innocent時空のユーノくん短編集(CP雑多)   作:形右

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 めちゃくそ遅くなりまして申し訳ありません……!

 相変わらずギャグ成分多めで、かなり暴走してしまいました。
 ただ今回、少し短めです。長編の方が難航しており、こちらが進行遅れになってしまいました。その関係もあって、申し訳ないのですが……今回から少しの間短編をお休みします。
 その分、後で出すのをより濃いものにできるように頑張りますので、ご容赦のほどをよろしくお願いします。

 その関連もあり、短編のアンケートを今回、長編とこちらの両方に設置しておきました。期限はいつものように次回更新までではなく、Ref IFのオリジナルの方がひと段落し、本編沿いの別ルートが始まった時にします。
 今回のアンケートはこちらになります。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=196904&uid=140738

 それまでの間に、皆様からのご意見やアイデア、希望のシチュエーションなどありましたらお気軽にお寄せください。


湯処での物語の始まり 続

 続く受難 The_Second_Part.

 

 

 とある未来からの来訪者であるヴィヴィオが発した提案により、BDのショッププレイヤーたち(+保護者代表)が海鳴温泉を訪れる事となった。

 で、色々あってドタバタと右往左往したユーノはユーリとのんびり茶屋で一服する事に。

 こうして、ユーノの温泉旅行は少し激しく、けれど穏やかに受難を綴っていくのであった。

 

 

 ***

 

 

 ユーリとのほほんと過ごしたのち、ディアーチェから『宿へ行くぞ』という連絡網(ラブコール)が来たので、二人は本日よりお世話になる温泉旅館へと足を運んだ。

 温泉街を少し抜けた辺りにあるそこは、背後に林があってどこか静やかな雰囲気を醸し出していた。外観は割とオーソドックスながら、内部施設は温泉が何と六つに、家族風呂やマッサージなどのサービス施設の他――ゲームコーナーやら読書スペースなども用意されていて、実に基本と娯楽を両立させた充実の造りとなっている。

 内部の様相に『おぉー』とユーリ共々感心しつつ、ユーノはディアーチェ達が待っているであろう部屋に向かう。とはいえ、四十九人という大所帯の為、当然ながら全員が同じ部屋というわけにもいかない。今回は広めの部屋(八~一二人程度の大部屋)が五つといった分け方で、各部屋にまとめられている形だ。

 内訳は、まずT&Hと中島姉妹で一部屋。次に八神堂とDM (ダークマテリアルズ)で一つ。そして未来組、保護者組(女性)と少し年上の面々と言った女性部屋が四つに、男性部屋と分けられ、各部屋は隣り合わせかつ、廊下を挟んで向かい合う様にして二対三で並んでいる。

 具体的には、

 

 未来組――T&H+中島姉妹

 保護者――DM+八神堂

 男部屋

 

 と、廊下を挟む形になっているので、ユーノはユーリと一度別れ男部屋に入った。

 中に入ると、まず初めにグランツ博士が出迎えてくれた。

 今はちょうど荷物の整理や、先ほどまでのユーノのように一服したりしていたらしい。ユーノもそれじゃあと、運ばれていた自分の荷物を確認してみる。とはいえ、別にそんな急に入用な物もなく、そもそも持ってきたもの自体そこまで多くもない。……また、どうやらここにいる面々は誰もかれも似たようなものらしく、結局ユーノも皆がいるテーブル周辺に腰を下ろして、手ごろな湯呑を引き寄せる。

 これでもし完全に初対面な組み合わせであれば自己紹介でもするところだが、士郎や恭也とも面識があるし、クロノとも時々ケンカもするが友達だ。今更解きほぐさなければならないほどの関係もない。

 こうなると後は未来組の方に意識が行くところだが、どうやら向こうはこっちを知っていたらしく、ユーノもさして人見知りする質でもないので、自己紹介はとっくに済んでいた。そもそも一人は、研究所にステイしていたりさえする。

