~魔法少女リリカルなのはReflection if story~   作:形右

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 一行は物語の舞台へ。
 遊園地でのパートになります。


第二章 《オールストン・シー》へ

 穏やかな時間、迫る影

 

 

 

 海鳴市の近くの海に設立された、大規模な遊戯施設――海上テーマパーク《オールストン・シー》。

 

 水族館と遊園地を伴った施設設計と、大迫力のアトラクションでアメリカで人気を把し、日本での事業展開に踏みこんだこの遊園地は正式開演前のテストオープンを行うことになっている。

 そこへ、自由研究もかねて聖祥大学付属小学校に通う五年生で、仲良しの五人組がここを訪れることになった。

 ちょうど、ここを運営している『バニングス』『月村』の両企業のご令嬢でもあるアリサとすずかを始め――その友達である魔導師三人組のなのは、フェイト、はやての五人なのだが、生憎とはやては用事を済ませなくてはならず、夜からの参加だ。

 そこへ、たまたま夏休みということで海鳴(こちら)に来ていた五人の友達であるユーノを加え、一同は引率である母親たちと共に、《オールストン・シー》を訪れることとなった。

 早朝の魔法戦練習(エキシビションマッチ)を済ませたなのはたちは、リンディの招きでハラオウン家で朝食をとった後、彼女の運転する車に乗って《オールストン・シー》への道を辿って行く――――。

 

 

 

「すごーい……!」

 なのはが窓の外を見て、嬉しそうにそんな声を上げた。

 流石に、海上の遊園地を謳っているだけあって、《オールストン・シー》へは橋を渡っていくのだが、遠めに見るだけでも、その姿は感嘆の一言に尽きる。

「うん……凄い!」

 その隣に座っていたフェイトもまた、なのはの声に同調するようにそう呟き、それを聞いたアリサは得意そうに微笑み、その隣のすずかは優しげな微笑みを浮かべている。

 子供たちのそんな様子を見守っていたリンディだったが、自身の隣で、一人外の景色よりもパンフレットの方を興味深げに見ているユーノに気がついた。

「ユーノくん、何か気になるアトラクションでもあったの?」

「はい。ただ、アトラクションもですけど……この鉱石が、なんだか妙に気になって」

 そっと目を落とした先には、最近ここ海鳴市の近海から引き上げられたという未知の鉱石の写真。

「あぁ、例の鉱石ね。ふふっ、やっぱりスクライアの人間としては血が騒ぐのかしら?」

「えぇ、まぁ……」

 ユーノは静かにそう答え、リンディはそんな彼の目が捉えている物を見て再度微笑む。

 確かに、彼がアレに目を引かれるのも無理はない。

 彼の出身なども考えればなおのことで、同時にリンディは彼ならそれが何なのか当たりを付けられそうな気がしていた。

 勿論それは、どうと言うことはないただの勘ではあるのだが。

(そういえば……)

 確か、彼にアレをみてほしいとアリサが言っていたと娘たちから聞いていた彼女は、内心そっと微笑む。

 何せ、丁度自身も似たようなことを聞いていたのだ。

 それはアリサの母であり、リンディの友人でもあるジョディに聞いた話で、成分こそそれなりに分析されてはいるが、どことなく不可解な点があるとのこと。

 それが何であるのかが分かっていないこともあって、今回のテストオープンでは専門家も訪れる事になっている。

 何処と無く親子だなぁと感じさせる発想というか、行動。

 地球の外であろうが、隔てなく聞き及ぼうとするその姿勢がなんとも微笑ましい様な気がした。

 

 そして、ユーノもまた――未だ見えぬ過去の産物や、友達と過ごす休暇に心を躍らせている。

 

 たくさんの楽しいことが、子供たちの笑顔をもっと満たしてくれたら良いなと、リンディは願いながら車を走らせていく。

 程なくして、一同を乗せた車は《オールストン・シー》へと続く橋を渡り、海上に聳える一大テーマパークへと向かっていくのだった――――。

 

 

 

 ***

 

 

 

 駐車場へ着くと、すでに到着していたバニングス夫妻とすずかの母親である春菜が皆を出迎えてくれた。嬉しかったのか、アリサとすずかは、それぞれの母親と抱擁を交わしていたが、そこへ更にもう一台の車がやって来た。

