~魔法少女リリカルなのはReflection if story~   作:形右

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 ――Attention!――

 以前も書きましたが、改めて書いておきます。
 ここからの回想パートにおけるエルトリアの過去については、Detonationの本予告を見る前に勝手に考えた大筋に後追いで惑星再生委員会などの諸々の設定を足したりしたものです。
 そういった独自解釈多めなので、もしもお気に召さない場合はブラウザバックをお願いいたします。
 また、Detonationの公開後は映画沿いのルートを書いていくので、そちらもお楽しみ頂ければ幸いです。
 では、独自解釈OKという方はどうぞお読み下さいませ。

 なお、以下はいつも通りのポエム的な前置きでございます(笑)


 ***


 ――そこは、美しい星だった。

 誰しもが幸福に生きられたはずの場所で、数多の命を育むゆりかごでもあった。
 けれど、そんな時間は終わりを迎え、ある緋色の記憶が刻まれる。

 誰にも知られることのなかった、忘れ去られたある出来事。
 絆があって、傷が生まれた。
 小さく幼かった――〝悪魔〟と〝天使〟の物語である。


第二十二章 ――〝追想Ⅰ〟――

前奏 ある星の病から始まった運命

 

 

 ――そこは、夢の痕。

 

 優しい世界だった……あるいは、そうなるはずだった世界での物語。

 

 

 ***

 

 

 『惑星エルトリア』――。

 通常の次元世界(かんりせかい)の区分から離れた、遠い星。そこには、ゆっくりとした〝死〟が迫っていた。

 星の病。生命を育むゆりかごである星は、ゆっくりと自らの(いのち)に終止符を打とうとしていた。

 だが、自然と言えば自然なこと。

 何事にも終わりはある。ただ見る者にとって、長い時間を経るか否かという、ほんの少し早かった終わりというだけなのだ。

 けれど、心を持つ生き物は故郷(ふるさと)に郷愁を抱く。

 悪いことではない。これもまた、とても自然なことで――そこには、ある希望(ユメ)が生まれた。

 自分たちの故郷を救いたいという、祈りにも似た願いが。

 

 ――そうして、一つの組織が立ち上げられた。

 

 『惑星再生委員会』と呼ばれるそれは、エルトリア復興の為に研究者たちが集まって作られた組織だった。幾つかの分所に別れながら、彼らは『死蝕』によって荒れ果てていく星の復興を目指し、命題に挑み続けた。

 ――箱船(ゆりかご)の再生という、答えの見えぬ命題に。

 そして、その中でも特に進んだ研究を為していたのは、『ヴィルム・アデノ所長』率いる第七研究所。後年における天才(グランツ)の登場まで、ここが特に成果を上げていた。

 この研究所で研究の命題とされていたのは、『星の循環機構の回復』。

 砂漠化による被害を押さえる緑化の研究も必要ではあったが、星を蝕む病を改善することによって、一部ではなく惑星全体の『再生』を果たすべきだと、研究主任である所長は考えていた。……しかし、既存の技術では実現は不可能に近い。

 そうした結果の出ない再生の研究に並行して、人々は〝星の海(宇宙)〟への進出を進めていく。

 幸いにして、エルトリアの外部惑星開拓は順調に進み、いくつかの『コロニー』には繁栄していた頃のままの街が再現された。このままいけば、いずれ別の星を開拓し第二の故郷とすることが出来るかもしれない。……ならば、星を甦らせるよりも外の星を開拓する方が良いのではないか? という考え方が一般化され始めたのだが、ちょうどその頃、ある一つの研究が成果を結んだ。

 ――〝遺跡板〟の開発である。

 この研究によって、演算装置として作られたこの端末に術式を制御させることで『フォーミュラ』という外部エネルギーへの干渉を可能にするまでに至る。

 が、〝遺跡板〟を介しての術式作用では惑星の再生を果たすことは出来なかった。これは術式の特性と、単純な出力不足によるものだ。

 元々、外部への干渉という作用に強く寄せられた『フォーミュラ』は、エネルギーを生みだす事が出来ない。惑星の『死蝕』を止める為に星へ作用させようとしても、根本のエネルギーが足りなかったのである。

 しかし、代わりに解ったこともあった。それは、星の再生には、エネルギーが必要だということ。

 『死蝕』は星の活動を停止させるものだと考えられていたが、少しだけ認識が異なる部分が明らかになっていく――。

 研究者たちはこれまで星の活動を活発化させるようなアプローチをとってきたが、『死蝕』の本質はそうではなかった。

 水の腐敗や、砂漠化は副次効果でしかない。

 環境を変えていく『死蝕』は、文字通り星を変えていくもの。

 星だけでなく、生物にまでも影響を与える何らかの『因子』のようなものを発生させている事が解ったのである。

 生物を新たな環境へ適応させる――星の病の本質は、言うなればそういうものだ。

 ある意味、星の意思によって生きるべき生命(いのち)の選別を行っているとも言えるだろう。実際、人間側(こちらから)は『危険生物』などという区分に入れているが、()()()()()()()()()生物もかなり確認されている。