「ふぁ~……た……ぁ」

 そう。ちょうど膝の上に乗っかって、あくび交じりにゴロゴロしているこの子とか。

「……なんというか、ものの見事に懐かれているな」

 傍らでお茶を啜っていたクロノからそんな声が掛かり、ユーノも「そうみたい」と苦笑しながら応えた。

 因みに、ユーノの膝の上でゴロゴロしている子の名前はフライハイト。ヴィヴィオ同様に未来からやって来たBDのプレイヤーで、彼女の弟なのだそうだ。

 見た目は、身長一一〇㎝くらいで、ヴィヴィオと同じ金髪と虹彩異色を持っているが、彼の瞳は姉の物とは違い緑と蒼という組み合わせになっている。髪はかなり長く前髪は目を軽く隠しており、後ろで背に垂らす様なポニーテール。その所為か、ユーノ以上に女の子っぽくみえる。

 なお、身長が小さいため勘違いされがちだが、これでも十歳。ヴィヴィオとは双子なのだそうだ。

 そして、その様子を同じようにして見ている子供二人。

 この赤髪と栗色っぽい淡い茶髪の少年たちはエリオとトーマという名で、(ゆかり)としてはテスタロッサ家と中島家に深くかかわっているらしい(詳しくは設定にて)。

「ホント、ハイトはユーノさんのことが好きですね」

「だよなぁ……。(なあ、エリオくん。やっぱ本能的なとこあんのかな?)」

「(さあ……)」

 ちょっとだけ未来の情報が洩れているが、そこは問題なし。小声のため生憎と、ユーノを始めとした周りには聞こえていないからだ。……ついでに言うと、エリオたちの未来ではとっくにハイトもヴィヴィオも生まれているので、そっちについても問題は特に無い。

 そんなわけで二人とも心境としては、イメージにある甘えん坊が結局少し大きくなってもあまり変わっていないことについて、兄貴目線から苦笑と言った状態である。

 結論として何が言えるかとすれば、男子部屋は実に平和だった。

 ――――が、そんなちょっと老成した安寧はあまり長くは続かなかった。

 

 ピコンピコン♪ と、ユーノのスマホにメッセージが届く。

 誰かと名前を確認してみるとはやてからで、内容は『ちょっとこっちの部屋に来て欲しい』というものだった。

 何の用か分からず首をかしげるユーノだったが、とりあえず呼ばれたからには行かないわけにもいくまい。そう思って立ち上がろうと枕役を中断したところ、ハイトは不満そうにユーノをジト目で見てくる。

 あんまりにも判り易く不機嫌なので、ユーノは思わずクスッと笑ってしまった。

(もし弟がいたら……こんな感じなのかなぁ?)

 実はそのさらに先だったりするのだが、それは禁則事項なのでおいておく。

 そっと頭を撫で、後でならまた枕にして良いからと告げた。すると存外素直に離れ、次なる宿主を探す様に動き出しクロノの膝へ乗っかる。

「それじゃあ、クロノ。まかせたよ」

「ああ。まあ、この位なら引き受けておくさ」

 それにしても、と、ハイトの甘えに特に違和感が湧かないのはちょっと不思議なクロノだったが、思い返してみればちょうど似たような気質の持ち主が身近にいたので、こんなものかと一人納得した。……それを受け、ちょうど斜め二つ上の部屋で姉(小)がくしゃみをしたのは全くの余談である。

 

 ――因みにその後。

 クロノがエイミィに、恭也が美由希と忍から、それぞれ呼ばれて部屋を後にすることになってまた宿主を探して士郎に行き付いたハイトが「おじぃちゃ(Opa)……」などと言いかけたのを第六感(おねーちゃんセンス)で感じ取ったヴィヴィオたちが男子部屋に突撃してきたのも余談である。

 

 

 ***

 

 

 そうして、ヴィヴィオの突撃が行われていた頃――ユーノはというと、八神堂とDMの部屋でチェスをやっていた。

「――チェック」

 トン、と置かれた駒が王手をかけた宣言をすると、

「あかん……わたしの負けや……」

 相手をしていたはやてはそう呟き、参ったとお辞儀。それを受けユーノも礼を返し、二人の対局は終了した。

「あー、また負けてしもたぁ……。今度は行ける思たんやけどなぁ」

 残念そうに口をとがらせるはやて。そんな彼女に、ユーノはなだめようとしたのだが、外野から横槍が入れられた。

 横槍の主は、当然というかディアーチェだった。そして、彼女に引きずられるように段々とガヤが騒がしくなっていく――。

 