 中から出てきた茶髪の女性は、なのはの母である高町桃子だった。

 やってきた母の姿に笑顔になっていくなのは。嬉しそうな娘の頭をそっと撫でて、一同と合流した桃子。こうしてママ友グループがそろったところで、「今日はお招き頂いてありがとうございます」や「今日は娘たちがお世話になります」などと言った挨拶が交わされていく。

 子供たちもどこを見ようかなどと言った話を始めていたが、アリサの父であるディビットが一旦それらを締めくくる。

 夫のそれを見て、妻のジョディもそろそろ今日のメインイベントに移ろうと、ディビットと共に皆に声をかけ、遊園地の中へと皆を先導していく。

「それじゃあ、皆。そろそろ行こうか」

「今日は私たちが案内役でーす♪」

 そんな、楽しそうなバニングス夫妻と、にこにこと笑みを絶やさない春菜。

 ここ、《オールストン・シー》を設営している『バニングス』『月村』の責任者たちの案内の元、本日のテストオープンは幕を開けていった。

 

 

 

 まず皆が向かったのは、遊園地(アトラクション)エリア。

 まだテストオープンと言うこともあり、未稼働のアトラクションもいくつかあるのが残念だとジョディは言ったが、今日の仲良し五人娘の目的は夏休みの自由研究である。自分の両親が経営者であるアリサとすずかはともかく、なのはたちはこうして他人の少ない中をじっくり見れる機会を得ることが出来たのは幸運だったといえるだろう。

 様々なアトラクションや、ジョディの挟んでくれた説明を元に、なのはたちは手元のメモに色々と書き込んでいく。

 そんな中、特にそういった宿題との縁は無いユーノは、地球の遊園地という物を少し珍しそうに見ていた。

 彼の今住んでいる管理世界『ミッドチルダ』にもこういった遊興施設は存在しているが、地球の――とりわけ日本のテーマパークへの力の入れようは目を見張るものがある。日本に限らず、こうした強い〝こだわり〟を魅せつけてくれる国をたくさん持つ地球という次元世界は、それを知って二年ばかり経ったユーノにもなかなかに新鮮な刺激を与えてくれる。

 ジェットコースターとか乗ってみようかなぁ、と、後で遊ぶアトラクションを考えていたユーノに、アリサが近寄ってこんなことを訊いてきた。

「ねぇユーノ。ユーノは、乗るんだったらどれに乗りたい?」

「乗るなら……そうだなぁ」

 さっきまでいくつか考えてみた乗りたいものを思い浮かべるが、改めて訊かれると、どれを選ぼうとしても迷ってしまう。比較となるものでもあればいいのだが、生憎とユーノは此方の遊園地はあまり知らないのでその対象があまり無い。

 なので、

「うーん。僕は、地球(こっち)の遊園地に行ったことあんまりないから……アリサのオススメとか教えてもらってもいいかな?」

 と、ユーノはアリサに彼女のオススメを訊いてみることに。

「勿っ論。そうねぇ、なら先ずは――」

 そういって、オススメを指差して説明を重ねていくアリサ。

 流石は関係者筆頭な彼女らしく、一つ一つの解説は誰もが興味をそそられた。面白そうなのでどれに乗ろうか迷うが、一先ず水族館エリアも見てから遊ぶことにしているので、それまでに考えればいいだろう。

 参考となる情報をたくさん教えてもらったので、ユーノはアリサに「ありがとう」と言った。彼女はそれを聞いて得意そうな満面の笑み。

 水族館の方へ向かう足取りは、どこか軽やかなものになっていた。

 

 

 

 そして。

 

 

 

「はーい! では、ここからが水族館エリアでーす♪」

 ジョディの声と共に、水槽に囲まれた領域に入っていく一行。

 そこは、様々な種類の魚たちが舞を踊る舞台であり、まるで迷宮とも言えそうなほど広く美しい深海の城のようでもあった。

 

「「「わあ……っ!!」」」

 

