~魔法少女リリカルなのはReflection if story~   作:形右

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終章 遥か先への星月夜 ――Starry Night――

 劇終 ――Last_Story――

 

 

 

 長い長い夜が明けて、人々は物語から覚めていく。

 ある出会いから三度目の物語。それは、ある幸せを取り戻そうとした少女の、夢を砕いた物語だった。

 失ったものを取り戻そうとして、何もかもを喰らい尽くそうとした。

 仮にその先で、本当に何もかもが取り戻されたのだとしても――今、この時を失うことに変わりは無い。

 だからこそ、彼女を止める為に〝魔法使い〟は戦った。

 彼女が必要としなかった今に、確かな価値をみいだしていたからこそ……。

 

 そうして、結末はおとずれた。

 

 ある敗北と、ある失敗を経て。

 闇を越え、夜明けの紫天から更に時を経て。

 

 ――――長い長い物語は、終焉を迎えることとなった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 六つの砲撃魔法によってユーリを縛っていた呪縛をほどいた後、間を置かずして海の底からユーノが引き上げられた。

 幸い、『フォーミュラ』による生命維持が効いていたらしく、大事には至らなかった。

 もちろんそれなりに重傷なことに変わりは無いが、少し療養を経れば日常へ復帰するのはそう遠くないとのこと。

 ただ、無茶をした所為もあってか、目が覚めた直後――いの一番にそれを注意されてしまった。シャマルからキツく念を押されるに始まり、なのはやフェイトもユーノを安静にさせるためにしばらくの間、ユーノがベッドから抜け出さないように見張っていたくらいだ。

 が、彼の問題は大まかにはそれだけ。

 残された問題は、無断の異世界渡航を行ったフローリアン姉妹と事件の首魁であるイリス。そして、彼女に協力する形を取ってしまった三人の――当人たちは、制御機構の構成体ということで〝マテリアルズ〟を自称している――少女たちの方だ。

 アミタについては、管理局が適応する大きな罪状は『異世界渡航』のみであり、その他の戦闘行為については二年前の事件でなのはやフェイトがそうだったように、嘱託の戦闘員の扱いにするという結論に至った。

 キリエは異世界渡航の他、イリスと協力しての盗難行為及び破壊行為を行ったが――直接的な戦闘は〝封絶結界〟の中だったことや、その他についても『ヴァリアント・システム』を技術提供という形で修繕に当てた成果により多少の情状酌量を認められた。このあたりは、魔法や外の世界の技術を『管理外世界』へ漏らそうとしない管理局の方針を、配慮として適応した形だろう。

 マテリアルズについては、出自の複雑さや見た目の年齢、本人たちが管理局の側に裁定を任せた部分からの配慮が受けられた。尤も、それでもアミタよりは罪が重く、少しの間は監視付きの身となる。

 ユーリについては意志を奪われていたことから、更生以上の措置は執られない。

 加えて『夜天の書』に類する出自から、はやてが便宜を図り一時的に身元引き受けを買って出てくれたこともあり、マテリアルズたちの監視期間が明ければ彼女らの意向に沿った進路を用意するとのことだ。因みに、監視を担当するのも八神家であり……離れていた仲間が再び揃ったのだから、不自由な分、少しでも一緒に居られるようにという配慮だったりもする。

 そして、イリスはというと――。

 彼女という一個体は、最後にクロノとユーノの目の前で()()した。

 ユーリに乗り移っていたというところまでは他の目に触れていたが、それ以後については彼女の存在は確認されていない。このため、嘗てあった『PT事件』同様――被疑者死亡ということで捜査は打ち切られた。あくまでも、表向きには、だが。

 

 