「ふ、当然であろうが。ユーノはシュテルと並ぶ此方(ウチ)の参謀だぞ? 小鴉如き、敵うはずが無かろう」

「いやいや、なんでオメーが一番得意そうなんだよ?」

「そーですよぉー。アギトちゃんの言う通り、今の勝負ははやてちゃんとユーノさんので、王様(ディアーチェちゃん)のじゃないです」

「まあ、確かにディアーチェの弁は少し的を外しているかもしれませんが――」

「シュテル、貴様もか……ッ!?」

「いえ、別に全部が間違っているとは言ってません。ユーノがこういったことに強いのも事実ですし、彼がわたしと並ぶ者というのも間違ってません。――『盾』は常に『槍』の傍らにこそあるべきものですからね。ええ、間違っても別の者の脇になどありえません」

「おーい、本音漏れてるぞムッツリメガネ」

「うるさいですよ。普段は猪突猛進なのにこういう時には回りくどいんですね。その頭を少しは活かすことをお勧めします」

「あんだとゴラァ!?」

「何です? やりますか?」

「上ぉ等だ。吼えずら掻かせてやんよ! おい、リインとアギト。ちょっとお前ら審判役で付き合え!」

「え、あ、はいです!」

「別にいーけどさぁ、何で勝負するわけ?」

「ハッ、そんなもん決まってんだろーが。――そこら中にあるもん全部で勝負だ!」

「ふ、数をこなせば勝てるというその単純な発想など、速攻で叩き潰して差し上げます」

「言ってやがれ、勝つのはアタシだ――よぉし、早速行くぞお前ら!」

「うぇ、あ……ちょ……ひ、ひっぱらないでくださいぃ~!?」

「待てよヴィータ~!」

「なんかおもしろそーっ! ユーリ、ボクたちも行こ行こ!」

「あ、はい。じゃあ、行きましょうか、レヴィ」

「うん!」

「いやいや待て貴様ら! というかエキサイトしすぎるでない、他のお客に迷惑であろうが!!」

 

 ――と、そんなこんなで嵐が起こり消えた頃。

 部屋には結局、波に圧倒されてしまっていたユーノとアインス、のほほんと事の次第を見守っていたはやて、そして先程から盤面に夢中だったすずかだけが残った。

 なお、

「あれ? みんなは?」

 すずかは本気で気づいてなかった模様である。彼女のそんな様子に「すずかって、意外と大物かも」とユーノが思わず思ってしまったのも無理からぬことだったといえる。

 が、とはいえ残ったのが、先程はやてがユーノに出したメッセージでボードゲームをしようと集めた面子そのものであるため、余興の続行に問題はないのだが。……まあ、外に行った面子の行く末が少しばかり不安であるが、今は考えないことにしようとユーノは決めた。

「――さてと、まあギャラリーはいなくなってまったけど、集中しやすくなったと思えばそれはそれでよしとしよか。

 で、早速やけど次は……あ、そうや。ユーノくん、アインスに指導対局してあげて欲しいねん」

「わ、私ですか?」

「せやせや。だってアインスわたしとやと全然やし、それにユーノくんなら安心できるからなぁ~」

「信頼してもらえるのはありがたいんだけど……いいんですか? アインスさん」

「ああ、まあ今回は観客のつもりだったが、私としてもそこについては問題ない。いつまでもすぐ終わり、というのもなんだからな。お願いできるかな?」

「それはもちろん。じゃあ、よろしくおねがいします」

 こうして、ぺこりと頭を下げてアインスと盤を囲むことになったユーノ。

 だが、しかし……。

「……あぅ」

「…………う、うーん」

 ユーノをして首をひねってしまうほど、アインスはちょっとだけ弱かった。

 別に地頭が悪いわけではないのだろうが、どうにも素直過ぎて戦略の組み立てに向いていないらしい。 時たま八神堂に指しに行っているユーノであるが、アインスと盤を囲む機会は少ない。その理由を、ようやくここで知ったような気がする。

「すまない。これでは、つまらないというか……見込み無し、というか」

「うーん、でも……」

 別にアインスは覚えが悪いわけではない。結局、性格そのままに指して負けているのだ。ならば少し戦略というか、組み立てのパターンを覚えられればもう少しマシになりそうな気がする。