 子供たちの口から歓声が起こり、

 桃子やリンディたちも、如何にも大迫力といった出で立ちの光景に感嘆の声を漏らす。

 そんな皆に、ここの説明をしていくディビット。

「ここには、海鳴市近海の水生生物は勿論。他にもたくさんの生き物がいる。まさに海と一体化した水族館って感じかな」

「たくさんの魚たちのショーを楽しんでいってね」

 夫の説明に続き、ここのメインへと一行を(いざな)っていくジョディ。

 エスカレーターで移動しながら、様々な水生生物たちの姿が皆の前を流れていく。

 色とりどりの熱帯魚に、、身体の大きなエイやサメ。まるで華やかなダンスと、猛々し勇姿を同時に見ているようだ。

「わぁ~!」

「すごい……」

「そうよねぇ……」

「とっても綺麗」

 女の子たちが見とれている横で、ユーノも水槽の中の世界に目を奪われていた。

 水と空気。隔てる壁は大きいけれど、今此処で隣り合う世界は、間違いなく触れ合っている――と、思わずそんなことを考えるような調和・融和が此処にはある。

 美しい水の世界に魅せられながら、皆はその中にある光景を楽しんでいた。

 しばらくはそれらを見ていただけでも満足していたが、ただ見ているだけというのも少し勿体ない。

「ねぇ、写真撮ろ!」

「いいね!」

 なのはがスマホを取り出してそういうと、すずかも嬉しそうに笑みを浮かべて同意した。

 それに続くように、

「えっと、じゃあ最初はどこで撮る?」

 とフェイト。

 続けてアリサが、魚たちがたくさん回遊している場所を指し示してこういった。

「そうねぇ……あ! あそこが良いんじゃない?」

 それを受けて、なのはは傍らのユーノの手を引いてアリサの示した場所へ向かって行く。

「アリサちゃんナイス! ほら、ユーノくんも行こ!」

「え? あ、ちょ……な、なのは……!」

 いきなり引かれて戸惑うユーノ。

 だが、もうみんなは臨戦態勢。一緒に楽しもう! な女の子パワーに、彼はただ翻弄されるばかり。けれど、それは決して嫌ではなくて……書庫に籠ってばかりの日々では感じられていなかった、確かな〝楽しさ〟がここにあった。

「ほら、ユーノもグズグズしないの」

「あ、待って」

「ふふっ♪」

 あれよあれよというままに、一同は水槽の前に並んで準備完了。

「いくよー?」

 と、合図をしたなのはの声に合わせ、皆も早速写真を撮る準備(ポーズ)に入る。

 

「「「ピースっ!」」」

 

 パシャリ! 声と共にシャッターが切られ、撮影音が響く。

 画面には五人の並んだ写真がブレもなく綺麗に写っていた。

 早速みんなで写真を回していき、それぞれのスマホにデータを飛ばす。

 受信を知らせる音が鳴り、思い出の一枚を共有できたという事を知らせる。勿論、この場にもいないはやてにも送ることは忘れない。

「――おさかないっぱいだよ! 夜になったらはやてちゃんも一緒に、だね! ……っと、送信♪」

 メッセージにもそう入れて送信し、なのははにっこりと微笑む。それを見て、皆も笑顔になり、送られた先ではやてもまた微笑んだという。

 しかし、撮りだすともっと撮りたくなるのが人間といったところ。

「もっと撮ろ! ね、ユーノくん」

「な、なのは。そんなに焦らなくても、魚は逃げないよ?」

「いいの! ユーノくんと最近一緒にお出かけとかできなかったんだもん。もっともっと、いっぱい写真とか撮ろう!」

 楽しそうにユーノを引っ張るなのは。

 そんな彼女を見て、他のみんなも待て待てといわんばかりに追いかけていく――――

 

 

 

 再び、水槽前でのツーショット。

 

「ユーノくん、もっと寄って寄ってー」

「う、うん」

 

 

 ――――パシャリ。

 と、次々写真が続いていく。

 

 

「ユーノ、なのはばっかり贔屓は狡いわ」

「え、贔屓って……」

「一緒に撮ろ~」

 

 廊下で水族館の全貌を写す様に一枚。

 アリサとすずかに挟まれてスリーショット。

 

「……わぁ」

「綺麗だね」

「うん……!」

 

 魚たちの輪舞曲(ロンド)に見とれ、それを撮るユーノとフェイト。

 

「あはは! それ似合う~」

「アリサ、よくこんなの見つけてきたね……これって確か、ラッコだっけ?」

「ふふん♪ あたしの目ざとさを舐めないで欲しいわね。あ、ちなみにラッコであってるわよ。首がちょっと長いとこ、何となくユーノのフェレットモードに似てるなぁって思って」