 時空管理局・本局――その施設の一角である、医務室の中にて。

 一人の少年がベッドの上でなにやら作業を続けており、それを小さな結晶が宙を漂いながら見ている。

 《――ホント、よくやるわね》

 目の前の少年に対し、小さな結晶から投影された少女はそんなことをいった。しかし、彼女の皮肉はどうやら彼には効果が薄かったようだ。

「まあ、それなりに……。叶える手伝いをさせて欲しい、ってユーリに言いましたから」

 応えながらも、彼の手は止まっていない。操作されている仮想窓には、いくつかの基体を繋ぐネットワークの構築術式が紡がれていた。

 こうした措置に対し、イリスはどうにも素直にはなれないようで、

 《……そんなもの創って、わたしが乗っ取るとか思わないわけ?》

 と、イリスは訝しげに訊いて来たりもした。だが、ユーノからの返答はいたって簡素なものでしかなく。

「最初から乗っ取る気があるなら、そんなこという必要さえないですから」

 なんていわれる始末だ。それは半分が本音で、残り半分は現状を鑑みた単なる事実でもあった。

 故にか、その返答に対する反応は芳しくない。

 《…………やっぱりわたし、アンタのこと嫌いだわ。ユーノ》

 ムスッとした声を返されると、ユーノも苦笑するしかない。実際のところ、そういったネットワークへ彼女を解き放ってもいい程度には、機能制限を掛けているのだから。

 ――そう。イリスは完全に消えてなどいなかった。

 ユーノがあの刹那。ユーリから引きはがされていたイリスのデータを取り出し、ユーリが用意した媒体(けっしょう)の中に納めた。ただ本人は、遺跡板に閉じ込められているのと変わらないと一貫して不満を隠さない態度を取っている。

 まあ確かに、助けたと言うよりは閉じ込めているという表現の方があっているかもしれない。

 一線級の魔導師に掛けられるリミッターと同じ、抑圧の術式。イリスがかつてユーリに用いていた洗脳・制御用の物ではなく――いうなればフィルタリング機能のようなものが掛けられている。

 イリスを無力化した状態で事件の首魁としての罪、それらを償う為の措置がこれだった。

 そんなわけで、一先ずはユーノが彼女を預かっている。現状、彼女を制御出来ているのは彼しかいないというのもあるが、彼女にしか出来ない償いの形を彼が提案したからだ。

 いずれ、ユーリたちは『エルトリア』へと旅立つ。

 今度こそ彼女らは、命に溢れた星を取り戻していく。

 新しい仲間、家族とともに。……そして、そこにはイリスも居て欲しい。あの時、告げられたユーリの願いを聞き入れたユーノが取った手段の一端がこれだ。

 惑星再生に役立つ資料がとても沢山(・・)ある場所に心当たりがある。――そう言って、ユーノはイリスを『無限書庫』へと招待することに決めた。ユーノが退院するまでは実際に行くことは叶わないが、簡単な説明を受けただけでもイリスは理解しただろう。

 生半可ではない罰が自分には掛けられていると。

 彼女に課せられたのは、古代ベルカ関連の書籍が収められている書架の内、五つの区画(エリア)の整理だ。

 かつて、エルトリアから此方へ来るまでの間に、沢山の星々の情報を探索していた彼女にはうってつけの筈だ、と。

 が、そう口にしたユーノを引きつった笑みで見ながら、イリスはこう言ったそうだ。

 

 ――――顔に似合わず、意外と鬼ね。アンタって。

 

 仕掛けられたのは、同じく知恵の海を過ごした二人にとって相応しい舞台での勝負。

 場所と知識、そして友へ繋がる路を用意しながらも――決して途切れることのない、無限の知恵の迷宮での根比べだった。

 皮肉気な感想を宣ったイリスに笑みを返すユーノ。

 こうして、彼と彼女の次なる戦いが幕を開ける事となった。

 

 ――が、それはそれとして。

 こうして事件は終わり、日常は返って来た。

 

 ほどなくして、病室を訪ねてきた友人たちとの時間が訪れた。

 同時に、イリスとユーリ、マテリアルズとの語らいが始まり、アミタやキリエとも言葉を交わす。

 色々あったが、傷つけあうだけの時間は過ぎた。

 たったそれだけでも、とても救われた気持ちになる。

 ユーリは捻くれたままのイリスに対しても根気強く話しかけていて、他のマテリアルズも同様だ。アミタはまだ複雑なようだったが、罪を雪いだのち、『エルトリア』に来るのを楽しみにしていると告げた。

 あの星は、イリスにとっても故郷なのだから、と。

 そして、キリエは――。

「あのねイリス、わたしもちゃんと言っとかなきゃいけないことがあるの」

 イリスに、自分の気持ちを伝える。

 《……なによ》

「うん……。まずは、今まで助けてくれてありがとう。色々あったけど、確かにイリスのおかげでわたしが進めたところもあったから。そのお礼が言いたかったの。でも、わたしが弱かったのも確かだから……。頼りっぱなしで、ごめん」

 これまでただ頼っていたことへの謝罪。同時に、お礼。助けてもらったこと、一緒にいてくれたこと。過ごした時間を嘘にしないために、キリエは伝えるべきことをちゃんと伝えようと思ったのだ。

「だから、これからはちゃんと胸を張れる自分になって見せる。イリスがエルトリアに帰ってくるまでに、わたしも頼りっぱなしだった自分を変えられるように頑張るから――そうしたら、今度こそ……イリスの、本当の友達になりたい!」