 なので、ユーノは早速それを実行に移してみた。

「アインスさん。今からパターンを説明してみるので、一緒に考えてみませんか?」

「あ、ああ。解った」

 説明を始めたユーノはアインスの横に移動して、手順を実に簡単に解いていく。

 その間、はやてたちはというと。

「あっちは何や忙しそうやし、わたしらもやらへん? すずかちゃん」

「うん。あ、オセロも持ってきたから、これやらない?」

「ええよー」

 あちらもあちらで、ボードゲームに興じている。……ところで余談だが、ボードゲームというモノにおいて、必勝法が存在しているものは非常に多い。ただそれは、互いに最善手を打ち合った場合の必勝――『運』の介在する余地のない『二人零和有限確定完全情報ゲーム』における場合の話だ。

 将棋のように持ち駒を変えられたり、単純に囲碁の様な盤上の組み合わせが膨大過ぎるモノのような場合、計算が追いつかない事の方が多い。オセロも六×六盤なら後手必勝だが、八×八になってくると組み合わせが膨大になり過ぎる。

 それに加え、人の感情による揺さぶりや読み合いが重なれば、必然悪手からの逆転なども往々にして生まれる。――が、あくまでゲームに全身全霊を賭けるレベルで競い合うのなら気にもなってくるだろうそれらも、日常の延長でしかないここでなら、ある程度戦えれば事足りるわけで。

「で、こういう時はこうで。こっちに来たら……」

「……なるほど」

 この場合なら、悪手ではなく、その都度考えて打てる程度の知識があれば十分。ユーノの教え方はそんなものであった。

 しかし、これがなかなか面白い。元々こういった駒を用いてのゲームの起源はどれもある一つに集約するとされており、最初は戦争の代わりだったとする説さえある。そう訊くと物騒だが、戦う上での条件を把握し動くという点ではBDなどのバトルゲームにも通ずるところがある。はやてがすずかに支援役としての技量を高める為にこういった特訓を進めたのも、その辺りがきっかけだ。

 正確に仲間たちの状況を把握し、相手の取りうる手を掌握し、盤面に足りない要素を補っていく。

 まさしくそれは、広域指揮攻撃型のはやてや、後方防御支援役のユーノやすずかの役割と合致するものだ。ちなみに言うと、アインスもはやてと同様に後方からの攻撃がBD内では主なのだが、彼女は近接戦闘もやたら強いのでよく前に出ていることも多い。その所為か、少し力押し気味なところがあるのは余談である。

「となるので、次はここに――」

「で、だからここ、といくわけだね?」

「はい、そのとおりです」

 そういった素直さや愚直さ、或いは指示を他者に頼る部分を少し直して行けば、アインスはかなり良い管制者になれそうな気がした。

 

 ――それからしばらくして、指導が一段落した。

 

「ありがとう、ユーノ。おかげでだいぶ分かってきた気がする」

「いえいえ」

 微笑みながらユーノはアインスにそういうと、丁度はやてとすずかも一段落したらしく彼らの方へとやって来た。

「どやった~、ユーノくん。塩梅は」

「よかったよ。そっちはどう?」

「ぼちぼちかなぁ~」

「……負けちゃいました」

 ちょっとしょんぼりしているすずかを見るに、どうやら軍配ははやてに上がったらしかった。しかし、勝負(ゲーム)勝負(ゲーム)。勝敗が決される以上、必然的にどちらかが敗れるのは自明の理であるのだから仕方がない。

 まあ、何時までも引きずる性格ではないだろうが、空気は変えておいた方がいいだろう。

 そう思ってユーノは、

「えっと、次はどうしようか?」

 と、三人に声を掛ける。

 するとみんなは手近にあるボードを眺め見るのだったが、割と長い時間を過ごしていた身からすると、そろそろ別のことをするべきなのだろうか? なんて思考の切れ目が生まれ始める。

 丁度それに合わせるように、再びユーノのスマホにメッセージが入った。

 軽い音と共に飛び込んできたそれは、薄々予想出来ていたが――案の定それは的中してしまう。

 

『――阿呆どもが少々熱中しすぎてダウンしておる。少し手を貸せ、ユーノ』

 

 それを見せると皆は苦笑いをして、早速ヘルプを飛ばしてきたディアーチェのところへ向かうことにした。

 

 

 ***

 

 

「……なんでこんなことに」

「いうな。――我とて、こうもこやつらが強情(あほう)だとは思わなんだのよ……」

 こめかみのあたりを抑えながら嘆息を露わにするディアーチェに、ユーノも少し引き攣った笑いで同意する。

 なお、視線の先には――

 