「なるほど……。ところで、アリサのそれって何?」

「あれ、判んなかった? イルカよイルカ」

「あぁ、シャチっていう生き物と似てたから少し迷ったんだけど、そっちだったんだね」

 

 ギフトショップから被り物を見つけてきて、それを自分とユーノで被って愉快そうに笑うアリサ。

 

「可愛いね、これ」

「うん。あ、次はフェイトとすずか被ってみて!」

「アリサちゃん、わたしは?」

「なのははこっちこっち!」

「ふあっ……? アリサちゃん、これって?」

「うん! やっぱり私の見立ては間違ってないわね! あ、ちなみにそれは人魚の髪飾りらしいわ」

「人魚さんかぁー。えへへ。ユーノくん、どう? 似合う?」

「うん、似合ってるよ。あ、勿論みんなも」

「ありがと、ユーノ」

「ありがとう♪」

 

 満喫度は全快。

 すっかり子供たちは遊園地に引き続き、水族館も楽しむことが出来ている様だ。おまけに、なんだかんだしつつも、写真やメモも取っているあたり、当初の目的を忘れてもいないらしい。感心感心、とこの施設の先導役を買って出ていたジョディは頷いて子供たちを見守っていた。

 しかし、そろそろ先へ進まねばならない。

 少々名残惜しいが、楽しんでいるらしい子供たちにジョディはそろそろメインの展示物の元へと向かうべく声を掛けた。

「みんなー。そろそろ、奥の方に行きましょ~!」

 

 

「「「はーい!」」」

 

 

 彼女にそう促され、子供たちは早速、自由研究でユーノの見解も聴いてみよと事前に言ってあった例のものの元へ向かうべく奥へと進む保護者たちに続いて行く。

「お待たせいたしました……」

 そう言って間を空けると、ジョディは円状になっている展示室の中央に在る円柱型の水槽を指し示してこういった。

 

 

 

「――――これが、ここのメインである海鳴沖で発見された巨大鉱石でーす!」

 

 

 

 オブジェとして飾られているそれは、確かにこの水族館に置かれるだけの壮大さを持っている。

 彼女の示した先に聳える鉱石の巨大なシルエットに、思わず皆は息を呑む。

「これが例の……」

 呟きと共に、ユーノはパンフレットに書かれていたこの鉱石の説明を思い返す。

 ここ最近、海鳴市の沖合いで見つかったという未知の鉱石。

 緋色の水晶のような形で、縦にながいその(さま)は、一見すると針山のように見えなくも無い。しかし、そんな刺々しい見かけとは裏腹に、何処か艶めかしい色のような美しさも覗かせる。

 まるでそれは、見た者全てを捕えて放さないかのような妖しい雰囲気を漂わせていた。

 思わずユーノもその魅惑に呑まれたようになる。

 だが、

「――――」

 ユーノは、ぼんやりと透き通る結晶の奥を眺めている内に、落ち着かない気分になる。

 得体の知れない妖しさは、ある種の恐れのようになり、彼の心を僅かに掻き乱す。妙に鼓動が早くなり、緋色に染まった姿が……人を喰らい続け、その鮮血に染まった故のものであるように思えてしまう。

 これまで彼は、〝スクライア〟の一人として、いろいろな世界の遺産や遺物を見てきた。

 そうした彼の経験や勘と言ったものが、彼の頭の中で警告を発している。

 杞憂に過ぎないのであろうことは判っているつもりだ。ただの予感がしたというだけで、別段そこに確証は無い。

 少なくともこの結晶はこれまで、此処のスタッフたちが解析を済ませている上では何の危害も被害も生んでいないのだ。

 考えすぎだろう。

 ここは『無限書庫』の未開拓エリアでも、まして『ミッドチルダ』ですら無い。『闇の書』のような転生型の古代遺失物(ロストロギア)でもあるまいし……此処にそんな危険な魔法の産物など在るわけも無い。