 利用なんて言葉にならないくらい。対等で、本当の友達になるために。キリエはまっすぐ、イリスへそう告げた。

 《…………》

 それに対する返事(コトバ)は、無かった。しかし、それでも『エルトリア』は彼女を待ち続けると告げると、イリスは小さく頷いた。

 涙はない。あるのは、ただ穏やかな始まりの音。

 緩やかに過ぎていく時間が、そんな音色を告げていた。

 

 

 

 ***

 

 

 

 それから、約一週間後。

 この頃になると、もう既に事件の事後処理の形は全て整っていた。

 

 しばらくの間ではあったが、とても色々な事をした。

 

 《オールストン・シー》へ遊びに行ったこともあれば、『無限書庫』の見学や、あるいは事件から間もないというのに行われた模擬戦。そして、そこでシュテルが相方に、病み上がりであったがユーノと是非組んでみたいと妙に強く指名したり、挙句なのはと〝師匠(せんせい)〟と〝弟子(おしえご)〟の立場を争ったりなど、様々なことがあった。

 ……けれど、別れの時は通い始めた絆とは裏腹に、遠慮なくやって来る。

 キリエの解放に合わせ、アミタとマテリアルズ、そしてユーリはエルトリアへと旅立つことになった。

 だが、そこに涙はなく――。

 いずれまた、訪れるだろう出会いのために、皆は笑顔で一度の別れを受け入れた。

 

 

 

「イリス。いっぱい連絡しますね」

 《いーわよ、どうせ書庫(あそこ)の整理で手一杯だろうし……。早く終わらせれば、それで済む話でしょ》

「――はい、そうですね」

 

「色々ありがとね、フェイトちゃん」

「こちらこそ。キリエさん、お体には気を付けて」

「うん。フェイトちゃんも元気でね」

「はいっ! レヴィも、またお腹出して寝ちゃだめだよ?」

「もぉ、うるさいなぁ……。ボクは風邪なんか引かないもんね。何せボクは王様の剣で、力の役を担ったマテリアルだもーん」

「それでも、だよ。レヴィが元気でいて欲しいから、わたしは心配するの」

「……むぅ」

「レヴィ、約束だよ?」

「…………うん、わかった」

 

「王様も元気でなぁ~」

「ハッ、これで貴様の馬鹿面を拝まずに済むと思うと清々するわ」

「もぉー、王様ってば、相変わらずいけずやねぇ」

「やかましい。……だが、まあ、なんだ。一応、礼くらいは言っておくか……その、世話になったな」

「ふふふっ、ええてええて。ユーノくんが繋いでくれた回線もあるし、話そうと思えば話せるみたいやから。またお話ししよ?」

「……はぁ、気が向いたらな」

「ありがと~」

 

「ありがとうございましたユーノさん。本当に、御迷惑ばかりおかけして……」

「いえ、こちらもアミタさんたちには沢山協力してもらいましたし。それに、またきっと会える時も来るでしょうから」

「……ええ。きっと、そうですね!」

 

「ナノハ。再戦はまた次の機会に。――まあ、今はアミタに譲りましたが、今度は師匠もろともいただいていきますので」

「うん。……でも、そんな事させないよ。ユーノくんはなのはのだから」

「どうでしょうかね。わたしにはイリスを送りに来て、そのままエルトリアで定住を始める師匠の姿が思い浮かびますが」

「そんなの、ただの夢なの。ユーノくんは……」

「そう言いつつ、時折奪われかけていたオリジナルに負ける気はありません。時代は常に新しい方へ流れますから」

「王道は不滅なの。絶対最後には取り戻すんだから……!」

 

 

 和やかな別れに、ちょっとだけスパイスを織り交ぜ……別れがやって来た。

 手を振りながらエルトリアに帰って行く面々を見送りつつ、ユーノはふとこれまでの時間を思い返す。

 夏休みの初日、思えばそこが始まりだった。

 たくさんの出会いがあり、今の別れへと至ったこの時間。とても大切なものになったこれは、きっといつまでも心に残り続ける。

 

 ――――また、いつかの物語に。

 

 遠き星へと続く道を辿り、空へと旅立って行った少女たちを見送りながら。

 ユーノは小さく「また、いつか」と呟いた。傍で聞いていたなのはとイリスが、対照的な反応を見せる。

 が、きっと思い浮かべていたことは同じだろう。

 

 

 そうして、再び見える時を思いながら、物語は幕を引いた。

 夏の事件はこうして終わり、夏のひと時はまだきっと続いていく。

 

 それは遥かな星であり、また更なる未来へと今を繋ぎ続ける。

 可能性という名の果て無き道を、こうしてまた――少年少女は歩み出すのだった。

 

 

 

  ~Reflection IF‐for Another Detonation~ FIN

 




 はい、どうもいつも通りの駄作者です。
 ついにラストまで来ました……。畳み方雑だったかもなぁと思いながらも、此方の√でも続編とか書ける保険残したい未練が少し(笑)
 にしても、だいぶ好き勝手に書きましたが、どうにか終われてよかったです!