「「……きゅぅ……」」

 

 ――ほかほかと湯気を立てながら、完全にダウンしているシュテルとヴィータがいた。

 何故こんなことになったのかと言えば、時は僅かに遡る。

 先ほど勝負勝負と言って部屋を飛び出したのち、シュテルとヴィータはゲームコーナーや軽い運動の出来る外の施設を使ってなんでもかんでも勝負しまくっていたらしい。で結局、勝敗は同率のまま平行。最後に勝負という事で何を血迷ったのか、温泉での我慢比べに派生したとのこと。

「…………」

 聞いていると、なんとも本末転倒の様な。そもそも、何故我慢比べで勝敗を決めようとしたのやら。

「……精神力は……BDのシステム、でも……重要……ですから」

 ということらしいが、結末の見てくれは正直そんなに良くはない。休憩用の椅子に横たわりながら真っ赤になってのぼせているシュテルとヴィータを見ながら、ユーノはなんとも言えない気分になった。……が、このまま放っておくというわけにもいかないので、ため息を吐きつつも彼女らを介抱することに決めた。

「じゃあディアーチェ、始めよっか?」

「ああ。必要なものは小鴉らが売店に行っておるから、そのうち揃うだろう。今はとりあえず、扇いでやるとするか……」

 ひとまずはそれが得策だ。それにまだ時間も早いので、部屋に布団も敷かれていない。はやてとアインスが買い出し、リインとアギト、レヴィとユーリが部屋で二人の布団を敷いて待っている。少し熱が引いたら部屋まで運んでやれば、あとは時間が二人を回復させてくれるだろう。

「……それにしても」

「? なんだユーノ。我の顔に何かついているのか?」

「いや、別に大したことじゃないんだけど……」

「??? よくわからんが、言いたいことがあるならハッキリ言え。分からないままではこちらも気持ち悪い」

「……じゃあ言うけど、怒らないでね。

 なんていうかその、こうしてるとさ。なんだかディアーチェってお母さんっぽいなぁ――なんて」

「ハァ!?」

「う……だ、だってなんだかこれって、手のかかる子供の世話焼いてるみたいというか、そんな感じかなぁ……なんて」

 語彙に断定が無いが、ユーノとしては頑張った方だ。それに言えと言われたから言っただけであるし、と、なんだかちょっと意地にもなっていた。

「な」

 しかし、言われた方は堪ったもんではない。

「な、ななな、なにを言うておるかこの戯け!? そもそも我を捕まえて〝お母さん〟などとぉぉ~~っ!?」

 普段は尊大だが、我らが闇王様は存外乙女である。こんならしい状況でそんなことを言われれば、勝手に思考は妄想的な方向にいってしまう。尤も、本人的には気恥ずかしくも美味しいシチュであるのに変わりはないが……こうなって来ると、辛いのは介抱されている二人である。

 のぼせて頭の中がガンガンして返って『ハイ』になっている二人は、その後も垂れながされる夫婦漫才染みたやり取りを聴かされて閉口しながら、最後にこう思ったらしい。

 

 〝イチャツイテンジャネーデスヨ、コノイロボケドモ……〟

 〝……フフフッ、アトデ『オハナシ』デスネコレハ……〟

 

 と。――だが生憎と、冷静さを取り戻した王様に敵う筈も無く、ユーノもユーノで馬鹿なことをしたものだと叱った為、モヤモヤはその後も残り続けることになるのだがそれはまた後の話。

 取り敢えず今はまだ、

「そ、そもそもだな……お母さんなどと……大体相手もおらぬわ! っ、そ、それとも貴様……我のことを狙ってもおるのか!?」

「違うよ!? なんでそうなるのさ! ディアーチェのことは好きだけどさ……別にアレは雰囲気というか、印象がそうだったというだけで……」

「何だと貴様! 勝手に口説いておいてその仕打ちとは――は、恥を知れこの色ぼけめ! この節操無(おんなったら)しが!」

「なんか被害(ごかい)加速(ひだい)している……!?」

 暫くこれが続いていくのだった。

 

 〝…………(怒)…………ッッ〟

 

 のぼせた二人のイライラと共に。

 加速を続ける受難は、ちょっとだけの間を置いて更に進んでいく――――

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