~魔法少女リリカルなのはReflection if story~   作:形右

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第二十二章 迫る影、隠されていたもの

 罅割(あかさ)れて行く、記憶(しんじつ)

 

 

 

 三つの魂が、己が主人を取り戻した頃。

 スカイツリーへの侵攻を掛けた固有型と『機動外殻』を下したシャマルは、シグナムと連絡を取り合っていた。

 

「シグナム、そっちはどう?」

『線路内にいた量産型は殲滅した。そちらはどうだ?』

「こっちも全員拘束したわ」

 言いつつ、ちらっと拘束した固有型へと目線を向ける。

 おとなしくしてくれると助かるのだが、こちらは未だに往生際も悪く「離せ」と拘束を外そうと藻掻いている。そんな様子にため息を零しつつ、シャマルはシグナムとの交信に意識を戻す。

『なら良いが……。本体の行方と、他の戦況はどうだ?』

「そっちは大丈夫。今、リンディさんと本部が本体を探してくれてるから」

 現在、リンディをはじめとした結界班が本体の行方を捜索している。

 先刻クロノが本体と僅かながら通信が出来た為、今はそこから場所を洗い出している最中だ。

 加えて、群体と本体の差異についての()()()()()()()()()()()。発見は時間の問題だろう。

「群体イリスの退治も各地で頑張ってるわ。このまま行けば、結界から逃がす心配はなさそうよ」

『そうか。本体が早く見つかるといいのだが……』

 それでも、気がかかりなことはまだ残されている。シグナムの言い淀んだ部分を引き継ぎシャマルはこう言った。

「ええ……。あとは、ユーリちゃんと戦っている王様たち」

『……だな』

 あの三人と、ユーリとの浅からぬ関係。その決着が、悲しいものでないようにと、そう祈りながら、二人は次なる報告を待っていた。

 

 ……が、そんな願いとは裏腹に。

 この時を境にして、決定的なまでに戦いの流れが変わり始めていた。

 

 ―――次にシャマルの元へと飛び込んで来たのは、救援要請。

 たった一発の銃弾、たった一人のイレギュラーによって、場は再び狂ったように変わりだした。

 

 

 

 ***

 

 

 

 ユーリとの再会を果たした三人の元へ、橋の上より一発の銃弾が放たれた。

「っ……!」

 新たな敵の出現。迫る脅威を察知し、シュテルはそれを防ごうとした。……が、今の彼女は先ほどの戦いで魔力の大部分を使い切った状態である。結果、完全な守りとはならず、自身へのダメージを少なからず負ってしまう。

「が、ぁ―――」

「シュテルッ! この……ッ!」

 倒れ伏せたシュテルを案じながらも、ディアーチェは襲撃者へ向け魔力弾を放ち迎撃を試みた。けれど、彼女もシュテル同様に、魔力はほぼ枯渇した状態だ。通常通りの威力を伴わないそれらは、酷く弱々しい。

 彼女のそんな抵抗を嘲笑うかのようにして、襲撃者は彼女らの下へと降りてくる。

 橋の支柱から、ゆっくりと四人の元へと近づいてきた姿は、あまりにも異様だった。身につけている防護服(フォーミュラスーツ)から、かろうじて群体イリスの一人であろうことは分かった。

 しかし、それにしてはおかしい。何故かといえば、それは。

 

「―――なかなか思い通りには行かないものだね」

 

 低く響いた声。紫の発光線(フォトンライン)の引かれた、がっしりとした無骨な体躯。そう、現れたのは確認されていない男性型……いや、その呼称は正しくはないのかも知れない。

 過去の記録でもそうだったが、イリスはあくまでも女性型として造られた。故に、彼女を基体として自己増殖する場合、生まれてくるのは原則として女性型となる。

 無論、例外もあるだろう。だが、現状では自身の戦力として群体を統率せねばならない以上、わざわざ元の性別を外す必要など何処にも無い。関東を丸ごと攻め立てようとするかの如く、ここまでイリスは膨大な戦力を放ってきた。その中で、たった一体。しかもこの場でのみ理を外してくるのは、あまりにも不自然すぎる。