 自分が見つけてしまった『ジュエルシード』のような、奇跡的な偶然でも無い限り、こんなところにそんな危険物があるはずもないだろう。

 なのはたちと関わっていると忘れがちだが、本来そうそう起こることでもないのだ。

 自分の中に生まれた杞憂を散らすように軽く首を振ると、ユーノは自身を落ち着かせるように「ふぅ……」と小さく息を()く。

「……ユーノくん?」

 そんな彼を見て、なのはが不思議そうに声を掛けた。

「どうしたの?」

「ううん、何でも無いよ。ただ、なんとなくこの鉱石のことを少し考えてただけ……」

「おぉー! 良いわね。じゃあ早速、考古学者のユーノ先生の意見を聴いてみたいわ」

「あはは……そんな大したもんじゃ無いんだけどなぁ」

 苦笑しつつ頬を掻くユーノだが、皆は彼の言葉を待っている。

 自由研究に彼の言葉も載せたいのか、メモを構えているフェイトと、スマホでユーノのコメントを記録しようとしているアリサ。

 なのはとすずかも、わくわくした様子でユーノの次の発言を待っている。

 せっかく高揚してきた場に水を差すのも何なので、ユーノは自分の見立てたままを話す。

「そうだね……。まず見た目からしてとても綺麗だよね。パンフレットでは石英だって言う話だったから、宝石としての価値はそこまでないのかもしれないけど、でもこんなに大きい結晶ならそれだけでも希少性はあると思う」

 ひとまず、大まかに見たままを語りだすと、なのはたちは彼の話を真剣に聞き入る体勢に入る。

 神秘的な出で立ちの巨大な鉱石は、その存在だけでも価値がある。自然にできたものであるならば、ここまで大きなものはミッドの方でもあまりないといった話をすると、ふむふむとミッドチルダにはあまり詳しくない、フェイト以外の地球出身の三人が彼の言った内容に感心したように頷いている。

「そうなんだぁ~……」

「うん。でも、これは僕もそんなに見たことない規模だよ。ちょうど前に皆に渡した石みたいに、宝石的な価値はないだろうけど、これにはもっと神秘的な魅力があると思う」

 ひとまずそう締めくくると、アリサは満足そうに、

「先生も高評価ねー♪」

 とニコニコしている。

 両親の経営する遊園地の目玉部分が気に入ってもらえて、きっと彼女も嬉しいのだろう。

 そうして笑顔のアリサの隣で、まだぼんやりと鉱石を見ているユーノの様子が気になって、なのははそう訊ねる。

「ねぇ、ユーノくん。ユーノくんの思う神秘的なところって、例えばどこ?」

「あ、それわたしも聞きたい」

「わたしも聞きたいな~」

 どうやらユーノが、本人が思っている以上にこの鉱石にのめり込んでいるのを見て、皆そのことが気になっていたらしい。

 ただ、本人的にはそこまで深い理由があるわけではないので、非常に漠然とした感覚なのだ。

 そのため、どことなくあやふやに思える言葉で語りだす。

「あぁ、えっと……そんな根拠とかがあるわけじゃないんだ。ただ何となく、見ていたらそう思ったってだけで」

 そう言いながら、自分でも何かこれに思うところがあるのかと理由を考えてみると、なのはが再びこう訊ねてきた。

「思ったって、どんな風に……?」

 それを受け、ユーノもどんな風であるのかを表現する言葉を探す。

 どことなく魔的な、鮮血のように思えるこの緋色の醸し出す魅惑の風貌。それらを表せそうな言葉とは、一体何であろうか。

「えっと、なんだろう……。上手く言葉にできないんだけどね? なんていうか、その……」

「その?」

「何かが居そうな気がする、っていうか……この中に、そう――――」

 

 

 

 ――――なんだかまるで、悪魔が居るような感じがして。

 

 

 

 そんな言葉を呈しつつ、一時の詩人は言葉をそこまでで切った。

 何事もない、平穏な時間。まだまだ楽しいことはたくさんあって、この水族館も遊園地も、まだまだ堪能しきれていない。

 自由研究を目的とした少女たちも、知るためには堪能することが必要である。

 一同は、再び遊園地側の取材をするべく出口へと向かう。

 もう一度外へと向かい、再び遊園地(アトラクション)エリアへと足を運んでいく皆の姿を、照明をゆらりと撥ねかえす鉱石だけがじっと見つめる様に鎮座していた。

 

 

 

 こうして、憩いの昼が過ぎて行き、騒乱の夜は迫り来る。

 街は再び嵐の中へと巻き込まれ、新たな影が夜のしじまを疾走し――一冊の魔導書、ある一つの星を掛けた物語が幕を開けていくのだった――――。

 

 

 

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