 いい加減しつこいと言われそうですが、とにかく自分はDetの本予告を見るまでイリス単体の黒幕だったらどう終わるんだろう? と考えながら、無い頭を絞りつつ……なのぽの設定とか、劇場版時空の設定とかを漁っている内にこんな形に辿り着きました。
 いやー、それにしてもホント書きながら思ったのは、もう少し早くなのはシリーズにハマれていたらなという事です。設定集とかいろいろ某通販サイトで買ったりしてましたが、流石に全部は無理でした。……金銭的にも(笑)
 思えば高校二年くらいの頃にVividのアニメやってるのを知って、有名なんだよなという程度の認識から見始めたなのはシリーズ。当初は日常? 格闘? 魔法は? なんて思いながら見てまして(笑)
 原点は前三作だと知って、とりあえず劇場版から……と、そこからハマって創作に乗り出し、三年くらいですかね。こんな未熟者ですが、皆様に読んで頂けて幸せでした。

 ここまで読んで頂いた読者様方に支えられここまで来られました。
 今後も本編沿いのイフを書いていくので、そちらの方も読んでいただけるように頑張りたいと思います!

 次いで、少しばかり言い訳タイム(笑)
 こちらの√で自分が捏造した諸々の設定を簡単に説明していこうと思います。
 もし更に聞きたいことや、ツッコミたいところがあれば、メッセージなどでお気軽にお寄せ下さい。

 まず初めに、イリスとユーリの関係について。
 実際のDetとは異なり、GoDのマテリアルズとユーリの関係に近いもので、イリスの側が後付けされる様な形にしてみました。ウィルスコードだけでなく、ユーリそのものを器にできたら面白いかな、と。

 次に『惑星再生委員会』についてですが、此方については本当掘り下げ不足でした。
 でも、こちらではあくまでイリスの復讐劇という形でいたかったので、嘗てあった『大切な場所』という形で思い出のままにしてみました。
 ちなみに所長の名前はキャスト欄に所長としか書いてなかったので、アンディとジェシカの苗字とか〝ウィルスコード〟からも『ヴィルム』と、ペントンとかウェバーリーといったものと関連がありそうなところから『アデノ』を想定してみたり。

 イリスの方の《I.R.I.S》はとりあえずそれっぽくなるように《Intelligence Rebirth Import satellite.》なんて名付けてみたり。意味は継ぎ接ぎなんですが、とりあえず除法を輸入する者。星から放たれた星、みたいなイメージの語句を繋げてみました。
 なお、イリスが創られたのが『第七研究所』というのは、実は意味があります。
 いや、まあ実はなんていうほどでもなく、たぶん気づいた方もいらっしゃったんじゃないでしょうか?
『イリス』はギリシャ神話における虹の女神の名前で、それに由来する小惑星もあったりします。英語読みだとアイリスと読んだり、アヤメの華の由来だったりもします。なので、彼女の生まれた場所を『第七研究所』としてみました。これは自分が惑星再生委員会をもう少し大きな組織体系で、グランツ博士もその流れを汲んで研究を続けていたという感じで書いていたからです。
 実際のDetの方では、7という数字は個体番号の方になっていました。……劇場でちょっと嬉しかったのは内緒です(笑)
 そして、これが今回の話のラストへ繋がる構想を思いついたきっかけでもあります。
 元々イリスとユーノくんが似ている様な印象は受けていたのですが(RefのコミックスとVividの9巻を見ると割と似てると思います)フェイトと同じようにプロジェクト名が冠されたとしたらいいだろうなというアイディアが浮かんだあと、元々冠された意味を探していたら女神の名前に行き当たりました。
 イリスという女神はヘラの腹心の部下だったという記述があり、そのヘラはローマ神話ではジュノーと同一視されています。そして、ジュノーには別名があります――それが、『ユーノー』です。
 はい、そうです。
 これなら問題はないと思って、イリスをユーノくんの部下的な位置に置くENDにしてみました(笑)
 随分と短絡的ですが、これでこの√ではイリスが罪を雪ぐまでの間エルトリアとのつながりが保たれ、且つイリスが司書として、天敵の部下として使われるなんていう続きへ繋げられる要素を残した終わりにしてみたというわけです。

 大まかな説明は大体そんなところで、ひとまずこのルートは幕を閉じます。
 そして此処からは、本編沿いのDetonationを書いていきますので、そちらの方もよろしくお願いします!
 皆様に楽しんで頂けるようなものを書いていけるように頑張ります^^

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