 尤もそれは、あくまでも彼女たちが完全なる一枚岩だったら―――の話だが。

「ッ⁉ ま、さか……」

 だんだんとハッキリと姿を見せた、そのイレギュラーに、ユーリが酷く動揺を覗かせる。

 けれど、襲撃者は構わず言葉を続けた。まるでこの状況さえ、夢へと続く一環として、楽しんでさえいるかのように。

「ユーリと猫と魔女たち……。全部を()()()が相手にするんじゃ、流石に手に余るらしい。

 ―――()()()()()()だ、ここは一肌脱ぐとしよう」

 その上、その固有型は『イリス』と口にした。

 自分と母体(オリジナル)を切り離したその言葉は、つまり〝彼〟が単体での自我を持つということ。

 しかも〝彼〟は今、イリスのことを何と呼称した? ……その言葉に、ユーリの脳裏に引っかかっていた疑念が、いま確信へと変わる。

「……そんな、あなたは……ッ‼」

 ユーリが、〝彼〟の名を口にしようとした、その時。

 種明かしはまだ早いと子供に告げるような笑みを浮かべながら、〝彼〟は機構起動の為のコマンドを発声する。

 

「―――〝アクセラレイター・オルタ〟―――」

 

 瞬間。

 四人の反応速度を大きく上回った、紫の閃光となった〝彼〟の剣先が、彼女らへと振り下ろされた。

「な―――」

 油断などしていなかった。……否、油断などできる状況ではなかった。

 だというのに、認識を飛び越えた力が、いつの間にか自分の腕を切り落としていたという事に、シュテルは遅れて気づいた。

 痛みを感じる暇さえも与えず、その刃は自分たちの命を刈り取ろうとしている。

 次いで、乖離(かそく)した視界(しこう)の中で、ユーリとレヴィが弾き飛ばされたのが見えた。ユーリは素手で攻撃されており、レヴィはシュテルよりも反応が速く、何処かを失ったわけではないが……それだけでも十分に、自分たちはこの敵に勝てないと厭でも理解できた。

 ―――しかし、そんなことよりも先に、しなければならないことがある。

 最後の意地を貫き通し、シュテルは己が王へ突き立てられようとしていた刃から、ディアーチェを庇った。

「―――ぐ、ぅ……ぅぁ―――ッ」

 中身を掻き回される感触。遅れて、それ以上に焼けつくような痛みが襲う。

 脳裏が激しく火花を散らし、断線(ショート)した。身体がこれ以上意識を保つのを拒否している。だが、それでもディアーチェだけは守りたいという意地が、彼女の意識を支えていた。

 それが功を奏したのか、敵はこれ以上の長丁場を嫌い、剣先をシュテルの腹から引き抜くと、倒れ伏せたシュテルに構わずディアーチェを峰で吹き飛ばす。

 命までは刈り取れはしなかったが、これ以上戦えるはずもない負傷を負わせたことで良しとしたようだ。

 けれど、繋ぎとめた命さえ、今はその価値を素直に認めきれない。当然である。他愛のない路傍の石に躓き、蹴り飛ばしたかのような気軽さで捨て置かれている今を、どう誇れというのか。

 その上、

 

「この子は連れて行くよ―――

 ここまで力をつけていたというのは意外だったから、正直君たちを切り捨てるのは惜しい気もするけど……これ以上のロスは流石に困る。尤も、ここまでも十分トラブル続きではあったけどね。

 まあ―――なぁに、最後に笑えばいいのさ」

 

 取り戻したはずの宝物を、得たはずの力を完膚なきまでに踏みにじられて……まるで、元の無力な猫に戻ってしまったかのような気分で、三人は無様に転がされていた。

 

 

 

 *** 侵食(けが)された記憶(こころ)

 

 

 

 一方、現場が更なる錯綜を見せ始めた頃。

 戦線から離れた場所で状況を観測していたイリスの元へ、司令部に配備した通信兵からの報告が飛び込んできた。

 告げられた内容そのものは、いたってシンプル。()()()()()()戦いの結末についてのものだ。

 しかし、

『ユーリ、意識消失―――次いで、〝わたしたち〟の誰かが、ユーリを確保したようですが、通信がつながりません。ですが、確保時に、交戦していたシュテル、レヴィ、ディアーチェの三人にも共に意識不明の重傷を負わせたようです』

 告げられた報告(モノ)は、自分の支配(かんり)の外にあった。

「…………何が起きてる……」

 訝しむように呟きながら、イリスは考えられる可能性を反芻する。

 が、結論は一つ。―――在りえない、だ。

 この戦いはすべて、自分の意思と支配の下に成り立っている。()()()()管理局側(むこうがわ)に協力したのは半ば予定外だったが、それ以上の意味などない。当然だ、自分の計略の下で蘇らせたのだから、どこに居ようと把握できて然るべきである。

