまいい~♪」

 確かにコレなら簡単には落ちないけれども、ユーノ的にはかなり困る。何というか、みんなよりちょっとだけ早く階段を駆け上がっている女の子の象徴が柔らかいというか、そんな感じだった。

 が、悲しいかな。それを自覚しているのはユーノの方だけであった。

「それじゃあ行くぞぉー!」

「ぅ、ぇ……ぁ……ぅ、うん……」

 もう吊り橋の事とか、危険がどうとか。

 すっかりユーノの頭からは消え去ってしまう。幸いどちらも踏み外すなんて事にはならなかったが、ユーノは短い筈の吊り橋が終わりのないルームランナーにでもなったかのような気がしていた。

 柔らかい。青い果実であるのに、まだまだ自由奔放なレヴィはしっかりと先への道を既に形成しているのか。……実感している分、シュテルの時よりも理性にダイレクトすぎる。

 結局、そうした煩悩の中で悶々としている間に吊り橋は終わった。が、ホッとしたのもつかの間。その後も何度か似たハプニングが重なり、ユーノはレヴィが解放してくれるまでずっと罪悪感と自分の節操のなさに沈んでしまっていたという。

 

 

 *** 三つ目、それは紫天 Root_of_Yuri.

 

 

 ――――そうして、レヴィから解放されて暫く。

「ありがと~」と大手を振ってレヴィは、スタンプラリーの景品である『真剣・エクスマキナ』という名前のスティックをゲットしご満悦な様子で他の子たちに見せるべく駆けだしていった。

「…………」

 にしても、まだドキドキしている。

 残った感触がとてもとてもガリガリとユーノの中にある『オトコノコ』な部分を削ってくる。

 しかもレヴィに謝ろうかと思ったが、当の本人はまるで気づいてもいない。こういうとき、逆に意識させるような事を言うのはセクハラなんじゃ……とか考えている内に、謝るべき相手は遙か彼方へと走り去っていた。

 結果、取り残されたユーノはと言うと一人悶々とするしかない。

 と、そんな事をしているとそこへ――――

 

「あ、ユーノ」

 

 ふんわりとした、柔らかな声が聞こえてきた。

 振り返ってみると、そこにはユーリの姿が。茶屋らしき施設の店先で、赤布の引かれたイスに座っている。どうやらのんびりとおやつタイムのようだが――。

「……あれ、ユーリ一人? ディアーチェとかは?」

「えーと、実は――」

 何でも、ディアーチェはレヴィがはしゃぎすぎて引き起こしたセンセーションを収集しに行っているらしい。

 どうやら先程の景品がやたら気にいったらしく、すっかりご機嫌のまま近くにいた友人たちを巻き込んで、これまた傍でやっていたカラオケ大会に飛び入り参加していったとのこと。

 なお、その場にはテスタロッサ家の長女や、未来から来た武道少女などもおりノリよく大会を良い意味で掻き回してしまったらしい。……まあ、あまりにも騒ぎが大きくなりすぎたらしく、テスタロッサ姉妹の次女の方がディアーチェにヘルプを入れたようだが。

「……ああ、さっきから遠くで響いてたのって、それだったのか」

「みたいです」

 たはは、と笑うユーリ。

 楽しむのは良いが、大事になりすぎてしまった事には苦笑するしかないと言った様子である。

 なんとなくそれに釣られてユーノも笑いが漏れる。こうもいつも通りであると、一人で悶々と悩んでいたのが馬鹿らしい。

 結局、自分が意識しすぎだっただけなのだろう。

 思考を切り替え、次は気を付ける決意をしながら、意識を入れ直す。

 すると、

「まあ、そういうわけなので……ユーノもディアーチェが来るまで、ここでゆっくりしていきませんか? この後は一度、宿にいくみたいですから」

「そっか――うん、じゃあそうしようかな」

「はい、それが良いと思います」

 にっこりと微笑むユーリを見ていると、なんだか心が洗われていくようである。

 無邪気というものは、方向性が違うだけでここまで変わるものなのだろうか。――などと、そんなくだらない事を考えながら、ユーノはお茶を一口啜った。

 いきなり紆余曲折あったが、どうやら始まりの時間の落としどころに出会ったらしい。

「…………僕の安らぎの場所(オアシス)は、ユーリだったのかもしれないな……」

「??? ユーノ、どうかしましたか?」

「ううん、何でも無い。ただ……そう、何というか……安心したんだ」

「よく分かりませんけど、悪いことでないのなら良かったです」

「ありがとう。ああ、本当に――安心した」

 なお、どっかの月夜の誓いみたいな台詞を吐きながらユーリを撫でているところを星光に目撃され、後々面倒事に発展することを、彼はまだ知らなかった。

 そうして、僅かばかりの平和な時間を堪能しながら、彼らの連休旅行(じゅなん)は続いていく――――。

 

 

 

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