 つまり『死蝕』とは、星の循環不全から起こったもの――言うなれば、命そのものの限界を理解したように起こった現象である。残された最後の時代(じかん)を、適合できた生物のみで過ごせる環境を作っているようなものだ。

 そして、その選別に人間は選ばれない。

 この結果は、救おうと願い、愛した星から見放されたようなものだ。

 導き出された答えに、研究者たちは直面した危機の恐ろしさを改めて理解した。

 ……残された時間は、あまりにも少ない。おまけに再生には莫大なエネルギーが必要だという。

 解けない命題にしがみつくよりは、大人しくこのゆりかごを放棄する方が賢明だと言えるかも知れない。

 だが、所長たちのチームは諦めなかった。

 抗うと決めたのなら、最後まで抗おう。自分たちの愛した故郷(ふるさと)を救う手を止めては、次の世代に残せた筈のものさえ手放してしまうことになる。

 

 ――そう決めて、彼らは次のアプローチを思考し始めた。

 

 そのアプローチとはまず、次世代のエルトリア人の適合強化。

 星の環境に合わないのであれば、此方が強くなることで適合を果たすという研究である。

 ただ、もちろんこれが全てだったわけではない。あくまでこれは、『死蝕』が人にすら影響を及ぼすという部分を解消するため、星の海の外で別の惑星(プラント)を開発する際の適合率を上げるためだ。

 幸いこの開発は順調に進み――

 『フォーミュラ』の個人制御のために『ナノマシン』を投与して、自然成長過程での身体機能の強化。

 そこから『ナノマシン』の循環により体内でエネルギーを発生させて、『ヴァリアントシステム』などへの供給システムへの派生。

 それらの術式制御に関連して、過酷な環境での活動やより細やかな術式制御を可能にする制御防護服(フォーミュラスーツ)の開発が進められていった。

 

 

 ***

 

 

 しかし、まだこれは序の口。本命の研究は、この先にあった。

 所長たちが取り組んだ本命とは――〝外へ干渉する〟というフォーミュラの特性を活かして、外の世界のエネルギー、もしくはそれに関する技術を此方の世界で取り入れようというものだ。

 現実的かと言えば、かなりの賭けではあった。そもそも人の手で、全ての世界を探れるわけもなく――最初から知識(そういったもの)受皿(うつわ)があるのなら別だが――手探りで他の世界を調べようというのだから、それが賭けでないはずもない。

 当然ながら、研究は滞ってしまう。

 外への窓口(ゲート)を作ることが出来ても、向こうのデータを全て閲覧することなどほぼ不可能。

 門と門を繋ぎ合わせても、間に生まれた領域(クリアランス)を完全に埋めたようにして情報を扱うことは出来ないが……その不可能を可能にするために、もう一つの研究が始まった。

 

 ――それこそが、〝遺跡板〟を介した外部探索を目的とした『人工知能(けんさくしゃ)』の開発。

 

 再生技術を外部から得るために、星と星を繋ぎ架け橋を為す者――《インポート・レビルス・インテリジェンス・サテライト》――通称、《I.R.I.S.》の誕生だった。

 

 

 ***

 

 

「……じゃあ、貴女は」

「勘違いしないでもらえる? 私は、()()()()()()()()()()()()()()

 心のない機械なんかじゃなく――作られた命だったけど、確かにヒトとして望まれた命だった。

 ……そう。所長(おとーさん)は、確かに私のことをヒトとして尊重してくれていた。だから私も生まれなんてどうでも良かったのよ。

 生み出された経緯も目的も、貰った愛情や心に比べれば些末なものだから……でも、そうね。

 もしも私が本当にただの子供だったら、所長(おとーさん)と一緒に星の海で暮らすだけだったかもしれない。

 『死蝕』の影響で()()()()()()みたいに長くなかったかも知れないけど……それでも確かに、あんな結末(おわり)にだけは成らなかった。……絶対に」

 

 

 

 ――そう。

 望まれた命は愛に包まれ、ただ一生懸命(ひっし)に生きていた。

 大切だから。

 傍にいたいから。

 期待に応えたいから。

 その行為はきっと、虐げられていたとしてもそうだっただろうし、そもそもイリスは虐げられるなんてことはなかった。

 ……いや、だからこそだろうか。

 

 彼女が必死だったからこそ――

 逆にその意思が、禁忌の箱(チカラ)に触れるきっかけになってしまったのだから。

 

 

 ――そして、穏やかだった筈の日々が紅に染まる。

 闇に眠っていた、一羽の〝悪魔(てんし)〟との出会い。本当の始まりは、その出会いから始まった。

 

 

 

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