 だというのに、この期に及んで―――それも、自分たちの中から異物が発生するなんて事があって良い筈が無い。

 ぎり、と忌々しそうに歯軋りをして、イリスは他の戦闘区域を睨みつける。未だに戦力を投入し続けているのに、どうしてこうも戦いが長引くのか。

 苛立ちを募らせたまま、イリスは戦局を再度進めるべく、各地の量産型へ向け指示を出そうとした。しかし、それは未遂に終わる。

『ぁ、ッ……‼⁉⁇』

 画面の向こうで、通信兵に据えた量産型が微かな呻きを残して()()()()

 何が起こったのかは分かる。けれど、タイミング的には最悪だった。ズガズガと通信拠点へと乗り込んでくる管理局員たちが発する『拠点確保!』の声に、イリスはいっそ冷え切ったような怒りに染まる。

 そして、大方の予測通りに、この拠点襲撃の責任者が姿を見せる。黒衣の戦闘装束を纏った少年―――クロノだった。

「……君か……」

 冷たく無機質な声でイリスがそう言うと、

『こちらの制圧は順次進行している。前に言った通り、君たちの事情は多少なりとも理解している。出来る限りの配慮はする。抵抗を止めて投降してくれ。

 ―――それに、君たちの方でも、何か想定外の事態が起こってはいないか?』

 クロノは先程の宣告に加えて、イリスの側に浮き上がってきたイレギュラーについて指摘した。しかし、イリスは安易に認めようとはせず「さあね」とまた無機質にそう応えるのみ。

 だが、クロノはそんな彼女の核心を突いてくる。

『……それからもう一つ。

 各地の戦闘報告を受けて、一つの疑問が出てきた。君が目的と言っている行為、それは本当に君が決めたものか?』

「―――っ」

 何よりも触れられたくないであろう、その核心を。

 イリスが気づいてはいけないモノ。これ以上、知ってしまってはいけないコト。それが、今クロノが突いた核心そのものだ。

「……ユーリが過去を漏らしたんでしょ? なら、簡単な話。あたしはユーリを恨んでるし、」

『君は、ユーリの思考を奪って制御していた。なら、君自身がそうされていると言う可能性は―――』

「うるさい!」

 イリスは切って捨てるように拒絶(ひてい)した。クロノはその様子を見て、それ以上の追及はしなかった。

 同時に、

『支局長。市街地エリアに、新たな機動外殻が三体出現しました』

『分かりました、僕が凍結を……』

 聞こえてきた彼らの会話が、どこか遠くなっていく。自分の全く把握していない、『機動外殻』の出現に、疑念が深まる。

 誰も、だれも、今イリスを見ていないような気さえして。触れられたくない部分に触れられずにいるのに、そんなことさえ思い浮かぶ。

『イリス』

 が、そこへ名を呼ばれ思わず肩がびくっと揺れた。そこで、酷く自分がこわばっていたことに気づく。

 嫌に、咽喉が乾き切っていた。

『最初に言った通り、僕たちは君たちに対して、出来る限りの配慮を取る。もう一度、よく考えてみてくれ……。本当に取り返しがつかなくなってしまうようなことが、起こってしまう前に』

「き……ぅ、くっ……!」

 低い呻きが漏れた。まるで、自分のすべてを他の何かに侵されているかのような言葉に苛立ち、イリスは去っていくクロノたちの背に、堪っていた鬱積を吐き出した。

「……あたしは、あたしだ」

 自分の存在を、今にも壊れてしまいそうなモノとでも思うように。……イリスの声は震えていた。

「星を救うために生み出されて……大切な人たちに()()()()育って、ユーリにそれを全部奪われた!

 ―――()()()()()()()()……ッ! 他の何を否定されても良い。だけどッ」

 『エルトリア』で、生きたあの日々は。

 これまでにあったこと、自分が重ねてきたこと。

 自分が、自分であったことを。

「あの時間は! ……アタシの思い出だけは、誰にも否定させないッ‼」

 イリスはいつの間にか自分が震えていたことに気づく。知らず、自分を掻き抱くようにして、その震えを抑え込んでいた。

 気づけば、護衛に残した量産型以外、誰もそこにはいなくなっている。

 少し考えれば分かる事だ。しかし、それでもなお、聞かれもしない言葉にあそこまで必死だったのは、否定させたくなかったから。

 

 が、誰もイリスを否定したわけでもない。

 むしろ否定しようとしているのは、イリス自身だ。

 だからこそ、自分に自分を否定させないために、イリスはそう口にしていた。

 

 怖くなって、恐ろしくて。……自分が独りきりのまま、消えていくようで。

 

 だから、イリスはいっそう強く震えを抑え込もうとした。

 その気になれば、星一つ埋め尽くすほどの『分身』を生み出せる力を持ちながらも、どうしようもなく今の彼女は一人だったから。

 しかし、そこへ―――

 

 

「――――――?」

 

 

 コツ、コツッと、何者かの足音が聞こえてきた。

 量産型ではない。かといって、固有型の誰でもない。それこそ、自身が把握し来ていない第三者(イレギュラー)でさえもない。……いや、ある意味ではそれもある種の『イレギュラー』足りえるのだろうか。

 その思考に次いで、イリスは量産型へ歓迎を命じようとした。

 けれどそれは、バシュ! という短い発砲音と共に、イリスが嗾けようとした量産型が撃ち抜かれたことでご破算になる。どうやら、相手は歓迎を受け取る気がないらしい。

 ……生意気だ。

 あれだけボロボロにされ、あれだけのウソを見せつけられて、今更。

「……何しに、来たの……」

 そう問えば、返ってきたのはこんな言葉。

 

 

 

「助けに来たの」

 

 

 

 問いかけに対する返答は、短く簡潔に。イリスにとって、ある種の嘲笑にも似た衝撃を与えた。

「―――は……?」

 見開かれた緋色の瞳が、茫然とした視界を写し取る。

 暗がりの展望台。敵側と同様、高所から指示を送ることを最適と判断して選んだ場所だった。発想が似通っている以上、場所がバレるのは時間の問題だと理解している。が、それがどうしたというのか。

 イリスはユーリほどでないにしろ、魔導師に対して圧倒的なアドバンテージを有している。誰が来ようと、返り討ちに()()のが関の山だ。

 なのに、それなのにだ。

(よりにもよって……っ‼)

 送られてきたのが〝自分が突き放した人形(キリエ)〟だったと知り、冷え切っていた怒りが、再度白熱する。

 

「〝アンタ〟が、今更……〝誰〟を助けるって―――ッ⁉」

 

 鬼のような形相で、イリスはふざけたことを宣ったキリエに切り掛かる。

 ずっとずっとこの掌の上で踊らされて、一人じゃ何にも出来ない甘ったれの癖に、またこうして戦いの中にしゃしゃり出てきたかと思えば、挙句の果てに「助けに来た」など、ふざけているにも程がある。

 怒りのままに振るわれたイリスの剣閃が、キリエを襲う。

 しかし、ほぼ全開に近い力で振るっているというのに、キリエはまともに反撃してこない。その事がいっそうイリスの苛立ちを加速させる。

「こ、のぉ……ッ‼」

「ッ―――⁉」

 本気で自分を助けようとしている。そんな認識を振り払うべく、イリスはキリエを展望室の窓側へと力まかせに弾き飛ばすと、即座に武装(アームズ)を剣から銃へ切り替え、無造作に乱れ撃つ。

 ガラスの割れる音と、硝煙に似た噴煙が立ち込める中―――キリエは静かに、割れた展望台(まど)から除く夜景を背にして、イリスの放った銃弾を防御するのに寝かせていた刀身を降ろし、また口を開く。

「イリス聞いて。イリスは、過去の出来事を誤解している。……ううん、〝誤解させられてる〟の」

 ある人に、と言葉を切って自身を見つめてくるキリエに、イリスは訝しむような顔で睨みかえす。

「誤解……? それこそ、いまさら―――っ、これは……」

 が、そこへキリエが『遺跡板』の欠片を放ってきた。聞けと強制するのではなく、ただそこにあるものが本当だと静かに告げるようにして。

「ユーリが残してくれた〝鍵〟を使って、エルトリアにいるママと通信が出来たの。あの日のことを見てた、ママとね。

 でも、ママも全部を知ってたわけじゃなかった。―――だから、調べてもらったの。本当に何も残されたものが無いか、その全部を。

 そうして調べて貰ったのがそれなの。〝あの日〟の真実(きおく)……」

「――――――」

 戸惑いながらも、イリスは『遺跡板』に記録されたデータを開く。

 そこにあったのは、紙片に残されていた日々よりも昔の記憶と、更にその先に残された記録。

 幸福と、その崩壊の真実。―――そして、ある計略の全容だった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 東京駅正面の屋根に、ユーリを連れた紫のスーツを纏った男が降り立った。

 下の広間には、量産型がまるで軍勢の如く控えている。明らかにそれは、イリスが分身を扱う様とは異なっていた。むしろ、今の形は―――母体(オリジナル)の上位互換が、手駒を束ねているようにさえ見える。

 だが、そこに不満を挟む者は一人もいない。あくまでそれが、本来の形であるという沈黙(こうてい)で以て、成立していた。

 男は満足そうに現状を確かめると、抱えていたユーリを量産型に預け問う。

「生産ペースは順調かい?」

「はい。現在の拠点とは別に生産経路(ライン)を確保してあります。量産型躯体、機動外殻、その他車両等についても順調との報告を受けております」

「素晴らしい。……ん?」

 そこへ、一台のバイクが広間へと飛び込んできた。

 侵攻が進んでいるとはいえ、ここは未だ封鎖領域内だ。そんな場所で自由に動けるのは、閉じ込められた側と、閉じ込めている側のみ。そして、やってきたのは閉じ込めている側の人間―――すなわち、敵だ。

 量産型が銃を構え、即座に迎撃に出ようとする。

 が、それを。

「構わない。道を開けてあげなさい」

 と、男はむしろ歓迎せよと指示を出す。

 上位体からの命令に、量産型は即座に広場中央を開け再び整列。量産型とはいえ、彼女らもイリスである以上、多少は生態型の流れを引いている筈である。だというのに、あまりにも無機質かつ機械じみたその動きは、命あるものとしては異様すぎた。

 白い車体を広場へと滑り込ませた少女、アミタはそう感じていた。しかし、それも―――結局は、その意味を剥奪する者がいるからこそ、起こることだ。

 歓迎を受け広場へと招かれたアミタは、鋭い視線と共に静かな怒りを覗かせながら、赤煉瓦で造られた駅舎の屋根に立つ男へ向けこう言い放つ。

「……あなただったんですね、この事件を起こしたのは」

 が、それを聞き男はむしろ楽しそうに笑みを浮かべる。なんとも懐かしい少女の面影を継いだ、目の前の少女の言葉に。

「君と面識はないはずだが―――」

 そう意って、言葉遊びでもするように暈かしたコトを宣うが、彼の言葉は直ぐに断ち切られた。

 

『―――ですが、私とはありますよね?』

「……ふふ。なるほど、そういうことか。

 そうなるとまずは、こう言っておくべきかな? 久しぶりだね、と。

 いや、実に久しいよエレノア。とても美人になったものだ……。仲良しだったグランツとの間に、こんなに大きな子供たちを育てるまでになるとは。時が経つのは、本当に早い。何せ君たちを最後に見たのはまだこんな子供の頃だったからね」

 実に感慨深そうに言って、彼は自分の腰の少し下辺りに手を水平に切る。ちょうどそれは、八歳かそこらの子供の背丈を示す仕草。

 が、しかし間違いではない。

『……本当に、あなたなんですね……』

 そう―――。エレノアは、彼を知っている。

 四十年前に掲げられ、自分たちが継いだ―――自分たちの故郷を救おうという夢を、最初に掲げたこの人を、よく知っている。

 

『―――惑星再生委員会、フィル・マクスウェル所長』

 

 久しく呼ばれることもなかった名を呼ばれ、彼は笑みを浮かべた。

 例えそれが、険しくも美しい二人の赤髪の()()()()の視線に晒されていた中であったとしても……。

 この場にいることを改めて実感した様に、男はいっそう笑みを深めていた。

 

 

 

 ―――暗幕を取り払った過去への路が、此処に明かされる。

 かつて在った悲劇と、そこに込められた計略。そして、在る人物が描いた理想を体現するまでの物語が。

 

 

 




 どうも、毎度遅くなってばかりの駄作者でございます。

 さて遅れてしまったワケとしては、この辺をどう切るかを迷っているうちに遅くなってしまった、という感じです。しょうもない理由ですみません。
 まぁそうは言いつつもどうにか投稿は出来たので、お話の方が少しはそれっぽく仕上がってたら嬉しいです。本当はこのまま続けてしまおうかとも思ったのですが、あの辺りは映画だとシーンが重なっていて難しかったので、いっそ二次小説というか、ネット小説らしく切って引きにしてみました。
 とはいえ、切って場面を繋ぐという事は、なるべく早く次の話を投稿したほうが判り易いので、この続きは明日の正午にでも投稿しようかと思っています。

 今回はあまり本編の方で込み入った話もなく、比較的簡潔に終わった感じなので特に説明捕捉はありません。その辺りについては、次回の方が多そうなので、今からあとがきを書くのが怖いです(笑)

 こんな感じでぐだぐだですが、少しでもいいものを書いていけたらと思うので、今後もお読みいただければ幸いです。
 ではまた、次回にお会いしましょう^^

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